新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1004、2010/2/17 16:33

【民事・知的財産権・工業所有権・特許要件・発明の新規性喪失に関する例外・特許法30条・過失による刊行物への公表は新規性を失うのか】

質問:自社製品の発明について特許の出願をしたところ、数年後すでに当該発明が刊行物に発表されており、新規性がないという理由で拒絶査定を受けました。事情を調査したところ特許出願をする前に、販売促進のために知人を介してある性能審査申込の事務を依頼したところ、その知人の手続きミスで自社製品がある専門雑誌に公表されていたのです。このように発明が公表されしてしまったのは、私が知人に性能審査申込の事務を依頼するにあたり、提出資料が公表されないよう細心の注意を払わなかったためだと思います。もう、特許を受けること諦めた方がよいでしょうか。

回答:
1.発明権利者の意思に反して発明の内容が種々の刊行物に掲載されたという発明の新規性(特許法29条1項)の喪失の例外(同法30条)に当たる可能性がありますので、拒絶査定(同法49条1項2号、特許出願後、実体審査時に特許出願内容に拒絶理由が見つかり、出願人による意見書や補正によっても拒絶理由が解消しないと審査官が判断すること。)に対して拒絶査定不服審判(同法121条。査定の謄本の送達があつた日から3か月以内に申し立てをする)を求める必要があると思います。早々と諦めることはありません。
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解説:
1.(問題点)自社製品の発明の内容が、専門雑誌に公表されているので、特許権取得の要件である「発明が、公知、公用及び頒布された刊行物に記載されていないこと」という新規性(特許法29条1項3号)がないと考えることができます。従って、特許庁の拒絶査定は形式上正しいように思います。しかし、専門雑誌に公表したのは、貴方の知人であり不注意があったかもしれませんが、貴方の指示もありませんし、むしろ貴方としては雑誌に公表する意思はなかったと思います。そこで、このような場合新規性喪失の例外である特許法30条2項の「特許を受ける権利を有する者の意に反して種々の刊行物に記載された発明」に該当するか問題となります。すなわち、新規性喪失の例外ですから、貴社の主張が拒絶査定不服審判で認められれば、新規性が認められ特許を受けることが可能になります。

2.(特許権の要件である新規性の趣旨)特許権とは、無体財産権(著作権等無体物を支配する権利である知的財産権を言います。これに対し不動産等有体物を支配するものが従来の財産権です。)に属する工業所有権(産業上の無形の利益に対する権利。他に実用新案権)の一つで、特許が認められた発明(同法2条1項、2項、特許発明といい、自然法則を利用した技術的思想の高度な創作をいいます。)について、独占、排他的に業として利用実施することができる権利です(同法68条、)。特許権は、昭和34年に特許法により認められた権利です。どうして従来の所有権と同じように強力な特許権が認められたのでしょうか。私有財産制(憲法29条、所有権絶対の原則)の実質的保障により法の理想(憲法13条)を実現するためです。個人の尊厳は、自由主義(人間は生まれながらに自由)を理論的根拠にしており、自由主義は、公正な社会秩序を維持するため私有財産制と私的自治の原則により成り立っていますし、経済体制としては資本主義(資本活動、資本投下が利潤、価値を生み出すという考えの経済体制)が採用されています。
 従来の所有権は、支配の対象を有体物(動産、不動産)に限っていましたが、社会構造の発達、変化に伴い、対象が有体物以外の無形的利益に対しても直接、排他的な支配権を認める必要が生じて来ました。特に経済の発達は、有体物に対する支配権を保護すればなし得た時期から、新たな産業上の発明等の無体の財産的価値(知的財産権)により飛躍的に発展する事態が生じました。そこで形がない、創造的精神活動の価値に着目し、発明等の利益を独占排他的に支配する権利として保護し、さらなる発明を誘発して利用し、これを公開し、一定期間後は第三者も利用できるものとして産業を成長させ公正な経済社会秩序の成長発展を果たすことを目的として、特許権等工業所有権が法律上認められたのです。
 すなわち、所有権も特許権(工業所有権)も所有権絶対の原則の理念から導かれるものであり、その理想、目的は同一です。ただ、特許権は、独占排他的な権利なので営業、経済活動の自由を制限する面もあり、物権法定主義(民法175条)の関係から厳格な要件が定められています。まず発明の内容が、発明が種々の刊行物に記載されているものでないという新規性が求められます。発明の内容が社会的に公表されていれば第三者がこれを利用している可能性があり、その利益を保護する必要があるからです。その他進歩性、産業上の利用可能性も特許権の趣旨から要求されます。ただ、刊行物に記載があるという新規性の喪失は、所有権の絶対、及び特許法に基づく発明の利益(工業所有権)を保護しようとする原則を制限するものであり、基本的に厳格に解釈されることになります。

3.(新規性の喪失に該当するか)新規性喪失の例外である特許法30条2項の「特許を受ける権利を有する者の意に反して種々の刊行物に記載された発明」の解釈、すなわち、「意に反して」という内容は、特許と受ける権利者が明らかに刊行物記載に対して、反対の意思表示をしていた場合だけでなく、自らの過失により刊行物に記載公表された場合も含むものと広く解釈されるべきです。

4.(理由)工業所有権である特許権は、憲法の基本原則である私有財産権、所有権絶対の原則の保障の範囲内にあり、刊行物に記載があるという新規性の喪失は、これを制限するものであり、例外的事由と位置付けることができます。そうであれば、刊行物の記載があったと判断するには、これを厳格に解釈する必要があり、発明者が故意に積極的に刊行物に記載したような場合に限定されるべきであり、発明者の過失により発明の内容が刊行物に記載されたような場合は、新規性の喪失理由に該当しないと解釈するのが理論的だからです。

5.(判例)東京高等昭和56年10月28日判決(審決取消請求事件)この事件は、「人災安全防災システム」という発明について特許出願をしたが、すでに刊行物に発明の内容が記載されているところから、新規性がないということで拒絶査定を受けたのですが、出願者が、刊行物の記載は自らの意思により行ったものでなく、権利者が依頼した第三者が不注意で刊行物に記載したので、発明権利者の意思に反する刊行物記載であるとして拒絶査定の審判を請求し、審理され特許出願公告したところ、第三者から特許異議の申し立てにより、発明権利者の審判請求は認められないと審決されたので、特許庁を相手に審決の取り消しを東京高裁(第一審)に求めた裁判です。
 判決は、新規性喪失の例外規定である「発明権利者の意思に反するという内容は、発明者が積極的に発明内容の刊行物記載に反対の意思を表示した場合だけでなく、権利者、及びその関係者の不注意で刊行物に記載された場合も含まれるという解釈で、新規性喪失の特許庁の審決を取り消した判決です。工業所有権である特許権の保障は私有財産制の保障、市所有権の絶対の原則を根拠としており、新規性の喪失はそれを制限するものであり制限的に解釈されなければならず、「意に反する記載」を広く解釈し、結果的に喪失事由を限定的に解釈するものであり妥当な判断と思われます。

6.(判決内容)
理   由
一 請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決の取消事由の有無について検討する。
1 成立に争いのない甲第一号証ないし第三号証、第五号証、第一五号証、乙第三号証、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第九号証、証人石井昇の証言及び原告本人尋問の結果とこれにより真正に成立したと認められる甲第一四号証並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。
 「原告は、モーリス消防工業株式会社(後に、「株式会社モーリス」と商号を変更)の代表取締役であり、かねてより建築の防災等に関する発明、考案を数多く手がけ、これまでにその特許権又は実用新案権を数多く有しており、これら発明、考案の実施を主としてモーリス消防工業に行わせていた。ところで、原告は、昭和四四年五月ころ、本願発明にいう防災システムの基本構想をまとめ、これをそのころモーリス消防工業の営業部長石井昇に話した。石井昇は、かねて消防庁消防大学校の教授をしていたが、その直前である同年四月に同庁を退職し、同会社に就職した者であり、消防に関する知識が深く、本願発明にいう防災システムについての原告から受けた説明により、その発明が、特殊の建築材料又は構造方法に係るものであつて、これを建築物に使用するのには、建築基準法第三八条により建設大臣の認定を受けなければならないとされていることを承知していたので、原告にその旨を説明し、右発明を実用化するのには、右の認定を受けておくのが得策であることを進言し、原告も、これを容れ、ただ右認定を受けることのみを考え、これに関する手続を石井に依頼した。
 ところで、右の認定を受けるのには、建設省通達(昭和四〇年一二月一六日同省住指発第二〇〇号)により、まず日本建築センターの審査機関による技術的審査を受けたうえ、所轄の行政庁を経由して建設大臣にその旨を申請しなければならないとされているので、石井昇は、日本建築センターから「審査申込書」と題する申込用紙を貰い受け、これに後述のとおり、原告からモーリス消防工業の会社代表者である原告の記名押印を得て、昭和四四年六月九日ころ、右申込書を日本建築センターに提出し、右審査の申請を行つた。ところで、右申込用紙の「審査区分」、「依頼物件名称」、「添付図書等」、「連絡者」の各項には、石井昇の指示に基づいてモーリス消防工業の事務員が該当事項を記入したが、当時はまだ発明の内容が確定するまでには至つてはいなかつたほか、発明が防災システムにかかるもので単品ではないことなどから、その「材料・構造・構法の種類・大きさ」、「申込の目的」の各項は空欄とし、また、「提出資料公表の諾否」の項については、いずれとも記入しないままで、原告に提示し、原告がその依頼者(申込者)の欄に「モーリス消防工業株式会社取締役社長森田好夫」の印判と代表者印を押捺したうえ、同社事務員が、これを日本建築センターに提出した。
 ところが、右事務員が、右申込書を日本建築センターに提出する際に、「提出資料公表の諾否」の項に記入がなかつたことから、諾否いずれかに記入するよう指示されたため、石井昇に問合せたところ、石井は、このことはさほど重要なことではなく、当時同人としては、建設大臣の認定が得られるまでに一、二年という相当長期間を要するであろうと見込んでいた関係上、右提出資料の公表については、これを承諾しておいた方が、あるいは審査の手続が早く処理されるのではなかろうかとの単純な考えから、発明にかかる技術の公開の正確な意味も、右承諾がそのような公開に発展しうるとの十分な認識もないまま、承諾の旨を指示したので、右事務員が申込書に右指示どおり諾に丸印を付したうえ提出し、受理された。しかし、石井昇は、この点については、右のとおりさほど重要なこととは考えていなかつたので、原告には、ただ単に審査申込書を日本建築センターに提出した旨を報告しただけで、提出資料公表の諾否の項の諾に丸印を付した点については原告に伝えることをせず、その後昭和四九年六月には同社を退職した。
 一方、建設省住宅建築指導課長から建築主務部長宛の「財団法人日本建築センター防災性能評定委員会の発足と今後の運営について」との通達(昭和四四年九月九日住指発第三六一号)により、右審査申込の手続の後約三か月して、日本建築センターに建築基準法に基づく評定委員会が設置され、同委員会は、モーリス消防工業からの前記申請に関し、二回にわたつて原告から口頭の説明を聴取し、さらにこれを書面にしたものの提出を求めたので、原告は、本願発明と同旨の内容を記載した書面を提出したところ、同委員会は、昭和四五年二月一八日付でそのころ、モーリス消防工業宛に、その申請に係る「自動解錠装置(防火戸排煙窓の開閉装置)YM式オートアンロツク」が防災・防犯上適切なものであることを認める旨の評定書を送付した。
 ところが、前記のとおり審査申込書の「提出資料公表の諾否」の項の諾に丸印が付されていたことから、原告から日本建築センターの評定委員会に提出された本願発明と同旨の内容を記載した前記文書の記載内容がそのまま同年八月一日発行の引用例(便覧追録No.1)に掲載されるに至つた。一方、原告は、同年一二月二八日特許庁に対し、本願発明について特許出願をし、昭和五一年七月八日特許出願公告がされた(この事実は当事者間に争いがない。)が、特許異議の申立があつて、拒絶理由中に引用例の技術が開示されていたことにより、代理人を通じて、前記の書面の記載事項がそのまま引用例に掲載された経緯を知るに至つた。」
 以上認定の事実関係に徴すると、本願発明の内容が、原告の意思に反して、引用例に掲記されるに至つたものと認めるのが相当である。
2 もつとも、原告は、石井昇に対し、右審査申込を含む前記の建築基準法第三八条による認定の手続に関する事務を、特段に限定することなく一括依頼し、石井昇はこれに基づいて、右審査申込の事務を行なつたものであり、殊に特許発明の出願前に発明の内容が外部に漏れた場合には、発明者が相応の不利益を被る虞れのあることを了知している原告としては、このような点に精通していないと思われる石井昇から、前記認定のとおり審査申込書に捺印を求められた際に、同書面には、提出資料公表の諾否の項が設けられていたのであるから、たとえ公表を求められても、これを承諾してはならないなど明確な指示をすべきところ、これをすることなく記名捺印をした以上、前記認定のとおりの経緯で公表諾否の項の諾に丸印が付されるにいたつたのは、原告の意思に基づいたものとの疑いを差し挾むものがないではないかもしれない。
 しかし、前掲第二号証、第九号証、乙第三号証、証人石井昇の証言及び原告本人尋問の結果によると、原告にとつては、前記の評定の申請を行うことは全く初めてのことであり、また、建築基準法第三八条による建設大臣の認定手続に関して行われる防災性能評定委員会なるものも、右申請の当時は未だ発足するに至つておらず、したがつてまた、その審査の対象とされた資料が便覧のような刊行物としてかねてから公にされていたわけのものでないことからすると、原告にとつてこの資料の公表の諾否がどのような意味をもつにいたるかについて深く配慮しなかつたとしても、また、やむをえないことであり、まして、原告が当時公表を承諾した場合には発明の内容が直ちに便覧のような刊行物に掲載されることを予想していたものとは到底考えられないこと、原告は、前記のとおりそれまで数多くの発明、考案を手がけ、特許、実用新案の登録出願をしており、出願前にこれら発明や考案の内容が外部に知れることによつて被る出願人の不利益については充分承知していたことは推認するに難くなく、それゆえにこそ、そのような不利益をおそれた原告は、原告本人尋問の結果により認められるとおり、現に日本建築センター防災性能評定委員会の要請により本願発明と同旨の内容を口頭で説明する際にも、右内容が外部に漏れるおそれがないかどうかについて疑念を抱き、係員に念を押すなどして、右の点について配慮していたほどであること、本件証拠を検討しても、本願発明の発明者である原告又はその発明の実施予定者であり審査申込者であるモーリス消防工業が、本願発明の内容がその出願を待たずして公表されることによつて受くべき利益があつたものとは考えられないこと、以上の諸点及び弁論に現われた諸般の事情を併せ考えると、原告が石井昇に対し、審査申込の事務を依頼するに当り、提出資料の公表などが軽々しく行われてはならない旨格別の注意を喚起しなかつた点は軽卒のそしりを免れないとしても、このようなことから直ちに、本願発明の内容が引用例(便覧追録No.1)に掲載公表されたことが、原告の意思に反してされたものでないとはいすないのであり、本件証拠を検討しても、他に、本願発明の内容が原告の意思に反して引用例に掲記されるに至つたとの前認定を左右するに足りる証拠はない。
3 そうすると、本願発明について特許法第三〇条第二項の適用を受けることができないとした審決の認定、判断は誤つており、審決は違法として取消されるべきものである。 

7.(本件)貴社としては、明らかに発明内容を刊行物に記載することに反対の意思表示をしていませんが、自ら及び、貴社の関係者の過失による刊行物の記載ですから新規性喪失の例外である「発明権利者の意思に反する刊行物記載」として拒絶査定に対し異議の審判を申し立てる必要があるでしょう。

≪条文参照≫

憲法
第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
○2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
○3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。

民法
(物権の創設)
第百七十五条  物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

特許法
(目的)
第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
2  この法律で「特許発明」とは、特許を受けている発明をいう。
3  この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
一  物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあつては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為
二  方法の発明にあつては、その方法の使用をする行為
三  物を生産する方法の発明にあつては、前号に掲げるもののほか、その方法により生産した物の使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
4  この法律で「プログラム等」とは、プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下この項において同じ。)その他電子計算機による処理の用に供する情報であつてプログラムに準ずるものをいう。
(特許の要件)
第二十九条  産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
一  特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二  特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三  特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明
2  特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
第二十九条の二  特許出願に係る発明が当該特許出願の日前の他の特許出願又は実用新案登録出願であつて当該特許出願後に第六十六条第三項の規定により同項各号に掲げる事項を掲載した特許公報(以下「特許掲載公報」という。)の発行若しくは出願公開又は実用新案法 (昭和三十四年法律第百二十三号)第十四条第三項 の規定により同項 各号に掲げる事項を掲載した実用新案公報(以下「実用新案掲載公報」という。)の発行がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(第三十六条の二第二項の外国語書面出願にあつては、同条第一項の外国語書面)に記載された発明又は考案(その発明又は考案をした者が当該特許出願に係る発明の発明者と同一の者である場合におけるその発明又は考案を除く。)と同一であるときは、その発明については、前条第一項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願の出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。
(発明の新規性の喪失の例外)
第三十条  特許を受ける権利を有する者が試験を行い、刊行物に発表し、電気通信回線を通じて発表し、又は特許庁長官が指定する学術団体が開催する研究集会において文書をもつて発表することにより、第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明は、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、同条第一項各号の一に該当するに至らなかつたものとみなす。
2  特許を受ける権利を有する者の意に反して第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、前項と同様とする。
3  特許を受ける権利を有する者が政府若しくは地方公共団体(以下「政府等」という。)が開設する博覧会若しくは政府等以外の者が開設する博覧会であつて特許庁長官が指定するものに、パリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会に、又はパリ条約の同盟国若しくは世界貿易機関の加盟国のいずれにも該当しない国の領域内でその政府等若しくはその許可を受けた者が開設する国際的な博覧会であつて特許庁長官が指定するものに出品することにより、第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明も、その該当するに至つた日から六月以内にその者がした特許出願に係る発明についての同条第一項及び第二項の規定の適用については、第一項と同様とする。
4  第一項又は前項の規定の適用を受けようとする者は、その旨を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出し、かつ、第二十九条第一項各号の一に該当するに至つた発明が第一項又は前項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を特許出願の日から三十日以内に特許庁長官に提出しなければならない。
(拒絶の査定)
第四十九条  審査官は、特許出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一  その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十七条の二第三項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。
二  その特許出願に係る発明が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定により特許をすることができないものであるとき。
三  その特許出願に係る発明が条約の規定により特許をすることができないものであるとき。
四  その特許出願が第三十六条第四項第一号若しくは第六項又は第三十七条に規定する要件を満たしていないとき。
五  前条の規定による通知をした場合であつて、その特許出願が明細書についての補正又は意見書の提出によつてもなお第三十六条第四項第二号に規定する要件を満たすこととならないとき。
六  その特許出願が外国語書面出願である場合において、当該特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
七  その特許出願人が発明者でない場合において、その発明について特許を受ける権利を承継していないとき。
(特許権の効力)
第六十八条  特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。ただし、その特許権について専用実施権を設定したときは、専用実施権者がその特許発明の実施をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
第六章 審判
(拒絶査定不服審判)
第百二十一条  拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるときは、その査定の謄本の送達があつた日から三月以内に拒絶査定不服審判を請求することができる。
2  拒絶査定不服審判を請求する者がその責めに帰することができない理由により前項に規定する期間内にその請求をすることができないときは、同項の規定にかかわらず、その理由がなくなつた日から十四日(在外者にあつては、二月)以内でその期間の経過後六月以内にその請求をすることができる。
第百二十二条  削除
(特許無効審判)
第百二十三条  特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができる。この場合において、二以上の請求項に係るものについては、請求項ごとに請求することができる。
一  その特許が第十七条の二第三項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願(外国語書面出願を除く。)に対してされたとき。
二  その特許が第二十五条、第二十九条、第二十九条の二、第三十二条、第三十八条又は第三十九条第一項から第四項までの規定に違反してされたとき。
三  その特許が条約に違反してされたとき。
四  その特許が第三十六条第四項第一号又は第六項(第四号を除く。)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたとき。
五  外国語書面出願に係る特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が外国語書面に記載した事項の範囲内にないとき。
六  その特許が発明者でない者であつてその発明について特許を受ける権利を承継しないものの特許出願に対してされたとき。
七  特許がされた後において、その特許権者が第二十五条の規定により特許権を享有することができない者になつたとき、又はその特許が条約に違反することとなつたとき。
八  その特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正が第百二十六条第一項ただし書若しくは第三項から第五項まで(第百三十四条の二第五項において準用する場合を含む。)又は第百三十四条の二第一項ただし書の規定に違反してされたとき。
2  特許無効審判は、何人も請求することができる。ただし、特許が前項第二号に該当すること(その特許が第三十八条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第六号に該当することを理由とするものは、利害関係人に限り請求することができる。
3  特許無効審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。
4  審判長は、特許無効審判の請求があつたときは、その旨を当該特許権についての専用実施権者その他その特許に関し登録した権利を有する者に通知しなければならない。
第百二十四条  削除
第百二十五条  特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、初めから存在しなかつたものとみなす。ただし、特許が第百二十三条第一項第七号に該当する場合において、その特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、特許権は、その特許が同号に該当するに至つた時から存在しなかつたものとみなす。
(延長登録無効審判)
第百二十五条の二  特許権の存続期間の延長登録が次の各号のいずれかに該当するときは、その延長登録を無効にすることについて延長登録無効審判を請求することができる。一  その延長登録がその特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められない場合の出願に対してされたとき。
二  その延長登録が、その特許権者又はその特許権についての専用実施権若しくは登録した通常実施権を有する者が第六十七条第二項の政令で定める処分を受けていない場合の出願に対してされたとき。
三  その延長登録により延長された期間がその特許発明の実施をすることができなかつた期間を超えているとき。
四  その延長登録が当該特許権者でない者の出願に対してされたとき。
五  その延長登録が第六十七条の二第四項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたとき。
2  第百二十三条第三項及び第四項の規定は、延長登録無効審判の請求について準用する。
3  延長登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、その延長登録による存続期間の延長は、初めからされなかつたものとみなす。ただし、延長登録が第一項第三号に該当する場合において、その特許発明の実施をすることができなかつた期間を超える期間の延長登録を無効にすべき旨の審決が確定したときは、当該超える期間について、その延長がされなかつたものとみなす。
(訂正審判)
第百二十六条  特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一  特許請求の範囲の減縮
二  誤記又は誤訳の訂正
三  明りようでない記載の釈明
2  訂正審判は、特許無効審判が特許庁に係属した時からその審決が確定するまでの間は、請求することができない。ただし、特許無効審判の審決に対する訴えの提起があつた日から起算して九十日の期間内(当該事件について第百八十一条第一項の規定による審決の取消しの判決又は同条第二項の規定による審決の取消しの決定があつた場合においては、その判決又は決定の確定後の期間を除く。)は、この限りでない。
3  第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(同項ただし書第二号に掲げる事項を目的とする訂正の場合にあつては、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(外国語書面出願に係る特許にあつては、外国語書面))に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
4  第一項の明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであつてはならない。
5  第一項ただし書第一号又は第二号に掲げる事項を目的とする訂正は、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
6  訂正審判は、特許権の消滅後においても、請求することができる。ただし、特許が特許無効審判により無効にされた後は、この限りでない。

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