新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1643、2015/10/08 12:00
【行政事件、平成15年の景表法改正、東京高裁平成22年11月26日判決、東京高裁平成22年10月29日判決】

不実証広告規制


質問: 私は,現在美容整体院の代表を務めています。主に小顔になる整体と,身長が伸びる整体をおこなっていて,専用のホームページもあります。ホームページには,「小顔になる整体」・「身長が伸びる整体」という記載があります。
私の整体は好評で,実際に皆さん「小顔になった」,「身長が伸びた」と言ってもらえていました。
しかし,先日消費者庁からホームページの記載内容について,通知書が届きました。ホームページ上の整体院のサービスについて,その表示の裏付けを求めるものでした。この通知の意味を教えてください。私としては,実際に効果が出ている以上,問題はないと思っているのですが,どうなのでしょうか。



回答:
 その通知が来た,ということであれば,現在,あなたの美容整体院のホームページ上の表記が,不当景品類及び不当表示防止法4条1項1号(優良誤認表示)違反の疑いをかけられているものと思われます。そして,その通知書は,同法4条2項に規定がある,優良誤認表示を判断するために必要な「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出」を求めるものです。
 ここで,あなたが「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」を提出できなければ,上記優良誤認表示であると推認され,措置命令あるいは行政指導がなされることになります。本件において,仮に措置命令ないし行政指導がなされた場合は,おそらくホームページの表記の改善を中心に求められることになり,これを無視した場合は,刑事罰が規定されています。また,行政指導については公表されませんが,措置命令ということになれば,報道発表も含めて公表がなされてしまいます(行政指導、措置命令の内容については解説3に説明があります)。
 一度資料の提出を求められている以上,今の段階でホームページを修正しても措置命令・行政指導の可能性は残ります。
 そのため公表を避けるのであれば,@「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」を提出するか,A措置命令を回避し,行政指導を受けるか,ということになります。ただし,「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」についても,ガイドライン等で既に基準が固まっている状況です(下記詳述します)。
 なお,措置命令に対して不服がある場合,行政庁(消費者庁)に対して異議申立てをするか,行政処分の取消訴訟を提起する方法があります。この場合,やはり「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」の提出がポイントです。
 以上のとおりですから,まずは用意できる根拠が「表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」足り得るのかの検討が必要ですし,場合によっては異議申立て,取消訴訟を想定しての消費者庁との交渉も考えられるところです。また,今後同様の疑いをかけられないためにも,専門家にホームページを確認してもらうことも重要です。
いずれにしても,早急なご相談をお勧めします。

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解説:

1 はじめに

(1)商品やサービス(役務)に関する表示については,不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」といいます。)による規制を受けます。この景表法による不当表示規制は,大きく@優良誤認表示に関する規制,A有利誤認表示に関する規制,Bその他誤認される恐れのある表示に分かれます。

このうち,@優良誤認表示とは,「商品又は役務の品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示し,又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示」(景表法第4条1項1号)をいい,A有利誤認表示とは,「商品又は役務の価格その他の取引条件について,実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示」(景表法第4条1項2号)をいいます。

これらの表示は「不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示」(景表法第4条1項1号,同2号)に該当するため,規制の対象となります。

これら景表法に基づく規制の目的は,あくまでも一般消費者の保護ですから,@優良誤認表示における「著しく優良」な表示とは,一般消費者にとって著しく優良であると認識されるような表示を指し,「著しく」とは,当該表示の誇張の程度が,社会一般に許容される程度を超えて一般消費者による商品や役務の選択に影響を与えるものであることを指します。このような表示の場合,「不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる」ことになります。

なお,この判断にあたっては,当該表示全体から一般消費者が受ける印象・認識を基準とします。

(2)本件では,美容整体という役務において,ホームページ上に「小顔になる」,「身長が伸びる」という表示をしていますから,あなたのホームページの表示が@優良誤認表示にあたらないかが問題となります。
 つまり,あなたの整体によって「小顔になる」,「身長が伸びる」というホームページの表示が,実際の効果よりも,社会一般に許容される程度を超えて一般消費者による商品や役務の選択に影響を与える程度に誇張されているといえる場合は,あなたのホームページは優良誤認表示になる,ということです。


2 不実証広告規制について

(1)かつては,当該表示が優良誤認表示にあたるかどうかについては,処分をおこなう行政庁側にその立証責任がありました。しかし,それでは行政庁がその判断をおこなうまでに時間がかかってしまい,十分な消費者保護に欠けるという問題がありました。

   そこで,平成15年の景表法改正で,この立証責任を転換するような規定が追加されました。それが景表法第4条2項の不実証広告規制です(下記参考裁判例@参照)。

(2)すなわち,景表法第4条2項では,(内閣総理大臣から委任を受けた)消費者庁が事業者に対して,「期間を定めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる」とされました。この期間は,内閣府令によって,原則として15日間と定められており,この期間内に「合理的な根拠を示す資料」が提出されなければ,優良誤認表示として後述の行政処分等の対象となります。

   したがって,15日間という期間を徒過するか,提出した資料が「合理的な根拠を示す」ものでなかった場合は,当該表示は優良誤認表示と推認されることになります。

(3)問題は,「裏付けとなる合理的な根拠」がどの程度のものを指すか,という部分です。

 この点,行政の示すガイドライン(運用指針)によれば,資料が「合理的な根拠」といえるためには,「@提出資料が客観的に実証された内容のものであること,A表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること」の2つの要件を充足している必要がある,とされています。裁判例も,このガイドラインを認めていますので,現状はこのガイドラインを基準に検討する必要があります(下記参考裁判例A参照)。

   ここでいう「客観的に実証された内容のものである」提出資料とは,@試験・調査によって得られた結果(表示された商品・サービスの効果,性能に関連する学術界又は産業界において一般的に認められた方法又は関連分野の専門家多数が認める方法によって実施された結果)か,A専門家,専門家団体もしくは専門機関の見解又は学術文献を意味します。

   特に問題となるのが,消費者の体験談を「試験・調査によって得られた結果」として提出資料とすることができるか,です。この点については,単に商品や役務を利用し,体験談を提供してくれた消費者や,事業者の従業員の意見では足りず,「無作為抽出法で相当数のサンプルを選定し,作為が生じないように考慮して行うなど,統計的に客観性が十分に確保されている必要がある」とするのがガイドラインです。

   したがって,本件のように,利用者が「実際に小顔になった」等の体験談を提供していたとしても,それをもって「合理的な根拠」とは評価されない,ということになります。


3 不実証広告である場合の行政処分について

(1)不実証広告(合理的な根拠を示すことができず,優良誤認表示と判断された表示)である場合,行政上の処分が課されます。

   行政上の処分としては,措置命令(景表法第6条)と行政指導(行政手続法2条6号)が考えられるところです。

   このうち,行政指導は厳密には行政処分ではありませんが,便宜上「処分」に含めてご説明いたします。

(2)まず,措置命令ですが,この措置命令には,@違反の事実について一般消費者への周知徹底を図ること,A違反を防止するための措置を講じ,従業員らに周知徹底を図ること,B今後,同様の違反をしてはならないこと,等があり,この措置命令についてはその事実と内容が公示(公表)されます。

   また,この措置命令は,「当該違反行為が既になくなつている場合」,つまり指摘後ホームページ上の表記を消した場合であってもすることができます(景表法第6条)。

(3)次に,行政指導ですが,行政指導はいわゆる「指導」(注意・警告)によって,任意に改善を促すもので,公示(公表)はなされません。

(4)以上からすると,行政上の処分として注意が必要なのは,措置命令ということになります。

   なお,ここまで消費者庁による手続・処理をご説明してきましたが,同様の調査・「合理的な根拠を示す資料」の提出要求・措置命令は都道府県知事も行うことができます(景表法第12条参照)。


4 本件で考えられる対応について

(1)合理的な根拠を示す資料の提出

   本件で考えられる対応として,まず期間内に「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出」をしてしまう,ということが考えられるところです。提出資料によって,消費者庁が合理性ある根拠の存在を認めれば,そもそも優良誤認表示は観念し得ないため,当然に問題となりません。

   ただし,顧客の体験談等では「合理的な根拠」足り得ないことは上記のとおりです。本件のような場合では,「専門家,専門家団体もしくは専門機関の見解」等が必要になってくるところですが,15日という短い期間で改めて調査等をすることはかなり困難です。

   期間の延長を書面で申請することは可能ですが,正当な事由を要求するのが運用指針で,新たな調査の実施等は正当な事由として想定されていません。

(2)措置命令回避

   仮に「合理的な根拠を示す資料の提出」が叶わない場合には,公表を伴う措置命令ではなく,行政指導を目指すことが必要です。

   ただし,不実証広告に対して,措置命令と行政指導のいずれの処分が選択されるかについての基準は公表されていません。

   おそらく,表示内容の程度や誘引された一般消費者の数(社会的な影響),提出された「合理的な根拠を示す資料」の程度や,その後の対応等を総合的に考慮して判断されるものと考えられますので,本件ではまず通知や指示に誠実に対応することを前提として,仮に運用指針上合理性が認められない可能性が高くとも,何らかの資料を提出することが必要です。

   その上で,処分庁との交渉ということになりますが,これは事案ごとに対応が異なるところです。

(3)不服申立て

   万が一,措置命令がなされてしまった場合は,@異議申立てとA処分取消訴訟の提起のいずれかの方法があり得るところです。

   @異議申立てとは,行政不服審査法第45条以下に規定があり,実際に処分をおこなった行政庁(本件では消費者庁)に対する不服申立ての手段です。他方,A行政事件訴訟法第3条2項,第8条以下に規定がある取消訴訟は,訴訟ですから,裁判所の介入を求めることになります。

   処分庁自体が判断をおこなうという問題はあるものの,手続きの簡便さ等からすると,まずは異議申立てを検討するべきです。

   ただし,そもそも行政処分については,処分庁に比較的広範な裁量が認められている上,上記のとおり「合理的な根拠を示す資料」の要求水準は高いので,一度措置命令が出されてしまうと,不服申立てでこれを撤回させることはかなり難しいといわざるを得ません(下記参考裁判例参照)。


5 まとめ

  以上のとおり,本件では措置命令を避けるために活動することが必要です。具体的には資料の整理・収集ということになりますが,消費者庁と交渉する必要も出てくる可能性がございます。

  また,そもそも本件のように優良誤認表示と疑われないような表示・広告にすることこそが重要ですので,専門家にご相談していただき,事前にその観点からのチェックをおこなうことが重要です。

【参照条文】
不当景品類及び不当表示防止法
(不当な表示の禁止)
第四条  事業者は,自己の供給する商品又は役務の取引について,次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一  商品又は役務の品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示し,又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二  商品又は役務の価格その他の取引条件について,実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三  前二号に掲げるもののほか,商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて,不当に顧客を誘引し,一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
2  内閣総理大臣は,事業者がした表示が前項第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは,当該表示をした事業者に対し,期間を定めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において,当該事業者が当該資料を提出しないときは,第六条の規定の適用については,当該表示は同号に該当する表示とみなす。
(措置命令)
第六条  内閣総理大臣は,第三条の規定による制限若しくは禁止又は第四条第一項の規定に違反する行為があるときは,当該事業者に対し,その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。その命令は,当該違反行為が既になくなつている場合においても,次に掲げる者に対し,することができる。
一  当該違反行為をした事業者
二  当該違反行為をした事業者が法人である場合において,当該法人が合併により消滅したときにおける合併後存続し,又は合併により設立された法人
三  当該違反行為をした事業者が法人である場合において,当該法人から分割により当該違反行為に係る事業の全部又は一部を承継した法人
四  当該違反行為をした事業者から当該違反行為に係る事業の全部又は一部を譲り受けた事業者
(権限の委任等)
第十二条 内閣総理大臣は,この法律による権限(政令で定めるものを除く。)を消費者庁長官に委任する。
2  消費者庁長官は,政令で定めるところにより,前項の規定により委任された権限の一部を公正取引委員会に委任することができる。
3  消費者庁長官は,緊急かつ重点的に不当な景品類及び表示に対処する必要があることその他の政令で定める事情があるため,事業者に対し,第六条の規定による命令又は第八条の二第一項の規定による勧告を効果的に行う上で必要があると認めるときは,政令で定めるところにより,第一項の規定により委任された権限(第九条第一項の規定による権限に限る。)を当該事業者の事業を所管する大臣又は金融庁長官に委任することができる。
4  公正取引委員会,事業者の事業を所管する大臣又は金融庁長官は,前二項の規定により委任された権限を行使したときは,政令で定めるところにより,その結果について消費者庁長官に報告するものとする。
5  事業者の事業を所管する大臣は,政令で定めるところにより,第三項の規定により委任された権限及び前項の規定による権限について,その全部又は一部を地方支分部局の長に委任することができる。
6  金融庁長官は,政令で定めるところにより,第三項の規定により委任された権限及び第四項の規定による権限(次項において「金融庁長官権限」と総称する。)について,その一部を証券取引等監視委員会に委任することができる。
7  金融庁長官は,政令で定めるところにより,金融庁長官権限(前項の規定により証券取引等監視委員会に委任されたものを除く。)の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。
8  証券取引等監視委員会は,政令で定めるところにより,第六項の規定により委任された権限の一部を財務局長又は財務支局長に委任することができる。
9  前項の規定により財務局長又は財務支局長に委任された権限に係る事務に関しては,証券取引等監視委員会が財務局長又は財務支局長を指揮監督する。
10  第六項の場合において,証券取引等監視委員会が行う報告又は物件の提出の命令(第八項の規定により財務局長又は財務支局長が行う場合を含む。)についての行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立ては,証券取引等監視委員会に対してのみ行うことができる。
11  第一項の規定により消費者庁長官に委任された権限に属する事務の一部は,政令で定めるところにより,都道府県知事が行うこととすることができる。
(罰則)
第十六条  第六条の規定による命令に違反した者は,二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪を犯した者には,情状により,懲役及び罰金を併科することができる。

【参考裁判例】
@東京高判平成22年11月26日
公正取引委員会審決集57巻第二分冊181頁
「第3 当裁判所の判断
1 当裁判所は,原告の請求は理由がないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
2 争点1 景品表示法4条2項の適用要件及びその適用の有無について
(1)ア 原告は,取消事由1において,審決取消訴訟においては,同法4条2項の適用はないと主張するので検討する。
イ 被告の発する排除命令,それに対する不服申立て手続である審判手続は,行政機関である被告が行う手続であるが,審決取消訴訟は,審決に不服があって提起された場合に,裁判所が行う訴訟手続である。
 そして,審決取消訴訟においては,裁判所は,被告に対し,当該事件の記録の送付を求め(独占禁止法79条),被告の認定した事実はこれを立証する実質的な証拠があるときは裁判所を拘束し(同法80条1項),裁判所は実質的な証拠の有無を判断することとされ(同条2項),被告が認定した事実に関する新しい証拠の申出は,被告が,正当な理由がなくて,当該証拠を採用しなかった場合,審判に際して当該証拠を提出することができず,かつ,これを提出できなかったことについて重大な過失がなかった場合に限定され(同法81条1項),裁判所が新しい証拠を取り調べる必要があると認めるときは,被告に事件を差し戻すこと(同条3項)とされているのである。
 したがって,裁判所は,審決取消訴訟において,審判で取り調べられた証拠について,改めて証拠調に関する手続を行う余地はなく,本件においても,本件資料が景品表示法4条2項の「合理的な根拠」に該当しないとした本件審決の認定した事実について,それを立証する実質的証拠があるか否かが審理の対象となるのであって,同条1項1号の要件の該当性が審理の対象となるものではない。
ウ 上記の審決取消訴訟の審理構造に照らせば,原告の上記主張は,採用することができないものというべきである。
(2)ア 原告は,取消事由2ないし6を主張するので検討する。
イ 景品表示法4条1項1号は,事業者が,自己の供給する商品について,商品の品質,規格その他の内容について,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示すことにより,不当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示をすることを禁止し,同法6条1項は,被告は,同法4条1項1号の規定に違反する行為があるときは,当該事業者に対し,排除命令を発することができると規定している。また,不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成15年法律第45号,平成15年11月23日施行)により新設された景品表示法4条2項は,被告は,同条1項1号に該当する表示か否かを判断するため必要があると認めるときは,当該表示をした事業者に対し,期間を定めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ,この場合において,当該事業者が当該資料を提出しないときは,排除命令の規定の適用については,当該表示は同号に該当する表示とみなすと規定している。
ウ 同法4条2項が新設されたのは,従前は,被告が,表示が実際のものよりも著しく優良であると示すものかどうかを調査して実証しなければならず,判断が下されるまでに多大な時間を要していたことについて,表示に対する消費者意識の高まりを受け,立証責任を事業者に転嫁し,表示が実際のものよりも著しく優良であると示すものでないことを事業者が立証しなければならないものとしたのである。すなわち,当該商品に付された表示に沿った効果・性能を有しない商品が販売されると,公正な競争を阻害し,一般消費者の利益を損なうおそれが強いが,他方,被告が表示に沿った効果・性能を立証するためには,専門機関による調査,鑑定等に多大な時間を要し,その間も当該商品が販売され続け,一般消費者の被害が拡大するおそれがあることに鑑み,迅速・適正な審査を行い,速やかに処分を行うことにより公正な競争を確保し,これにより一般消費者の被害の拡大を防いで,一般消費者の表示に対する信頼を保護し,その利益を保護しようとするものである。そうすると,事業者が一般消費者向けに販売する商品について,効果・性能の優良性を示す表示を行う場合は,表示に沿った効果・性能がないかもしれないことによる不利益は一般消費者に負担させるべきではなく,当該商品に関する情報へのアクセスが容易であり,知識・判断力等において優る表示者(事業者)が負担すべきこととなる。また,事業者は,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料をあらかじめ有した上で表示を行うべきであり,かかる資料を有しないまま表示をして販売を行ってはならないのである。その結果,同条1項1号に該当するおそれがある表示をした事業者が当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出できない場合は,排除命令の準用において,当該表示が同号に該当する表示であるとみなされることになるのである。
エ したがって,事業者が当該表示をするに至った理由,表示に係る商品の性格等の事情が考慮される余地はなく,事業者から被告の定めた期間内に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出がないときは,直ちに,当該表示は同法4条1条1項に該当する表示とみなされるのである。また,同条2項によって保護される一般消費者の利益は,国民一般が共通して持つ,抽象的,平均的,一般的な利益であるから,同項の適用において,一般消費者が受けた具体的な利益や不利益が考慮されるものではない。さらに,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料とは,商品が表示に沿った効果・性能を有することを客観的に実証する資料であり,具体的には,結果の妥当性を担保できる適切な方法で実施された試験・調査によって得られた結果又は当該商品が当該効果・性能を有することを示した専門家等の見解等であって,当該専門分野で一般的に認められているものということになる。
オ 以上によれば,原告の主張する取消事由2ないし6は,それぞれ同法4条2項の立法趣旨に反し,合理的な根拠を欠く独自の見解というほかなく,いずれも採用することができない。」

A東京高判平成22年10月29日
公正取引委員会審決集57巻第二分冊162頁
「第5 当裁判所の判断
1 当審における審理の対象
(1)景表法4条2項の趣旨
 商品等の効果,性能などその品質その他の内容について優良性を強調する表示が,一般消費者に対して強い訴求力を有し,顧客誘引力が高く,一般消費者は表示に沿った効果,性能などの品質その他の内容を備えていると認識しやすいことから,当該商品等に付された表示が実際のものよりその効果,性能などその品質その他の内容において著しく優良であると示す場合には,公正な競争を阻害し,一般消費者の利益を損なうおそれが大きい。他方,被告が,当該商品が表示に沿った効果,性能などの品質その他の内容を備えず,表示が実際のものより著しく優良であることを立証するには専門機関による調査,鑑定等が必要になり,そのために多大な時間,労力,費用を要することが少なくないことから,この立証ができるまでの間,そのような不当表示が社会的に放置され,一般消費者の被害が拡大するおそれがある。
 そこで,景表法4条2項は,被告が事業者に対し当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を求め,事業者がこれを提出しない場合には,当該表示を同条1項1号に該当する表示とみなすという法的効果を与えることによって,被告が迅速,適正な審査を行い,速やかに処分を行うことを可能にして,公正な競争を確保し,もって一般消費者の利益を保護するという景表法の目的(景表法1条)を達成するために設けられた規定である。
(2)原処分の処分要件
ア 原処分は,景表法4条2項等に基づくものであるから,その処分要件としては,同項の定める,被告が,原告のした当該表示が同条1項1号に該当する表示か否かを判断するために必要があると認めるときであって,原告に対し,期間を定めて,当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めた場合において,原告が提出を求められた当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出しないときに該当することが必要である。そして,前判示の同条2項の立法趣旨からすると,同項の「当該資料を提出しないとき」とは,提出された資料が「当該表示を裏付ける合理的な根拠を示す資料」に該当しない場合も含むものと解すべきである。」
「イ そして,本件は,抗告訴訟である審決取消訴訟であり,原処分及びこれを是認した本件審決の適否を判断することになるのであるから,その審理の対象は,原処分の根拠とされた法令の定める処分の要件の有無であり,景表法4条2項に定める要件,すなわち,被告が本件表示が同条1項1号に該当する表示か否かを判断するために資料の提出を求める必要があると認めるときに該当するか否か,及び原告の提出した本件資料が「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」に該当するか否かが審理の対象になると解すべきである。」
「4 合理的な根拠を示す資料の有無(取消事由3ないし7)
(1)「合理的な根拠」の判断基準
 当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料に当たるか否かについて,運用指針は,〔1〕提出資料が客観的に実証された内容のものであること,具体的には,提出資料が,〔ア〕表示された商品等の効果,性能に関する学術界,産業界において一般的に認められた方法若しくは関連分野の専門家多数が認める方法による試験・調査によって得られた結果又は〔イ〕専門家,専門家団体若しくは専門機関の見解若しくは学術文献であって,当該専門分野において一般的に認められているもののいずれかに該当するものであること,〔2〕表示された効果,性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していることを充たす必要があると定めている。
 運用指針の摘示する要件は,前判示の景表法4条2項の立法趣旨,事業者は,当該商品等について一般消費者と比べて多くの情報を有している上,自ら表示を行っている以上,当該表示が景表法4条1項1号に定める表示に該当しないことを証明する程度の資料の提出を求めても公平の観念に反しないこと等の点に照らして,同条2項の解釈として妥当なものと解すべきであり,これらの要件を充たさない場合には,特段の事情がない限り,「当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料」に該当しないというべきである。」

B東京高判平成22年7月16日
公正取引委員会審決集57巻第二分冊152頁
「第3 当裁判所の判断
1 本件表示の景品表示法4条1項1号違反該当性について
(1)前記第2の2の前提事実によれば,本件表示は,本件商品を使用することにより,〔1〕携帯電話等の電波の受信状態が大幅に向上する,〔2〕携帯電話等を使用できる時間が大幅に長くなる,〔3〕劣化した充電池の機能を再生し充電池の交換までの期間が大幅に長くなる,という三つの効果があることを表示するものということができる。他方,前記第2の3のとおり,被告が,本件表示について景品表示法4条1項1号に該当する表示か否かを判断するため,同条2項の規定に基づき,原告に対し期間を定めて本件表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ,原告が当該期間内に提出したものは,本件各資料のみであった。
 そして,本件表示が本件商品を使用することにより得られるものとしている上記〔1〕ないし〔3〕の各効果は,いずれもこれを客観的に実証することができる性質のものであるから,本件各資料が本件表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるか否かは,本件各資料が本件商品を使用することにより上記各効果が得られることを客観的に実証するものであるか否かにより判断されるべきである。」

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