新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.637、2007/6/4 13:59 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

〔家事・面接交渉〕

質問:5年前に,私の浮気が原因で,妻が子供を連れて実家に帰ってしまい,私に子供を会わせようとしません。子供と定期的に会いたいのですが,どのようにすればいいですか。弁護士に依頼することはできますか。なお,私と妻は,婚姻関係が破綻して別居状態にあり離婚するつもりですが,現在のところ正式な離婚には至っていない情況にあります。

回答
1.面接交渉について
面接交渉とは,一般的には,離婚後に子供を養育・監護していない方の親が子供と面会等を行うことをいいますので便宜上先ず離婚後の面接交渉権について説明してから本件について回答致します。御了承ください。子供に対する面接ないし交渉は,親権もしくは監護権を有しない親としての最低限の要求であるといえます。そこで,面接交渉については,明文の規定はないものの,父母の離婚という不幸な出来事によって父母が共同で親権もしくは監護権を行使することが事実上不可能なために,一方の親が親権者もしくは監護者と定められ,単独で子供を監護養育することになっても,他方の親権もしくは監護権を有しない親は,子供と面接ないし交渉する権利を有し,この権利は,子供の福祉を害することがない限り,制限されたり,または奪われることはないものと考えるべきです。

面接交渉の具体的な内容や方法については,まずは父母が話し合って決めることになりますが,話合いがまとまらない場合には,家庭裁判所に調停の申立てをして,面接交渉に関する取り決めを求めることができます。子供との面接交渉は,子供の健全な成長を助けるようなものである必要があるので,調停手続では,子供の年齢,性別,性格,就学の有無,生活のリズム,生活環境等を考えて,子供に精神的な負担をかけることのないように十分配慮して,子供の意向を尊重した取決めができるように,話合いが進められます。

そしてこの権利は,監護そのものではありませんが,監護に関連のある権利というべきであり,この面接交渉権行使のため必要な事項は,民法七六六条に規定する子供の「監護について必要な事項」又は「監護について相当な処分」に関するものと解されます。そこで,離婚に際し,親権もしくは監護権を有しないことになった親は,子供との面接交渉権行使に必要な事項につき,他方の親権もしくは監護権を有する親との協議で定めることができ,その協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所がこれを定めるべきものであり,また家庭裁判所は,離婚後子供の利益のため必要があると認めるときは,子供との面接交渉権行使に必要な事項について相当な処分を民法第七六六条第二項による監護に関する処分として命ずることができると解せられています。すなわち,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には,家事審判法九条一項乙類四号に規定する家事審判事項に属するとして,自動的に審判手続が開始され,家事審判官(裁判官)が,一切の事情を考慮して,必要に応じて面接交渉の方法を定め,又は面接交渉を制限するという審判をすることになります。

なお,子供の福祉の観点から面接交渉が認められないこともありますが,別居の原因が相談者の不貞行為にあるとしても,面接交渉を認めることが直ちに子供の福祉を害するとは考えられないことから,このことのみをもって,面接交渉が認められないということにはならないでしょう。

2.離婚前の面接交渉
既に離婚が成立している場合には,離婚して親権者でなくなった親は,子に面接する方法としては面接交渉権の行使しかありませんので,面接交渉権の行使に際し他方の親(親権者)と調整がつかない場合には,民法七六六条,家事審判法九条一項乙類四号により家裁の審判を求めることができることは,前述したとおりです。他方,夫婦がいまだ離婚していないときには,事実上離婚状態にあっても,それぞれの親が親権を有していますから,親権の行使(面接交渉権を含む)については親権者の自主的解決にまつべきものである上,離婚していない夫婦の一方と子の面接交渉の問題は,理論上親権の行使であって,家裁の審判事項に当たらないとも考えられます。

しかしながら,父母の婚姻中は,父母が共同して親権を行い,親権者は,子の監護及び教育をする権利を有し,義務を負うものであり(民法八一八条三項,八二〇条),婚姻関係が破綻して父母が別居状態にある場合であっても,子と同居していない親が子と面接交渉することは,子の監護の一内容であるということができます。このようにかんがえれば,別居状態にある父母の間で右面接交渉につき協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所は,民法七六六条を類推適用し,家事審判法九条一項乙類四号により,右面接交渉について相当な処分を命ずることができると解するのが相当であります。

したがいまして,離婚前の面接交渉につきましても,その具体的な内容や方法については,まずは父母が話し合って決めることになりますが,話合いがまとまらない場合には,家庭裁判所に調停の申立てをして,面接交渉に関する取り決めを求めることができます。そして,話合いがまとまらず調停が不成立になった場合には自動的に審判手続が開始され,家事審判官(裁判官)が,一切の事情を考慮して,審判をすることになります。

3.最後に
これらの手続きは、ご自身でなさることもできますが,ご自身でなさることが不安であれば,面接交渉等家事事件を取り扱っている弁護士に一度相談してみてはいかがでしょうか。その際には,相談を受けた弁護士は,面接交渉についてのみならず,離婚についての相談にも応じてくれることでしょう。

≪参考条文≫

●民法
(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
第七百六十六条  父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者その他監護について必要な事項は、その協議で定める。協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。
2  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の監護をすべき者を変更し、その他監護について相当な処分を命ずることができる。
3  前二項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
(親権者)
第八百十八条  成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
(監護及び教育の権利義務)
第八百二十条  親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
●家事審判法
第九条  家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。
甲類
一 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七条 及び第十条 の規定による後見開始の審判及びその取消し
二 民法第十一条 、第十三条第二項及び第三項、第十四条並びに第八百七十六条の四第一項及び第三項の規定による保佐開始の審判、その取消しその他の保佐に関する処分
二の二 民法第十五条第一項 、第十七条第一項及び第三項、第十八条、第八百七十六条の九第一項並びに同条第二項において準用する同法第八百七十六条の四第三項 の規定による補助開始の審判、その取消しその他の補助に関する処分
二の三 民法第十九条 の規定による後見開始、保佐開始又は補助開始の審判の取消し
三 民法第二十五条 から第二十九条 までの規定による不在者の財産の管理に関する処分
四 民法第三十条 及び第三十二条第一項 の規定による失踪の宣告及びその取消し
五 民法第七百七十五条 の規定による特別代理人の選任
六 民法第七百九十一条第一項 又は第三項 の規定による子の氏の変更についての許可
七 民法第七百九十四条 又は第七百九十八条 の規定による養子をするについての許可
七の二 民法第八百十一条第五項 の規定による未成年後見人となるべき者の選任
八 民法第八百十一条第六項 の規定による離縁をするについての許可
八の二 民法第八百十七条の二 及び第八百十七条の十 の規定による縁組及び離縁に関する処分
九 民法第八百二十二条 又は第八百五十七条 (同法第八百六十七条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による懲戒に関する許可その他の処分
十 民法第八百二十六条 (同法第八百六十条 において準用する場合を含む。)の規定による特別代理人の選任
十一 民法第八百三十条第二項 から第四項 まで(同法第八百六十九条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の管理者の選任その他の財産の管理に関する処分
十二 民法第八百三十四条 から第八百三十六条 までの規定による親権又は管理権の喪失の宣告及びその取消し
十三 民法第八百三十七条 の規定による親権又は管理権を辞し、又は回復するについての許可
十四 民法第八百四十条 、第八百四十三条第一項から第三項まで(同法第八百七十六条の二第二項 及び第八百七十六条の七第二項 において同法第八百四十三条第二項 及び第三項 の規定を準用する場合を含む。)、第八百四十九条、第八百四十九条の二、第八百七十六条の二第一項、第八百七十六条の三第一項、第八百七十六条の七第一項又は第八百七十六条の八第一項の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の選任
十五 民法第八百四十四条 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の二第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の七第二項及び第八百七十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の辞任についての許可
十六 民法第八百四十六条 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の二第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の七第二項及び第八百七十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の解任
十七 民法第八百五十三条第一項 ただし書(同法第八百五十六条 及び第八百六十七条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による財産の目録の作成の期間の伸長
十八 民法第八百五十九条の二第一項 及び第二項 (これらの規定を同法第八百五十二条 、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による数人の成年後見人、成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の権限の行使についての定め及びその取消し
十九 民法第八百五十九条の三 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による成年被後見人、被保佐人又は被補助人の居住用不動産の処分についての許可
二十 民法第八百六十二条 (同法第八百五十二条 、第八百六十七条第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人に対する報酬の付与
二十一 民法第八百六十三条 (同法第八百六十七条第二項 、第八百七十六条の五第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による後見、保佐又は補助の事務の報告、財産の目録の提出、当該事務又は財産の状況の調査、財産の管理その他の当該事務に関する処分
二十二 民法第八百七十条 ただし書(同法第八百七十六条の五第三項 及び第八百七十六条の十第二項 において準用する場合を含む。)の規定による管理の計算の期間の伸長
二十二の二 民法第八百七十六条の二第三項 又は第八百七十六条の七第三項 の規定による臨時保佐人又は臨時補助人の選任
二十三 民法第八百九十五条 の規定による遺産の管理に関する処分
二十四 民法第九百十五条第一項 ただし書の規定による相続の承認又は放棄の期間の伸長
二十五 民法第九百十八条第二項 及び第三項 (これらの規定を同法第九百二十六条第二項 、第九百三十六条第三項及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の保存又は管理に関する処分
二十五の二 民法第九百十九条第四項 の規定による相続の限定承認又は放棄の取消しの申述の受理
二十六 民法第九百二十四条 の規定による相続の限定承認の申述の受理
二十七 民法第九百三十条第二項 (同法第九百四十七条第三項 、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)、第九百三十二条ただし書(同法第九百四十七条第三項 及び第九百五十条第二項 において準用する場合を含む。)又は第千二十九条第二項の規定による鑑定人の選任
二十八 民法第九百三十六条第一項 の規定による相続財産の管理人の選任
二十九 民法第九百三十八条 の規定による相続の放棄の申述の受理
三十 民法第九百四十一条第一項 又は第九百五十条第一項 の規定による相続財産の分離に関する処分
三十一 民法第九百四十三条 (同法第九百五十条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の管理に関する処分
三十二 民法第九百五十二条 及び第九百五十三条 又は第九百五十八条 の規定による相続財産の管理人の選任その他相続財産の管理に関する処分
三十二の二 民法第九百五十八条の三第一項 の規定による相続財産の処分
三十三 民法第九百七十六条第四項 又は第九百七十九条第三項 の規定による遺言の確認
三十四 民法第千四条第一項 の規定による遺言書の検認
三十五 民法第千十条 の規定による遺言執行者の選任
三十六 民法第千十八条第一項 の規定による遺言執行者に対する報酬の付与
三十七 民法第千十九条 の規定による遺言執行者の解任及び遺言執行者の辞任についての許可
三十八 民法第千二十七条 の規定による遺言の取消し
三十九 民法第千四十三条第一項 の規定による遺留分の放棄についての許可
乙類
一 民法第七百五十二条 の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分
二 民法第七百五十八条第二項 及び第三項 の規定による財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分
三 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分
四 民法第七百六十六条第一項 又は第二項 (これらの規定を同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
五 民法第七百六十八条第二項 (同法第七百四十九条 及び第七百七十一条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する処分
六 民法第七百六十九条第二項 (同法第七百四十九条 、第七百五十一条第二項、第七百七十一条、第八百八条第二項及び第八百十七条において準用する場合を含む。)又は第八百九十七条第二項 の規定による同条第一項 の権利の承継者の指定
六の二 民法第八百十一条第四項 の規定による親権者となるべき者の指定
七 民法第八百十九条第五項 又は第六項 (これらの規定を同法第七百四十九条 において準用する場合を含む。)の規定による親権者の指定又は変更
八 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養に関する処分
九 民法第八百九十二条 から第八百九十四条 までの規定による推定相続人の廃除及びその取消し
九の二 民法第九百四条の二第二項 の規定による寄与分を定める処分
十 民法第九百七条第二項 及び第三項 の規定による遺産の分割に関する処分
○2  家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に家庭裁判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。

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