新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1470、2013/10/05 00:00

【行政事件 国家賠償 B型肝炎訴訟の概要,弁護士を通した手続の進め方  最高裁平成18年6月16日判決】

質問:B型肝炎訴訟の概要,給付金の受取の手続についての質問です。保健所で肝炎ウイルス検査を受けたところ,B型肝炎ウイルスに罹患していることが判明しました。私は昭和40年頃に集団予防接種を受けたことがあり、また家族にはB型肝炎ウィルスに感染した人はいません。このような場合,訴訟(B型肝炎訴訟)を国に対して提起すると国から一定の給付金を受け取れると聞いたのですが,どのようにすればよいのでしょうか。



回答:
1、昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に集団予防接種によってB型肝炎ウイルスに感染した場合,国に対して国家賠償請求訴訟を提起し,裁判上の和解が成立すれば,給付金を受け取ることができます(上記の予防接種により感染した母親から生まれた子供も2次感染者として給付金を受け取ることができます)。
  ただし,一定の場合には国の過失責任を認める期間に制限があるなど,給付金を受け取るための認定基準がありますので,それを満たすことが前提になります。
そのためには,診断書やカルテ等の医療機関の証拠資料が必要になります。感染の態様(母子感染か,母子健康手帳を持っているかなど)などによって,収集しなくてはならない証拠資料が異なります。
2、さらに,給付金を受け取るためには,国家賠償請求訴訟を提起することが必要不可欠となります。裁判所を通じた手続の中で,法的な因果関係の有無,給付金の内容を決定することになります。
3、@必要な証拠資料の収集,A裁判所の手続を必ず経なければなりませんので,一度,専門家である弁護士へのご相談されることを強くお勧めします。

解説:
第1 B型肝炎訴訟の概要
 1 B型肝炎訴訟とは
(1)B型肝炎訴訟とは,「幼少期に受けた集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)の際に注射器(注射針または注射筒)が連続使用されたことによって,B型肝炎ウイルスに持続感染した被害者が,国に対して国家賠償を求める訴訟」と定義されています(厚生労働省ホームページ)。
  かつて,集団予防接種が行われた際に,国が注射器の交換や予防接種による事故の防止に対する指導を行わなかったため,慢性肝炎などのB型肝炎ウイルスによる被害が生じました。そこで,国家賠償請求訴訟において責任追及がなされたところ,注射器の交換等を怠ったこと等による国の過失責任が認められるに至りました(最判平成18年6月16日)。
  (2)このような経緯の中,平成23年6月に国と被害者側で「基本合意書」が成立し,今後の被害者の救済を受けるための要件や,受け取ることのできる給付金の額について合意されました。
さらに,平成24年には「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」が施行され,裁判上の和解等が成立した場合に,法に基づく給付金等が支給されることになりました。
    厚生労働省のホームページにおいて,B型肝炎訴訟の概要及び基本合意書の内容を閲覧することが可能です。

<参考HP>
厚生労働省ホームページ B型肝炎訴訟について
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/b-kanen/index.html

 2 B型肝炎訴訟により受け取ることのできる給付金
B型肝炎ウイルスに罹患した場合に,対象者(被害者)若しくはその相続人が受け取ることのできる給付金は,以下のとおりです。
なお,本来民法上は不法行為のときから20年が経過すると,国に対する損害賠償請求権が消滅することとされていますが(民法第724条後段),除斥期間が経過した被害者の方についても,政策的配慮から一定の給付金が支給されることになります。
(1) 死亡・肝がん・肝硬変(重度)         3,600万円
(2) 肝硬変(軽度)                  2,500万円
(3) 20年間の除斥期間を経過していない慢性肝炎    1,250万円
ここにいう20年間の除斥期間については,慢性肝炎を発症した日から計算されます。すなわち,慢性肝炎発症後20年を経過した場合には,C・Dの給付金が受給対象となります。
(4) 20年間の除斥期間を経過した慢性肝炎(現在も治療中)  300万円
(5) 20年間の除斥期間を経過した慢性肝炎(C以外,治癒済)150万円
(6) 無症候性キャリア
無症候性キャリアとは,B型肝炎ウイルスに罹患しているものの,死亡,肝がん,肝硬変,慢性肝炎に該当しない場合をいいます。この場合,以下の給付金が支給されます(詳しくは厚生労働省ホームページをご参照ください)。
ア 20年間の除斥期間を経過した場合 50万円+定期検査費の支給等
  50万円以外に支給される定期検査費用等としては,以下のものが認められます。
@ 定期検査費,初・再診料(年4回まで)
A B型肝炎ウイルスの母子感染を防止するためにかかる費用(ワクチン,検査費用等)
B 同居家族に対するB型肝炎ウイルスの水平感染を防止するためにかかる費用(ワクチン,検査費用等)
C 定期検査手当(@の定期検査ごとに1回1万5000円・年2回が上限)
イ 20年間の除斥期間を経過していない場合 600万円
無症候性キャリアにおける20年間の除斥期間の起算点は,集団予防接種等を受けた日から計算されます。

 3 具体的な提訴,給付金受給までの流れ
  (1) B型肝炎ウイルスに罹患した方が上記の給付金を受け取るためには,国に対して,国家賠償請求訴訟を提起することが必須となっています。
B型肝炎ウイルスの感染経路は,集団予防接種による注射器の連続使用以外にも様々な要因が考えられますので,公平・公正な判断を行うことのできる裁判所による司法判断が必要になります。裁判上の和解手続の中で,国の責任とB肝炎ウイルス罹患との因果関係(予防接種等による注射器の連続使用)が慎重に認定されることになります。
  (2) 具体的なB型肝炎訴訟提訴から,給付金の支給までは以下の手順を踏む必要があります。
   @ 提訴のための医療記録等を医療機関に請求する
   A 各種医療記録等を医療機関から提出してもらう
   B 国を被告として国家賠償請求訴訟を提起 
   C 裁判所を通じた和解協議の手続,裁判上の和解の成立
   D 支払基金に対し,社会保険診療報酬支払基金へ給付金等の支給請求
   E 給付金等の支給
    上記の手順を踏むに際しては,第2以下の給付金を受けるための要件を満たすことを主張するために,@適切な医療記録を証拠として取得すること,A国家賠償請求訴訟を提起し,裁判所において和解の手続を行うこと,が必要となります。
すなわち,提訴の準備段階から専門的知識が必要となりますので,代理人として弁護士を立てることが必要不可欠です。
なお,国家賠償請求を提起した場合,かかった検査費用については損害と認められていますし,また,およそ損害額の4%程度の弁護士費用が損害額として認定されていますので,実質的な負担額はさほど大きいものではありません。

第2 給付金を受けるための具体的な要件,必要な活動
では,B型肝炎ウイルスに罹患したことを理由として,国家賠償請求が認められるのは,どのような要件を満たす必要があるのでしょうか。この点も,厚生労働省が必要な主張,証拠等について指針(認定基準)を示しています。
以下,一次感染者と二次感染者に分けて,必要な要件,証拠についてみていきます。やや複雑で専門的な点もありますので,ご不明な点がありましたら,弁護士にご相談ください。

<参考HP>厚生労働省 B型肝炎訴訟の手引き
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou/b-kanen/dl/b-kanen_tebiki-zentai.pdf

 1 一次感染者の場合
   一次感染者とは,「集団予防接種等により,直接,B型肝炎ウイルスに持続感染」した方を指します。一次感染者であることを証明するためには,以下?〜?の全ての要件を満たすことが必要です。
  (1) B型肝炎ウイルスに持続感染していること
    「持続感染」しているというためには,以下のア・イのいずれかの場合であることが必要です。
   ア 6か月以上の間隔をあけた2時点における,以下のいずれかの検査結果
    ・HBs抗原陽性
    ・HBV−DNA陽性
    ・HBe抗原陽性
   イ HBc抗体陽性(高力価)
    上記のB型肝炎ウイルスに罹患しているかどうかは,お住まいの市町村や都道府県等の保健所で肝炎ウイルス検査を受けることによって,判別が可能です。
  (2) 満7歳になるまでに集団予防接種等(予防接種,ツベルクリン反応検査)を受けていること
    B型肝炎ウイルスが持続感染化するのは,免疫機能が未発達な幼少期ですので,満7歳までに集団予防接種等を受けていることが必要となります。この要件を立証するためには,以下のア〜ウのいずれかの証拠が必要となります。
   ア 母子健康手帳
   イ 予防接種台帳
   ウ ア・イが提出できない場合には,以下の@〜Bのいずれも提出することが必要です。
    @ 提出できない事情を説明した本人,親など作成の陳述書
    A 接種痕が確認できる旨の医師の意見書
    B 住民票又は戸籍の附票
     Aの接種痕の意見書については,厚生労働省ホームページに書式がありますので,それを持って医療機関に意見書を書いていただくことになります。
  (3) 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
   今回,国の責任が認められたのは昭和23年7月1日〜昭和63年1月27日までの間に限られますので,この期間内に集団予防接種等を受けたことが確認できることが必要です。以下のア,イいずれかの要件を満たすことが必要になります。
   ア (2)において,母子健康手帳・予防接種台帳を提出した場合にはその記載により,昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までの間に集団予防接種等を受けたことを確認。
   イ (2)において,陳述書と接種痕意見書等を提出した場合には,戸籍等により昭和16年7月2日から昭和63年1月27日までの間に出生したことを確認。
  (4)母子感染でないこと
    B型肝炎ウイルスに感染する最も有力な要因は母子感染ですので,一次感染者であることをいうためには母子感染でないことが必要です(なお,母子感染者については以下の2の基準を満たす必要があります)。具体的には,アからウまでのいずれかの要件を満たすことが必要です。
   ア 母親のHBs抗原が陰性かつHBc抗体が陰性(または低力価陽性)の検査結 果
イ (母親が死亡している場合)年長の兄弟姉妹のうち一人でも持続感染者でない場合がいること
ウ その他医学的知見を踏まえた個別判断により,母子感染によるものではないことが認められること
母子感染ではないことについては,基本的に母親の血液検査結果により判断することになります。
  (5) その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
    母子感染以外にも,輸血による感染,父親などからの家族内感染,性交渉による感染等も考えられえますので,感染経路を限定し因果関係を認めるために,以下の資料を提出することが必要です。
   ア カルテ等の医療記録
     直近1年分の医療記録,持続感染の判明から1年分の医療記録,最初の発症から1年分の医療記録,入院歴がある場合には入院中の全ての医療記録などのうち,現存するものを提出
   イ (父親がB型肝炎ウイルスの持続感染者である場合)父親と原告のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査結果
   ウ 原告のB型肝炎ウイルスがジェノタイプAeではないことを証明する検査結果
     このタイプのB型肝炎ウイルスは成人後でも持続感染する可能性がありますので,集団予防接種等による国の責任を認めるためにはジェノタイプの検査が必要となります。医療機関を通じて当該検査を行うことになります。

 2 二次感染者の場合
   二次感染者とは,「一次感染者である母親からの母子感染によりB型肝炎ウイルスに持続感染した方」を指します。二次感染者は集団予防接種による直接の感染者ではないものの,B型肝炎ウイルスに感染した女性が出産するときに母子感染が発生する可能性がありますので,一定の場合に国の責任が認められています。
二次感染者であることを証明するためには,以下の(1)〜(3)の全ての要件を満たすことが必要です。
  (1) 原告の母親が上記の一次感染者の要件を全て満たすこと
    母親が1で述べた一次感染者であることが必要なので,一次感染者と同様に1の(1)〜(5)全ての要件を満たすことを示す資料を提出することが必要となります。
  (2) 原告がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
    併せて,原告本人がB型肝炎ウイルスに持続感染していることが必要です。確認方法は,一次感染者と同様に,保健所等で肝炎ウイルスの確認検査を行うことによります。
  (3) 母子感染であること
ここでは,一次感染者である母親からの感染であることが医学的知見を踏まえて認定されることが必要,とされています。具体的には,以下のアかイいずれかの資料を提出することが必要となります。
ア 原告が出生直後に既にB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを示す資料
イ 原告と母親のB型肝炎ウイルスの塩基配列を比較した血液検査(HBV分子系統解析検査)結果
  当該検査は,医療機関を経由して行います。なお,この検査にかかる費用については,保険適用外で当初は費用を負担するものの,裁判上の和解が成立した場合には,検査費用として6万3000円が支給されることになります。
 
3 病態の認定のための資料取得
以上のとおり,一次感染者,二次感染者と認定された場合,給付金の金額を判断するために,慢性肝炎等の病態を決定することになります。
この点について,病変を認定するためには,医師の診断書,診断を裏付ける診療録,画像検査報告書,血液検査報告書等の客観的な証拠を収集する必要があります。これらの証拠をもとに,総合的に当該病態(死亡,肝がん,肝硬変,慢性肝炎等)に該当することを主張することが必要になります。病態判断のための診断書については,厚生労働省が定型書式を公開しています。

4 弁護士に依頼した場合の具体的な活動
B型肝炎訴訟に関する具体的な手続の流れ,給付金の内容,国の責任を認めるための認定要件の概略については以上述べたとおりです。
 (1) すなわち,B型ウイルスに持続感染しており,それが集団予防接種等に基づくことについては,原告側で立証活動を行わなければなりません。
立証のための診断書等の証拠については,基本的に医療機関を通じて取得することが必要になります。
   B型肝炎ウイルスに感染した場合であっても,上記の感染者の区分にしたがい,要件や取得すべき資料が異なりますので,この点については専門的知識を有する弁護士に相談し,必要資料が何かを分析する必要があります。
 (2) 必要な診断書等が集まった場合であっても,B型肝炎ウイルスによる給付金を受領するためには,必ず国家賠償請求訴訟を提起しなければなりません。
   裁判所の手続においては,訴状の作成・提出を行った上で,裁判上の和解手続において,国や裁判所と協議を行い,場合によっては積極的に主張を行う必要があります。
法的な因果関係や病態の認定,訴訟手続など,専門的な知識が必要になりますので,お悩みの場合には,弁護士に相談されることを強くお勧めします。

以 上

<参照条文>
国家賠償法
第一条  国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
○2  前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。

第五条  国又は公共団体の損害賠償の責任について民法 以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。

民法(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条  不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法
第一章 総則


(目的)
第一条  この法律は、集団予防接種等の際の注射器の連続使用により、多数の者にB型肝炎ウイルスの感染被害が生じ、かつ、その感染被害が未曽有のものであることに鑑み、特定B型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対し、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等を支給するための措置を講ずることにより、この感染被害の迅速かつ全体的な解決を図ることを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「集団予防接種等の際の注射器の連続使用」とは、昭和二十三年七月一日から昭和六十三年一月二十七日までの間において、市町村長、都道府県知事その他厚生労働省令で定める者が、その期日又は期間及び場所を指定して行った予防接種又はツベルクリン反応検査のうち、当該予防接種又はツベルクリン反応検査が実施された日において施行されていた法律であって厚生労働省令で定めるものの規定に基づくものが行われた際に、注射針、注射筒その他厚生労働省令で定める医療機器を当該予防接種又はツベルクリン反応検査を受ける者ごとに取り替えることなく、使用したことをいう。
2  この法律において「特定B型肝炎ウイルス感染者」とは、七歳に達するまでの間における集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した者であって当該B型肝炎ウイルスが持続的に生体内に存在する状態として厚生労働省令で定めるもの(以下この条において「持続感染の状態」という。)になったもの及びその者の胎内又は産道においてB型肝炎ウイルスに感染した者(以下「母子感染者」という。)その他母子感染者に類する者として厚生労働省令で定めるもの(以下「母子感染者に類する者」という。)であって持続感染の状態になったものをいう。
3  この法律において「確定判決等」とは、七歳に達するまでの間における集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した者が持続感染の状態になったこと又は母子感染者その他母子感染者に類する者が持続感染の状態になったことによって生じた損害の賠償に係る確定判決又は和解若しくは調停であって、その相手方に国が含まれるものをいう。
4  この法律において「訴えの提起等」とは、七歳に達するまでの間における集団予防接種等の際の注射器の連続使用によりB型肝炎ウイルスに感染した者が持続感染の状態になったこと又は母子感染者その他母子感染者に類する者が持続感染の状態になったことによって生じた損害の賠償の請求に係る訴えの提起又は和解若しくは調停の申立てであって、その相手方に国が含まれるものをいう。
   第二章 特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等


(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給)
第三条  社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)は、特定B型肝炎ウイルス感染者(特定B型肝炎ウイルス感染者がこの法律の施行前に死亡している場合にあっては、その相続人)に対し、その者の請求に基づき、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金を支給する。ただし、当該特定B型肝炎ウイルス感染者について既に特定B型肝炎ウイルス感染者給付金が支給されている場合は、この限りでない。
2  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合において、その者がその死亡前に特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給の請求をしていなかったときは、その者の相続人は、自己の名で、その者の特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を請求することができる。
3  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を受けることができる同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人がした請求は、その全額について全員のためにしたものとみなし、その一人に対してした支給は、全員に対してしたものとみなす。

(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給手続)
第四条  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給の請求をするには、厚生労働省令で定めるところにより、当該請求をする者又はその被相続人が特定B型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が第六条第一項各号のいずれかに該当する者であることを証する確定判決等の判決書又は調書の正本又は謄本を提出しなければならない。

(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の請求期限)
第五条  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給の請求は、次に掲げる日のいずれか遅い日までに行わなければならない。
一  この法律の施行の日から起算して五年を経過する日(次号において「経過日」という。)
二  訴えの提起等を経過日以前にした場合における当該訴えに係る判決が確定した日又は当該和解若しくは調停が成立した日(以下「判決確定日等」という。)から起算して一月を経過する日

(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額)
第六条  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額は、次の各号に掲げる特定B型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。
一  B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものに限る。)若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者(当該肝硬変(当該肝がんにり患した者にあっては、当該肝がん)を発症した時(当該死亡した者にあっては、当該死亡した時)から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者を除く。) 三千六百万円
二  B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものを除く。)にり患した者(当該肝硬変を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変(重度のものに限る。)若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 二千五百万円
三  慢性B型肝炎にり患した者(当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 千二百五十万円
四  慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者であって、現に当該慢性B型肝炎にり患しているもの又は現に当該慢性B型肝炎にり患していないが、当該慢性B型肝炎の治療を受けたことのあるもの(これらの者のうち、B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 三百万円
五  慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者であって、前号に掲げる者以外のもの(B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 百五十万円
六  前各号に掲げる者以外の者(集団予防接種等の際の注射器の連続使用の時(母子感染者にあっては出生の時、母子感染者に類する者にあっては当該感染の原因となった事実が発生した時として厚生労働省令で定める時)から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者及びB型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 六百万円
七  前各号に掲げる者以外の者(B型肝炎ウイルスに起因して、肝硬変若しくは肝がんにり患し、又は死亡した者を除く。) 五十万円
2  前項に規定する特定B型肝炎ウイルス感染者の病態その他の同項各号のいずれかに掲げる特定B型肝炎ウイルス感染者に該当するかどうかの基準は、厚生労働省令で定める。

(訴訟手当金の支給)
第七条  特定B型肝炎ウイルス感染者又はその相続人が、確定判決等に係る訴訟又は和解若しくは調停に関し、特定B型肝炎ウイルス感染者であることを確認するための検査に要する費用として厚生労働省令で定めるものを支出したとき又は弁護士若しくは弁護士法人に報酬を支払うべきときは、支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を請求する者に対し、その者の請求に基づき、訴訟手当金を支給する。
2  訴訟手当金の額は、前項に規定する厚生労働省令で定める費用に係るものにあっては当該検査に通常要する費用を考慮して厚生労働省令で定める額とし、弁護士又は弁護士法人に支払うべき報酬に係るものにあっては当該者に支給される特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額に百分の四を乗じて得た額とする。
3  第三条第二項及び第三項の規定は訴訟手当金の支給について、第五条の規定は訴訟手当金の支給の請求について準用する。

(追加給付金の支給)
第八条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を受けた特定B型肝炎ウイルス感染者であって、B型肝炎ウイルスに起因して新たに第六条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当するに至ったものに対し、その者の請求に基づき、追加給付金を支給する。
2  第三条第二項及び第三項の規定は、追加給付金の支給について準用する。

(追加給付金の支給手続)
第九条  追加給付金の支給の請求をするには、厚生労働省令で定めるところにより、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を受けた特定B型肝炎ウイルス感染者がB型肝炎ウイルスに起因して、第六条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当していることを証明する医師の診断書を提出しなければならない。

(追加給付金の請求期限)
第十条  追加給付金の支給の請求は、その請求をする者が、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の支給を受けた特定B型肝炎ウイルス感染者がB型肝炎ウイルスに起因して新たに第六条第一項第一号から第三号までのいずれかに該当するに至ったことを知った日から起算して三年以内に行わなければならない。

(追加給付金の額)
第十一条  追加給付金の額は、第六条第一項第一号から第三号までに掲げる特定B型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、同項第一号から第三号までに定める額から、次の各号に掲げる場合に応じ、それぞれ当該各号に定める額を控除した額とする。
一  初めて追加給付金の支給を受ける場合 第三条第一項の規定により支給された特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(第六条第一項第四号、第五号又は第七号に掲げる者に対して支給されたものを除く。次号において同じ。)の額
二  既に追加給付金の支給を受けたことがある場合 第三条第一項の規定により支給された特定B型肝炎ウイルス感染者給付金の額及び第八条第一項の規定により支給された追加給付金の額の合計額

(定期検査費の支給)
第十二条  支払基金は、確定判決等において第六条第一項第七号に該当する者であることを証された特定B型肝炎ウイルス感染者(追加給付金の支給を受けた者を除く。以下「特定無症候性持続感染者」という。)が、判決確定日等以後に、病院又は診療所から慢性B型肝炎又は肝がんの発症を確認するための定期的な検査であって厚生労働省令で定めるもの(以下「定期検査」という。)を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、定期検査費を支給する。
2  定期検査費の支給の請求は、その請求をすることができる時から五年を経過したときは、することができない。
3  定期検査費の額は、当該定期検査に要する費用の額から、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)その他の政令で定める法律(以下「健康保険法 等」という。)の規定により当該特定無症候性持続感染者が受け、又は受けることができた当該定期検査に関する給付の額を控除した額とする。
4  前項の定期検査に要する費用の額は、健康保険の療養に要する費用の額の算定方法の例により算定するものとする。ただし、現に要した費用の額を超えることができない。
5  第三条第二項及び第三項の規定は、定期検査費の支給について準用する。

(母子感染防止医療費の支給)
第十三条  支払基金は、特定無症候性持続感染者が出産した場合において、当該特定無症候性持続感染者又はその子(以下「特定無症候性持続感染者の子」という。)が、判決確定日等以後に、病院又は診療所から当該特定無症候性持続感染者の子がB型肝炎ウイルスに感染することを防止するための検査又は血液製剤若しくはワクチンの投与であって厚生労働省令で定めるもの(以下「母子感染防止医療」という。)を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、母子感染防止医療費を支給する。
2  母子感染防止医療費の額は、当該母子感染防止医療に要する費用の額から、健康保険法 等の規定により当該特定無症候性持続感染者又は当該特定無症候性持続感染者の子が受け、又は受けることができた当該母子感染防止医療に関する給付の額を控除した額とする。
3  第三条第二項及び第三項の規定は母子感染防止医療費の支給について、前条第二項の規定は母子感染防止医療費の支給の請求について、同条第四項の規定は前項の母子感染防止医療に要する費用の額の算定について準用する。

(世帯内感染防止医療費の支給)
第十四条  支払基金は、判決確定日等以後に特定無症候性持続感染者と同一の世帯に属する者となった者(母子感染防止医療の対象となる者を除く。以下「特定無症候性持続感染者の同一世帯所属者」という。)が、判決確定日等以後に、病院又は診療所からB型肝炎ウイルスに感染することを防止するための検査又はワクチンの投与であって厚生労働省令で定めるもの(以下「世帯内感染防止医療」という。)を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、世帯内感染防止医療費を支給する。
2  世帯内感染防止医療費の額は、当該世帯内感染防止医療に要する費用の額から、健康保険法 等の規定により当該特定無症候性持続感染者の同一世帯所属者が受け、又は受けることができた当該世帯内感染防止医療に関する給付の額を控除した額とする。
3  第三条第二項及び第三項の規定は世帯内感染防止医療費の支給について、第十二条第二項の規定は世帯内感染防止医療費の支給の請求について、同条第四項の規定は前項の世帯内感染防止医療に要する費用の額の算定について準用する。

(定期検査手当の支給)
第十五条  支払基金は、第十二条第一項の規定により特定無症候性持続感染者が定期検査を受けたときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、年を単位として定期検査二回までに限り、定期検査手当を支給する。
2  定期検査手当の額は、定期検査一回につき一万五千円とする。
3  第三条第二項及び第三項の規定は定期検査手当の支給について、第十二条第二項の規定は定期検査手当の支給の請求について準用する。

(定期検査費及び母子感染防止医療費の支給の特例)
第十六条  支払基金は、特定無症候性持続感染者に対し、その者の請求に基づき、特定B型肝炎ウイルス感染者定期検査費等受給者証(以下この条において「受給者証」という。)を交付する。
2  特定無症候性持続感染者が、受給者証を提示して、健康保険法第六十三条第三項第一号 に規定する保険医療機関その他病院又は診療所であって厚生労働省令で定めるもの(以下「保険医療機関等」という。)から定期検査又は母子感染防止医療を受けた場合においては、支払基金は、定期検査費又は母子感染防止医療費(特定無症候性持続感染者に対する母子感染防止医療に係る部分に限る。以下この条及び第二十四条において同じ。)として当該特定無症候性持続感染者に支給すべき額の限度において、その者が当該定期検査又は母子感染防止医療に関し当該保険医療機関等に支払うべき費用を、当該特定無症候性持続感染者に代わり、当該保険医療機関等に支払うことができる。
3  前項の規定による支払があったときは、当該特定無症候性持続感染者に対し、定期検査費又は母子感染防止医療費の支給があったものとみなす。
4  健康保険法 等の規定による被保険者又は組合員である特定無症候性持続感染者が、受給者証を提示して、保険医療機関等から定期検査又は母子感染防止医療を受ける場合には、健康保険法 等の規定により当該保険医療機関等に支払うべき一部負担金は、健康保険法 等の規定にかかわらず、当該定期検査又は母子感染防止医療に関し支払基金が第二項の規定による支払をしない旨の決定をするまでは、支払うことを要しない。

第十七条  支払基金は、前条第二項の規定による支払をなすべき額を決定するに当たっては、社会保険診療報酬支払基金法 (昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会、国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号)に定める国民健康保険診療報酬審査委員会その他政令で定める医療に関する審査機関の意見を聴かなければならない。
2  支払基金は、前条第二項の規定による支払に関する事務を国民健康保険団体連合会その他厚生労働省令で定める者に委託することができる。

(損害賠償との調整)
第十八条  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金、訴訟手当金、追加給付金、定期検査費、母子感染防止医療費、世帯内感染防止医療費又は定期検査手当(以下「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等」という。)の支給を受ける権利を有する者に対し、同一の事由について、国により損害のてん補がされた場合(この法律の施行前に、既に国により損害のてん補がされている場合を含む。)においては、支払基金は、その価額の限度において特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等を支給する義務を免れる。
2  国が国家賠償法 (昭和二十二年法律第百二十五号)、民法 (明治二十九年法律第八十九号)その他の法律による損害賠償の責任を負う場合において、支払基金がこの法律による特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等を支給したときは、同一の事由については、国は、その価額の限度においてその損害賠償の責任を免れる。

(他の法令による給付との調整)
第十九条  定期検査費、母子感染防止医療費又は世帯内感染防止医療費(第二十三条第一項において「定期検査費等」という。)は、特定無症候性持続感染者、特定無症候性持続感染者の子又は特定無症候性持続感染者の同一世帯所属者に対し、健康保険法 等以外の法令(条例を含む。)の規定により定期検査、母子感染防止医療又は世帯内感染防止医療(同項において「定期検査等」という。)に関する給付が行われるべき場合には、その給付の限度において、支給しない。

(非課税)
第二十条  租税その他の公課は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等として支給を受けた金品を標準として、課することができない。

(不正利得の徴収)
第二十一条  偽りその他不正の手段により特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給を受けた者があるときは、支払基金は、国税徴収の例により、その者から、その支給を受けた特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2  前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

(公務所等への照会)
第二十二条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関し必要があると認めるときは、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

(定期検査等を行った者等に対する報告の徴収等)
第二十三条  支払基金は、定期検査費等の支給に関し必要があると認めるときは、当該定期検査費等に係る定期検査等を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った定期検査等につき、報告若しくは診療録その他の物件の提示を求め、又は当該職員に質問させることができる。
2  前項の規定による質問を行う場合においては、当該職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3  第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(保険医療機関等に対する報告の徴収等)
第二十四条  支払基金は、第十六条第二項の規定による保険医療機関等に対する定期検査費又は母子感染防止医療費の支払に関し必要があると認めるときは、保険医療機関等の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員に、保険医療機関等についてその管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類を検査させることができる。
2  前条第二項の規定は前項の規定による検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。
3  支払基金は、保険医療機関等の管理者が、正当な理由がなく第一項の規定による報告の求めに応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は正当な理由がなく同項の同意を拒んだときは、当該保険医療機関等に対する定期検査費又は母子感染防止医療費の支払を一時差し止めることができる。

(秘密保持義務)
第二十五条  支払基金の役員若しくは職員又はこれらの職にあった者は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関して知ることができた秘密を漏らしてはならない。
   第三章 社会保険診療報酬支払基金の特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務


(支払基金の業務)
第二十六条  支払基金は、社会保険診療報酬支払基金法第十五条 に規定する業務のほか、第一条に規定する目的を達成するため、次に掲げる業務を行う。
一  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等を支給すること。
二  前号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
2  前項に規定する業務は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務という。

(業務方法書)
第二十七条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、当該業務の開始前に、業務方法書を作成し、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする。
2  前項の業務方法書に記載すべき事項は、厚生労働省令で定める。

(区分経理)
第二十八条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に係る経理については、その他の業務に係る経理と区分して、特別の会計を設けて行わなければならない。

(予算等の認可)
第二十九条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、予算、事業計画及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、厚生労働大臣の認可を受けなければならない。これを変更するときも、同様とする。

(財務諸表等)
第三十条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、財産目録、貸借対照表及び損益計算書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に厚生労働大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2  支払基金は、前項の規定により財務諸表を厚生労働大臣に提出するときは、厚生労働省令で定めるところにより、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
3  支払基金は、第一項の規定による厚生労働大臣の承認を受けたときは、遅滞なく、財務諸表又はその要旨を官報に公告し、かつ、財務諸表及び附属明細書並びに前項の事業報告書、決算報告書及び監事の意見書を、各事務所に備えて置き、厚生労働省令で定める期間、一般の閲覧に供しなければならない。

(利益及び損失の処理)
第三十一条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は繰越欠損金として整理しなければならない。
3  支払基金は、予算をもって定める金額に限り、第一項の規定による積立金を特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に要する費用(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務の事務の執行に要する費用を含む。第三十八条において同じ。)に充てることができる。

(短期借入金)
第三十二条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し、厚生労働大臣の認可を受けて、短期借入金をすることができる。
2  前項の規定による短期借入金は、当該事業年度内に償還しなければならない。ただし、資金の不足のため償還することができないときは、その償還することができない金額に限り、厚生労働大臣の認可を受けて、これを借り換えることができる。
3  前項ただし書の規定により借り換えた短期借入金は、一年以内に償還しなければならない。

(余裕金の運用)
第三十三条  支払基金は、次の方法によるほか、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に係る業務上の余裕金を運用してはならない。
一  国債その他厚生労働大臣が指定する有価証券の保有
二  銀行その他厚生労働大臣が指定する金融機関への預金
三  信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律 (昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項 の認可を受けた金融機関をいう。)への金銭信託で元本補てんの契約があるもの

(協議)
第三十四条  厚生労働大臣は、次の場合には、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
一  第三十二条第一項又は第二項の認可をしようとするとき。
二  前条第一号又は第二号の指定をしようとするとき。

(報告の徴収等)
第三十五条  厚生労働大臣は、支払基金又は第十七条第二項の規定による委託を受けた者(以下「受託者」という。)について、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に関し必要があると認めるときは、その業務又は財産の状況に関する報告を徴し、又は当該職員に実地にその状況を検査させることができる。ただし、受託者に対しては、当該受託業務の範囲内に限る。
2  第二十三条第二項の規定は前項の規定による検査について、同条第三項の規定は前項の規定による権限について準用する。

(社会保険診療報酬支払基金法 の適用の特例)
第三十六条  第十七条第一項の規定に基づき社会保険診療報酬支払基金法 に定める審査委員会が意見を述べる場合における同法第十六条第一項 の規定の適用については、同項 中「行うため」とあるのは、「行うため並びに特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法(平成二十三年法律第百二十六号)第十七条第一項の規定に基づき意見を述べるため」とする。
2  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務は、社会保険診療報酬支払基金法第三十二条第二項 の規定の適用については、同法第十五条 に規定する業務とみなす。
   第四章 費用


(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金)
第三十七条  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に要する費用(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務の事務の執行に要する費用を除く。)に充てるため、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金を設ける。
2  特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金は、次条の規定により交付された資金及び当該特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金の運用によって生じた利子その他の収入金の合計額に相当する額から特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務の事務の執行に要する費用に相当する金額を控除した金額をもって充てるものとする。
3  第三十三条及び第三十四条(第二号に係る部分に限る。)の規定は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金の運用について準用する。
4  支払基金は、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務を廃止する場合において、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給基金に残余があるときは、当該残余の額を国庫に納付しなければならない。

(交付金)
第三十八条  政府は、政令で定めるところにより、支払基金に対し、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に要する費用に充てるための資金を交付するものとする。
   第五章 雑則


(戸籍事項の無料証明)
第三十九条  市町村長(特別区及び地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 に規定する指定都市においては、区長とする。)は、支払基金又は特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給を受けようとする者に対して、当該市町村(特別区を含む。)の条例で定めるところにより、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給を受けようとする者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。

(経過措置)
第四十条  この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができる。

(厚生労働省令への委任)
第四十一条  この法律に定めるもののほか、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給の請求の手続、特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給関係業務に係る支払基金の財務及び会計に関し必要な事項その他この法律を実施するため必要な事項は、厚生労働省令で定める。
   第六章 罰則


第四十二条  第二十五条の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第四十三条  支払基金又は受託者の役員又は職員が、第三十五条第一項の規定により報告を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したときは、五十万円以下の罰金に処する。

第四十四条  支払基金の役員が次の各号のいずれかに該当するときは、二十万円以下の過料に処する。
一  この法律により厚生労働大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかったとき。
二  第三十三条(第三十七条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

第四十五条  第二十三条第一項の規定により報告若しくは診療録その他の物件の提示を求められて、これに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による質問に対して、答弁せず、若しくは虚偽の答弁をした者は、十万円以下の過料に処する。


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