法の支配と民事訴訟実務入門(平成24年8月21日改訂)
各論1、内容証明郵便を自分で出す。普通郵便との違い、訴訟との関連。

質問
 内容証明郵便、配達証明について知りたいので教えてください。
貸金の返還を請求したいのですが、裁判の準備として内容証明郵便で催促したほうが良いのでしょうか。普通の郵便との違いは。

回答
1 内容証明郵便とは
内容証明郵便とは、郵便として出した書面を郵便局(郵便事業株式会社)が証明し保存しておく郵便の形態です(郵便法48条)。具体的には同じ書面を3部作成し、1部を発信者、1部を郵便で相手に送り、残りの1部を郵便局が保管しておくことにより発信者の郵送した書面の内容を保存しておくことになります。このように、内容証明郵便により郵送した書面の内容と発信した日時は証明できます。なお、この郵便が相手に配達されたか否かは内容証明郵便だけでは明らかになりませんので、相手に配達されたことを明らかにしておくには別に配達証明が必要です。
内容証明郵便と配達証明により、あなたが保管している書面が郵便として発信され、相手に特定の日に配達されたことが証明されることになります。郵便局で差出を依頼する場合は、「配達証明つきの内容証明郵便でお願いします。」と言って依頼することができます。

2 内容証明郵便の法律上の意味
このように、内容証明郵便自体は郵便物の一形態にすぎませんが、特定の書面が相手方に配達されたことを証明することが法律上必要な場合は不可欠な制度となっています。
たとえば、訪問販売で購入した商品については契約した日から八日以内であれば理由なく売買契約の解除(クーリングオフ)を書面ですることができますが(最後にクーリングオフの場合の通知の書式を挙げておきます)、八日以内に契約の解除の書面を出したか否か証明する責任は解除する(買主)側にあります。このような場合、内容証明郵便で通知をしておけば、解除の意思が記載された書面が相手方に対して八日以内に発していることを容易に証明できることになります。

3 証拠としての内容証明郵便
このように、内容証明郵便は裁判での証拠として法律上の意味を持つのですが、理解のため少し詳しく説明します。
訪問販売であっても売買契約が成立すると、買主は代金を支払う義務を負い、売主は商品を引き渡す義務を負います。このように、契約により当事者は法律上の義務(債務といいます)を負うことになります。このような義務は法律上の義務であることから法律効果といいます。この法律効果を生じさせる事実を法律要件といいます。この場合の法律要件は売買契約です。つまり、売買契約という法律要件により買主は代金支払義務、売主は商品引渡義務という法律効果を負うことになるのです。法律はこのような法律要件と法律効果の組み合わせで成り立っています。さらに、あなたは、この契約を一方的に解除して売買契約を解消したいということですから、契約解除という法律要件が必要となります。クーリングオフの要件は法律(特定商取引に関する法律9条)で定められ、八日以内に書面で解除をすることが要件とされています。そして、この場合の法律効果はなんでしょうか。簡単ですね。代金支払い義務がなくなるということです。
このように、解除の通知が法律要件を満たすことを内容証明郵便で証明することができるのです。特に、法律要件に時間的な制限がある場合に(遺留分減殺請求等)、期間内に通知を完了したことを証明するには内容証明郵便は証拠として重要な意味を持ちます。

4 その他の効果
内容証明郵便に証拠としてあまり価値がない場合もあります。たとえば、貸金の返還の催促に内容証明郵便が必要でしょうか。貸金の契約は金銭消費貸借契約(民法587条)と呼ばれ、法律要件は、1、お金を渡すが後日返すことの合意と、2、金銭の交付です。法律効果は借主が期日に借りた金銭を返す義務を負うということです。ですから、貸主とすれば、証明すべき事実は1については借用証書や金銭消費貸借契約書、2については領収書や送金票の控えなどで証明できます。従って、返還を請求することは、証拠としての意味はないのです。但し、実際の裁判ではこのような催促の内容証明郵便が証拠として提出されています。
 それは、裁判になった経緯を裁判所に説明する為にすぎません。裁判所も法律要件を中心に考えますが、催促はしなかったのかな、と疑問を持つことはありますから、催促の経緯について内容証明郵便を証拠として提出ることで説明しているのです。
 ところで、金銭消費貸借契約書等がない場合はどうでしょうか。この場合、「金銭を返還することの合意」について証明できるか疑問が出てきます。借用証がない場合、相手は貰ったお金で返す必要はないと、返還の合意を否認する場合があります。この合意が証明できないと請求が認められません。請求する方としては、少しでも証拠があったほうが良いといことになります。そこで、借用証がない場合などは、事前に内容証明郵便で、貸金を返せ、という請求をしておくことが必要です。回答がなかったからと言って、それだけで貸金であることが証明されるわけではありませんが、何も回答がなかったということは、貸金である一つの証拠にはなり得ます。内容証明郵便の督促通知の最後に、「本書の内容に異議があれば直ちに反論する旨の通知を頂きたくお願い申し上げます。」と記載しておくことも考えられます。
 また、仮に相手が、貸金であることを認め返済を待ってほしいという趣旨の回答をすることもあります。そのそうな場合は、返還の合意があったことの証拠となりますから、借用証の代わりになります。
内容証明郵便にはこのような意味が考えられます。

5 内容証明の受領拒絶・受取拒否・不在による留置期間経過で還付された場合
民法97条1項により、意思表示の効力が生ずるのは、相手方に到達した時と規定されていますが、相手方が内容証明郵便の受取を拒否したり、不在だったのに不在配達通知書の記載に従って再配達の依頼をしたり郵便局に受け取りに出頭したりせずに保管期間を経過してしまい差出人に返送されてしまった(戻ってきてしまった)場合はどうなるでしょう。受取拒否については、東京地裁平成10年12月25日判決、不在による保管期間経過で還付された場合では、最高裁判所平成10年6月11日判決があり、内容証明の効力が発生すると認めています(下記判例参照)。相手方が内容証明の受取を渋ることが予想されるケースでは、内容証明郵便の差出時に、特定記録付き普通郵便でも同時に発送したうえで、関係書類の写しを保管されることをお勧めします。また、裁判上の請求に切り替えることにより、裁判所の付郵便送達や公示送達など、より強力な送達方法を利用できる場合があります。

特定記録郵便の説明はこちら↓を参照してください。
http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/tokutei_kiroku/index.html

6 内容証明の書式例と差し出し方

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クーリングオフの内容証明郵便の例
クーリングオフ通知書
被通知人 ○県○市○町○○
株式会社○○○○ 代表取締役 △△△△ 殿
平成○年○月○日
通知人 ○県○市○町○○
    □□□□

前略 今般、貴社との間で、次の契約(以下本契約という)
の申し込みを行った□□□□と申します。しかし、本書面
を以ってクーリングオフします。商品も同時に返却発送致
しますので、受領お願いいたします。

契約の表示
契約締結日 平成00年00月00日
商品名    0000
売買代金  金0000円
草々
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内容証明郵便の形式については、下記の郵便局のHPを参考にしてください。概要をご紹介しますと、字数・行数は、(記号も1字と数えて)1行20字以内、1枚26行以内で作成します。横書きで作成するときは、1行13字以内、1枚40行以内または1行26字以内、1枚20行以内で作成することができます。これを3枚用意して郵便局に持参して下さい。

http://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/syomei/


<参考条文>

民法97条(隔地者に対する意思表示)
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
第2項 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

郵便法 第48条 (内容証明)  内容証明の取扱いにおいては、会社において、当該郵便物の内容である文書の内容を証明する。
2項  前項の取扱いにおいては、郵便認証司による第58条第1号の認証を受けるものとする。
同第58条(認証司の業務)郵便認証司は、次に掲げる事務(以下この章において「認証事務」という。)を行うことを職務とする。
1号 内容証明の取扱いに係る認証(総務省令で定めるところにより、当該取扱いをする郵便物の内容である文書の内容を証明するために必要な手続が適正に行われたことを確認し、当該郵便物の内容である文書に当該郵便物が差し出された年月日を記載することをいう。)をすること。

<参考判例>

※最高裁判所平成10年6月11日判決抜粋
「 (二) ところで、本件当時における郵便実務の取扱いは、(1) 内容証明郵便の受取人が不在で配達できなかった場合には、不在配達通知書を作成し、郵便受箱、郵便差入口その他適宜の箇所に差し入れる、(2) 不在配達通知書には、郵便物の差出人名、配達日時、留置期限、郵便物の種類(普通、速達、現金書留、その他の書留等)等を記入する、(3) 受取人としては、自ら郵便局に赴いて受領するほか、配達希望日、配達場所(自宅、近所、勤務先等)を指定するなど、郵便物の受取方法を選択し得る、(4) 原則として、最初の配達の日から七日以内に配達も交付もできないものは、その期間経過後に差出人に還付する、というものであった(郵便規則七四条、九〇条、平成六年三月一四日郵郵業第一九号郵務局長通達「集配郵便局郵便取扱手続の制定について」別冊・集配郵便局郵便取扱手続二七二条参照)。
   (三) 前記一の事実関係によれば、被上告人は、不在配達通知書の記載により、小川弁護士から書留郵便(本件内容証明郵便)が送付されたことを知り(右(二)(2)参照)、その内容が本件遺産分割に関するものではないかと推測していたというのであり、さらに、この間弁護士を訪れて遺留分減殺について説明を受けていた等の事情が存することを考慮すると、被上告人としては、本件内容証明郵便の内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができたというべきである。また、被上告人は、本件当時、長期間の不在、その他郵便物を受領し得ない客観的状況にあったものではなく、その主張するように仕事で多忙であったとしても、受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって(右(二)(3)参照)、さしたる労力、困難を伴うことなく本件内容証明郵便を受領することができたものということができる。そうすると、本件内容証明郵便の内容である遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、被上告人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で被上告人に到達したものと認めるのが相当である。 」

※東京地方裁判所平成10年12月25日判決抜粋
「ところで、消滅時効の制度の趣旨は、法律関係の安定のため、あるいは時の経過に伴う証拠の散逸等による立証の困難を救うために、権利の不行使という事実状態と一定の期間の継続とを要件として権利を消滅させるものであり、また、権利の上に眠る者は保護に値しないとすることにあるとされているところ、催告に暫定的な時効中断の効果を認めた理由は、裁判手続外であるにせよ催告という権利者としての権利主張につながる行為を開始することにより、もはや権利の上に眠る者とはいえなくなるからと解される。そして、催告は、債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知であるから、これが債務者に到達して初めてその効力を生ずるというべきである。
 そこで、本件についてみるに、右1認定事実によれば、原告の普通郵便による督促状は被告らに到達したことを確認できないし、配達記録付き(あるいは配達証明付き)の催告書ないし債務承認書は、いずれも被告らの不在のため受領されずに返送されるか、又は被告Wの事務所の事務員が受領を拒絶して返送されているのであるから、右各書面が被告らに到達したことを確定的に認定することは困難というべきである。
 しかしながら、本件においては、@被告Wは時折自宅に帰っていたのであるから、右(一)認定の普通郵便による督促状を受領していた可能性が高い上、A被告らが不在のため保管期間経過として返送された郵便について、郵便局員が不在配達通知書を被告らの住居に差し置くのであるから、被告らはその郵便の存在を知ることができるとともに、容易にこれを受領することが可能となっていたものであり、B更に被告Wの事務所宛に送達された内容証明郵便については、二回とも同事務所の事務員により受領拒絶の措置が採られているが、右措置はあらかじめ被告Wからそのような指示がなければ考えにくいことであるし、また、少なくとも被告Wからは定期的に同事務所への連絡がなされていたはずであるから、その際にも原告からの内容証明郵便が配達されたことが被告Wに伝えられていたと考えられることからみると、被告Wは原告からの本件貸金債務の請求関係書類が同被告に送付されていたことを了知していた可能性が高いというべきである(更にいえば、被告Wは普通郵便による督促状を閲読していたゆえに、その後の原告からの郵便物の受領を拒否する措置をとった可能性も考えられるところである。)。
 仮にそのように認められないとしても、前記のような時効制度の趣旨を前提として考えると、原告は、前後四回にわたって被告らに対し、その自宅あるいは事務所宛に催告の趣旨を記載した内容証明郵便ないし普通郵便を送付しており、債権者としてなし得る限りのことをしているのであって、権利の上に眠る者とは到底いえないし、他方、右催告が被告らに到達しなかった原因はもっぱら、債権者からの追求を免れるために送付書類の受領を拒否する態度に出た被告側にあるのであるから、右送付に催告の効果を認めなければ、結局債権者には時効中断のためにとりうる手段がないことになり、著しく不当な結果となる。
 そうすると、いずれにしても、本件の催告は、被告Wの事務所に郵便局員が内容証明郵便を配達し、同事務所の事務員がその受領を拒絶した平成一〇年三月二七日をもって被告Wに到達したものとみなし、催告の効果を認めるのが、時効制度の趣旨及び公平の理念に照らし、相当であるというべきである。」

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