新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1315、2012/8/2 15:12 https://www.shinginza.com/qa-syounen.htm

【刑事・少年事件・措置決定に対する異議申立て又は取消申立て・さいたま家庭裁判所平成17年6月21日決定】

質問:先日,高校生の息子が痴漢で警察に捕まってしまいました。その後,観護措置が取られて,今は鑑別所にいます。このままでは,学校を休むことになり,場合によっては退学の可能性もあります。今後,どうすればいいのでしょうか?

回答:
1 まずは,息子さんが鑑別所から出ることができるように,裁判所の措置決定に対し@異議の申立て又はA取消しの上申をします。これが,認められた場合には,鑑別所から出て,在宅での取り扱いとなります。
2 少年事件の場合に事件が家庭裁判所に送致され,少年の素行や性格,精神状態,生活環境等を調査するために調査官がついた場合には,B調査官に対し学校への連絡をしない様に要請する上申書の提出,も必要になります。特に私立学校の場合は重要です。
3 その後は,C被害者との示談等を行うことによって,審判不開始や不処分を目指すことになります。
4 関連律相談事例集論文:1314番1113番1087番1039番777番716番714番649番461番403番291番244番161番参照。

解説:
1 (少年事件の流れ)
  捜査後の手続ですが,通常の刑事事件(成人の場合)であれば,事件が警察から検察庁に送られ,検察官が終局処分(起訴・不起訴)を決定します。しかし,少年の刑事事件の場合,通常とは異なる手続を踏むこととなります。少年の刑事事件の場合,事件が検察庁に送られるまでは特に通常の手続と変わりませんが(勾留については少年の場合,検察官は原則として勾留でなく「勾留に代わる観護措置」を請求するのが原則ですが,やむを得ない場合は勾留請求ができることになっており,やむを得ない場合があるとして広く勾留手続きにより少年の身柄を拘束しているのが現実です。少年法43条。この点については議論がありますが本稿では省略します。)その後,検察官は,自ら終局処分をするのではなく,全部の事件を家庭裁判所に送致します(少年法42条)。事件が家庭裁判所に送致されると家庭裁判所は事件について調査しなければならないとされています(法8条1項)。

  そして,調査のため観護措置をとることができますが,観護措置には家庭裁判所調査官の観護に付する措置と,少年鑑別所に送致する措置の二つがあり,少年鑑別所送致決定がなされると(法17条1項)少年鑑別所に送られることになります(実務上,観護措置という場合は少年鑑別所送致のことを言っています。調査官の観護に付する措置というのは身柄の拘束はなく日常生活としては変化がないのであまり議論の対象とはなりません。ここでも以下観護措置という場合は少年鑑別所送致のことを言うことにします)。この少年鑑別所送致は2週間という期間の定めがありますが(法17条3項本文),通常,更新されさらに2週間,合計4週間の観護措置がとられることが多いです(法17条3項但書)。さらに,少年が非行事実を認めていないような場合には2週間ずつ延長され,合計8週間となる可能性もあります(法17条4項)。

  その後,審判を開始するか否かの決定がなされ,審判が開かれることとなると,不処分決定(法23条),保護観察(条24条1項1号),児童自立支援施設等送致(同項2号),少年院送致(同項3号)のいずれかの処分がなされることになります(重大事件などでは,ごく稀に検察官送致となり,成人と同様の刑事裁判とすべきとする処分がなされることもあります(法20条))。これらの処分は,今回の行為(非行事実)だけでなく,生い立ちや家庭環境,日常生活の状況等の幅広い事情を考慮して決せられます。注意しなければならないのは,少年審判は,監護措置の期間内に行われますから(8週間以内),付添人との協議,対策も迅速性が要求されます。不処分,審判不開始を求めるためには接見,面会,必要書類の準備のための時間が必要であり,観護措置を回避して十分な時間的余裕を確保することが大切です。そういう意味で,監護措置の決定は重要な意味を持ちます。弁護活動を充実させるためにはこれを回避し本来の姿である愛情あふれる両親のもとで監督を行い審判に備えるよう最大限努力することが少年事件付添人として要求される態度でしょう。

2(観護措置とは)
  上記で述べたように,家庭裁判所に送致され観護措置決定(鑑別所送致)がなされると,一般的には4週間,少年鑑別所に入ることとなります。少年鑑別所の中では,鑑別担当者が少年から話を聞いたり(鑑別面接),身体状況の検査や心理検査を行ったり(心身鑑別),少年に作文や日記,描画,貼り絵等の課題に取り組ませて少年の行動を観察(行動観察)する等して,少年の資質の特質や問題点,非行を行うに至った要因や再非行の危険性等を調査します。その結果が報告書にまとめられ,審判の際の資料とされます。また,この時に家庭裁判所調査官との面談も行われます。これらの観察・調査等の目的は,公正な少年事件の審判を行うことです。従って,観護措置を回避するためには,具体的書面,証拠により観護措置を取らなくても公正な審判ができる旨の立証が少年・付添人側に必要となります。
 
3(観護措置決定に関する異議申立て又は取消しの上申)
  観護措置は決して懲罰的なものではなく,少年事件の公正な審判を行い更生のためになされる措置なのですが,少年が学校に通っている場合や働いている場合には,長期の欠席により,退学又は留年,解雇等の不利益を被ってしまう可能性があり,これによって逆に少年の更生を阻害してしまう可能性があります。
  そこで,観護措置決定前に付添人に選任された弁護士は,少年に観護措置をとる必要がなく,観護措置が少年の更生を逆に阻んでしまうと考えた場合には家庭裁判所に対し,まずは観護措置をとる必要のない旨の意見書を提出します。それでも観護措置決定がなされた場合には,観護措置決定に対し@異議を申し立てたり(17条の2第1項),またはA取消を求めるなどをして(法17条8項),少年を少年鑑別所から出られる様に裁判所に働きかけ,在宅扱いになるように活動します。

  観護措置の要件として,少年法上は「審判を行うために必要があるとき」(法17条1項)としか規定がありませんが,実務上次の要件が必要とされています。
@審判に付すべき事由(非行事実,ぐ犯事実など)が認められること。
A審判開始決定を行なう蓋然性があること(審判により保護観察(条24条1項1号),児童自立支援施設等送致(同項2号),少年院送致(同項3号)のいずれかの処分とする可能性が高いこと)。
B観護措置の必要が認められること

  そして,Bの観護措置の必要性としては,@少年の逃亡や罪証隠滅を防ぎ審判・保護処分の遂行のために身柄確保の必要性があること,A少年が自傷行為を行わない様に緊急保護のための暫定的身柄確保の必要性があること,B収容して心身鑑別を行なう必要性があることと解されています。
  したがって,付添人としてはこれらの要件を満たさないことを具体的に事実と証拠をあげて主張します。そして,意見書・上申書には,@両親の身柄引受・監督書,A少年の謝罪文,B両親の謝罪文,C学校の内申書,D通知票,E両親の陳述書,誓約書,F勤務先の上司の上申書G痴漢事件であれば,示談書,予定の経過説明書など少年の審判が在宅でも公正に行われると考えられるあらゆる資料を添付し主張立証します。
  一般的に観護措置が取り消されるケースとしては,非行が軽微であり前歴もない場合(たとえば,高校生の万引き),観護措置をとると進学などの影響が大きい場合(たとえば,進級試験,入学試験に重なる,校則により退学の危険がある)などです。後記水戸家庭裁判所の観護措置決定取消の判例を参照。共犯者があり,前歴があっても,公正な審判に影響がないとして措置を取り消しています。参考になる決定です。

4 (調査官に対する学校・職場への連絡をしない様にお願いする上申書の提出)
  少年が少年鑑別所から出られたとしても,もし今回の非行事実が学校や職場へ知られてしまった場合には,退学・留年や解雇等の恐れがあります。少年の更生が第1ですから,少年の更生のために学校や職場への調査が必要であるならばこれは致し方ないことなのですが,そうではなく,調査の結果退学等の不都合が生じ不都合が少年の将来における更生の妨げとなる場合には,付添人としては,調査官に対して学校等への連絡を控えるようにお願いする上申書を提出し,学校等への連絡を阻止します。通常家庭裁判所は,学校側への連絡は行わないのが通常ですが,家裁送致前の捜査機関は,公立(中)高校の場合連絡することがあるようですので,弁護人・付添人はまず捜査段階から迅速,積極的に弁護活動が要求されます。

5 (審判不開始及び不処分)
  少年事件の付添人は,成人の刑事裁判の弁護人とは少し役割が異なり(刑事事件における被告人は検察官と対等な地位にあるべき裁判の当事者ですので,弁護人は,被告人が当事者として法律上主張できる権利の行使に欠けることがないよう弁護する役割を負っています),少年の更生を第一に考え,裁判所や調査官と協力して,少年に適した処分がなされるように活動します(付添人の場合ももちろん少年の立場にたって適正な更生の方法について主張することになります)。
  付添人は少年や両親と面談したり,素行を調査したりして,本件に関して少年に保護観察や児童自立支援施設等送致,少年院送致という処分は少年の更生に適していないと判断した場合には,審判不開始(法19条1項)や不処分(法23条)を目指して活動することになります。

  この場合,裁判所に対し,少年に保護観察等の保護処分を課さなくとも更生可能であるということを示すために,少年のこれまでの素行,非行歴の有無,反省の程度,家庭の状況,今後の両親の監督等をまとめた意見書を提出します。
  さらに,被害者がいるような場合には,少年の謝罪の意思,反省の程度について具体的に明らかにするため,また,その被害者の被害感情も処分の決定については大変重視されますので,被害者の方と示談をし,被害届を取り下げてもらうことも重要となります(少年の更生という点からは被害感情は関係のない事由のようにも思えますが,犯罪を犯してしまったこと,犯罪には被害者があること,被害者が傷ついてはいるが少年を許し更生を願っていることなどについて,示談することにより少年に自覚をうながすことが可能となり,少年の更生に役立つことになります)。
  尚,監護措置の取消,異議申し立てが認められない場合,審判手続きは,鑑別所送致期間内(8週間内)に行われますので,保護処分が予想される場合,試験観察(数か月のボランティア活動等を申し出て少年の更生経過を裁判官,調査官に理解してもらう。少年法25条),少年の更生を説明し,保護処分回避の手続きが必要です。

6 (本件について)
  本件の様に,少年が高校生で観護措置が取られている場合には,長期の欠席により退学になる可能性が十分にありますので,観護措置決定に対する異議の申立てや取消の上申をする必要があります。また,調査官に対し学校への連絡を控えるように上申する必要もあります。
  さらに,不処分となるためには被害者との示談が重要となりますが,痴漢事件の様なわいせつ事件の場合に,弁護士を間に入れずに本人で示談交渉をするのは非常に困難です。
  また,少年は成人のように自分の意見等をうまく伝えることができません。
  そのため,弁護士を付添人に選任し,手続きを一任することをお勧めします。

7 (参考判例@)
さいたま家庭裁判所平成17年6月21日決定 少年16歳 中等少年院送致
(処遇の理由)
 本件は,少年が,13歳の女児の股を触るなどの卑わいな行為をしたという条例違反の事案(上記第1の事実),7歳の女児の臀部を触ったという強制わいせつの事案(上記第2の事実),8歳ないし10歳の女児3名に対するつきまといをしたという軽犯罪法違反の事案(上記第3の事実)である。いずれも低年齢の女児に対して,約2か月の間に次々と敢行したものであり,少年の少なからぬ問題性が窺える。少年は,本件をいずれも否認しており,反省の態度は全く見られず,また,いずれも謝罪等はなされていない。さらに,さいたま少年鑑別所長作成の鑑別結果通知書によれば,少年は,幼児に対して強い関心を有していることが窺え,これらの点からすれば,少年が今後も同種非行を反復するおそれは大きいものといわざるを得ない。
 少年の実父母は,少年の幼少時に離婚し,以来,少年は実母に養育されているが,少年は,知的な遅れが見られ,小学校入学時から特殊学級に入った。小学生のころ,実母から布団叩きで叩かれるなどの身体的虐待を受け,児童相談所に係属するなどし,平成14年4月,養護学校中等部に進学し,概ね出席状況は良く,授業への取り組みも積極的であったが,その一方で,大人がいないところでいたずらをしたり,思い通りにならないと暴れるなどの行動も見られた。また,平成17年1月ころ,実母が児童相談所に対し,少年のいたずらに困り,知的障害者施設への入所を希望する旨の相談に赴くなどし,児童相談所でも施設入所が可能かを検討していた。そのような中で,同年2月から4月にかけて,本件の各非行が行われ,同年5月11日,逮捕されるに至ったものである。
 さいたま少年鑑別所長作成の鑑別結果通知書によれば,少年は,知能は「最劣」域で,中度精神遅滞水準にあり,社会常識に乏しく,基礎学力は概ね幼稚園児の段階にあるが,日常生活上最低限必要な意思の疎通は可能であり,入浴・食事など日常生活の身の回りのことは自分でできるという面もある。性格面は甘えが強く,わがままで,忍耐力に乏しい。自分勝手なわがままを通そうとして,要求が通らないと泣き叫んだり,駄々をこねるなど,幼児のように振る舞いがちであるが,周囲の状況や相手によって態度を変え,自分の期待通り動いてくれる相手には,依存的な態度で甘えたり,要求をエスカレートさせたりする一方,厳しく叱られたり,見た目が怖そうな相手の前では萎縮する傾向がある。いい子を演じて張り切って手伝いなどをしようとする反面,判断に迷ったり,不適切な行為を注意されると,かん黙したり,泣くことでその場を乗り切ろうとする。寂しがり屋で,構ってもらえないと駄々をこねるなどの幼稚な振る舞いをして周囲の関心を引こうとする,というような問題がある。なお,少年は,さいたま少年鑑別所内で,泣きわめいたり,机やロッカーを叩いたり,テレビを引き倒したり,同室者に水をかけたり,つばを吐いたり,畳に水道水や便所の水をばらまいて部屋を使えないようにするなどの問題行動を多発させており,場をわきまえることができず,内省する力にも乏しいことが窺える。
 少年の実母は,体調不良で仕事に就けておらず,経済的に困窮しており,また,周囲への不信感が根強く,少年の非行や問題行動に対しても頭から否定し,少年を庇い,問題意識を持とうという姿勢に乏しい。少年の方も,実母を恐れ,また,見捨てられたくない気持ちから,実母の前では問題なく振る舞いがちである。かような現状では,実母が児童相談所や保護観察所等の関係機関と連携をとりつつ少年の指導を適切に行うのを期待するのはおよそ困難である。この点,埼玉県○○児童相談所長の照会回答書によれば,同児童相談所は,少年が性的な問題行動を繰り返していることから,知的障害児施設での処遇は困難であり,また,これまでの相談指導の際に窺えた実母の生活状況や不適切な養育態度からは,在宅で処遇することも困難であるとの意見である。
 以上の点を総合考慮すると,本件非行の内容,少年の反省の乏しさ,少年の資質及び性格傾向の問題性,保護者の監護力の乏しさに照らせば,社会内処遇で少年の自発的な改善更生を促すことは困難であると思料されるから,本件が初回係属であること,少年が自宅に戻ることを強く望み,実母も同様の意向であることを踏まえても,今回は,少年を矯正施設に収容して,わがままや甘えの通用しない環境で,長期間の系統的な矯正教育を粘り強く施すことにより,自己の非を素直に認め反省する気持ちや,集団でのルールを遵守する姿勢を学ばせ,非行に対する抵抗感を身に付けさせるとともに,集団生活を通して,将来への自立に向けた社会適応力や協調性を育む必要がある。
 よって,少年法24条1項3号,少年審判規則37条1項を適用して少年を中等少年院に送致することとし,主文のとおり決定する。

犯罪事実を否認し,被害弁償も行わず,更生の意思が少年に感じられませんので,少年を保護する家庭環境(母子家庭)も整っていない以上やむを得ない決定でしょう。

(参考判例A)
 恐喝保護事件の観護措置決定に対する異議申立事件
水戸家庭裁判所平成14年3月19日決定,少年 19歳(恐喝保護事件の観護措置決定に対する異議申立事件)

「1  当裁判所の判断
 本件は,少年及び少年の友人4名が居酒屋で飲酒したところ,予想外に飲食代金がかさんだことから,小遣い稼ぎのために5人で恐喝することを相談し,駅近くの暗い路上で通行人を待ち伏せした上,少年の友人3名において,通行人を取り囲み,少年及びその友人1名において,通行人に「お金がないので貸してくれますか。」「お金ないんだよね。」などと声をかけて,現金約7000円を同人から脅し取ったという事案である。そして,一件記録によれば,少年が本件に及んだことは明らかであるところ,その態様は,夜間,暗がりの路地上で,多人数で1人の被害者を取り囲んで恐喝に及ぶというものである上,少年は,立件されてはいないものの,本件に前後して2度にわたって同種の恐喝を敢行した旨供述している。しかしながら他方,少年は逮捕直後から一貫して本件犯行を認めていること,本件は上記のとおり,飲酒代金が予想外に高くついたことからその穴埋めのため,にわかに思いついて行ったものであって計画性に乏しいこと,少年は東京所在の大学に在学中で,真面目に通っていたものであり,日常生活も大過なく送っていると,少年は平成11年に万引きをして審判不開始(事案軽微)とされたものの,その後は本件に至るまで非行歴がないこと,保護者の監護意欲も認められること,少年は逮捕勾留による身柄拘束を受けたことで,本件について反省の念を深めていること,更に本件に加担した5人のうち3人が逮捕勾留を経た後,観護措置を執られず帰宅を許されていること等の事情を考慮すると,少年に対する処遇選択のために,少年を更に少年鑑別所に収容した上で心身の鑑別を行うまでの必要があるとはいえず,他に少年を少年鑑別所に送致すべき事由も見あたらない。よって,少年を少年鑑別所に送致した原決定は失当であり,本件異議事立ては理由があるから,少年法17条の2第4項,33条2項により,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 野崎薫子 裁判官 坂野征四郎 山口和宏)」

≪条文≫

少年法
(審判に付すべき少年)
第三条
 次に掲げる少年は,これを家庭裁判所の審判に付する。
一 罪を犯した少年
二 十四歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年
三 次に掲げる事由があつて,その性格又は環境に照して,将来,罪を犯し,又は刑罰法令に触れる行為をする虞のある少年
  イ 保護者の正当な監督に服しない性癖のあること。
  ロ 正当の理由がなく家庭に寄り附かないこと。
  ハ 犯罪性のある人若しくは不道徳な人と交際し,又はいかがわしい場所に出入すること。
  ニ 自己又は他人の徳性を害する行為をする性癖のあること。
2 家庭裁判所は,前項第二号に掲げる少年及び同項第三号に掲げる少年で十四歳に満たない者については,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これを審判に付することができる。
(観護の措置)
第十七条
 家庭裁判所は,審判を行うため必要があるときは,決定をもつて,次に掲げる観護の措置をとることができる。
一 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
二 少年鑑別所に送致すること。
2 同行された少年については,観護の措置は,遅くとも,到着のときから二十四時間以内に,これを行わなければならない。検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも,同様である。
3 第一項第二号の措置においては,少年鑑別所に収容する期間は,二週間を超えることができない。ただし,特に継続の必要があるときは,決定をもつて,これを更新することができる。
4 前項ただし書の規定による更新は,一回を超えて行うことができない。ただし,第三条第一項第一号に掲げる少年に係る死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機,態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問,鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて,少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には,その更新は,更に二回を限度として,行うことができる。
5 第三項ただし書の規定にかかわらず,検察官から再び送致を受けた事件が先に第一項第二号の措置がとられ,又は勾留状が発せられた事件であるときは,収容の期間は,これを更新することができない。
6 裁判官が第四十三条第一項の請求により,第一項第一号の措置をとつた場合において,事件が家庭裁判所に送致されたときは,その措置は,これを第一項第一号の措置とみなす。
7 裁判官が第四十三条第一項の請求により第一項第二号の措置をとつた場合において,事件が家庭裁判所に送致されたときは,その措置は,これを第一項第二号の措置とみなす。この場合には,第三項の期間は,家庭裁判所が事件の送致を受けた日から,これを起算する。
8 観護の措置は,決定をもつて,これを取り消し,又は変更することができる。
9 第一項第二号の措置については,収容の期間は,通じて八週間を超えることができない。ただし,その収容の期間が通じて四週間を超えることとなる決定を行うときは,第四項ただし書に規定する事由がなければならない。
10 裁判長は,急速を要する場合には,第一項及び第八項の処分をし,又は合議体の構成員にこれをさせることができる。
(異議の申立て)
第十七条の二
 少年,その法定代理人又は付添人は,前条第一項第二号又は第三項ただし書の決定に対して,保護事件の係属する家庭裁判所に異議の申立てをすることができる。ただし,付添人は,選任者である保護者の明示した意思に反して,異議の申立てをすることができない。
2 前項の異議の申立ては,審判に付すべき事由がないことを理由としてすることはできない。
3 第一項の異議の申立てについては,家庭裁判所は,合議体で決定をしなければならない。この場合において,その決定には,原決定に関与した裁判官は,関与することができない。
4 第三十二条の三,第三十三条及び第三十四条の規定は,第一項の異議の申立てがあつた場合について準用する。この場合において,第三十三条第二項中「取り消して,事件を原裁判所に差し戻し,又は他の家庭裁判所に移送しなければならない」とあるのは,「取り消し,必要があるときは,更に裁判をしなければならない」と読み替えるものとする。(審判を開始しない旨の決定)
第十九条
 家庭裁判所は,調査の結果,審判に付することができず,又は審判に付するのが相当でないと認めるときは,審判を開始しない旨の決定をしなければならない。
2 家庭裁判所は,調査の結果,本人が二十歳以上であることが判明したときは,前項の規定にかかわらず,決定をもつて,事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
(検察官への送致)
第二十条
 家庭裁判所は,死刑,懲役又は禁錮に当たる罪の事件について,調査の結果,その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは,決定をもつて,これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,家庭裁判所は,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であつて,その罪を犯すとき十六歳以上の少年に係るものについては,同項の決定をしなければならない。ただし,調査の結果,犯行の動機及び態様,犯行後の情況,少年の性格,年齢,行状及び環境その他の事情を考慮し,刑事処分以外の措置を相当と認めるときは,この限りでない。
(審判開始の決定)
第二十一条
 家庭裁判所は,調査の結果,審判を開始するのが相当であると認めるときは,その旨の決定をしなければならない。
(審判開始後保護処分に付しない場合)
第二十三条
 家庭裁判所は,審判の結果,第十八条又は第二十条にあたる場合であると認めるときは,それぞれ,所定の決定をしなければならない。
2 家庭裁判所は,審判の結果,保護処分に付することができず,又は保護処分に付する必要がないと認めるときは,その旨の決定をしなければならない。
3 第十九条第二項の規定は,家庭裁判所の審判の結果,本人が二十歳以上であることが判明した場合に準用する。
(保護処分の決定)
第二十四条
 家庭裁判所は,前条の場合を除いて,審判を開始した事件につき,決定をもつて,次に掲げる保護処分をしなければならない。ただし,決定の時に十四歳に満たない少年に係る事件については,特に必要と認める場合に限り,第三号の保護処分をすることができる。一 保護観察所の保護観察に付すること。
二 児童自立支援施設又は児童養護施設に送致すること。
三 少年院に送致すること。
2 前項第一号及び第三号の保護処分においては,保護観察所の長をして,家庭その他の環境調整に関する措置を行わせることができる。

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