集団的脅迫の無実主張

刑事|起訴前弁護|威力業務妨害罪|最高裁平成15年5月1日決定

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参考条文

質問:

都内に住む会社員(33歳)です。本日早朝、突然警察官が何人かで自宅にやって来て、逮捕されました。容疑の内容は、一緒に飲んでいた2人と共謀して、居酒屋の店長に対して、こもごも、約10分間にわたり、「何だその態度は」、「てめえ、俺らを誰だと思ってるんだ」、「ただで済むと思うなよ」等と執拗に怒号したり睨みつけるなどした、というものです。警察の話では、一緒に飲んでいた内の1人が暴力団の幹部だったらしく、それを知っていた店長は大変な恐怖を感じたと言っているようです。しかし、その男は、一緒に飲んでいた友人が連れて来た人であり、初対面の私はその男が暴力団関係者であることなど全く知りませんでした。また、お会計をした際、店長がその男に対して「頼むからうちにはもう来ないでくれないか。正直、迷惑なんだよ。」などと言ったことをきっかけにその男が激昂してしまい、友人も加勢してしまったのは事実ですが、私は他の2人が店長を怒号したり睨みつけているのを必死に止めようとしていたのであり、2人と一緒になって怒号するなどしたというのは事実に反します。逮捕後、取調べを受けましたが、刑事さんは、男が暴力団だと知っていただろうとか、一緒に怒鳴ったんだろう、などと決め付けて話をしてきます。私とほぼ同時に他の2人も逮捕されているようですが、私はこのまま一緒に犯人として処罰されてしまうのでしょうか。

回答:

1. あなたには、集団的脅迫罪(暴力行為等処罰に関する法律1条、刑法222条1項)及び威力業務妨害罪(刑法234条)の共同正犯(刑法60条)の嫌疑がかけられていると考えられます。

2. 伺った事情によれば、あなたは脅迫や威力業務妨害の実行行為(執拗に怒号し、睨みつける等)を行っておらず、かかる行為について他の2人と共謀もしていないため、あなたには何ら犯罪が成立していないことになります。にもかかわらず、あなたが逮捕されてしまっている原因としては、本件の被害者である店長が、あなたがほかの2人と一緒になって怒号したり睨みつけたりしたものと勘違いしている等の可能性が考えられます。

3. あなたとしては、無実の罪で逮捕され、犯人扱いされていることを理不尽に感じていることと思いますが、かかる現状からすれば、間違っても無実の罪で刑事処罰を受けるような事態とならないよう、あなた自身の身を守ることを第一に考えなければなりません。それを確実なものとするためには、解説で詳述するとおり、取調官の不当な誘導に屈することなく、初対面の男が暴力団員であったことなど知らなかったこと、あなた自身が怒号や睨みつけ等の行為を行っておらず、共謀した事実もないことについて供述を一貫させる必要があることは勿論、弁護人の協力を得た上での弁面調書の作成、店長の供述の信用性の弾劾、検察官交渉、あなたの無実を主張し、嫌疑不十分での不起訴処分と早期釈放を求める旨の法的意見書の作成、提出等の活動を尽くすことが不可欠といえます。

4. 弁護人は、捜査機関との折衝やあなたとの接見、弁面調書の作成、意見書の作成等の弁護活動を連日に渡って行う必要があり、同様の否認事件の弁護経験は勿論、フットワークの軽さと熱意が求められることになります。直ちに適任者を選任の上、活動開始してもらうことをお勧めいたします。

5. 無罪主張に関する関連事例集参照。

解説:

1.(被疑罪名について)

はじめに、本件であなたにかけられている嫌疑にかかる被疑罪名を確認しておきたいと思います。

(1)暴力行為等処罰に関する法律違反(集団的脅迫)

暴力行為等処罰に関する法律第1条によれば、「数人共同シテ」「刑法・・・第二百二十二条・・・ノ罪ヲ犯シタル者」は3年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処すると規定しています。刑法第222条1項は「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者」を脅迫罪として規定していますが、刑法上の脅迫罪の法定刑が2年以下の懲役又は30万円以下の罰金とされているのに対し、数人共同しての集団的脅迫の場合、団体または多衆による集団的な脅迫行為を特に重く処罰する趣旨から、法定刑が3年以下の懲役又は30万円以下の罰金と、引き上げられて規定されています。

仮に、店長が暴力団関係者と認識している者を含む3人が共同して執拗に怒号したり睨みつける等した、との被疑事実を前提とすれば、数人共同して、店長の生命、身体、自由等にいかなる危害をも加えかねない気勢を示して脅迫したものとして、集団的脅迫罪が成立していることになります。

(2)威力業務妨害

また、店長に対して約10分間に及び執拗に怒号したり睨みつける等する行為は、店長の意思を制圧するに足りる勢力を使用し、店長が客に対して行う飲食等の提供業務を一時中断するのをやむなきに至らせるものと評価できることから、店長に対する威力業務妨害罪(刑法234条)が併せて成立するものと考えられます。同罪の法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされていますが、実際には同一の行為が集団的脅迫罪及び威力業務妨害罪の2つの罪に触れるという関係(この関係を観念的競合といいます。)にあたるため、合わせて一罪として、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲内で処断されることになります(刑法54条1項前段)。

(3)共同正犯

なお、被疑事実の中に挙げられている「共謀して」とは、他の2人と共同正犯の関係にあることを指しており(刑法60条)、他の2人が実行した犯罪行為についても正犯者としての刑事責任を問われる地位にあることを意味するものです。判例は、「2人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の犯罪を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よって犯罪を実行した」場合、互いに他人の行為を利用し、全員協力して犯罪事実を発現せしめた関係にあることを根拠に、直接実行行為を行っていない者であっても、生じた犯罪結果の全部について責任を負うことになるとしています(最大判昭和33年5月28日参照)。そして、ここで言う謀議は、必ずしも明示的になされることを要するものではなく、共同実行の意思連絡が暗黙になされた場合であっても共同正犯が成立し得ることになります(最決平成15年5月1日参照)。

したがって、本件では、仮に、たとえ黙示的であれ、他の2人との間で共同して怒号や睨みつけ等を行う旨の意思連絡があったと認定されたとすると、あなた自身が何ら怒号等を行っていなかったとしても、他の2人と共に集団的脅迫及び威力業務妨害の共同正犯が成立していることになります。

2.(あなたの置かれている法的状況)

ところで、伺った事情によれば、あなたは脅迫や威力業務妨害の実行行為(執拗に怒号し、睨みつける等)を行っておらず、かかる行為について他の2人と共謀(共同して怒号等することを内容とする意思連絡)も行っていないため、あなたには何ら犯罪が成立していないことになります。にもかかわらず、あなたが逮捕されてしまっている原因としては、本件の被害者である店長が、あなたが他の2人と一緒になって怒号したり睨みつけたりしたものと勘違いしている等の可能性が考えられます。店長が警察に対してかかる内容の被害申告をした場合、それが結果として誤っていたとしても、刑事訴訟法上の通常逮捕の要件との関係では「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法199条1項)が認められてしまうため、実際には何ら犯罪行為を行っていないにもかかわらず誤認逮捕されることがあり得ます。

逮捕後は、48時間以内に事件が検察庁に送致され(刑事訴訟法203条1項)、送検後は10日間ないし20日間の勾留が見込まれます(刑事訴訟法208条1項・2項)。この勾留期間内に、検察官がそれまでの取り調べ等の捜査の結果を基に、あなたを起訴するか否かを決定することになります(刑事訴訟法247条)。検察官は、証拠上確実に有罪の立証ができると考える事件しか起訴しませんので、起訴を回避するためには、検察官に、あなたを起訴したとしても有罪にできるだけの十分な証拠が存在しないことを理解させ、起訴を思い止まらせることが必要です。

そのためには、取り調べにおいて捜査官への安易な迎合を厳に避けるべきことはもちろんのこと、弁護人を選任した上、後述するような、被疑事実を争うための活動を尽くす必要があります。本件では、あなたが無実であることを検察官に早期のタイミングで理解してもらうことが起訴の回避を可能にするとともに、身柄の早期釈放にも繋がることになります。現時点では逮捕ということですが、このまま勾留となると考えておいた方が良いでしょう。

なお、本件は被疑者国選弁護対象事件ではありませんので(被疑者国選対象事件は長期3年を超える懲役に当たる事件とされているところ、本件の法定刑の上限は3年の懲役であり、長期が3年を超えていないため、被疑者国選対象外となります。)、弁護人は私選により選任する必要があります。

3.(本件での具体的対応について)

(1)取調べ対応

伺った事情によれば、担当刑事は取調べであなたを犯人と決めつける態度をとっているようですが、本件では、あなたが犯人であることを示す証拠(犯人であることを認める内容虚偽の自白調書等)を不用意に作出させないことが重要ですので、あなた自身が怒号や睨みつけ等の行為を行っておらず、共謀した事実もないことについては、取調べの際の受け答えで一貫させておかなければなりません。万が一、真実に反して罪を認める内容の供述調書への署名・指印を求められても、調書の訂正申立権(刑事訴訟法198条4項)や署名押印拒否権(刑事訴訟法198条5項)の適切な行使により、真実に反する内容の供述調書の作成を防ぐ必要があります。また、怒号や睨みつけ等の行為や共謀を直接的に認める内容の供述調書を作成させないことは勿論のこと、これらを推認させ得るような間接的な事実についても、可能な限り記載させないよう(そのような記載のある供述調書に署名・指印しないよう)注意する必要があります。

上記のような対応が十分にとれるようにしておくためには、弁護人と詳細な打ち合わせを重ねることで、いかなる犯罪構成要件との関係で、具体的事情の下でどのような事実があなたにとって有利ないし不利に働くことになるのか、そのポイントをあなた自身も良く理解しておく必要があります。

なお、取調官の対応(不当な誘導や威圧的態度等)があまりに酷いようであれば、弁護人を通じて抗議することも検討する必要があるでしょう。

(2)弁護人面前調書の作成、提出

取調官があなたに自白の調書に応じさせようとしていることからも分かるように、被疑者を追及する立場にある捜査機関は、被疑者が無実を主張していても、必ずしも、その主張内容を素直に反映させた供述調書を作成してくれるわけではありません。否認事件の場合、そもそも供述調書を作成してくれないことも珍しくありません。他方で、無実を争う上では、その供述の信用性を高めるため、被疑者が逮捕当初から具体的かつ迫真性のある詳細な供述を一貫させているという事情を、証拠上明らかになる形で残しておく必要があります。

そこで、被疑者段階で無実主張をすべき事案においては、弁護人において、被疑者自身の言い分や事実認識を反映した詳細な弁護人面前調書(弁面調書)を随時作成し、捜査機関に提出しておく必要があります。弁護人は、捜査機関との折衝等を通して、捜査機関が気にしている点や事件関係者ら(本件では、店長や共犯者とされている他の2名)の供述内容等を可能な限り把握した上で、如何なる事情が被疑者にとって有利に働くかについて、ポイントを踏まえた供述調書を作成するよう心掛ける必要があります。

本件では、あなたが怒号や睨みつけ等の行為やこれらの行為を他の2人と共同して行おうとする意思連絡が全くなかったことは勿論のこと、当日あなたと他の2名とが会うことになった経緯、当日の会話やあなたの友人から聞いていた話等から暴力団幹部であることも含めその男についてどこまで知っていたか、一緒にいた2人が激昂してしまった経緯、その場にいた全員の具体的な発言内容を含めたやりとりの詳細、その際のあなたの心理状態と具体的行動、店長とのいざこざが収束した経緯、その後の具体的経過等に至るまで、周辺事情についても、具体性、迫真性、合理性を伴った詳細な調書にまとめておく必要があるでしょう。

(3)店長の供述の信用性の弾劾

本件では、被害者にあたる店長が、あなたを含む3人から怒号や睨みつけ等をされた旨の供述をしているものと推測されますが、被害者が被害状況に関する供述をしていたとしても、供述内容がそのまま認定されるわけではありません。供述証拠が事実認定に用いられる際は、必ずその信用性が吟味されることになり、信用性に欠ける供述が事実認定の基礎とされることはありません。したがって、本件では、弁護人において、捜査機関との折衝を重ねることで、店長の供述を可能な限り把握した上、その信用性を弾劾するような事情を検察官に対して主張すべきことになります。捜査上の秘密のため、起訴前の段階で捜査機関から証拠開示がなされることはないので、供述内容を把握するためには弁護人による捜査機関との折衝が不可欠となります。

本件では、伺った事情のみからしても、店長が暴力団関係者らである可能性が高いと思われる集団の複数人から執拗に怒号され、睨みつけられるという緊迫した状況、これによって店長が感じた恐怖心、警察への通報を余儀なくされるほどの混乱等からすれば、実際には何もしていなかった者からも怒号等されたと誤認してしまった可能性が高いこと、あなたが暴力団幹部の連れ客という店にとって好ましくない客であることからすれば、あなたにも迷惑をかけられた旨供述することで、あなたも含めて出入禁止にする口実とすることができるとの意味で、虚偽供述の動機もあること、等が指摘できると思われます。さらに、店長の供述内容についても、具体的な被害状況に関する不自然ないし不合理な点や曖昧な点(例えば、あなたから如何なる発言の怒号がなされたかについて明確な供述が存在しない等)が含まれていれば、併せて指摘すべきことになります。

これらは弁護人において、意見書等の形でまとめて検察官に提出すべきことになります。店長の供述は、あなたも他の2人と一緒になって怒号等したことを示す直接証拠と位置付けられ、無実の主張を通して不起訴処分を獲得するためには、その供述に信用性が認められないことを検察官に納得してもらうことが必須となるため、弁護人としては手を抜けないところです。

(4)意見書の作成、提出

嫌疑不十分による不起訴処分をより確実なものとするため、弁護人としては、上記の各活動の結果を踏まえ、本件に関するあなたの事実認識を明らかにした上で、あなたに何らの犯罪が成立していないことを法的見地から主張する詳細な意見書を作成、提出し、不起訴処分を求めて検察官と交渉すべきことになります。あなたが怒号や睨みつけ等の実行行為を行ったことを示す信用性のある証拠が存在しないことや、他の2人と共謀を行っていないことを示す間接的な周辺事情も含めて詳細に主張する必要があります。

共謀が存在しないこととの関係では、本件犯行について他の2人と何らの意思疎通が図られていないことのみならず、実行行為者である2人の行為をあなた自身の犯罪行為と評価するに足りるだけの心理的影響力を及ぼし得る立場になかったこと、あなた自身が他の2人と一体となって怒号等に加わる動機が存在しないこと、他の2人の行為をあなた自身の犯罪として遂行しようとする積極的な意思が存在しないこと、といった周辺事情も重要となってきます。具体的には、人的関係が希薄であり暴力団幹部の男に対して何らの心理的影響力を及ぼし得る立場になかったこと、店長の発言内容があなたを執拗に怒号等させるほどの理由となり得るようなものではないこと、他の2人の実行行為に何ら加担していないばかりか、むしろ止めようとしていたこと、等を示す事情を最大限主張すべきことになるでしょう。

4.(最後に)

あなたとしては、無実の罪で逮捕され、犯人扱いされていることに理不尽さを強く感じていることと思います。彼らの行為を止めようとしていたということであれば、理不尽さを感じることは当然ともいえます。しかし、現に犯人であることを疑われ、刑事手続上の被疑者として扱われている現状からすれば、あなたとしては自分の身を守ることを第一に考えなければなりません。万が一にもあってはならないことではありますが、実際には、捜査機関が不当な取り調べによって、無実の一般人から真実に反して自白を得ようとするケースは枚挙に暇がありません。無実の罪で刑事処分を受ける事態の回避を確実なものするためには、前述したような弁護人の助力が不可欠となります。

弁護人は、捜査機関との折衝やあなたとの接見、弁面調書の作成、意見書の作成等の弁護活動を連日に渡って行う必要があり、同様の否認事件の弁護経験は勿論、フットワークの軽さと熱意が求められることになります。直ちに適任者を選任の上、活動開始してもらうことをお勧めいたします。

以上

関連事例集

Yahoo! JAPAN

※参照条文

刑法

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第五十四条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

(共同正犯)

第六十条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

(脅迫)

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

(威力業務妨害)

第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

暴力行為等処罰ニ関スル法律

第一条 団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法 (明治四十年法律第四十五号)第二百八条 、第二百二十二条又ハ第二百六十一条ノ罪ヲ犯シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ三十万円以下ノ罰金ニ処ス

刑事訴訟法

第百九十八条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

○2 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

○3 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。

○4 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。

○5 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

○2 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。

第二百三条 司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。

第二百八条 前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

○2 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第二百四十七条 公訴は、検察官がこれを行う。