新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1598、2015/4/19 17:02 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【刑事、裁判員裁判対象事件における一部否認と保釈と執行猶予】

裁判員裁判対象事件における保釈と執行猶予


質問:
一人暮らしの母(60歳)が、本日未明(午前1時頃)、以前から口論になりがちであった近隣住民の家屋の床下に火を放ったとして、現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されてしまいました。警察官の話によると、母は事件当時のことを断片的にしか覚えていないとのことで、自分が火を放ったか否かも覚えていないと供述している一方で、同時刻頃に被害現場に居たことは間違いないと供述しているようです。母は精神安定剤や睡眠薬を日ごろから服用しており、事件当時は安定剤と睡眠薬を大量に服用していたようです。幸い、家人の早期発見により、家屋の床下0.02uが焼損したに止まったようですが、重大犯罪ということで、起訴されると裁判員裁判になる旨伺っております。
母は実刑になってしまうのでしょうか。長年母を一人にしていた自分にも責任があると痛感しておりますが、何とか母に対する処分を軽くできないでしょうか。母が刑務所に行ってしまうのではないかと、不安で夜も眠れない状態です。



回答:
1. ご指摘のとおり,逮捕容疑となっている現住建造物等放火罪は,裁判員裁判対象事件です。裁判員裁判は,裁判員の関与との関係で期日が長期化し易い傾向にあると言われています。また,公判前整理手続に付すことが義務付けられており,早期の段階から争点と証拠の整理が実現されるという特徴もあります。

2. お母様は、逮捕後72時間以内に検察官へ送致され、裁判官への勾留請求がなされることが予想されます。
 現住建造物等放火罪は法定刑が重いこと、お母様の記憶が断片的にしか残っておらず未だ必要な捜査が残っているであろうこと等に照らすと、逃亡のおそれや罪障隠滅のおそれが認められてしまうことは避けられないところでしょう。そのため、本件において勾留決定(10日間の身体拘束)を回避することは極めて困難と言わざるを得ません。
 また、本件の場合、お母様がご自分で火を放ったか否かは覚えておられないとのことですが、全ての事実を認めている自白事件と比較すると、捜査が長期化し易いと言えます。そのため、勾留延長決定(更に10日間の身体拘束)がなされる可能性が高いことも念頭に置く必要があります。

3. その上で、検察官が有罪立証可能と判断すれば、お母様は起訴されることになります。起訴されると,従前の被疑者勾留が被告人勾留として自動的に切り替わります(公訴提起から2ヶ月間。その後1ヵ月ごとに更新。)。もっとも、お母様はご高齢でありますし、元々不安定な精神状態で精神科に通院されていたとのことですから、数ヶ月間に渡る起訴後勾留に堪えられない恐れがあります。特に、裁判員裁判は、裁判員の関与との関係で期日が長期化する傾向にあり、勾留の長期化は目に見えております。
 この点、起訴前とは異なり、起訴後においては保釈制度が存在します。保釈許可決定が下されると、保釈保証金の納付と引き換えに、被告人の身体拘束を解くことができる制度で、お母様の場合も、この制度を利用して保釈許可決定を求めることが考えられます。罪証隠滅及び逃亡のおそれを否定する材料を揃えれば、保釈が許可される可能性は十分にあると考えられます。具体的な活動については,解説をご参照ください。

4. 仮に有罪と判断された場合、有期懲役刑が選択されるでしょう。人が寝静まった夜中に床下から火を放つという行為は,大胆かつ危険な行為といえ,行為態様は悪質と言われてもやむを得ないでしょう。ただし,焼損面積の軽微さや薬の影響等の事情から、酌量減刑の上(懲役刑が5年以上となっているため執行猶予が可能な懲役3年の刑を言い渡してもらうには酌量減軽が必要になります),執行猶予が付されることも十分にあり得ます。酌量減刑を求めるための具体的な活動は,解説をご参照ください。

5 いずれにしましても、保釈や執行猶予等身柄拘束からの解放を狙っていける事案ですので、十分な準備をするためにも,被疑者勾留の段階から経験豊富でフットワークの軽い弁護人を付けることを強くお勧めします。

6  裁判員裁判、保釈、関連事例集538番598番644番735番848番1008番1119番1026番1467番1491番1533番参照。


解説:

1. 被疑者勾留

 勾留の理由及び勾留の必要性が認められた場合に,裁判官による勾留決定が下されることになります(刑事訴訟法(以下「刑訴法」と呼びます。)207条1項,60条1項)。勾留期間は原則10日間ですが(刑訴法208条1項),「やむを得ない事由」が存在する時は,更に10日間延長することが可能とされています(刑訴法208条2項)。

(1)勾留の理由

 勾留の理由があるというためには,被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(刑訴法60条1項柱書)があると共に,同条項各号のいずれかを満たす必要があります。

  お母様は,事件当時(真夜中)現場に立っていたとのことですから,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると判断されることはほぼ確実といえるでしょう。次に,各号該当性ですが,本件では2号(罪証隠滅のおそれ)ないし3号(逃亡のおそれ)が問題となるでしょう。一般的に,2号及び3号の要件該当性の判断については,法定刑の重さが非常に重要な意味を持ってきます。法定刑が重ければ重いほど,重い処分を免れるために逃亡するおそれが高いと判断され易いのです。現住建造物等放火罪は,法定刑の下限が5年の懲役刑という極めて重い罪ですので,2号・3号の要件を満たすと判断されることはほぼ間違いないでしょう。

(2)勾留の必要性

   勾留の理由が認められても,事案の軽重と勾留による不利益を比較して,後者の不利益の方が著しく大きい場合は,勾留の必要性がないとして,勾留請求が却下される可能性があります(刑訴法87条参照)。しかしながら,お母様の場合,現住建造物等放火罪という重大犯罪が問題となっており,事案が軽微とは決して言えないため,勾留の必要性が否定されることはまずないでしょう。

(3)「やむを得ない事由」

   「やむを得ない事由」とは,事件の複雑困難、証拠収集の遅延又は困難等により、勾留期間を延長して更に捜査をするのでなければ起訴又は不起訴の決定をすることが困難な場合をいうとされています(最高裁昭和37年7月3日判決)。

   本件では,お母様の記憶が断片的なものに止まっているとのことから,捜査機関は自白調書がない状態で公訴を維持するだけの証拠を固めようとして,捜査が長期化し易いといえます。したがって,やむを得ない事由が認められて勾留延長決定が下される可能性が高いといえるでしょう。

(4)本件における見通し

   以上から,本件において勾留請求の却下決定を勝ち取ることは極めて困難といわざるを得ないと思います。また,勾留延長決定を阻止することも困難といえるでしょう。そこで,以下で述べるとおり,起訴後勾留に切り替わった段階で保釈を目指していくことが現実的だといえます。

2 起訴と裁判員裁判

  現住建造物等放火罪(刑法108条)は、「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」という極めて重い法定刑が定められていることから明らかなように、刑法典における重大犯罪の一つといえます。裁判員裁判の対象事件は、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下「裁判員法」と呼びます。)2条1項各号に定めがあり、このうち1号は、「死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に関する事件」と定めています。現住建造物等放火罪はこれに当たるため、裁判員裁判対象事件ということになります。

   裁判員裁判対象事件においては,第1回公判期日の前に公判前整理手続を行うことが義務付けられております(裁判員法49条,刑訴法316条の2以下)。公判前整理手続とは,事件の争点と証拠をあらかじめ整理するための公判準備で,充実した公判審理を実現するための手続です。公判前整理手続によって明らかとなった争点と証拠を基に,裁判官及び裁判員で構成される合議体が,事実の有無,法令の適用,刑の量定を行うことになります(裁判員法6条1項)。

3 被告人勾留と保釈制度

(1)被告人勾留

   被疑者が起訴されると,被疑者勾留は自動的に被告人勾留に切り替わります。被告人勾留は,公訴提起から2ヶ月間を基礎として,必要に応じて1ヶ月ごとに更新されていきます(刑訴法60条2項)。裁判が長引けば長引くほど,勾留の期間は長くなっていきます。

   お母様は,今後10日間の被疑者勾留(延長されれば20日間)を経た後,何もしなければ,判決が下されるまでの間被告人勾留が続くことになります。その期間は1年近くかかることも予想されます。事件前から精神的に不安定で通院もされていたとのことですから,可能な限り,通院を継続しながら平穏な環境で暮らされることが不可欠といえます。留置施設内でも,一応医師の診察が可能とされてはいますが,精神科や心療内科の専門医に常時診てもらえる環境が整っているとは考え難いです。何より,自由に出入りできない部屋に監視体制の下拘束されるという状況に,お母様が長期間耐えられるとは思えません。

   この点,被告人勾留による長期間の身体拘束からの解放を目指す手続きとして,保釈制度があります。お母様の場合,前記事情から,保釈を認めてもらうための活動を行っていく必要性が極めて高いといえるでしょう。

(2)保釈制度

  ア 権利保釈と裁量保釈

   起訴後においては保釈制度が存在します(刑訴法88条以下)。保釈許可決定が下されると、保釈保証金の納付と引き換えに被告人の身体拘束を解くことができる制度で、お母様の場合もこの制度を利用して保釈許可決定を求めることが考えられます。現住建造物等放火罪は権利保釈(除外事由に該当しない限り保釈を許可しなければならない。刑訴法89条。)の除外事由に該当しますので(同条1号)、裁量保釈の決定を求めていくことになります(刑事訴訟法90条)。

   裁量保釈の決定を求めるための活動としては,保釈の相当性と必要性を基礎付ける事実を主張していくことになります。相当性を基礎付ける事実としては,罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれが存在しないことが挙げられます。必要性を基礎付ける事実としては,病気の療養のため自宅から通院する必要がある等保釈を認められなければ困るような事情が挙げられます。

  イ 裁判員裁判と本件における見通し

   従来、重大犯罪対象の裁判における保釈は認められにくい実情がありました。これは、起訴後であっても法定刑の高さ故に逃亡や罪証隠滅のおそれが認められやすいことに起因していたといえます。しかし、裁判員制度の導入と共に、公判前整理手続に力が入れられるようになり、第1回公判期日の前段階であっても公判前整理手続が終了した時点で既に罪証隠滅のおそれが低いとの判断がなされるケースが増えてきました。。すなわち,公判前整理手続は,争点及び証拠をあらかじめ整理する手続ですから,当該手続が終わると,新たな証拠調べ請求は原則認められないことになります(刑事訴訟法316条の32第1項)。そのため,公判前整理手続が終了した段階で,罪証隠滅の客観的可能性も主観的可能性についても証拠との関係において具体的に検討することが可能となったことから、その可能性が乏しいと判断され易くなってきたのです。このことは否認事件においても同様と考えるべきですし、実務の運用も罪障隠滅の具体的可能性の有無が検討されるようになっているとされています。従来は否認しているというだけで罪障隠滅の可能性があると判断されていたのですが、公判前整理手続きにおいて争点、証拠の整理が行われることにより否認事件であっても罪障隠滅の具体的な可能性の検討が可能となったことから、どの証拠にどのような隠滅行為の可能性があるのかについて検討し、具体的な可能性がない限りは保釈を認めるという方向で運用されるようになってきています。

   お母様の場合も、保釈の相当性と必要性を基礎付ける材料を揃えれば、公判前整理手続という早い段階から保釈が許可される可能性は十分にあると考えられます。具体的には、相当性との関係では,相談者様が身元引受人となることを保証する身元引受書(場合によっては弁護人の法を遵守 させるという誓約書) ,今後被害者に接近しないことを誓約する不接近誓約書,謝罪文,さらに可能であれば被害家屋の所有者や住人との示談合意書等(これが最も重要です。これと、被害者の「保釈に異議がない」との上申書があれば公判整理手続終了前でも可能です。その他本件では   社会的法益も保護法益に含まれますから贖罪寄付が不可欠です。というのは個人的法益に関する犯罪であれば、被害者の処罰請求権に刑事裁判の重要な根拠を求めることができ、示談、謝罪を通して公正公平な裁判も期待することができますが、社会的法益に関する犯罪の事件については、被害者との示談ということはできませんから、その代替処置として、公益的な活動を行っている団体に対する贖罪寄付を行うことが考えられるからです。)を提出する活動が必要となって参ります。また,必要性との関係では,お母様が通われている精神科の医師の診断書等を提出する活動が必要となって参ります。

    これらの活動の中でも,示談合意書の存在は極めて大きな意味を持ってきます。示談交渉を少しでも有利に進められるよう,経験豊富な弁護士に依頼されることを強くお勧めします。

4 判決における刑種選択と執行猶予

(1)刑種選択

   公判審理が終結すると,判決が言い渡されることになります。前述のとおり,現住建造物等放火罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは五年以上の懲役」ですが,被害が必ずしも大きいとは言えない本件事案においては,有期懲役刑が選択されると考えてまず間違いないでしょう。

(2)執行猶予

   刑の執行猶予は「三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたとき」(刑法25条1項柱書)に付すことが可能です。現住建造物等放火罪の法定刑の下限は5年ですが、酌量減刑(刑法66条)がなされれば刑の下限が2年6月となって、執行猶予を付すことが可能となります。酌量減軽は、法定刑の最低をもってしてもなお重い場合に刑を減軽することで,有期懲役刑の減軽方法は法定刑の長期及び短期の2分の1を減ずる方法によるとされています(刑法68条3号)。

   酌量減刑を求めるための活動として、保釈に向けた活動とも重複しますが謝罪文の作成や示談交渉を行うと共に、弁護人の冒頭陳述や最終弁論,さらには被告人質問等で酌量減刑が相応しいことを基礎付ける事実を主張することが考えられます。例えば,焼損面積が僅かであって危険性が低かったこと、精神的に不安定な状態で薬の影響が少なからず認められるであろうこと(医師の診断書があれば添付)等を主張していくことになるでしょう。

5 終わりに

   以上述べてきたとおり,本件では,保釈に向けた活動及び刑の執行猶予に向けた活動を行うことで,身柄の解放を実現することが十分に可能といえます。特に,示談交渉やお母様特有の事情を見つけ出して主張する活動は,弁護士の能力経験によって差が生じてくるところでもありますから,経験豊富な弁護士に依頼されることを強くお勧めいたします。

【参照条文】
刑法
(執行猶予)
第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。

(酌量減軽)
第六十六条  犯罪の情状に酌量すベきものがあるときは、その刑を減軽することができる。

(法律上の減軽の方法)
第六十八条  法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
一  死刑を減軽するときは、無期の懲役若しくは禁錮又は十年以上の懲役若しくは禁錮とする。
二  無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三  有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
四  罰金を減軽するときは、その多額及び寡額の二分の一を減ずる。
五  拘留を減軽するときは、その長期の二分の一を減ずる。
六  科料を減軽するときは、その多額の二分の一を減ずる。

(現住建造物等放火)
第百八条  放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

刑事訴訟法
第六十条  裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一  被告人が定まつた住居を有しないとき。
二  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三  被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
2  勾留の期間は、公訴の提起があつた日から二箇月とする。特に継続の必要がある場合においては、具体的にその理由を附した決定で、一箇月ごとにこれを更新することができる。但し、第八十九条第一号、第三号、第四号又は第六号にあたる場合を除いては、更新は、一回に限るものとする。
3  三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)及び経済関係罰則の整備に関する法律(昭和十九年法律第四号)の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる事件については、被告人が定まつた住居を有しない場合に限り、第一項の規定を適用する。

第八十七条  勾留の理由又は勾留の必要がなくなつたときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。
2  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第八十八条  勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。
2  第八十二条第三項の規定は、前項の請求についてこれを準用する。

第八十九条  保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一  被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二  被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三  被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四  被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五  被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六  被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第九十条  裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

第二百七条  前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。
2  前項の裁判官は、第三十七条の二第一項に規定する事件について勾留を請求された被疑者に被疑事件を告げる際に、被疑者に対し、弁護人を選任することができる旨及び貧困その他の事由により自ら弁護人を選任することができないときは弁護人の選任を請求することができる旨を告げなければならない。ただし、被疑者に弁護人があるときは、この限りでない。
3  前項の規定により弁護人の選任を請求することができる旨を告げるに当たつては、弁護人の選任を請求するには資力申告書を提出しなければならない旨及びその資力が基準額以上であるときは、あらかじめ、弁護士会(第三十七条の三第二項の規定により第三十一条の二第一項の申出をすべき弁護士会をいう。)に弁護人の選任の申出をしていなければならない旨を教示しなければならない。
4  裁判官は、第一項の勾留の請求を受けたときは、速やかに勾留状を発しなければならない。ただし、勾留の理由がないと認めるとき、及び前条第二項の規定により勾留状を発することができないときは、勾留状を発しないで、直ちに被疑者の釈放を命じなければならない。

第二百八条  前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2  裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

第三百十六条の二  裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。
2  公判前整理手続は、この款に定めるところにより、訴訟関係人を出頭させて陳述させ、又は訴訟関係人に書面を提出させる方法により、行うものとする。

第三百十六条の三十二  公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、検察官及び被告人又は弁護人は、第二百九十八条第一項の規定にかかわらず、やむを得ない事由によつて公判前整理手続又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、当該公判前整理手続又は期日間整理手続が終わつた後には、証拠調べを請求することができない。
○2  前項の規定は、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることを妨げるものではない。


裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
(対象事件及び合議体の構成)
第二条  地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条 の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二  裁判所法第二十六条第二項第二号 に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2  前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。
3  第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
4  裁判所は、前項の決定をするには、公判前整理手続において、検察官、被告人及び弁護人に異議のないことを確認しなければならない。
5  第三項の決定は、第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日までにしなければならない。
6  地方裁判所は、第三項の決定があったときは、裁判所法第二十六条第二項 の規定にかかわらず、当該決定の時から第三項に規定する合議体が構成されるまでの間、一人の裁判官で事件を取り扱う。
7  裁判所は、被告人の主張、審理の状況その他の事情を考慮して、事件を第三項に規定する合議体で取り扱うことが適当でないと認めたときは、決定で、同項の決定を取り消すことができる。

(裁判官及び裁判員の権限)
第六条  第二条第一項の合議体で事件を取り扱う場合において、刑事訴訟法第三百三十三条 の規定による刑の言渡しの判決、同法第三百三十四条 の規定による刑の免除の判決若しくは同法第三百三十六条 の規定による無罪の判決又は少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)第五十五条 の規定による家庭裁判所への移送の決定に係る裁判所の判断(次項第一号及び第二号に掲げるものを除く。)のうち次に掲げるもの(以下「裁判員の関与する判断」という。)は、第二条第一項の合議体の構成員である裁判官(以下「構成裁判官」という。)及び裁判員の合議による。
一  事実の認定
二  法令の適用
三  刑の量定
2  前項に規定する場合において、次に掲げる裁判所の判断は、構成裁判官の合議による。
一  法令の解釈に係る判断
二  訴訟手続に関する判断(少年法第五十五条 の決定を除く。)
三  その他裁判員の関与する判断以外の判断
3  裁判員の関与する判断をするための審理は構成裁判官及び裁判員で行い、それ以外の審理は構成裁判官のみで行う。

(公判前整理手続)
第四十九条  裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。



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