共有者間の不動産の明渡請求の可否

民事|共有不動産|最判昭和39年2月25日民集18巻2号329頁

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問:

共有者間の実家の明渡しについて相談です。

私は、父・母・妹の4人家族でした。母はすでに亡くなっており、父も先日亡くなりました。実家は父と私の共有名義となっており、父の相続の結果、実家の持分割合は、私(4分の3)と妹(4分の1)となりました。

現在、妹が、亡父名義の実家に居座っており、私の立ち入りを拒んでいるため、実家の処分に困っています。先日も実家を訪れたところ、妹は私の立ち入りを拒み、無理に立ち入ろうとすると、暴力をふるってきました。妹は一切話に応じる姿勢がありません。父の遺言はなく、遺産分割協議もできておりません。

このような場合に、私は実家の明渡しを請求することはできないのでしょうか。

回答:

1 あなたは、実家の共有持分の過半数を有しております(相続の発生による法定相続分による持ち分であり、遺産分割協議は未了の場合と、遺産分割協議で持ち分を決めた場合が考えられます)。しかし、判例上 、共有物の持分の過半数を有していたとしても、共有物を単独で占有する他の共有者に対し、当然には、その占有する実家の明渡しを請求することはできません。

2 当然には明渡しを請求することができない以上、あなたは、実家の具体的な使用方法について、遺産分割協議が未了であれば遺産分割協議によって定める必要があります。遺産分割協議がまとまらず審判でも共有となった場合は、共有物の分割(民法256条)によって決するほかありません。

3 妹さんとの間に協議が成立するまでの間、あなたは、妹さんに対して、妹さんが単独で実家を占有していることを理由に、不当利得または不法行為を理由とする金銭賠償を請求することになります。

4 もっとも、上記判例も、「当然には明渡しを請求することができない」と判示しており、例外的に明渡しが認められる可能性はあります。

5 遺産分割協議も含めて、お近くの法律事務所にご相談されることをおすすめします。

6 共有不動産に関する関連事例集参照。

解説:

1 持分の過半数を有していても当然には明渡しを請求できない

被相続人の死亡により相続が発生すると当然に、法定相続人が法定相続分を共有ということで相続します。あなたは実家の4分の3の持分を有しており、4分の1しか持分を有していない妹さんに対して、なぜ当然には明渡しを請求することができないのでしょうか。一般的な感覚で考えれば、持分割合の少ない妹さんが単独で実家を占有していることは、おさまりの悪い結論に思えます。

⑴ 各相続人の持分が平等な場合

まず持分が平等なときは、共有者間で引渡請求権がないと関することが一致した判例の立場になります(最判昭和39年2月25日民集18巻2号329頁)。互いに対等な持分権を有している以上、どちらにも優劣はつけがたいと考えるのは、妥当な判断です。

⑵ 各相続人の持分が平等でない場合

では、持分が対等ではない本件ではどうでしょうか。

妹さんが実家で生活していることは、共有物の管理に該当します。共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する必要があります(民法252条)。妹さんはあなたの同意に基づかず勝手に生活をしているわけですから、妹さんはあなたの共有持分権を侵害していることになります。

そうすると、あなたは実家の共有持分権を侵害されたことを理由に、妹さんに対して実家の明渡しを請求することになりますが、このような請求は当然には認められません。

なぜならば、確かに、妹さんの利用方法は共有物の管理に関する事項であるから、持分の過半数を有するあなたの意思に基づいて管理者を変更することができるのではないか、とも思えます。

しかし、共有は、数人が共同して1個の所有権を有する状態です。共有者は、者を分割してその一部を所有するのではなく、各所有者は物の全部について所有権を有し、他の共有者の同一の権利によって減縮されるにすぎません。したがって共有者の有する権利は、単独所有の権利と性質および内容を同じくし、ただ分量および範囲に広狭の差異があるだけです(大判大正8年11月3日)。

このように共有持分権は量的に制限された所有権にほかなりません。条文上も、各共有者は共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができる(民法249条)と規定しています。そうすると妹さんの持分は4分の1であるけれども、自分の所有権(持分権)に基づいている以上、その範囲内では適法な権利に基づく利用となります。妹さんが単独で実家を使用している現在の状況のすべてを違法視することはできません。

したがって多数持分権者のあなたが、妹さんに共有物の引渡しを求めることは、自己に対する全部の使用・収益を求めることである以上、認められないというのは当然の帰結ということになります。たとえ妹さんの利用が、共有物の管理に関する合意に基づいていないとしても、妹さんの実家の利用には一定の法的根拠が認められるのです。

2 基本的な解決

あなたは、当然には妹さんに対して実家の明渡を請求することができない以上、基本的な解決方法としては、遺産分割調停を申立てるほかありません。調停における協議がまとまらない場合は、審判で誰が単独相続をするか決定されます。共有は例外ですから遺産相続の審判では原則として相続人一人が単独で相続するのが原則ですが、相続人の都合によって例外的には共有しかてきないという場合もありうることてす。その場合は、共有物の分割請求(民法256条)によって解決を目指すこととなります。このように再度裁判手続きを取ることは、無駄と言えますから、本来は遺産相続の審判で単独て相続するという結論が望ましいと言えます。

以上の協議がまとまるまでの間、妹さんは、あなたの共有持分を侵害した状態が継続することとなりますが、当該解決は不当利得または不法行為による金銭賠償を請求することになります。具体的には、持分割合に応じた賃料相当部分について請求することができます。

3 あなたが妹さんに対して実家の明渡しを請求することができる場合

判例は、多数持分権者は、当然には、少数持分権者には明渡しを請求することはできないとし、「共有物の明渡を求めることができるためには、その明渡を求める理由を主張立証しなければならない」と判示しております。すなわち明渡の理由をきちんと主張立証すれば、あなたは妹さんに対して実家の明渡しを請求することができるわけです。

例えば、裁判例(昭和35年10月18日民事第9部判決)においては、共有者の1人が他の共有者の共有持分を否定して共有物を占有しているときは、他の共有者は持分に基づく妨害排除として共有物の引渡しを請求することができると判示したものがあります。

具体的には、「共有者の1人が他の共有者の共有持分を否定し、全く、他の共有者の使用収益を認めず、管理方法についての協議にも応じないで自ら共有物を使用しているような場合には、共有物に対する不法占有者と同視すべきであるから、他の共有者は共有物を占有する共有者に対し、民法249条の共有物の持分に基づき、その妨害排除として共有物の引渡しを請求し得ると解するを相当とすべく」とし、共有物の明渡しを認めました。

4 あなたが取り得る対応

あなたが妹さんに対して実家の明渡しを請求するためには、妹さんが不法占有者と同視できる旨を立証しなければなりませんから、妹さんが不協力であることの証拠を集めなければなりません。そのため、まずは話し合いに応じるよう通知文の送付や、遺産分割調停の申立て等を先行しておこない、このような話し合いに一切応じないことを明らかにする必要があります。その上で、最終手段として、持分に基づく妨害排除請求権の行使として、共有物の明渡しを妹さんに請求することになります。

お困りの場合は、お近くの法律事務所にご相談ください。

以上です。

関連事例集

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参照条文

民法249条(共有物の使用)各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。

民法250条(共有持分の割合の推定)各共有者の持分は、相等しいものと推定する。

民法251条(共有物の変更)各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。

民法252条(共有物の管理)共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

民法253条(共有物に関する負担)1項 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。

      2項 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。

民法254条(共有物についての債権)共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができる。

民法255条(持分の放棄及び共有者の死亡)共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。

民法256条(共有物の分割請求)1項 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない。

      2項 前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。