新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1698、2016/07/22 19:07 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

【家事、税務、所得税更正処分取消等請求事件東京高等裁判所平成23年4月14日判決】

遺産分割の弁護士費用は不動産譲渡所得税における取得費として計上できるか

質問:
私の父は昨年、亡くなりました。母はすでに亡くなっており、父の相続人は私と私の弟の2人です。父の遺産は先祖代々受け継いでいる土地と、父個人の預金があります。父が亡くなった当時は、弟と父の遺産分割の話し合いをしましたが、父の土地の問題もあり、うまくまとまりませんでした。私は弁護士に依頼し、現在、弟を相手に遺産分割調停をしております。調停はまとまる方向で、私が父の土地(時価5千万円相当)を、弟が預金(5千万円)を取得する予定です。依頼した弁護士からは500万円程度の費用がかかると言われています。
 私は父の土地を取得した後に第三者に売却することを考えています。土地を売却した場合、先祖代々相続している土地で取得費は不明なため売却代金について課税対象となると思いますが、弁護士報酬は、不動産の取得費として税金控除の対象となるのでしょうか。



回答:
1 遺産分割により取得した土地を譲渡したときの譲渡所得については課税対象となりますが、取得費や譲渡費があれば譲渡所得の計算から差し引かれることになります。

国税庁HP No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3202.htm

2 しかし、遺産分割調停終了時に支払う弁護士報酬は、土地の取得費としてが譲渡所得から差し引くことはできない、とするのが税務署、裁判所(高等裁判所平成23年4月14日判決)の扱いです。この裁判例については解説で詳述します。これに対する対応としては、遺産分割の委任契約における委任範囲として遺産分割調停、審判だけでなく、遺産の不動産緒売却についても含むものとして契約し、実際に不動産売却の交渉も代理してもらえば、弁護士費用の一部を経費として計上できるものと思われます。

3 遺産分割の協議の際には、相続税やその後の譲渡所得税等を考慮して、何をどのように相続するか検討しておく必要があります。税金に関する問題は税理士の業務に関するもので、税理士に相談されるのがよいと思いますが、遺産分割に弁護士費用がどれくらいかかるのか、その後の税金の負担にも関わることですので、弁護士に事前に費用見積もりをしてもらうのが良いでしょう。

4 税務関連事例集462番参照。

解説:

第1 所得税法

 回答でも引用した国税庁のHPにある「土地建物を売ったとき」の項目をみてみます。 

https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3202.htm

 不動産譲渡所得は土地・建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算をするとなっています。そして、取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。

 同じ内容で、所得税法第33条第3項は次のように規定しています。

「3  譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。」

 遺産分割調停や審判について弁護士に依頼し、遺産分割が成立したときに支払う弁護士報酬は、一見資産の取得に必要な金額とも考えられ「資産の取得に要した金額」にあたるものとして、譲渡所得から控除できるのではないとも考えられます。遺産分割により土地建物を取得した場合、弁護士に依頼しなければ遺産分割が成立しなかったのだから、弁護士報酬は「資産の取得に要した金額」と考える人も多いと思います。次に紹介する東京高裁判例でも遺産分割の弁護士報酬が「資産の取得に要した金額」いわゆる「取得費」にあたるかどうかが争われました。

 しかし、東京高裁は、遺産分割の弁護士費用は不動産の「取得費」にあたらず納税者側を敗訴としました。そして、この判決は、納税者側から最高裁に上告・上告受理申立てがなされましたが、上告棄却・上告不受理決定となり東京高裁判決が確定しています。

 次の「第2」で上記の東京高裁判例を以下に紹介します。 事案は、納税者が弁護士費用を取得費として収入から差し引いて申告したところ、税務署から取得費には該当しないとして更正処分を受け、これを不服とした納税者が税務訴訟を提起したものです。

第2 判例紹介

所得税更正処分取消等請求事件についての東京高等裁判所平成23年4月14日判決

国税庁HP>税務大学校>税務訴訟資料>課税関係判決

https://www.nta.go.jp/ntc/soshoshiryo/kazei/index.htm
より判決文PDFファイルから一部を整理・引用したものです。

https://www.nta.go.jp/ntc/soshoshiryo/kazei/2011/pdf/11668.pdf

判決について、下記に、当事者、事件の経過、争点、判決内容の順に説明をします。
 (当事者)
  B    被相続人 昭和41年11月4日死亡
       生前の大正15年4月10日に本件土地を含む土地を取得
  A    Bの相続人 平成18年8月8日死亡
  控訴人  Aの相続人 Aの納税義務をAの死亡により承継
  D    弁護士 Bの遺産分割調停の事件処理をAが依頼
  被控訴人 国(税務署)
 
(事件の経過)
  大正15年4月10日  Bは本件土地を含む土地を取得。
  昭和41年11月4日  B死亡。
  昭和47年ころ      Bの相続人6名(控訴人を含む)で遺産分割調停が開始される。
  昭和48年11月13日 控訴人はD弁護士に遺産分割調停事件を依頼し、AとD弁護士との間で委任契約を締結した。
  平成元年        遺産分割調停事件は審判事件に移行。
  平成16年6月18日  遺産分割審判事件が確定(遺産分割調停が始まってから審判が確定するまで約37年6ヶ月が経過した。) Aは、被相続人が大正15年4月10日に取得していた宅地のうちの一部(本件土地)と現金及び他の共同相続人からの代償金を取得した。
  平成16年7月12日  Aは前記遺産分割調停及び審判事件の弁護士報酬として1312万5000円の請求を受け、その後、Aはこれを支払った。

  平成17年3月31日  Aは遺産分割で取得した土地をE会社に1億0500万円で売却した。
  平成17年7月19日  本件土地について、AからE会社への移転登記がなされた。
  平成18年3月15日  Aは税務署長に対し、本件土地の譲渡について分離長期譲渡所得に係る収入金額を1億0500万円と記載した確定申告書(本件確定申告書)を提出したが、分離長期譲渡所得については、上記イのとおり支払った弁護士報酬のうち本件土地に対応する金額である989万0181円(Aが支払った報酬総額1312万5000円にAが取得した土地の評価額9521万円を乗じた金額をAが本件審判により取得した財産総額1億2635万0685円で除したもの。本件報酬部分)を本件土地の譲渡に係る取得費として控除するなどして、分離長期譲渡所得の金額を9078万6261円と記載した。
  平成18年8月8日  A死亡 控訴人がAの納税義務を承継。
  平成20年2月29日 税務署長は、Aの平成17年分所得税について、平成20年2月29日付けで、本件報酬部分を取得費に算入することはできないとの理由に基づき、本件更正処分等をした。

 (争点)
  本件の弁護士報酬部分が、本件土地の譲渡所得の計算上、所得税法(法)33条3項の「取得費」に当たるか否か

 (判決内容)
  判決では、遺産分割の弁護士報酬は所得税法第33条3項の規定する「資産の取得に要した金額」すなわち「取得費」には該当しないものとして、税務署長の更正処分を適法なものとしました。(以下、『 』は判決文の引用です)。
  判決は、本件の争点として、遺産分割に要する費用が、相続人のその不動産を取得するための付随費用に当たるかどうかが問題となる、としています。

『取得費のうちの「資産の取得に要した金額」は,被相続人と相続人の両者について、その不動産を取得したときにおける、〔1〕その不動産の客観的価格を構成すべき取得代金の額と、〔2〕その不動産を取得するための付随費用の額を合算すべきことになる。このうち、相続人については、相続は被相続人の死亡という事実に基づいて何らの対価なくして財産の承継が生ずるものであるから、〔1〕は考えられず、相続により取得した不動産の所有権移転登記手続等をするために要する費用(登録免許税等)が、〔2〕の付随費用に当たるものである。本件においては、遺産分割に要する費用が、相続人の上記〔2〕の付随費用に当たるかどうかが、問題となる。』

  判決は、遺産分割の法的性質から、相続財産の個々の価値を変動させるものではないとし、遺産分割に要した費用は、資産を取得するための付随費用にはできない、としています。

『遺産分割は、共同相続人が、相続によって取得した共有に係る相続財産の分配をする行為であり、これによって個々の相続財産の帰属が定まり、相続の開始の時にさかのぼって、各相続人が遺産分割により定められた財産を相続により取得したものとなるのである(民法909条)。
 このような法的性質に照らして考えると、遺産分割は、まず、これにより個々の資産の価値を変動させるものではなく、遺産分割に要した費用が当該資産の客観的価格を構成すべきものではないことが明らかである。そして、遺産分割は、資産の取得をするための行為ではないから、これに要した費用(例えば、遺産分割調停ないし同審判の申立手数料)は、資産を取得するための付随費用ということもできないといわざるを得ない。』『したがって、遺産分割の手続について弁護士に委任をした場合における弁護士報酬は、相続人が相続財産を取得するための付随費用には当たらないものというべきである。』

  以上から判決は、遺産分割についての弁護士報酬は、資産を取得するための付随費用にすることはできないという結論に達しています。

 『しかし、当裁判所は、そもそも遺産分割が資産を取得する行為に当たらないことから、これに付随する費用は、資産を取得するための付随費用ということはできないと判断するものである。そうすると、遺産分割に弁護士の委任が通常必要かどうかにかかわりなく、本件報酬部分は、資産を取得するための付随費用には当たらず、したがって、取得費に含まれないものというほかはない。控訴人らの上記主張は、理由がないことに帰する。』

第3 遺産分割における弁護士費用の取り扱い

 相続により取得した不動産を売却するときの譲渡所得税の課税に際して、遺産分割手続の弁護士費用が取得費として扱われない運用は、前記の通りです。

 遺産分割は、上記の判決文が明らかにしているとおり「遺産分割は、共同相続人が、相続によって取得した共有に係る相続財産の分配をする行為であり、これによって個々の相続財産の帰属が定まり、相続の開始の時にさかのぼって、各相続人が遺産分割により定められた財産を相続により取得したものとなるのである(民法909条)。 このような法的性質に照らして考えると、遺産分割は、まず、これにより個々の資産の価値を変動させるものではなく、遺産分割に要した費用が当該資産の客観的価格を構成すべきものではないことが明らかである。」です。

 すなわち、不動産譲渡所得税は、不動産の処分における利益に対する課税ですから、処分した価値に対する必要経費を取得費として控除できるに過ぎないのに対し、遺産分割によって相続する不動産の価値は増加するわけではなく、遺産分割にかかった費用は不動産の価値を増加させるものではなく控除はできないという結論になります。

 そうなると、遺産分割によって不動産を取得した人は、不動産の売却価格から、不動産仲介手数料、弁護士費用、譲渡所得税を負担しなくてはならないことになります。これに対し預貯金の分割を受けた場合は、弁護士費用のみ負担することになり、不公平が生じてしまうと考えることもできます。もちろん、相続税は預金の場合は額面で課税されるのに対し、不動産の場合は路線価を基準に課税されますから相続税の負担という面では有利になることが考えられます。譲渡所得税の取り扱いについて、税務署に抗議したり税務訴訟をしても、取り扱いを変えて貰うことは困難ですから、遺産分割の調停成立時の判断材料の一つとして、税金や弁護士費用の負担を控除した手取額がどうなるか、事前に検討した上で合意することも必要です。事前に、相続税、譲渡所得税の概算をシミュレーションした上で、遺産分割の調停を成立させた方が良いでしょう。不動産の取得を予定している相続人は、この譲渡所得税の取り扱いについて、遺産分割調停や審判の際に、当事者の実質的公平を求める趣旨で、裁判所や調停委員にも主張すると良いでしょう。

≪参考≫

国税庁HPより

No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3202.htm

≪参照条文≫
民法
(遺産の分割の効力)
第九百九条  遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
所得税法
(譲渡所得)
所得税法第三十三条  譲渡所得とは、資産の譲渡(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権の設定その他契約により他人に土地を長期間使用させる行為で政令で定めるものを含む。以下この条において同じ。)による所得をいう。
2  次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。
一  たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得
二  前号に該当するもののほか、山林の伐採又は譲渡による所得
3  譲渡所得の金額は、次の各号に掲げる所得につき、それぞれその年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額(当該各号のうちいずれかの号に掲げる所得に係る総収入金額が当該所得の基因となつた資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額に満たない場合には、その不足額に相当する金額を他の号に掲げる所得に係る残額から控除した金額。以下この条において「譲渡益」という。)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とする。
一  資産の譲渡(前項の規定に該当するものを除く。次号において同じ。)でその資産の取得の日以後五年以内にされたものによる所得(政令で定めるものを除く。)
二  資産の譲渡による所得で前号に掲げる所得以外のもの
4  前項に規定する譲渡所得の特別控除額は、五十万円(譲渡益が五十万円に満たない場合には、当該譲渡益)とする。
5  第三項の規定により譲渡益から同項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除する場合には、まず、当該譲渡益のうち同項第一号に掲げる所得に係る部分の金額から控除するものとする。

(譲渡所得の金額の計算上控除する取得費)
所得税法第三十八条  譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。
2  譲渡所得の基因となる資産が家屋その他使用又は期間の経過により減価する資産である場合には、前項に規定する資産の取得費は、同項に規定する合計額に相当する金額から、その取得の日から譲渡の日までの期間のうち次の各号に掲げる期間の区分に応じ当該各号に掲げる金額の合計額を控除した金額とする。
一  その資産が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供されていた期間 第四十九条第一項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の規定により当該期間内の日の属する各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入されるその資産の償却費の額の累積額
二  前号に掲げる期間以外の期間 第四十九条第一項の規定に準じて政令で定めるところにより計算したその資産の当該期間に係る減価の額

(贈与等により取得した資産の取得費等)
所得税法第六十条  居住者が次に掲げる事由により取得した前条第一項に規定する資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
一  贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
二  前条第二項の規定に該当する譲渡
2  居住者が前条第一項第一号に掲げる相続又は遺贈により取得した資産を譲渡した場合における事業所得の金額、山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その者が当該資産をその取得の時における価額に相当する金額により取得したものとみなす。

国税通則法
(相続による国税の納付義務の承継)
国税通則法第五条  相続(包括遺贈を含む。以下同じ。)があつた場合には、相続人(包括受遺者を含む。以下同じ。)又は民法 (明治二十九年法律第八十九号)第九百五十一条 (相続財産法人の成立)の法人は、その被相続人(包括遺贈者を含む。以下同じ。)に課されるべき、又はその被相続人が納付し、若しくは徴収されるべき国税(その滞納処分費を含む。第二章(国税の納付義務の確定)、第三章第一節(国税の納付)、第六章(附帯税)及び第七章第一節(国税の更正、決定等の期間制限)を除き、以下同じ。)を納める義務を承継する。この場合において、相続人が限定承認をしたときは、その相続人は、相続によつて得た財産の限度においてのみその国税を納付する責めに任ずる。
2  前項前段の場合において、相続人が二人以上あるときは、各相続人が同項前段の規定により承継する国税の額は、同項の国税の額を民法第九百条 から第九百二条 まで(法定相続分・代襲相続人の相続分・遺言による相続分の指定)の規定によるその相続分によりあん分して計算した額とする。
3  前項の場合において、相続人のうちに相続によつて得た財産の価額が同項の規定により計算した国税の額をこえる者があるときは、その相続人は、そのこえる価額を限度として、他の相続人が前二項の規定により承継する国税を納付する責めに任ずる。
(過少申告加算税)
国税通則法第六十五条  期限内申告書(還付請求申告書を含む。第三項において同じ。)が提出された場合(期限後申告書が提出された場合において、次条第一項ただし書又は第六項の規定の適用があるときを含む。)において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき第三十五条第二項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に百分の十の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する。
2  前項の規定に該当する場合において、同項に規定する納付すべき税額(同項の修正申告又は更正前に当該修正申告又は更正に係る国税について修正申告書の提出又は更正があつたときは、その国税に係る累積増差税額を加算した金額)がその国税に係る期限内申告税額に相当する金額と五十万円とのいずれか多い金額を超えるときは、同項の過少申告加算税の額は、同項の規定にかかわらず、同項の規定により計算した金額に、当該超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは、当該納付すべき税額)に百分の五の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。
3  前項において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  累積増差税額 第一項の修正申告又は更正前にされたその国税についての修正申告書の提出又は更正に基づき第三十五条第二項の規定により納付すべき税額の合計額(当該国税について、当該納付すべき税額を減少させる更正又は更正に係る不服申立て若しくは訴えについての決定、裁決若しくは判決による原処分の異動があつたときはこれらにより減少した部分の税額に相当する金額を控除した金額とし、次項の規定の適用があつたときは同項の規定により控除すべきであつた金額を控除した金額とする。)
二  期限内申告税額 期限内申告書(次条第一項ただし書又は第六項の規定の適用がある場合には、期限後申告書を含む。)の提出に基づき第三十五条第一項又は第二項の規定により納付すべき税額(これらの申告書に係る国税について、次に掲げる金額があるときは当該金額を加算した金額とし、所得税、法人税、地方法人税、相続税又は消費税に係るこれらの申告書に記載された還付金の額に相当する税額があるときは当該税額を控除した金額とする。)
イ 所得税法第九十五条 (外国税額控除)の規定による控除をされるべき金額、第一項の修正申告若しくは更正に係る同法第百二十条第一項第五号 (確定申告書の記載事項)(同法第百六十六条 (非居住者に対する準用)において準用する場合を含む。)に規定する源泉徴収税額に相当する金額、同法第百二十条第二項 (同法第百六十六条 において準用する場合を含む。)に規定する予納税額又は災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律 (昭和二十二年法律第百七十五号)第二条 (所得税の軽減又は免除)の規定により軽減若しくは免除を受けた所得税の額
ロ 法人税法第二条第三十八号 (定義)に規定する中間納付額、同法第六十八条 (所得税額の控除)(同法第百四十四条 (外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)、第六十九条(外国税額の控除)、第八十一条の十四(連結事業年度における所得税額の控除)若しくは第八十一条の十五(連結事業年度における外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第九十条 (退職年金等積立金に係る中間申告による納付)(同法第百四十五条の五 (外国法人に対する準用)において準用する場合を含む。)の規定により納付すべき法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の法人税の額)
ハ 地方法人税法第二条第十九号 (定義)に規定する中間納付額、同法第十二条 (外国税額の控除)の規定による控除をされるべき金額又は同法第二十条第二項 (中間申告による納付)の規定により納付すべき地方法人税の額(その額につき修正申告書の提出又は更正があつた場合には、その申告又は更正後の地方法人税の額)
ニ 相続税法第二十条の二 (在外財産に対する相続税額の控除)、第二十一条の八(在外財産に対する贈与税額の控除)、第二十一条の十五第三項及び第二十一条の十六第四項(相続時精算課税に係る贈与税相当額の控除)の規定による控除をされるべき金額
ホ 消費税法第二条第一項第二十号 (定義)に規定する中間納付額
4  第一項又は第二項に規定する納付すべき税額の計算の基礎となつた事実のうちにその修正申告又は更正前の税額(還付金の額に相当する税額を含む。)の計算の基礎とされていなかつたことについて正当な理由があると認められるものがある場合には、これらの項に規定する納付すべき税額からその正当な理由があると認められる事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除して、これらの項の規定を適用する。
5  第一項の規定は、修正申告書の提出があつた場合において、その提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでないときは、適用しない。


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