新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.733、2007/12/28 15:05 https://www.shinginza.com/qa-fudousan.htm

【民事・筆界確定と所有権の境界・平成18年施行筆界特定制度】

質問:家庭の事情により,私が所有する土地の一部を分筆して売却することになりました。そこで,筆界の確認や測量を含む分筆手続をしようと思っていたところ,土地の筆界がはっきりせず,隣接地の所有者は,筆界について私と異なる主張をし,筆界確認書への押印を拒否してしまいました。そのため,このままでは分筆ができず,土地の売却も難しくなってしまいました。土地を売却する必要があるので筆界は特定したいのですが,ご近所の目が気になるので裁判は避けたいです。このような場合,どうすればよいでしょうか。

回答:
1.隣接する土地同士の境界線については,法的に2つの意味があります。一つは,国家が作った公的な不動産登記簿上の境界線という意味で,これを筆界(ひっかい)といいます(公的境界線)。もう一つは,隣接する土地所有権範囲を決める境界線です(私的境界線)。この2つの境界線は通常同一ですが,土地の一部についての時効,売買,測量過誤等により不一致になる場合があり,必ずしも同一であるとは限りません。

2.今回貴方が問題にしている境界線は,形式上は公的境界線,「筆界」ですが,事実上私的境界線確定の意味をも含んでいます。そいう意味で隣人は協力してくれないのです。

3.公的境界線である「筆界」に争いがある場合は,最終的に境界(筆界)確定訴訟という裁判になります。しかし,平成18年に訴訟によらず暫定的に不明となった「筆界」を定める筆界特定制度が創設,施行されましたので,この制度を利用して売買することをお勧めいたします。

4.私的境界線を確定する事について当事者に争いがある場合は,最終的に土地所有権確定訴訟になります。

5.以上より,筆界が暫定的に定まっても,隣人が不服であれば(勿論貴方が不服の場合も),「筆界」確定訴訟,及び私的境界線を定める土地所有権確認訴訟を独自に提起することが可能です。

解説:
1.問題点の指摘。
@貴方は,土地の売買のために隣人に「筆界」確定を計ろうとしたところ,筆界が異なるという事で協議がまとまっておりません。しかし,貴方がおっしゃる「筆界」の本来の法的意味は,厳密に言うと国家が管理する不動産登記簿の表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において,当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいいます(不動産登記法123条1号)。つまり,土地と土地との境界線なのですが,不動産登記簿に登記されたときにその土地の範囲を公的に区画するものとして定められた線をいいます。公的な境界線といっていいと思います。これと類似するものとして同じ境界線なのですが,隣接する土地との所有権の範囲を実質的に画する線(私的境界線といっていいでしょう)がありますが,これとはまったく別のものです。もっとも,公的境界線である筆界は所有権の範囲を定めた境界線と一致することが多いと思われます。

A何故「筆界」があるかというと,話せば大変長くなりますが簡単に言うと,私有財産制と取引の安全のための公示(不動産登記)制度があるからです。明治維新以後,私有財産制度が法的に保障され財産的価値の高い不動産については取引の安全を保障しなければなりませんので,私的な所有権等の権利関係を明らかにして公示(登記)する前提として(登記制度について事例集712号参照してください)先ず国家が広大な日本の土地についてすべて細かく分筆し地番(例えば524番15と呼ばれます)をつけて(5丁目2番4号という住居表示とは違います)土地の範囲を公的に確定したのです。その境界線が「筆界」です。国家が決めたものですから所有者同士の合意等によって勝手に変更することはできないわけです。

B国家が筆界を決めたもので当時者が勝手に変更できないのであれば,私人である貴方が隣人に筆界の確認を求めに行くのもおかしいように思いますが,筆界は登記所である法務局に公図という形で測量図も付いて残っているのですが,現場に測量当時確定した適正な界標が時の流れ,天災,事変等により不明になっている場合がありますので,隣人に確認を求めたのだと思います。公的境界線であり所有権の範囲を決めるものでなければ隣人も確定に応じてくれてもいいように思いますが,当事者が筆界確定に同意し新たに界標を打ち込みますと,あとで特別な反証を挙げない限り所有権の範囲についても同意したという反射的効果があり,隣人としても安易に同意できないわけです。当事者が作成する同意書には当然実際の界標地点が記載してあり,万が一その界標が不明になっても再度確認できるように測量図を添付するのが通常です。従って,その同意書は筆界を決めるものであっても後日所有権の範囲についていざ争いとなれば,特別な記載がない限り当事者の所有権の範囲を決めたものと推定,判断されてしまう危険があるからです。万が一実際の所有権の範囲と違っても食い違った部分は和解により権利譲歩,譲渡したものと同様に評価される事になるでしょう。すなわちこの事態を覆すには錯誤,詐欺とか特別な立証が権利を失った人に要求されることになるわけです。

Cそこで当事者に協議が出来ない時は従来,境界確定訴訟で決着をつけていました。しかし,この制度は明治時代に決めた公的な筆界を再現するのですから訴訟の性質上時間,費用,手続がかなり大変です。この訴訟は,一般の民事訴訟と違い実質的に非訟事件といわれています(非訟事件について事例集698号678号参照してください)。すなわち国家が決めた公的な境界線を決める裁判ですから,当事者の意思に任せる処分権主義が妥当しませんので請求棄却もありませんし,和解譲歩で確定が出来ない争いなのです(尚,ここでは説明は割愛しますが,共有物分割の訴えと同じく証明する形成要件事実がなく判決により初めて画一的に権利関係の法的効果が生じる形式的形成訴訟といわれています)。

D又,公図,測量図があったとしてもかなり昔のもので信憑性が高くないですし,四方に囲まれた土地の筆界を再度確定しそこから当該土地の面積,界標地点を確定していかなければならず費用時間もかかり,何よりも肝心の取引に対応できない事態が考えられます。そこでこのような不都合を避けるため平成18年1月20日に不動産登記法の改正として筆界特定制度というものが創設,施行されました。

E筆界特定制度とは,土地の所有権の登記名義人等の申請に基づいて,法務局(地方法務局)の長が指定する筆界特定登記官が,外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて,土地の筆界の現地における位置を行政庁が暫定的に特定する制度です。この制度により,裁判によらず適正,公平,迅速な筆界確定が出来ることになり,当事者の費用的負担も軽くなりました。なお,この制度による特定は暫定的なものであり特定の結果に不服がある場合には,勿論筆界の確定を求める民事訴訟ができます・不動産登記法147条148条)。本例権利の争いは,裁判を受ける権利(憲法32条)が認められる以上裁判所の管轄に属するので,行政庁が最終判断は出来ないからです。

2.筆界特定制度。筆界特定とは,一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について,筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは,その位置の範囲を特定すること)をいいます(不動産登記法123条2号)。つまり,ある土地が登記された時にその土地の範囲を区画するものとして定められた線(筆界)を,現地において特定することをいい,新たに筆界を決めるものではなく,調査の上,登記された時に定められたもともとの筆界を,筆界特定登記官が,明らかにすることをいいます。特定方法は,筆界調査委員という専門家が,これを補助する法務局の職員とともに,土地の実地調査や測量,利害関係人の意見聴取を含むさまざまな調査を行った上,筆界に関する意見を筆界特定登記官に提出し,筆界特定登記官がその意見を踏まえて筆界を特定します。

3.筆界特定がされると,筆界特定の対象となった土地を管轄する登記所において筆界特定書が保管されるので,特定の結果が,筆界特定書の写しの交付請求等によって,公開されます。また,筆界特定の対象となった土地の登記記録に,筆界特定がされた旨が記録されます。

4.申請方法。筆界特定の申請を行えるのは,土地の所有者として登記されている人や,その相続人などで,対象となる土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局の筆界特定登記官に対して,筆界特定の申請をすることになります。申請に際しては,申請書に必要な事項を記載し,添付書類とともに提出する必要がありますが,手続を迅速に進めるためには,お手持ちの資料も提出するとよいでしょう。費用についてですが,筆界特定の申請に必要な手数料として,対象土地の価額によって決まる申請手数料と(対象土地である2筆の合計額が4,000万円の場合,申請手数料は8,000円になります。),手続の中で,測量が必要となった場合の測量費用(面積により異なりますが,数十万円程度から負担します。)を負担する必要があります。

5.以上のとおり,
@筆界特定制度は極めて有意義な制度ですが,あなたとご近所の間に入って紛争の仲裁をしてくれる制度ではありませんし,行政処分としての確定効力もありません。ご近所が筆界特定の結果に納得せず,境界確定の訴えを起こした場合には,当該判決で確定した筆界が優先し,これに抵触する既になされた筆界特定は効力を失います(不動産登記法148条)。

Aまた,筆界特定の申請は国家が決めた公的な境界線を訴訟手続によらず暫定的に決めるものですから「対象土地の所有権の境界の特定その他筆界特定以外の事項を目的とするものと認められるとき」には却下されることになりますので注意が必要です(不動産登記法132条1項5号)。つまり,筆境について双方の主張が食い違う場合で,所有権の確認にまで紛争が発展している場合は,裁判手続きが必要となります。双方が裁判までは考えていないが境界をハッキリさせたい,と言う場合や,隣地所有者が特に理由がないのに筆境の確認を拒否する場合に用いられる制度と考えてよいでしょう。

B本来,所有権の確認は通常訴訟である所有権確認訴訟による必要がありますが,筆界確定により特別な事情がない限り所有権の境界を推定される事実上の効果は生じるでしょう。

6.本件における効果。筆界特定により相手方が異議を申し出ないようであれば,筆界確定訴訟と同じように専門家による現地調査,測量,利害関係者の意見聴取を行いますので,筆界の信用性は実質的に高く筆界特定を前提に不動産取引は促進されることになるでしょう。貴方も筆界,所有権の範囲に事実上争いがなくさしたる理由もないのに,隣地の所有者が筆界確認に同意をしないような場合,迅速性があるこの制度を是非御利用ください。その他ご不明な点につきましては,法務局又は弁護士等にご相談下さい。

≪参考条文≫

●不動産登記法
(定義)
第百二十三条  この章において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。
一  筆界 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において,当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
二  筆界特定 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について,この章の定めるところにより,筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは,その位置の範囲を特定すること)をいう。
三  対象土地 筆界特定の対象となる筆界で相互に隣接する一筆の土地及び他の土地をいう。
四  関係土地 対象土地以外の土地(表題登記がない土地を含む。)であって,筆界特定の対象となる筆界上の点を含む他の筆界で対象土地の一方又は双方と接するものをいう。
五  所有権登記名義人等 所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人,所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者,表題登記がない土地にあっては所有者をいい,所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む。
(筆界特定の事務)
第百二十四条  筆界特定の事務は,対象土地の所在地を管轄する法務局又は地方法務局がつかさどる。
2  第六条第二項及び第三項の規定は,筆界特定の事務について準用する。この場合において,同条第二項中「不動産」とあるのは「対象土地」と,「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と,「法務局若しくは地方法務局」とあるのは「法務局」と,同条第三項中「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と読み替えるものとする。
(筆界特定登記官)
第百二十五条  筆界特定は,筆界特定登記官(登記官のうちから,法務局又は地方法務局の長が指定する者をいう。以下同じ。)が行う。
(筆界調査委員)
第百二十七条  法務局及び地方法務局に,筆界特定について必要な事実の調査を行い,筆界特定登記官に意見を提出させるため,筆界調査委員若干人を置く。
2  筆界調査委員は,前項の職務を行うのに必要な専門的知識及び経験を有する者のうちから,法務局又は地方法務局の長が任命する。
3  筆界調査委員の任期は,二年とする。
4  筆界調査委員は,再任されることができる。
5  筆界調査委員は,非常勤とする。
(筆界特定の申請)
第百三十一条  土地の所有権登記名義人等は,筆界特定登記官に対し,当該土地とこれに隣接する他の土地との筆界について,筆界特定の申請をすることができる。
2  筆界特定の申請は,次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一  申請の趣旨
二  筆界特定の申請人の氏名又は名称及び住所
三  対象土地に係る第三十四条第一項第一号及び第二号に掲げる事項(表題登記がない土地にあっては,同項第一号に掲げる事項)
四  対象土地について筆界特定を必要とする理由
五  前各号に掲げるもののほか,法務省令で定める事項
3  筆界特定の申請人は,政令で定めるところにより,手数料を納付しなければならない。
4  第十八条の規定は,筆界特定の申請について準用する。この場合において,同条中「不動産を識別するために必要な事項,申請人の氏名又は名称,登記の目的その他の登記の申請に必要な事項として政令で定める情報(以下「申請情報」という。)」とあるのは「第百三十一条第二項各号に掲げる事項に係る情報(第二号,第百三十二条第一項第四号及び第百五十条において「筆界特定申請情報」という。)」と,「登記所」とあるのは「法務局又は地方法務局」と,同条第二号中「申請情報」とあるのは「筆界特定申請情報」と読み替えるものとする。
(申請の却下)
第百三十二条  筆界特定登記官は,次に掲げる場合には,理由を付した決定で,筆界特定の申請を却下しなければならない。ただし,当該申請の不備が補正することができるものである場合において,筆界特定登記官が定めた相当の期間内に,筆界特定の申請人がこれを補正したときは,この限りでない。
一  対象土地の所在地が当該申請を受けた法務局又は地方法務局の管轄に属しないとき。
二  申請の権限を有しない者の申請によるとき。
三  申請が前条第二項の規定に違反するとき。
四  筆界特定申請情報の提供の方法がこの法律に基づく命令の規定により定められた方式に適合しないとき。
五  申請が対象土地の所有権の境界の特定その他筆界特定以外の事項を目的とするものと認められるとき。
六  対象土地の筆界について,既に民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決(訴えを不適法として却下したものを除く。第百四十八条において同じ。)が確定しているとき。
七  対象土地の筆界について,既に筆界特定登記官による筆界特定がされているとき。ただし,対象土地について更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合を除く。
八  手数料を納付しないとき。
九  第百四十六条第五項の規定により予納を命じた場合においてその予納がないとき。
2  前項の規定による筆界特定の申請の却下は,登記官の処分とみなす。
(筆界調査委員の指定等)
第百三十四条  法務局又は地方法務局の長は,前条第一項本文の規定による公告及び通知がされたときは,対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を行うべき筆界調査委員を指定しなければならない。
2  次の各号のいずれかに該当する者は,前項の筆界調査委員に指定することができない。
一  対象土地又は関係土地のうちいずれかの土地の所有権の登記名義人(仮登記の登記名義人を含む。以下この号において同じ。),表題部所有者若しくは所有者又は所有権以外の権利の登記名義人若しくは当該権利を有する者
二  前号に掲げる者の配偶者又は四親等内の親族(配偶者又は四親等内の親族であった者を含む。次号において同じ。)
三  第一号に掲げる者の代理人若しくは代表者(代理人又は代表者であった者を含む。)又はその配偶者若しくは四親等内の親族
3  第一項の規定による指定を受けた筆界調査委員が数人あるときは,共同してその職務を行う。ただし,筆界特定登記官の許可を得て,それぞれ単独にその職務を行い,又は職務を分掌することができる。
4  法務局又は地方法務局の長は,その職員に,筆界調査委員による事実の調査を補助させることができる。
(筆界調査委員による事実の調査)
第百三十五条  筆界調査委員は,前条第一項の規定による指定を受けたときは,対象土地又は関係土地その他の土地の測量又は実地調査をすること,筆界特定の申請人若しくは関係人又はその他の者からその知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めることその他対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査をすることができる。
2  筆界調査委員は,前項の事実の調査に当たっては,筆界特定が対象土地の所有権の境界の特定を目的とするものでないことに留意しなければならない。
(意見又は資料の提出)
第百三十九条  筆界特定の申請があったときは,筆界特定の申請人及び関係人は,筆界特定登記官に対し,対象土地の筆界について,意見又は資料を提出することができる。この場合において,筆界特定登記官が意見又は資料を提出すべき相当の期間を定めたときは,その期間内にこれを提出しなければならない。
2  前項の規定による意見又は資料の提出は,電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により行うことができる。
(意見聴取等の期日)
第百四十条  筆界特定の申請があったときは,筆界特定登記官は,第百三十三条第一項本文の規定による公告をした時から筆界特定をするまでの間に,筆界特定の申請人及び関係人に対し,あらかじめ期日及び場所を通知して,対象土地の筆界について,意見を述べ,又は資料(電磁的記録を含む。)を提出する機会を与えなければならない。
2  筆界特定登記官は,前項の期日において,適当と認める者に,参考人としてその知っている事実を陳述させることができる。
3  筆界調査委員は,第一項の期日に立ち会うものとする。この場合において,筆界調査委員は,筆界特定登記官の許可を得て,筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人に対し質問を発することができる。
4  筆界特定登記官は,第一項の期日の経過を記載した調書を作成し,当該調書において当該期日における筆界特定の申請人若しくは関係人又は参考人の陳述の要旨を明らかにしておかなければならない。
5  前項の調書は,電磁的記録をもって作成することができる。
6  第百三十三条第二項の規定は,第一項の規定による通知について準用する。
(筆界調査委員の意見の提出)
第百四十二条  筆界調査委員は,第百四十条第一項の期日の後,対象土地の筆界特定のために必要な事実の調査を終了したときは,遅滞なく,筆界特定登記官に対し,対象土地の筆界特定についての意見を提出しなければならない。
(筆界特定)
第百四十三条  筆界特定登記官は,前条の規定により筆界調査委員の意見が提出されたときは,その意見を踏まえ,登記記録,地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容,対象土地及び関係土地の地形,地目,面積及び形状並びに工作物,囲障又は境界標の有無その他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮して,対象土地の筆界特定をし,その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成しなければならない。
2  筆界特定書においては,図面及び図面上の点の現地における位置を示す方法として法務省令で定めるものにより,筆界特定の内容を表示しなければならない。
3  筆界特定書は,電磁的記録をもって作成することができる。
(筆界特定の通知等)
第百四十四条  筆界特定登記官は,筆界特定をしたときは,遅滞なく,筆界特定の申請人に対し,筆界特定書の写しを交付する方法(筆界特定書が電磁的記録をもって作成されているときは,法務省令で定める方法)により当該筆界特定書の内容を通知するとともに,法務省令で定めるところにより,筆界特定をした旨を公告し,かつ,関係人に通知しなければならない。
2  第百三十三条第二項の規定は,前項の規定による通知について準用する。
(筆界特定手続記録の保管)
第百四十五条  前条第一項の規定により筆界特定の申請人に対する通知がされた場合における筆界特定の手続の記録(以下「筆界特定手続記録」という。)は,対象土地の所在地を管轄する登記所において保管する。
(筆界確定訴訟における釈明処分の特則)
第百四十七条  筆界特定がされた場合において,当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起されたときは,裁判所は,当該訴えに係る訴訟において,訴訟関係を明瞭にするため,登記官に対し,当該筆界特定に係る筆界特定手続記録の送付を嘱託することができる。民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えが提起された後,当該訴えに係る筆界について筆界特定がされたときも,同様とする。
(筆界確定訴訟の判決との関係)
第百四十八条  筆界特定がされた場合において,当該筆界特定に係る筆界について民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴えに係る判決が確定したときは,当該筆界特定は,当該判決と抵触する範囲において,その効力を失う。
(筆界特定書等の写しの交付等)
第百四十九条  何人も,登記官に対し,手数料を納付して,筆界特定手続記録のうち筆界特定書又は政令で定める図面の全部又は一部(以下この条及び第百五十三条において「筆界特定書等」という。)の写し(筆界特定書等が電磁的記録をもって作成されているときは,当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付を請求することができる。
2  何人も,登記官に対し,手数料を納付して,筆界特定手続記録(電磁的記録にあっては,記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したもの)の閲覧を請求することができる。ただし,筆界特定書等以外のものについては,請求人が利害関係を有する部分に限る。
3  第百十九条第三項及び第四項の規定は,前二項の手数料について準用する。

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