新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1589、2015/4/6 14:09 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【刑事、強制わいせつ罪、逮捕監禁罪】

児童に対するわいせつ行為容疑

質問:
都内に住む23歳の会社員です。この度、警察から突然、とある学習塾で生徒が私にわいせつな行為をされたかもしれないと言っているので、近日中に署で事情を聞きたい、という連絡がありました。恥ずかしながら、1年半ほど前、大学時代の私のアルバイト先の学習塾で当時小学校2年生だった女子生徒を誰もいない施錠した教室内で抱きかかえながら陰部を露出して自慰行為をしようとしたことがあり、おそらく最近になってその件で告訴状が提出されたのだと思います。女子生徒にいたずらをしてしまったことは非常に反省しているのですが、既に時間が経っており当時の出来事の詳細までは思い出すのが困難ですし、就職して新生活も始まっているので、この件で刑事処罰を受けるような事態は何とか回避したいと思っています。今後どのように対応していったら良いのか、相談させて下さい。



回答:
1. あなたの行為のどの部分を捉えるかにもよりますが、成立し得る犯罪としては、強制わいせつ罪(刑法176条後段)、逮捕・監禁罪(刑法220条)の2つが考えられます。いずれも法定刑に罰金の定めがない重罪ですので、速やかに弁護士と相談の上、身柄拘束(逮捕)の回避に向けた措置を講じるとともに、不起訴処分の獲得に向けた活動方針につき協議しておく必要があります。

2. 本件は密室内での犯行であるため、犯罪事実を立証するための証拠としては被害児童の供述が非常に大きなウエイトを占めることになると思われます。もっとも、事件から既に1年半が経過していることや被害児童が若年であることからすると、その供述の信用性は相当程度割り引いて考えざるを得ないところでしょう。この点を弁護人の意見書等の形で十分主張し、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(刑事訴訟法199条1項)が不十分であることを示すとともに、被害児童に接触しないことを誓約する文書、捜査機関等の呼び出しに必ず応じる旨の誓約書、家族等の身元引受書、あなたの就業の事実を示す資料(雇用契約書や直近の給与明細等)、被害者宛の謝罪文、弁護人作成の示談金預かり証等を合せて提出し、逮捕の必要性(刑事訴訟規則143条の3)が存在しないことを示すことで、捜査機関に逮捕状の請求を思い止まらせることがまず重要です。

3. 検察官としては、犯罪事実を立証する証拠が不十分であるか(嫌疑不十分)、示談の成立等、起訴が相当でない事情があれば(起訴猶予)不起訴処分を行うべきことになりますので、あなたとしては、捜査機関に対して黙秘権の行使として被疑事実を安易に認めないようにしつつ間違っている被疑事実には否認し弁護人を通じて検察官に証拠上犯罪事実の立証が不十分であると思ってもらうよう説得・交渉を行うとともに、並行して被害児童(実際には親権者である両親)との示談交渉を行うべきことになります。

4. あなたの被害児童に対する行為の具体的態様を立証するための主たる証拠として捜査機関が把握しているのが信用性に問題のある被害児童の供述のみであるとすれば、今後、捜査機関があなたに対して犯罪事実を認める供述をするよう誘導し、自白調書に署名・押印させようとするであろうことが容易に想定されます。黙秘権を行使せず一度自白の調書に署名・押印してしまえば、嫌疑不十分での不起訴処分を得ることは極めて困難になりますので、黙秘権行使の範囲、方法等につき、弁護士と入念に打ち合わせをした上で取調べに臨む必要があるでしょう。繰り返しますが、本件は、黙秘権行使の限界事例であり、黙秘権行使の方法、態様、証拠上明らかになった被疑事実に対する対応を弁護人と詳細に協議し対策を練らなければいけません。弁護人としては、証拠上明らかな被疑事実を否認するアドバイスはできませんが、黙秘権が憲法上の基本的権利(憲法38条1項)である以上、その行使態様、方法については説明する責務があるからです。刑事訴訟法が当事者主義(裁判所でなく当事者である検察官、被告人に訴訟の開始、審判対象の特定、証拠調べ、終了の主導権を与えること。)を採用し真実を追求する立場をとる以上、捜査段階もその趣旨は当てはまり、被疑事実の立件、証拠収集は検察官捜査機関の仕事であり(弁護人が立件のため証拠収集等の協力義務はありません。)、弁護人としては被疑者の憲法上の権利を適正に行使できるよう最大限の努力が求められることになります。

5. 本件は黙秘権を行使して自白を回避しながら被害者と示談交渉を行うという、通常の刑事事件とは異なるイレギュラーな弁護活動が求められるケースですので、刑事事件の経験が豊富な弁護士に詳細をご相談頂いた上、弁護人に就任してもらうことをお勧めいたします。


解説:

1.罪名について

 過去に女子生徒を抱きかかえながら自慰行為をしようとしたとのことですが、かかる行為により成立しうる犯罪としては、次の2つが考えられます。

(1)強制わいせつ罪(刑法176条後段)

 刑法176条後段の強制わいせつ罪は、13歳未満の男女に対して「わいせつな行為」をすることによって成立する犯罪です(刑法176条後段)。強制わいせつ罪というと、暴行や脅迫を手段として強制的にわいせつ行為をすることによって成立する犯罪というイメージを持たれるかもしれませんが、行為の客体が13歳未満の場合、わいせつ行為の意味を理解できず、有効な同意を行う能力がそもそも観念できないため、暴行や脅迫がない、同意を得た上での行為であっても強制わいせつ罪が成立することになります。

 本罪でいう「わいせつな行為」とは、裁判例上「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」を指すとされています。「女子生徒を抱きかかえながら自慰行為をしようとした」というのが具体的に如何なる行為を指すのか、質問からは定かではありませんが、実際に女子生徒の陰部を露出し、あるいは自慰行為を行ったということであれば「わいせつな行為」に該当し、強制わいせつ罪が成立していると見てほぼ間違いないでしょう。

(2)逮捕・監禁罪

 不法に人を「逮捕」または「監禁」した場合に成立する犯罪です(刑法220条)。「逮捕」とは、人の身体を直接的に拘束してその身体活動の自由を奪うことを、「監禁」とは、一定の区域からの脱出を不可能若しくは著しく困難とすることを、それぞれ意味します。被害児童を抱きかかえ、行動の自由を奪った点を捉えると逮捕罪が、教室を施錠することで脱出を困難にした点を捉えると監禁罪が、それぞれ成立すると考えられます。

 ここで注意すべき点は、今現在の被疑罪名がいずれであっても、検察官による刑事処分決定の際、異なる罪名に切り替わる可能性があるということです(刑事訴訟法247条、256条2項2号、312条1項参照)。例えば、強制わいせつ罪は起訴にあたり被害者の告訴が必要な親告罪とされていますが(刑法180条1項)、現在の被疑罪名が強制わいせつ罪であり、被害者から告訴の取消しがなされたとしても、検察官は非親告罪である逮捕・監禁罪で起訴することが可能です。むしろ、わいせつ行為の具体的態様に関する立証が不要な点で犯罪の成立に関する立証のハードルが低い逮捕・監禁罪の方が起訴し易いとも考えられます。結局、あなたとしては、いずれの罪名でも起訴され得ることを前提に今後の対応を検討していく必要があります。

2.身柄拘束の回避

 被害児童に対するわいせつ行為の件で警察から連絡があったとのことですが、被害児童(実際にはその親)より告訴がなされ、警察が実際に捜査を開始していることを前提とすると、警察は既に被害児童の詳細な供述調書を作成していると考えられ、この供述調書を証拠資料として逮捕状の請求を行う可能性が考えられます。強制わいせつ罪や逮捕・監禁罪は、いずれも法定刑に罰金の定めがない重罪であり、被疑者の立場に置かれた場合、一般的に逮捕される可能性が高いため、逮捕回避のために採りうる措置を最大限講じておく必要があります。

 逮捕の要件は刑事訴訟法により法定されており、@「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、A「逮捕の必要性」がそれぞれ必要とされます(刑事訴訟法199条1項、刑事訴訟規則143条の3)。逮捕を回避するためには、これらが存在しないことを示す証拠資料をあなたの側から(実際には弁護人を通して)捜査機関に提出することで、捜査機関に逮捕状の請求を思い止まらせ、あるいは令状審査を行う裁判官に逮捕状の発付を思い止まらせる必要があります。

 まず、本件では特殊事情として、事件から既に1年半が経過しており、ほぼ唯一の証拠資料と考えられる被害者調書の供述人である被害児童の記憶が事件直後と比較して大きく減退している可能性があるということが挙げられます。捜査機関は被害児童から、あなたが行ったわいせつ行為の具体的態様について可能な限り詳細に聴取していると思われますが、1年半もの期間が経過していれば細部についての記憶が曖昧になったり、思い違い等による記憶の変容の可能性も大きいといえ、被害児童が当時小学校2年生と若年であったことも併せると、捜査機関としても令状担当裁判官としても、被害児童の供述調書の信用性は相当程度割り引いて考えざるを得ないところでしょう。警察への出頭に先立って、この点を捜査機関宛ての意見書等で十分主張し、@「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が不十分であることを示す必要があります。
 
 なお、あなたが警察署で取調べを受け、供述調書を作成した場合、その調書は被害者調書と同様、捜査機関が逮捕状を請求するにあたっての証拠資料となるため、安易に事件の詳細について供述することで身柄拘束を受ける可能性を高めてしまうことのないよう、供述すべき事実関係の範囲や黙秘権行使の範囲等について事前に弁護人と十分協議し、指導を受けた上で取調べに臨む必要があるでしょう。捜査機関の取調べに対して如何なる供述をするかはあなたに対する終局処分にも関わってくるところですので、この点については項目を改めて説明したいと思います。

 A「逮捕の必要性」との関係では、あなたが本件に関する罪証を隠滅するおそれがないこと、あなたが逃亡するおそれがないことを根拠資料を示しつつ主張することがポイントとなってきます。具体的には、被害児童に接触しないことを誓約する文書、捜査機関等の呼び出しに必ず応じる旨の誓約書、あなたの出頭を確実なものとする旨の家族等の監督誓約書(身元引受書)、あなたが職に就いていることを示す資料(雇用契約書や直近の給与明細等)等を添えた詳細な意見書を提出すべきことになります。また、後述するとおり、取調べで如何なる供述をするかに関係なく、被害者に対する謝罪と被害弁償(示談)を行う準備があることを示す資料(謝罪文、弁護人作成の示談金預かり証等)を提出しておくことも重要です。ただし、謝罪文については、被疑事実を認めた自白の供述書にならないよう、事前に弁護人と相談して内容を十分吟味して作成する必要があります。

 捜査機関が何時逮捕状を請求するか分かりませんので、可能な限り速やかに、遅くともあなたが警察に出頭するに先立って、弁護人において上記のような準備を行い、捜査機関と交渉を行っておくことが重要となってきます。したがって、警察から被疑者としての取調べへの協力要請があった場合、できるだけ早期に弁護士に相談することが重要となってくるのです。

3.不起訴処分の獲得に向けた対応

(1)不起訴処分の種類について

 あなたが本件で刑事処罰を受けないためには、事件が検察官に送致された後(刑事訴訟法246条本文)、刑事処分の決定権者である検察官に本件を不起訴処分にしてもらう必要があります(刑事訴訟法247条、248条)。一般的に、不起訴処分とは検察官が事件について起訴しない処分を行うことをいいますが、不起訴処分には不起訴の決定をするに至った理由によって、いくつか種類があります。実務上の典型例としては、罪となるべき事実の立証に必要な証拠が十分収集できなかった場合である「嫌疑不十分」と、罪となるべき事実の立証に必要な証拠は揃っているものの、情状等により起訴まで行うことは不相当と判断される場合である「起訴猶予」(刑事訴訟法248条)の2つが挙げられます。検察官としては、犯罪事実の立証が不十分であるか、起訴が相当でない事情(典型的には、被害者との間で示談が成立していること等)があれば不起訴処分を行うべきことになりますので、あなたのケースで不起訴処分の獲得を目指すにあたっては、捜査機関に対して被疑事実を認めないようにしつつ検察官に犯罪事実の立証が不十分であると思ってもらうよう説得・交渉を行うとともに(嫌疑不十分による不起訴処分)、並行して被害者(実際にはその親権者である両親)との示談交渉を行うべきことになります(起訴不相当とする起訴猶予)。

 被疑事実を認めることなく被害者への謝罪や被害弁償を含めた示談交渉を行うことについては若干違和感を覚えるかもしれません。しかし、刑事事件の被疑者は起訴され刑事処罰という重大な不利益を受け得る地位にあることから、防御のため、黙秘権(憲法38条1項、刑事訴訟法198条2項)、取調べ拒否権・退去権(刑事訴訟法198条1項)、供述調書の訂正申立て権・署名押印拒否権(刑事訴訟法198条4項・5項)等の権利が法律上保障されているのであり、かかる防御権を行使することと民事上の責任(民法709条)あるいは道義上の責任を全うすることとは必ずしも矛盾するものではありません。筆者の経験上、被疑事実を認めない状態で捜査機関に対して被害者への示談申入れを仲介を要請した場合に、「罪を認めないのであれば謝罪や被害弁償をする必要もないでしょう。」等と言われ仲介を断られるケースも少なくないですが、これは被疑者を追及する立場にある捜査機関にとっての都合の良い理屈に過ぎません。

 なお、被疑事実を認めないと言っても、虚偽の事実を述べることはできません。しかし、被疑事実を認めるか否かということは、罪を認めるか否かということではなく具体的に事実について認めるか否かということですから、確認を求められた事実が異なっていれば否認したからと言って虚偽の事実を述べたことにはなりません。

(2)示談交渉

 あなたの被害児童に対する行為により、あなたには民事上の不法行為責任が発生していると考えられますし(民法709条)、被害者から告訴がなされている以上、被害児童に対する謝罪と被害弁償(示談交渉)を行わないという選択肢は考えられません。そして、前述のとおり、あなたは親告罪である強制わいせつ罪のみならず、非親告罪である逮捕・監禁罪でも起訴される可能性がありますので、示談の際は単に被害者から告訴の取消しを得るだけでは足りず、宥恕の意思表示や罪名にかかわらず一切の刑事処罰を求めない旨の検察官宛の上申書の取得が最低限必要でしょう。

 示談交渉を開始するにあたって、被害児童の住所、電話番号等の連絡先を入手する必要がありますが、上記のとおり、被疑事実を認めていない状態では捜査機関を通じた被害者情報の開示が事実上難航することも少なくありません。もっとも、本件では被害児童があなたの以前のアルバイト先の学習塾の生徒であるとのことですので、捜査機関を通じた被害者情報の開示が難しいようであれば、学習塾の協力を得ることも検討する必要があるでしょう。

 本件はあなたがアルバイト勤務中に行った行為によるものですので、当該学習塾もあなたの使用者として、被害女児に対して使用者責任に基づき被害弁償すべき民事上の責任を負っていると考えられます(民法715条1項)。そして、この場合の学習塾の被害児童に対する損害賠償義務とあなたの損害賠償義務との関係は不真正連帯債務といって、大雑把に言えば、あなたが全額の被害弁償を履行すれば学習塾の被害児童に対する損害賠償義務も消滅するという関係に立つことになります。学習塾としては、あなたと被害児童との間の示談成立によって自らに対する責任追及を回避し得る立場にあるわけですから、交渉次第では示談に向けた思わぬ突破口が開けることもあり得るでしょう。

(3)取調べ対応

 本件で最も注意を要すべきなのが取調べでの対応でしょう。本件は密室での犯行であるため、あなたの被害児童に対する行為の具体的態様を立証するための主たる証拠として捜査機関が把握しているのは被害児童の供述のみであると考えられます。もっとも、行為時からの時間経過や被害児童の年齢に照らせば、その供述の信用性は相当程度割り引いて考えざるを得ず、犯罪事実の立証のためには新証拠を収集する必要があるというのが捜査機関の通常の発想だと思われます。かかる状況下では、捜査機関があなたが犯罪事実を認める内容の詳細な供述をするよう誘導し、自白調書に署名・押印させようとするであろうことが容易に想定されます。

 刑事訴訟法319条2項は憲法38条3項を受けて、起訴された場合、自白のみで有罪とされることはないとして、補強証拠が必要である旨規定しています。しかし、判例は補強証拠が必要な犯罪事実の範囲について、自白の真実性を保障する程度の範囲の事実について補強証拠があれば足りると、緩く解していますので、実際上は一度自白の調書に署名・押印してしまえば、嫌疑不十分での不起訴を得ることは極めて困難になると考えておいた方が良いでしょう。黙秘権行使の範囲等につき、弁護士と入念に打ち合わせをした上で取調べに臨む必要があるでしょう。

4.最後に

 以上はあくまで起訴の回避を目指す場合についての一般論での回答となります。もっとも、一般論での回答には限界があります。犯行時の状況の詳細を伺うことによって被害児童の供述の信用性を低下させるような事情が出てくることも考えられますし、逆に自白をせずにいても起訴猶予の獲得が困難となるような不利な事情が想定される場合もあるでしょう。捜査機関と交渉を行う過程で捜査機関が把握している証拠関係に関してヒントを得られることもあります。また、取調べ対応についても、検察官や被害者側との交渉経過によっては、被疑事実を認めてしまう方が示談成立の可能性が高まり、不起訴処分獲得の上で有利な展開が想定される場合もあるでしょう。

 詳細を伺った上でなければ有効な弁護方針を示すことが困難ですので、速やかに専門家にご相談頂く必要があります。本件は自白を回避しながら被害者と示談交渉を行うという、通常の刑事事件とは異なるイレギュラーな弁護活動が求められるケースですので、刑事事件の経験が豊富な弁護士を弁護人に選任されることをお勧めいたします。


≪参照条文≫
日本国憲法
第38条  何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
第2項 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
第3項 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

刑法
(強制わいせつ)
第百七十六条  十三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
(親告罪)
第百八十条  第百七十六条から第百七十八条までの罪及びこれらの罪の未遂罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
(逮捕及び監禁)
第二百二十条  不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

刑事訴訟法
第百九十八条  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
第2項 前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
第3項 被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。
第4項 前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。
第5項 被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。
第百九十九条  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
第2項 裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。
第3項 検察官又は司法警察員は、第一項の逮捕状を請求する場合において、同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。
第二百四十六条  司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。
第二百四十七条  公訴は、検察官がこれを行う。
第二百四十八条  犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
第二百五十六条  公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
第2項 起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
第一号 被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
第二号 公訴事実
第三号 罪名
第3項 公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
第4項 罪名は、適用すべき罰条を示してこれを記載しなければならない。但し、罰条の記載の誤は、被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞がない限り、公訴提起の効力に影響を及ぼさない。
第5項 数個の訴因及び罰条は、予備的に又は択一的にこれを記載することができる。
第6項 起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
第三百十二条  裁判所は、検察官の請求があるときは、公訴事実の同一性を害しない限度において、起訴状に記載された訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許さなければならない。
第2項 裁判所は、審理の経過に鑑み適当と認めるときは、訴因又は罰条を追加又は変更すべきことを命ずることができる。
第3項 裁判所は、訴因又は罰条の追加、撤回又は変更があつたときは、速やかに追加、撤回又は変更された部分を被告人に通知しなければならない。
第4項 裁判所は、訴因又は罰条の追加又は変更により被告人の防禦に実質的な不利益を生ずる虞があると認めるときは、被告人又は弁護人の請求により、決定で、被告人に充分な防禦の準備をさせるため必要な期間公判手続を停止しなければならない。
第三百十九条第1項 強制、拷問又は脅迫による自白、不当に長く抑留又は拘禁された後の自白その他任意にされたものでない疑のある自白は、これを証拠とすることができない。
第2項  被告人は、公判廷における自白であると否とを問わず、その自白が自己に不利益な唯一の証拠である場合には、有罪とされない。
第3項  前二項の自白には、起訴された犯罪について有罪であることを自認する場合を含む。

刑事訴訟規則
(明らかに逮捕の必要がない場合)
第百四十三条の三  逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(使用者等の責任)
第七百十五条  ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
第2項 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
第3項 前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。



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