No.1347|犯罪を犯してしまった時

前科記録の管理方法

刑事|前科記録管理の流れ|既決犯罪通知書と犯罪人名簿の意義

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文
  6. 参照判例

質問

私には万引きで罰金の前科がありますが、この記録はどのように管理されているのでしょうか。考え出すと不安になって夜も眠れなくなってしまいました。

回答

1 有罪判決を受け、これが判決確定すると、事件記録は、「刑事確定訴訟記録」となり、刑事確定訴訟記録法に基き、厳重に管理されます。

2 有罪判決が確定し、刑の執行を受ける段階になると、前科の記録は、「既決犯罪通知書」にまとめられ、地方検察庁本庁において電子計算機(つまりコンピューター)に記録が入力されます。これは、法務省令「犯歴事務規程」によって手続が定められています。この記録は、対象者が死亡するまで抹消されませんが、厳重に管理されており、検察官又は検察事務官が職務上の必要に基いて前科照会することしかできません。

3 「既決犯罪通知書」は、検察庁から、対象者の本籍地の市区町村役所にも送付通知されます。本籍地の市区町村では「犯罪人名簿」が作成されますが、厳重に管理されており、法令の根拠なく外部に前科事実が漏洩することはありません。

4 新聞報道された刑事事件については、有料検索ですが、いつでも誰でも検索することができます。

5 その他本件に関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

1 刑事確定訴訟記録法4条の趣旨

有罪判決を受け、これが判決確定すると、事件記録は、「刑事確定訴訟記録」となり、刑事確定訴訟記録法に基き、厳重に管理されます。

記録の保管は、刑事事件の一審を担当した検察庁に保管されます(刑事確定訴訟記録法2条1項)。日本国憲法37条1項で、「すべての刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と規定されている事を受け、確定記録も原則公開である旨が刑事確定訴訟記録法4条で規定されています。公開裁判の目的は刑事裁判の内容を一般国民に開示して監視させ、適正公平、迅速な刑事手続きを保障して被告人の人身、財産の自由を守り、最終的に公正な法社会秩序を形成しようとしています。刑事裁判に対する国民の監視を実質的に保障しようとすれば、刑事記録の閲覧も基本的に不可欠のものとなります。

しかし、刑事記録は被告人の前科の内容を記載するものですから、正当な理由がなく濫用されるともともと被告人の基本的人権を守るための公開の原則が、被告人の更生や名誉権や、生活の平穏を事実上侵害することになり本末転倒の結果が生じてしまいます。従って、保管検察官の裁量により、正当な理由の無い第三者からの閲覧申請は認められない運用になっています。刑訴53条第1項但し書き、刑事確定訴訟記録法4条はこの趣旨から規定されています。大学の研究者が研究論文作成のために閲覧するなど、極めて限られた場面に限って閲覧が認められています。記録の保管期間は、刑の重さにより1年から100年まで規定されていますが、罰金刑であれば確定から20年間となっています。刑事確定訴訟記録法4条の判例後記参照。

刑事確定訴訟記録法別表抜粋

1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する確定裁判の裁判書 100年

2 有期の懲役又は禁錮に処する確定裁判の裁判書 50年

3 罰金、拘留若しくは科料に処する確定裁判の裁判書 20年
(但し刑事確定訴訟記録法施行規則3条により、道路交通法違反の略式命令又は交通事件即決裁判が確定した場合は1年)

2 既決犯罪通知書について|犯罪事務規程

前記の「刑事確定記録」とは別に、前科の「情報」が、各地方検察庁のコンピューターに入力され、保管・管理されます。この手続方法は、法務省訓令である「犯歴事務規程」に従って管理されています。法務省訓令というのは、法務大臣の職務権限に属する事項についての職員に対する命令をまとめたものです。

電算処理の対象となる事件は、次の事件を除く全事件です(犯歴事務規程2条)。

(1)本邦に本籍がある明治以前の出生者の事件

(2)本邦に本籍のない大正以前の出生者の事件

(3)本籍が明らかでない者の事件

(4)法人又は団体の事件

(5)道路交通法、道路交通取締法、道路交通取締法施行令、道路交通取締令又は自動車の保管場所の確保等に関する法律違反の罪に係る裁判であって、罰金以下の刑に処し、又は刑を免除した事件

電算処理の対象となる事件については、確定した裁判を担当した検察官の属する検察庁の検察官が「既決犯罪通知」を作成し、これを、検察庁の所在地を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に送付します(犯歴事務規程3条3項、刑事訴訟法472条)。

「既決犯罪通知」を受領した犯歴係事務官は、この情報をコンピューターに入力し、いつでも前科の照会に応じられる態勢を整えます(犯歴事務規程3条2項)。

一度入力された犯歴(前科情報)は、基本的に訂正されることも、削除されることもありませんが、例外的に、誤りが発見されたなど「訂正すべき事項があると思料されるとき」には、「犯歴事項訂正通知書」が作成され、これが管轄する検察庁の犯歴係事務官に送付され、訂正されることになります(犯歴事務規程12条)。また、犯歴係事務官が対象者の死亡を知ったときは、「死亡通知書」が作成され、コンピューターに入力された犯歴事項が抹消されます(犯歴事務規程18条)。

犯歴の照会と回答は、「検察官」又は「検察事務官」が、職務上、刑事事件の処理に必要な限りにおいて、「前科照会書」を作成し、記録を管轄する犯歴係事務官に送付して行います。犯歴係事務官の回答は「前科調書」を作成して返答することにより行われます(犯歴事務規程13条)。いずれも極めて厳格に運用されており、第三者が取得することは原則としてできない仕組みになっています。

3 市区町村が管理する犯罪人名簿

罰金以上の犯歴は、検察庁のコンピューターに入力されると同時に、「既決犯罪通知書」が、対象者の本籍地の市区町村長に対して送付され、市区町村では、「犯罪人名簿」が作成されます(犯歴事務規程3条4項)。

この、各市区町村の「犯罪人名簿」は、主として、市区町村が所管する各種選挙の実行の際に、「選挙権」と「被選挙権」の有無を確認されるために使われています。前科の情報は重大なプライバシー情報になりますので、一般的に市役所で「無犯罪証明書」を発行するような手続は行われていませんが、例外的に、外国官公署から国際結婚や永住権申請などのために証明書発行を求められた場合には、「証明書発行を求められている事を示す資料」を添付して、各都道府県警察に申請すれば発行されるようです。

「犯罪人名簿」の運用については、各自治体で条例や規則により規定されています。東京都の例で、犯罪人名簿が使用されうる場面について列挙しますので、参考にして下さい。いずれも法令に根拠のある権限の発動に必要な調査で、第三者が自由に照会できる仕組みにはなっていませんのでご安心下さい。

(1)選挙資格の調査

(2)警察署、検察庁、裁判所からの照会

(3)行政庁が医師、弁護士などの資格者を登録する際の欠格事由の調査

(4)国家公務員、地方公務員採用の際の調査

4 1984年、刑事事件の新聞記事コンピュータ化

新聞報道された刑事事件については、新聞記事が概ね1984年以降コンピュータ入力されデータベース化されておりますので、有料検索となりますが、何時でも誰でも費用を支払えば検索することができてしまいます。刑事事件の報道は、公益性の高い場合に限って行われておりますので、ご質問のケースでは報道されていないと思われますが、万引き事案でも、重要な公職に在任している公務員が行った場合には報道される可能性はあります。報道することについても、報道された記事を検索してこれを外部に公表することについても、いずれも名誉毀損罪が成立する可能性がある行為となりますので、一般的にはご心配には及びませんが、万一、第三者による公表が行われている場合には、代理人弁護士を依頼して、公表を停止するよう請求するなどの手段が考えられますのでお困りの際はお近くの法律事務所にご相談下さい。

参考URL

以上

関連事例集

  • その他の事例集は下記のサイト内検索で調べることができます。

Yahoo! JAPAN

参照条文
刑事訴訟法

第五十三条 何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。
○2 弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は、前項の規定にかかわらず、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があつて特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを閲覧することができない。
○3 日本国憲法第八十二条第二項 但書に掲げる事件については、閲覧を禁止することはできない。
○4 訴訟記録の保管及びその閲覧の手数料については、別に法律でこれを定める。

※犯罪人名簿の取扱について(東京都例規)

昭和二一年一一月二一日
次長通牒官行発第三九〇号
区、市、町村、支所長

標記名簿は大正六年四月内務省訓令第一号本籍人犯罪人名簿整備方及昭和二年内務省訓令第三号入寄留者犯罪人名簿整備方により、それぞれ整備せられておることと思ふがこれは何れも選挙資格のために、調製保存しているのであるから、警察署、検事局、裁判所等の照会に対するものは格別これを身元証明等のために使用するやうなことは、今後絶対にこれを避けるのは勿論、恩赦に因り資格を回復した者については速に関係部分を消除整理する等その者の氏名等を全く認知することができないやうにし、犯罪人の処遇上些かも遺憾なきやう処置せられたい。

――――――――――

昭和二二年九月九日
副知事通牒総行収第七五号
各市区町村長

標記の件に関しては、客年十一月二十一日官行発第三百九十号で通牒したところがあるが、今回〔内務省地方局長〕よりの通牒の次第もあるので、該通牒中「警察、検事局、裁判所等」とあるのは、警察及び司法関係庁のみならず、行政庁が獣医師免許、装蹄師免許等各種の免許処分又は弁護士、計理士、弁理士等の登録等をする際において、法律により申請者の資格調査を必要とする場合又は下級行政庁等が当該申請書を経由進達する必要がある場合においては、主務大臣、都道府県知事、市町村長等を含む意であると解し今後これ等の照会に対し犯罪人名簿を使用するも差支ないから御了知相成りたい。

――――――――――

昭和二五年一月一三日
総地収第二八八二号
区市町村長

標記については昭和二十一年十一月二十一日官行発第三九〇号及び昭和二十二年九月九日総行収第七五号で通達したところであるが、今回地方自治庁連絡行政部長から、国外渡航出願者の身元証明書及び弁護士名簿登録の際弁護士会より照会があつたときの犯罪人名簿の取扱について、左記の通り通達があつたから今後は右通達の趣旨により取り扱われるよう致されたい。

発連第九四号
昭和二十四年十二月十九日
地方自治庁連絡行政部長
各都道府県知事 殿
犯罪人名簿の取扱について

首題の件については、昭和二十一年十一月十二日内務省発地第二七九号及び昭和二十二年八月十四日同第一六〇号により通達したところであるが、今回弁護士法の改正(昭和二十四年法律第二〇五号)により、弁護士となるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならなくなつたので、この登録の経由進達のため、弁護士会から弁護士法に基き弁護士名簿登録申請者のため資格調査上必要な照合があつた場合には、これに対しても身元証明を与える取扱と致されたい。

なお、右の旨、貴管下市町村に通達されたい。

発連第九五号
昭和二十四年十二月十九日
地方自治庁連絡行政部長
各都道府県知事 殿

刑罰に関する身分証明書発給方について

このことについては、従来、昭和二十一年十一月十二日内務省発地第二七九号及び昭和二十二年八月十四日同第一六〇号通牒によつて、本人からの申請に対しては証明書を発給しない取扱となつているのであるが、連合国最高司令部に対し国外渡航許可出願用として、刑罰に関する身分証明書の提出を必要とする場合において渡航出願ないし査証取付のための証明書発給出願があつたときは、これに対しても身元証明を与える取扱といたされたい。なお証明書の発給に当り必要と認めた場合は、市町村長は、本人に対して渡航許可出願をするものであることを認めるに足る呼寄状、費用負担証明書、外務省又は連絡調整事務局発給の経歴証明書、都道府県の発給する国外渡航に関する証明書等のいずれかの提示を求めて差し支えないと思われるから申し添える。

なお、右の旨、貴管下市町村に通達されたい。

――――――――――
昭和二六年四月二一日

副知事通達総地発第三一二号
各市、区、町、村長

標記については、昭和二十一年十一月内務省発地第二七九号、同二十二年八月十四日内務省発地第一六〇号及び昭和二十四年十二月十九日発連第九四号、同第九五号通達に基き御取扱のことと思うが、今般地方自治庁に照会の上、法律に基き調査を必要とする場合関係官公署から犯罪の有無につき照会があつたときは、犯罪人名簿を使用しさしつかえないから、自今下記照復の趣旨により取り扱われたい。

記 総地発第一八号
昭和二十六年一月二十日

地方自治庁長官殿

東京都知事 安井誠一郎

犯罪人名簿の取扱について(照会)

犯罪人名簿の取扱については、昭和二十一年十一月内務省発地第二七九号、同二十二年八月十四日内務省発地第一六〇号及び昭和二十四年十二月十九日発連第九四号、同第九五号通達の趣旨に基き管内市区町村長を指導してきたのであるが、今般管内豊島区長から、米国海軍基地に求職中の者の過去における犯罪事項の調査方を、横須賀市横須賀警察署渉外係から照会があつたが、犯罪人名簿を使用し回答してさしつかえないかとの問合せがあつた。ついては、このような場合は回答してさしつかえないと思われるし、又官公署が職員採用の場合犯罪の有無について調査に困難をきたし、多くの手数と時日を要するため、採用の時期を失することもあり、関係者に多大の迷惑をかけているので、自今国家公務員法第三十八条、地方公務員法第十六条等法律により調査を必要とする場合における官公署からの照合に対しては、犯罪人名簿を使用してさしつかえない旨管内市区町村長を指導しようと思うが、貴庁の御意見承知いたしたい。

地目乙発第六〇三号

昭和二十六年三月二十六日

東京都知事殿

地方自治庁次長

犯罪人名簿の取扱について

一月二十日付御照会の標記の件については、次の通り回答します。

一般的に義務ずけ強制する意味の指導をすることはできないが、そうでなければ設問の場合差支えないものと思料する。

※刑事確定訴訟記録法

(昭和六十二年六月二日法律第六十四号)
最終改正:平成二〇年四月二三日法律第一九号

(目的)
第一条 この法律は、刑事被告事件に係る訴訟の記録の訴訟終結後における保管、保存及び閲覧に関し必要な事項を定めることを目的とする。

(訴訟の記録の保管)
第二条 刑事被告事件に係る訴訟の記録(犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律 (平成十二年法律第七十五号)第十四条第一項 に規定する和解記録については、その謄本)は、訴訟終結後は、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官(以下「保管検察官」という。)が保管するものとする。
2 前項の規定により保管検察官が保管する記録(以下「保管記録」という。)の保管期間は、別表の上欄に掲げる保管記録の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に定めるところによる。
3 保管検察官は、必要があると認めるときは、保管期間を延長することができる。

(再審の手続のための保存)
第三条 保管検察官は、保管記録について、再審の手続のため保存の必要があると認めるときは、保存すべき期間を定めて、その保管期間満了後も、これを再審保存記録として保存するものとする。
2 再審の請求をしようとする者、再審の請求をした者又は刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)第四百四十条第一項 の規定により選任された弁護人は、保管検察官に対し、保管記録を再審保存記録として保存することを請求することができる。
3 前項の規定による請求があつたときは、保管検察官は、請求に係る保管記録を再審保存記録として保存するかどうかを決定し、請求をした者にその旨を通知しなければならない。ただし、請求に係る保管記録が再審保存記録として保存することとされているものであるときは、その旨の通知をすれば足りる。
4 再審保存記録の保存期間は、延長することができる。この場合においては、前三項の規定を準用する。

(保管記録の閲覧)
第四条 保管検察官は、請求があつたときは、保管記録(刑事訴訟法第五十三条第一項 の訴訟記録に限る。次項において同じ。)を閲覧させなければならない。ただし、同条第一項 ただし書に規定する事由がある場合は、この限りでない。
2 保管検察官は、保管記録が刑事訴訟法第五十三条第三項 に規定する事件のものである場合を除き、次に掲げる場合には、保管記録(第二号の場合にあつては、終局裁判の裁判書を除く。)を閲覧させないものとする。ただし、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合については、この限りでない。
一 保管記録が弁論の公開を禁止した事件のものであるとき。
二 保管記録に係る被告事件が終結した後三年を経過したとき。
三 保管記録を閲覧させることが公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあると認められるとき。
四 保管記録を閲覧させることが犯人の改善及び更生を著しく妨げることとなるおそれがあると認められるとき。
五 保管記録を閲覧させることが関係人の名誉又は生活の平穏を著しく害することとなるおそれがあると認められるとき。
六 保管記録を閲覧させることが裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者の個人を特定させることとなるおそれがあると認められるとき。
3 第一項の規定は、刑事訴訟法第五十三条第一項 の訴訟記録以外の保管記録について、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があると認められる者から閲覧の請求があつた場合に準用する。
4 保管検察官は、保管記録を閲覧させる場合において、その保存のため適当と認めるときは、原本の閲覧が必要である場合を除き、その謄本を閲覧させることができる。

(再審保存記録の閲覧)
第五条 保管検察官は、第三条第二項に規定する者から請求があつたときは、再審保存記録を閲覧させなければならない。
2 前条第一項ただし書及び第四項の規定は、前項の請求があつた場合に準用する。
3 保管検察官は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申出により、再審保存記録を閲覧させることができる。この場合においては、前条第四項の規定を準用する。

(閲覧者の義務)
第六条 保管記録又は再審保存記録を閲覧した者は、閲覧により知り得た事項をみだりに用いて、公の秩序若しくは善良の風俗を害し、犯人の改善及び更生を妨げ、又は関係人の名誉若しくは生活の平穏を害する行為をしてはならない。

(閲覧の手数料)
第七条 保管記録又は再審保存記録を閲覧する者は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。

(不服申立て)
第八条 第三条第二項の規定により保存の請求をした者(同条第四項において準用する同条第二項の規定により保存期間の延長の請求をした者を含む。)又は第四条第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第五条第一項の規定により閲覧の請求をした者であつて、当該請求に基づく保管検察官の保存又は閲覧に関する処分に不服があるものは、その保管検察官が所属する検察庁の対応する裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる。
2 前項の規定による不服申立てに関する手続については、刑事訴訟法第四百三十条第一項 に規定する検察官の処分の取消し又は変更の請求に係る手続の例による。

(刑事参考記録の保存及び閲覧)
第九条 法務大臣は、保管記録又は再審保存記録について、刑事法制及びその運用並びに犯罪に関する調査研究の重要な参考資料であると思料するときは、その保管期間又は保存期間の満了後、これを刑事参考記録として保存するものとする。
2 法務大臣は、学術研究のため必要があると認める場合その他法務省令で定める場合には、申出により、刑事参考記録を閲覧させることができる。この場合においては、第四条第四項及び第六条の規定を準用する。
3 刑事参考記録について再審の手続のため保存の必要があると認められる場合におけるその保存及び閲覧については、再審保存記録の保存及び閲覧の例による。
4 法務大臣は、法務省令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定に基づく権限を所部の職員に委任することができる。

(法務省令への委任)
第十条 この法律に規定するもののほか、この法律の実施に関し必要な事項は、法務省令で定める。

別表 (第二条関係)
保管記録の区分 保管期間

一 裁判書
1 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する確定裁判の裁判書 百年
2 有期の懲役又は禁錮に処する確定裁判の裁判書 五十年
3 罰金、拘留若しくは科料に処する確定裁判又は刑を免除する確定裁判の裁判書 二十年(法務省令で定めるものについては、法務省令で定める期間)
4 無罪、免訴、公訴棄却又は管轄違いの確定裁判の裁判書
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの 十五年
(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの 五年
(三) 罰金、拘留又は科料に当たる罪に係るもの 三年
5 控訴又は上告の申立てについての確定裁判(1から4までの確定裁判を除く。)の裁判書 控訴又は上告に係る被告事件についての1から4までの確定裁判の区分に応じて、その裁判の裁判書の保管期間と同じ期間
6 その他の裁判の裁判書 法務省令で定める期間
二 裁判書以外の保管記録
1 刑に処する裁判により終結した被告事件の保管記録
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に処する裁判に係るもの 五十年
(二) 二十年を超える有期の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 三十年
(三) 十年以上二十年以下の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 二十年
(四) 五年以上十年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 十年
(五) 五年未満の懲役又は禁錮に処する裁判に係るもの 五年
(六) 罰金、拘留又は科料に処する裁判に係るもの 三年(法務省令で定めるものについては、法務省令で定める期間)
2 刑の免除、無罪、免訴、公訴棄却又は管轄違いの裁判により終結した被告事件の保管記録
(一) 死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係るもの 十五年
(二) 有期の懲役又は禁錮に当たる罪に係るもの 五年
(三) 罰金、拘留又は科料に当たる罪に係るもの 三年
3 その他の保管記録 法務省令で定める期間

※刑事確定訴訟記録法施行規則(昭和六十二年十二月十四日法務省令第四十一号)

第3条法別表第二号1(六)の保管記録のうち法務省令で定めるものは、道路交通法第八章 の罪又は自動車の保管場所の確保等に関する法律第十七条 若しくは第十八条 の罪に係る被告事件についての略式手続等による訴訟の記録であつて仮納付の裁判の執行により略式命令又は交通事件即決裁判が確定したときに刑の執行を終えたこととなる事件に係るもの(正式裁判の請求があつた事件に係るものを除く。)とし、その保管期間は、一年とする。

※犯歴事務規程(法務省訓令)

最終改正 平成20年5月29日法務省刑総訓第820号 (平成20年6月1日施行)

目次
第1章 総則
第1条 目的
第2章 電算処理の対象となる犯歴の把握
第2条 電算処理の対象となる裁判
第3条 既決犯罪通知
第4条 刑執行状況等通知
第5条 戸籍事項の訂正
第6条 犯歴事項の訂正
第3章 電算処理の対象とならない犯歴の把握
第7条 既決犯罪通知
第8条 刑執行状況等通知
第9条 道交裁判の既決犯罪通知
第10条 道交裁判の刑執行状況等通知
第11条 戸籍事項の訂正
第12条 犯歴事項の訂正
第4章 犯歴の照会回答
第13条 前科照会及び前科調書
第14条 身上調査照会
第5章 とん刑者等の把握のための特別手続
第15条 とん刑者等通知
第16条 とん刑者等に係る戸籍事項及び犯歴事項の訂正
第17条 とん刑者等発見・解除通知
第6章 犯歴の抹消
第18条 犯歴の抹消
第7章 雑則
第19条 電子計算機に入力する手続
第20条 地方検察庁の本庁の所在地を管轄する区検察庁における特別取扱い
第21条 その他の特別取扱い

第1章 総則
(目的)
第1条 この規程は,犯歴の把握等に関する事務の取扱手続を規定し,これを取り扱う職員の職務とその責任を明確にし,もつてその事務の適正かつ迅速な運用を図ることを目的とする。

第2章 電算処理の対象となる犯歴の把握
(電算処理の対象となる裁判)
第2条 電子計算機により把握する裁判は,次に掲げる裁判以外の有罪の裁判(以下「電算処理対象裁判」という。)であつて,確定したものとする。
(1) 次に掲げる者(以下「非電算処理対象者」という。)に対する裁判
ア 本邦に本籍がある明治以前の出生者及び本邦に本籍がない大正以前の出生者
イ 本籍が明らかでない者
ウ 法人又は団体
(2) 道路交通法,道路交通取締法,道路交通取締法施行令,道路交通取締令又は自動車の保管場所の確保等に関する法律違反の罪に係る裁判であつて,罰金以下の刑に処し,又は刑を免除するもの(以下「道交裁判」という。)

(既決犯罪通知)
第3条 刑事訴訟法第472条の規定により裁判の執行を指揮すべき検察官(刑の執行を猶予し,刑を免除し,又は刑の執行を免除する裁判にあつては,執行を要する刑の言渡しがなされたとした場合においてその執行を指揮すべき検察官。以下「執行指揮検察官」という。)の属する検察庁の犯歴係事務官は,電算処理対象裁判が確定したときは,既決犯罪通知書(甲の1)(様式第1号),既決犯罪通知書(甲の2)(様式第2号)又は外国人既決犯罪通知書(様式第2号の2)(以下「既決犯罪通知書(甲)」という。)を作成する。
2 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(甲)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,電子計算機により当該裁判を把握する手続をする。
3 地方検察庁以外の検察庁又は地方検察庁の支部(以下「地方検察庁の本庁以外の検察庁」という。)の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(甲)を作成したときは,その検察庁の所在地(その犯歴係事務官が支部に勤務するものであるときは,その支部の所在地。以下同じ。)を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
4 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(甲)に記載されている裁判が罰金以上の刑に処する裁判(少年のときに犯した罪に係る裁判であつて,確定のときにその裁判に係る刑の執行を受け終わつたこととなるもの,刑の執行を猶予するもの及び刑の執行を免除するものを除く。)であるときは,その裁判を受けた者の戸籍事務を管掌する市区町村長(以下「本籍市区町村長」という。)に対し,その既決犯罪通知書(甲)を送付してその裁判に関し必要な事項を通知する。

(刑執行状況等通知)
第4条 電算処理対象裁判に関して別表第1の第1欄に掲げる事由が生じたときは,同表第2欄に掲げる犯歴係事務官は,同表第3欄に掲げる通知書(以下「刑執行状況等通知書(甲)」という。)を作成する。
2 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,刑執行状況等通知書(甲)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,電子計算機により当該事由を把握する手続をする。
3 地方検察庁の本庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,刑執行状況等通知書(甲)を作成したときは,その検察庁の所在地を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
4 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,刑執行状況等通知書(甲)が罰金以上の刑に処する裁判(少年のときに犯した罪に係る裁判であつて,確定のときにその裁判に係る刑の執行を受け終わつたこととなるもの,刑の執行を猶予するもの及び刑の執行を免除するものを除く。)に関して別表第1の第1欄中1から8までに掲げる事由が生じたことにより作成されたものであるときは,本籍市区町村長に対し,その刑執行状況等通知書(甲)を送付してその事由に関し必要な事項を通知する。
5 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,電算処理対象裁判が少年のときに犯した罪に係る裁判であつて,刑の執行を猶予するものであつた場合においても,刑執行状況等通知書(甲)が次の各号の一に掲げる事由が生じたことにより作成されたものであるときは,前項の手続に準じてその事由に関し必要な事項を通知する。
(1) 別表第1の第1欄中1に掲げる事由
(2) 別表第1の第1欄中3,5又は6に掲げる事由(ただし,罰金の刑に処し,その執行を猶予しない裁判に関して生じたものに限る。)

(戸籍事項の訂正)
第5条 犯歴係事務官は,有罪の裁判を受けた者の氏名,出生の年月日又は本籍若しくは国籍(以下「戸籍事項」という。)であつて,電子計算機により把握されているものについて,訂正すべき事項を知つたときは,戸籍事項訂正通知書(甲)(様式第17号)又は外国人身分事項訂正通知書(様式第17号の2)(以下「戸籍事項訂正通知書(甲)」という。)を作成する。
2 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,戸籍事項訂正通知書(甲)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,電子計算機により把握されている当該戸籍事項を訂正する手続をする。
3 地方検察庁の本庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,戸籍事項訂正通知書(甲)を作成したときは,その検察庁の所在地を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
4 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,第2項に規定する手続をしたときは,当該裁判を受けた者について第3条第1項又は前条第1項に規定する手続をした犯歴係事務官及びその者の本籍地(戸籍事項の訂正が本籍地を他の地方検察庁の管轄区域内に変更するものであるときは,変更前の本籍地)を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対し,当該戸籍事項訂正通知書(甲)を送付する。

(犯歴事項の訂正)
第6条 犯歴係事務官は,有罪の裁判及び別表第1の第1欄に掲げる事由を把握するために必要な事項のうち戸籍事項を除く事項(以下「犯歴事項」という。)であつて,電子計算機により把握されているものについて,訂正すべき事項があると思料されるときは,その犯歴事項に関して第3条第1項又は第4条第1項に規定する手続をした犯歴係事務官に対してその旨を通報する。
2 犯歴係事務官は,電子計算機により把握されている犯歴事項について,訂正すべき事項を知つた場合において,その犯歴事項に関して第3条第1項又は第4条第1項に規定する手続をしていたときは,犯歴事項訂正通知書(甲)(様式第18号)を作成する。
3 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,犯歴事項訂正通知書(甲)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,電子計算機により把握されている当該犯歴事項を訂正する手続をする。
4 地方検察庁の本庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,犯歴事項訂正通知書(甲)を作成したときは,その検察庁の所在地を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
5 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,第3項に規定する手続をした場合において,当該犯歴事項が罰金以上の刑に処する裁判(少年のときに犯した罪に係る裁判であつて,確定のときにその裁判に係る刑の執行を受け終わつたこととなるもの,刑の執行を猶予するもの及び刑の執行を免除するものを除く。)に係るものであるときは,本籍市区町村長に対し,当該犯歴事項訂正通知書(甲)を送付してその犯歴事項の訂正に関し必要な事項を通知する。

第3章 電算処理の対象とならない犯歴の把握
(既決犯罪通知)
第7条 執行指揮検察官の属する検察庁の犯歴係事務官は,非電算処理対象者に対する有罪の裁判(道交裁判を除く。)が確定したときは,次の各号に掲げる手続をする。
(1) その犯歴係事務官がその非電算処理対象者の本籍地(法人又は団体にあつては,その本店又は主たる事務所の所在地。本籍が明らかでない者又は本邦に本籍がない者にあつては,東京都。以下同じ。)を管轄する地方検察庁の本庁(以下「本籍地方検察庁」という。)の犯歴係事務官であつて,その裁判が罰金以上の刑に処するものであるときは,犯歴票(様式第19号)及び既決犯罪通知書(乙)(様式第20号)を作成し,その裁判が拘留若しくは科料に処し,又は刑を免除するものであるときは,犯歴票を作成する。ただし,同一人について既に保管中の犯歴票があるときは,新たな犯歴票の作成に代えて,これに所定の事項を記入する。
(2) その犯歴係事務官がその非電算処理対象者の本籍地を管轄する地方検察庁以外の検察庁又はその地方検察庁の支部(以下「本籍地方検察庁以外の検察庁」という。)の犯歴係事務官であるときは,既決犯罪通知書(乙)を作成する。
2 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,次項の規定により既決犯罪通知書(乙)の送付を受けたときは,犯歴票を作成する。ただし,同一人について既に保管中の犯歴票があるときは,新たな犯歴票の作成に代えて,これに所定の事項を記入する。
3 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(乙)を作成したときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対して送付する。
4 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(乙)に記載されている裁判が罰金以上の刑に処するものであるときは,本籍市区町村長に対し,その既決犯罪通知書(乙)を送付してその裁判に関し必要な事項を通知する。
5 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,その者に係る犯歴票を作成したとき又は第11条第3項の規定によりその送付を受けたときは,当該裁判を受けた者の氏名を別表第2により数字化し,その犯歴票を数字の順に整理して保管する。ただし,本籍が明らかでない者,本邦に本籍がない者(その氏名を漢字で表示するものを除く。),法人又は団体に係る犯歴票の整理については,適宜な方法によることができる。

(刑執行状況等通知)
第8条 非電算処理対象者に対する有罪の裁判(道交裁判を除く。)に関して別表第1の第1欄に掲げる事由が生じたときは,同表第2欄に掲げる犯歴係事務官は,次の各号に掲げる手続をする。
(1) その犯歴係事務官が非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官であるときは,その者に係る犯歴票にその事由を把握するために必要な事項を記入し,その事由が同表第1欄中1から8までに掲げるものであつて,罰金以上の刑に処する裁判に関して生じたものであるときは,併せて同表第4欄に掲げる通知書を作成する。
(2) その犯歴係事務官が非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官であるときは,同表第4欄に掲げる通知書(以下「刑執行状況等通知書(乙)」という。)を作成する。
2 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,次項の規定により刑執行状況等通知書(乙)の送付を受けたときは,その者に係る犯歴票にその刑執行状況等通知書(乙)に係る事由を把握するために必要な事項を記入する。
3 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,刑執行状況等通知書(乙)を作成したときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対して送付する。
4 非電算処理対象者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,刑執行状況等通知書(乙)が罰金以上の刑に処する裁判に関して別表第1の第1欄中1から8までに掲げる事由が生じたことにより作成されたものであるときは,本籍市区町村長に対し,その刑執行状況等通知書(乙)を送付してその事由に関し必要な事項を通知する。

(道交裁判の既決犯罪通知)
第9条 執行指揮検察官の属する検察庁の犯歴係事務官は,道交裁判が確定したときは,既決犯罪通知書(丙)(様式第31号)を作成する。ただし,その道交裁判が道路交通法等違反事件迅速処理のための共用書式又は反則金不納付事件迅速処理のための共用書式によつて処理されたものであるときは,道路交通法等違反事件迅速処理のための共用書式の第2枚目又は反則金不納付事件迅速処理のための共用書式の第1枚目(以下「切符原票」という。)をもつて既決犯罪通知書(丙)に代える。
2 道交裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(丙)を作成したとき若しくは切符原票をもつてこれに代えたとき又は次項若しくは第11条第3項の規定によりこれらの送付を受けたときは,第7条第5項の例に準じて保管する。
3 道交裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,既決犯罪通知書(丙)を作成したとき又は切符原票をもつてこれに代えたときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対してこれらを送付する。

(道交裁判の刑執行状況等通知)
第10条 道交裁判に関して別表第1の第1欄中1から3まで及び5から7までに掲げる事由が生じたときは,同表第2欄に掲げる犯歴係事務官は,次の各号に掲げる手続をする。
(1) その犯歴係事務官が道交裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官であるときは,その者に係る既決犯罪通知書(丙)又は切符原票にその事由を把握するために必要な事項を記入する。
(2) その犯歴係事務官が道交裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官であるときは,刑執行状況等通知書(乙)を作成する。
2 道交裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,次項の規定により刑執行状況等通知書(乙)の送付を受けたときは,その者に係る既決犯罪通知書(丙)又は切符原票にその刑執行状況等通知書(乙)に係る事由を把握するために必要な事項を記入する。
3 道交裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,刑執行状況等通知書(乙)を作成したときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対して送付する。

(戸籍事項の訂正)
第11条 犯歴係事務官は,犯歴票,既決犯罪通知書(丙)又は切符原票(以下「犯歴票等」という。)に記載されている戸籍事項について,訂正すべき事項があると思料されるときは,その犯歴票等を保管する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対してその旨を通報する。
2 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,その庁の保管する犯歴票等に記載されている戸籍事項について,訂正すべき事項を知つたときは,その犯歴票等にその戸籍事項を訂正するために必要な事項を記入するとともに,戸籍事項訂正通知書(乙)(様式第32号)を作成し,その戸籍事項に係る者に関して第7条第1項,第8条第1項,第9条第1項又は第10条第1項に規定する手続をした犯歴係事務官に対して送付する。
3 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,その庁の保管する犯歴票等に係る戸籍事項の訂正が非電算処理対象者又は道交裁判を受けた者の本籍地を他の地方検察庁の管轄区域内に変更するものであるときは,新たにその犯歴票等を保管することとなる地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対し,犯歴票等保管庁変更通知書(様式第33号)にその犯歴票等を添付して送付する。

(犯歴事項の訂正)
第12条 犯歴係事務官は,犯歴票等に記載されている犯歴事項について,訂正すべき事項があると思料されるときは,その犯歴事項に関して第7条第1項,第8条第1項,第9条第1項又は第10条第1項に規定する手続をした犯歴係事務官に対してその旨を通報する。
2 犯歴係事務官は,犯歴票等に記載されている犯歴事項について,訂正すべき事項を知つた場合において,その犯歴事項に関して第7条第1項,第8条第1項,第9条第1項又は第10条第1項に規定する手続をしていたときは,次の各号に掲げる手続をする。
(1) その犯歴係事務官がその犯歴票等を保管する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官であるときは,その犯歴票等にその犯歴事項を訂正するために必要な事項を記入し,その犯歴事項が罰金以上の刑に処する裁判(道交裁判を除く。)に係るものであるときは,併せて犯歴事項訂正通知書(乙)(様式第34号)を作成する。
(2) その犯歴係事務官がその犯歴票等を保管する地方検察庁以外の検察庁又はその地方検察庁の支部の犯歴係事務官であるときは,犯歴事項訂正通知書(乙)を作成し,その犯歴票等を保管する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
3 犯歴係事務官は,前項第2号の規定により犯歴事項訂正通知書(乙)の送付を受けたときは,当該犯歴票等に当該犯歴事項を訂正するために必要な事項を記入する。
4 犯歴係事務官は,第2項第1号の規定により犯歴事項訂正通知書(乙)を作成したとき又は同項第2号の規定により送付を受けた犯歴事項訂正通知書(乙)に記載されている犯歴事項が罰金以上の刑に処する裁判(道交裁判を除く。)に係るものであるときは,本籍市区町村長に対し,その犯歴事項訂正通知書(乙)を送付してその犯歴事項の訂正に関し必要な事項を通知する。

第4章 犯歴の照会回答
(前科照会及び前科調書)
第13条 検察官又は検察事務官が,刑事事件について,他の検察庁の犯歴係事務官に対し,特定の者が有罪の裁判を受けこれが確定した事実の有無を照会する場合には,前科照会書(様式第35号)による。ただし,急速を要するときは,適宜な方法によることができる。
2 犯歴係事務官が,特定の者が有罪の裁判を受けこれが確定した事実を明らかにする書面を作成する場合には,前科調書(甲)(様式第37号),前科調書(乙)(様式第38号),前科調書(丙)(様式第39号)又は前科調書(丁)(様式第40号)による。

(身上調査照会)
第14条 検察官又は検察事務官が,市区町村長に対して書面で身分関係を照会する場合には,身上調査照会書(様式第41号)による。

第5章 とん刑者等の把握のための特別手続
(とん刑者等通知)
第15条 犯歴係事務官は,別表第3の第1欄に掲げる者であつて,所在不明となつたもの(以下「とん刑者等」という。)があることを知つたときは,同表第2欄に掲げる通知書等を作成する。ただし,とん刑者等に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官にあつては,同一人について既に保管中のとん刑者等カード(1)及びとん刑者等カード(2)(以下「とん刑者等カード」という。)があるときは,新たなとん刑者等カードの作成に代えて,これに所定の事項を記入する。
2 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,とん刑者通知書(甲),道交とん刑者等通知書(甲)若しくは外国人道交とん刑者等通知書(甲)(以下「とん刑者等通知書(甲)」という。)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,電子計算機により当該とん刑者等を把握する手続をする。
3 地方検察庁の本庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,とん刑者等通知書(甲)を作成したときは,その検察庁の所在地を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
4 とん刑者等に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,とん刑者通知書(乙),道交とん刑者等通知書(乙),外国人道交とん刑者等通知書(乙)若しくはとん刑者等カード(以下「とん刑者等通知書(乙)」という。)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,犯歴票等とともにそれぞれ第7条第5項の例に準じて保管する。
5 とん刑者等に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,とん刑者等通知書(乙)を作成したときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対して送付する。

(とん刑者等に係る戸籍事項及び犯歴事項の訂正)
第16条 第5条,第11条及び第12条の規定は,とん刑者等に係る戸籍事項及び犯歴事項の訂正について準用する。

(とん刑者等発見・解除通知)
第17条 犯歴係事務官は,とん刑者等の所在を知つたときは,とん刑者等発見通知書(様式第48号)を作成し,第15条第1項に規定する手続をした犯歴係事務官(以下「通知庁犯歴係事務官」という。)に対して送付する。
2 通知庁犯歴係事務官は,とん刑者等について,所在発見,時効完成等の事由(別表第3の第1欄の1に掲げる者及び同表第1欄の2に掲げる者であつて,その者に関して第3条第1項,第7条第1項又は第9条第1項に規定する手続がなされているものの死亡を除く。)によりその把握をする必要がなくなつたことを知つたときは,別表第3の第3欄に掲げる通知書を作成する。ただし,その犯歴係事務官がそのとん刑者等に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官であるときは,とん刑者等解除通知書(乙の2)の作成に代えて,そのとん刑者等に係るとん刑者等通知書(乙)を廃棄し,又はそのとん刑者等通知書(乙)の記載事項のうち,その把握をする必要がなくなつた事項を抹消する。
3 地方検察庁の本庁の犯歴係事務官は,とん刑者解除通知書(甲)若しくは道交とん刑者等解除通知書(甲)(以下「とん刑者等解除通知書(甲)」という。)を作成したとき又は次項の規定によりその送付を受けたときは,電子計算機によりその通知書に係る者をとん刑者等として把握するために必要とされた事項のうち,その把握をする必要がなくなつた事項を抹消する手続をする。
4 地方検察庁の本庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,とん刑者等解除通知書(甲)を作成したときは,その検察庁の所在地を管轄する地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対して送付する。
5 とん刑者等に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,次項の規定によりとん刑者解除通知書(乙の1),とん刑者等解除通知書(乙の2)又は道交とん刑者等解除通知書(乙)(以下「とん刑者等解除通知書(乙)」という。)の送付を受けたときは,そのとん刑者等に係るとん刑者等通知書(乙)を廃棄し,又はそのとん刑者等通知書(乙)の記載事項のうち,その把握をする必要がなくなつた事項を抹消する。
6 とん刑者等に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,とん刑者等解除通知書(乙)を作成したときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対して送付する。

第6章 犯歴の抹消
(犯歴の抹消)
第18条 犯歴係事務官は,電子計算機又は犯歴票等により把握されている有罪の裁判を受けた者が死亡したことを知つたときは,次の各号に掲げる手続をする。
(1) その裁判が電算処理対象裁判であるときは,死亡通知書(甲)(様式第17号)又は外国人死亡通知書(様式第17号の2)(以下「死亡通知書(甲)」という。)を作成する。
(2) その裁判が非電算処理対象者に対する裁判又は道交裁判であるときは,その者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官にあつては,その者に係る犯歴票等及びとん刑者等通知書(乙)を廃棄し,本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官にあつては,死亡通知書(乙)(様式第51号)を作成する。
2 有罪の裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁の犯歴係事務官は,死亡通知書(甲)を作成したときは又は次項の規定により死亡通知書(甲)若しくは死亡通知書(乙)の送付を受けたときは,次の各号に掲げる手続をする。
(1) 死亡通知書(甲)を作成したとき又はその送付を受けたときは,電子計算機により把握されているその者に係る戸籍事項及びその他の事項を抹消する。
(2) 死亡通知書(乙)の送付を受けたときは,その者に係る犯歴票等及びとん刑者等通知書(乙)を廃棄する。
3 有罪の裁判を受けた者に係る本籍地方検察庁以外の検察庁の犯歴係事務官は,死亡通知書(甲)又は死亡通知書(乙)を作成したときは,本籍地方検察庁の犯歴係事務官に対して送付する。

第7章 雑則
(電子計算機に入力する手続)
第19条 第3条第2項,第4条第2項,第5条第2項(第16条において準用する場合を含む。),第6条第3項,第15条第2項,第17条第3項及び第18条第2項第1号に規定する手続は,別に法務省刑事局長が定める。

(地方検察庁の本庁の所在地を管轄する区検察庁における特別取扱い)
第20条 検事正は,第7条第3項,第8条第3項,第9条第3項,第10条第3項,第12条第2項第2号(第16条において準用する場合を含む。),第15条第5項及び第17条第6項の規定により,地方検察庁の本庁の犯歴係事務官に対し,既決犯罪通知書(乙)その他の書面を送付すべきものとされている犯歴係事務官が,その地方検察庁の本庁の犯歴の把握等に関する事務を取り扱つている場合には,これらの書面の作成を要せず,確定記録等の回付をもつてその送付に代えることとする取扱いをさせることができる。

(その他の特別取扱い)
第21条 検事正は,前条に定めるもののほか,事務処理上支障がないときは,法務大臣の許可を得て,犯歴の把握等に関する事務に関し,特別の取扱いをさせることができる。
2 検事正は,前項の許可を得て特別の取扱いを実施したときは,直接法務大臣に対してその旨を報告するとともに,検事総長及び検事長にそれぞれ同文の報告をしなければならない。

参考判例
刑事確定訴訟記録閲覧不許可処分に対する準抗告申立事件

横浜地方裁判所川崎支部平成15年8月14日決定 妥当な判決でしょう。

主 文

被告人甲山こと乙川太郎に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反等被告事件(横浜地方裁判所川崎支部平成12年(わ)第310号等,東京高等裁判所平成12年(う)第2460号)に係る刑事確定訴訟記録につき,平成15年4月14日に横浜地方検察庁川崎支部検察官が申立人に対してした閲覧不許可処分中,第1審判決書,控訴審判決書についての閲覧不許可処分を取り消す。

上記検察官は,申立人に対し,上記各判決書について,被告人(氏名を除く),被害者,関係者等の氏名等の固有名詞,犯罪地等の住所地番などに仮名処理を施すなどした上で,これを閲覧させなければならない。

理 由

本件申立ての趣旨及び理由の要旨は,申立人作成の準抗告申立書記載のとおりであるから,これを引用する。

1 本件に関する経過及び当事者の主張は次のとおりである。

(1)申立人は,平成15年4月4日,横浜地方検察庁川崎支部保管検察官に対し,前記被告人甲山こと乙川太郎に対する児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律違反等被告事件(横浜地方裁判所川崎支部平成12年(わ)第310号等,東京高等裁判所平成12年(う)第2460号)(以下「本件事件」という)の刑事確定訴訟記録中,被害者,被告人のプライバシーに関する部分についての配慮を求めた上で第1審起訴状,冒頭陳述書,論告要旨,弁論要旨,判決書及び控訴審における控訴趣意書,答弁書,判決書の閲覧並びに第1審及び控訴審判決書の謄写を請求した。その理由の要旨は,申立人が,事件名を同じくする刑事事件の控訴審弁護人として職務を遂行するに当たり,立証活動の参考にするため類似事案を検討したいというものであった。これに対し,同支部検察官は,同月14日付けで請求の全てについて不許可としたことから,申立人は,主文掲記の範囲について準抗告の申立てをし,その理由として,前記の理由に付加して,同一事件名の弁護人として,その職務に関し,本件事件の保護法益等に関する判示,量刑理由を参照したいこと及び申立人自身が児童買春等に関する法律の研究をしており,その研究資料としたいからであるとしている。

(2)一方,同支部検察官は,申立人の閲覧及び謄写の請求が刑事確定訴訟記録法4条2項3号ないし5号に該当することを理由として,前記のとおり不許可としたが,その詳細は,刑事確定訴訟記録法4条2項3号該当事由については,本件犯行態様等に照らし,保管記録の閲覧をさせた場合には,卑劣な犯行の手段,方法,態様等を公にすることにもなりかねず,公の秩序又は善良の風俗を害することとなるおそれがあるとし,同項4号該当事由については,本件犯行当時の状況等に照らすと,保管記録の概要等が公刊物に掲載されるなどして公表されただけで,元被告人の氏名等を伏せたとしても,その犯行であることが一般人に了知される状況にあり,元被告人の改善及び更生を著しく妨げることとなる虞があるとし,同項5号該当事由については,被害児童の氏名等を伏せたとしても,前記のとおり本件が元被告人の犯行であることが一般人にも了知される状況にあるから,保管記録を閲覧させた場合には,被害児童及びその関係者にとって被害児童が関係していることが判然としている事案が公刊物等に長く掲載される事態が生じかねず,関係者の名誉又は生活の平穏を著しく害する虞があるとし,さらに申立人が同種事件弁護人であるとしても,本件記録には量刑等について申立人主張のような申立人にとって参考になる記載はなく,また閲覧目的が研究目的であるとしても,直ちに閲覧について正当な理由があることにはならないから,結局,申立人について閲覧についての正当な理由もないとしている。

2 そこで,検討するに,申立人が準抗告の対象としているのは,第1審及び控訴審の判決書の閲覧についてのみであるところ,終局裁判の裁判書の閲覧は,その性質に照らし,それ以外の保管記録の閲覧に比して同項3号ないし5号に列挙する制限事由に当たる場合が類型的に見て少ないと考えられる上,終局裁判の裁判書は国家の刑罰権の行使に関して裁判所の判断を示した重要な記録であって,裁判の公正担保の目的との関係においてもこれを一般の閲覧に供する必要性が高いといえる(刑事確定訴訟記録法4条2項柱書本文参照)。

さらに本件申立てに係る判決書について検討するところ,その申立てが判決書の閲覧に際し,被告人の身上や被害者の人定に関する部分は除くことを前提にしていることを踏まえると,被告人,被害者の氏名等固有名詞や犯罪地などの住所地番を仮名処理等することによって,本件申立に係る判決書中の犯罪事実等の記載内容をある程度一般化,抽象化することは可能であるから,かかる配慮をした上でこれらの閲覧を許可したとしても,検察官の主張するような事態が生じるとは認められず,刑事確定訴訟記録法4条2項3号ないし5号に該当する事由があるとは認められない。

よって,本件申立ては理由があるので,刑事確定訴訟記録法8条,刑事訴訟法430条1項,432条,426条2項により,主文のとおり決定する。