新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.430、2006/6/30 10:44 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

[家事・夫婦]
質問:私は専業主婦をしていますが、最近、サラリーマンの夫と折り合いがあわず、離婚すると言う話が出てきています。平成19年の4月以降に離婚した方が年金の点で有利ということを聞きましたが、今すぐ離婚しないほうが良いのでしょうか。

回答:
1、平成16年6月5日に成立した国民年金法等の一部を改正する法律により、厚生年金につき「年金分割」の制度が導入されることになりました。この制度は平成19年4月1日以降に離婚した夫婦に適用されますので、あなたの夫が厚生年金を支払っているサラリーマン等の場合、この日以降に離婚すれば、あなたはこの制度の恩恵を受けることが可能になるでしょう。もっとも、今すぐ離婚したいところを、この恩恵を受けるために、離婚を引き延ばすまでの必要があるかどうかは、制度の中身をある程度知って頂いて、その上でご自身で判断していただくということになると思いますので、以下簡単に制度の説明をします。
2、そもそも、何故このような法改正がなされたのかというと、従来から、あなたのように夫がサラリーマン、妻が専業主婦という夫婦が離婚をすると、老後に夫は厚生年金に対応する部分も年金として受給できるけれども、妻は国民年金の部分しか受給できないという不公平が言われていました。これらの点については例えば、離婚に際して、財産分与として、老後の年金受給権のうち厚生年金部分を半分継続的に支払うなどの調停条項をいれるなどによって対応していた訳ですが、このような継続的給付は離婚後も相手方が守るかどうかについてはおおいに疑問であり、今回の改正では、保険料の納付記録を移転する形で分割権を確立することによって、妻が直接国から支給を受けられることに大きな意味があると言えます。
3、そして、離婚後2年以内に社会保険事務所に届け出れば、夫が支払った厚生年金保険料納付額のうち、婚姻期間中相当額の最大2分の1を夫婦で分割できるのですが、平成19年4月から施行される分割制度は、分割割合はあくまで協議であり、協議が整わない場合には裁判所の調停などによって決められた分割割合を届けるということになり、それなりの労力がかかることは予想されます。(なお、専業主婦の場合には、平成20年4月1日以降の結婚期間部分は最大ではなく、自動的に2分の1が分割されることになっています。)また、分割されるのは、あくまで「婚姻期間中」に納付した夫の厚生年金部分であること、またそれが実際に支給されるのはだいぶ後の話であり、現状ですら崩壊寸前と言われている厚生年金制度ですから、実際に受給される段階では制度が変わってい ることも十分に予想されることなどを考えると、あなたの年齢等によっては、さほどのメリットがない場合も考えられます。
4、以上から、あなたの場合、一般論としては、平成19年4月1日以降に離婚するメリットはあるとはいえます。長年連れ添った末の熟年離婚で、年金の受給が間近のような場合では、特にメリットは大きいのでしょうが、婚姻期間が短いあるいは、年金受給がだいぶ先というようなケースでは、現在、無理に離婚することを我慢して精神的な苦痛を受けるような状態などがあるのであれば、むしろ早期に離婚してしまった方が良いということも十分考えられると思われます。

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