新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.411、2006/5/24 14:42 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴後]
質問:繰り返し犯罪行為をしてしまったのですが、どのような刑事処分になるか、また、どのような刑罰があるのか教えてください。

1、あなたのご質問が抽象的ですので、正確に全ての点に答えることが出来るわけではありませんが、問題となり得る点を抽出して回答したいと思います。理解できない点はお近くの法律事務所にてご相談ください。
2、犯罪行為をしたとのことですがどのような犯罪か解りませんので、一般的な手続きについてご先ず説明します。犯罪が起きて、被疑者が逮捕された場合、警察署の段階で捜査をするためには最大2日間(48時間)継続して捜査すること(継続して身柄を拘束すること)が認められています(刑事訴訟法202条〜205条)。そして、検察庁(検察官)に送検されると、検察官は、被疑者について勾留が必要か否かを24時間以内に判断し、勾留が必要であれば裁判所に請求することになります。勾留期間は原則として、最大10日で(刑事訴訟法208条)、その後、延長が裁判官に認められれば、更に最大10日間の勾留が認められます(刑事訴訟法208条2項)。あなたは犯罪行為を行っているようですので、勾留請求される可能性が高いかも知れません。
3、捜査の結果、犯罪の嫌疑がないか、犯罪が成立しないことが明らかな場合、あるいは証拠が不十分な場合公訴は提起されません。これを不起訴処分又は処分保留といいます。名誉毀損罪等親告罪に該当する事件においては、被害者が告訴をしないか、しても取消が有ると公訴権は消滅するので同様の結果になります。犯罪行為を行ったとしても、起訴に値しない場合は公訴提起即ち起訴しない場合があります。これを起訴猶予処分といいます(刑事訴訟法248条)。たとえば、小額の万引き行為で反省しているような場合に考えられます。あなたの場合繰り返し犯罪行為をしたと有りますから起訴猶予は無理かもしれません。
4、捜査の結果、起訴する場合においては、公判請求といって通常の公判審理を求める場合と、略式命令請求といって簡易裁判所にて公判審理によらずに、50万円以下の罰金または科料を科すことのできる軽微な犯罪について簡易裁判所の簡略な手続きで処理するよう請求する場合とがあります。注意したいのは、どんなに軽微な罪で僅かな罰金を支払ったとしても、結局は、確定判決で刑の言い渡しを受けたことになるため、あなたには、いわゆる前科がついたということになります。
5、公判請求された場合、捜査時に勾留されていると裁判が終わるまで裁判所により勾留されることになります。起訴後裁判が終わるまで勾留されているのを避けるためには保釈の許可が必要になります。保釈については別に説明します。そして裁判が始まるのですが、テレビドラマや映画で見るような裁判所の公開法廷での裁判となります。第1回目の裁判では検察官は起訴状に記載された公訴事実を朗読し、被告人、弁護人は起訴事実、証拠書類に誤りがなければ起訴事実を認め、検察官提出の証拠書類に同意することになります。第1回裁判の前に公判期日前に証拠書類は弁護人に開示されますから弁護人は被告人と詳細に打ち合わせ証拠の書類に同意するかどうか検討しなければいけません。起訴事実に誤りがなければ弁護人は、情状と言って被告人の刑を軽くする事情を主張立証する事になります。被害者がいるようであれば裁判前に被害者との示談交渉し、その結果を記載した書面等を裁判所に証拠として提出し、また、通常情状証人として両親なり、勤め先の責任者に出廷してもらい、最後に被告人質問を行うことになります。起訴事実を認めるのであれば通常は1回の期日で終了することが多いと思います。それから1−3週間後に判決が言い渡されることになるでしょう。以上起訴事実に争いがなければ逮捕から第一審終了まで勾留20日として一般的には3−4ヶ月かかるものと考えられます。
6、「繰り返し犯罪行為」とありますので、執行猶予について問題となる点を付言します。執行猶予とは、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しを受けた者に対して、情状によって、1年以上5年以下の期間で刑の執行の猶予を与えるというものです。(刑法25条)。それには条件があり、前に禁錮以上の刑に処せられたことがないか、処せられたことがある場合でも、執行の終了または免除がなされてから5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことのないことが必要です(刑法25条2項)。即ち今回裁判の対象となる犯罪行為について判決を言い渡す時から遡って5年以内に禁固以上の刑に処せられた前の罪の執行が終了していなければ執行猶予をつけることが出来ないと言うことです。ですから、今回の第一審判決言い渡しが前の犯罪行為の刑執行終了から5年経過間近で実刑判決が言い渡されたとしても、控訴して控訴審の判決言い渡しが5年経過後で有れば理論的には執行猶予をつけることが可能にはなるわけです。なお、執行猶予期間中に、新たな罪を犯し執行猶予が付くことなく禁固以上の刑に処せられると(言い渡しをうけて刑が確定する必要があります)、前の執行猶予が取り消されますから、実質的に2重に刑に服することになります。これも判決の言い渡しが、執行猶予期間中であることが要件ですから、今回の第一審の言い渡しが、執行猶予期間満了間近であれば仮に第一審で実刑起判決を受けても、控訴して控訴審判決の時に猶予期間が満了していれば再度執行猶予を付することは理論的には可能になるわけです。弁護人と協議してみましょう。
7、最後に、刑罰には以下のものがあります。@死刑、A懲役、B禁錮、C罰金、D拘留、E科料、F没収(刑法9条)が定められています。死刑は生命刑、懲役・禁錮・拘留は自由刑、罰金・科料・没収は財産刑と呼ばれています。@死刑は、絞首して執行することになります。A懲役は、無期または有期で、有期は1月以上15年以下監獄に拘置し作業を行います。B禁錮は、無期または有期、有期は1月以上15年以下監獄に拘置されます。禁錮は、定役を科せられない点で懲役と異なります。C拘留は、1日以上30日未満勾留所に拘置されます。D罰金は1万円以上を支払います。E科料は、1000円以上1万円未満を支払います。なお、罰金・科料を任意に支払わない場合には、強制執行され、罰金を完納できない場合には、労役留置場に留置されます(刑法18条)。F没収は、所有権を剥奪し、国庫に帰属(没収できないときは価格の追徴)させるというものです。

≪参考条文≫
刑法
第九条 (刑の種類)死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料を主刑とし、没収を付加刑とする。
第十一条(死刑)死刑は、監獄内において、絞首して執行する。
第十二条(懲役)懲役は、無期及び有期とし、有期懲役は、一月以上二十年以下とする。
第十三条 (禁錮)禁錮は、無期及び有期とし、有期禁錮は、一月以上二十年以下とする。
第十四条(有期の懲役及び禁錮の加減の限度)死刑又は無期の懲役若しくは禁錮を減軽して有期の懲役又は禁錮とする場合においては、その長期を三十年とする。
第十五条(罰金)罰金は、一万円以上とする。ただし、これを減軽する場合においては、一万円未満に下げることができる。
第十六条(拘留)拘留は、一日以上三十日未満とし、拘留場に拘置する。
第十七条(科料)科料は、千円以上一万円未満とする。
第十八条(労役場留置)罰金を完納することができない者は、一日以上二年以下の期間、労役場に留置する。
第二十五条 (執行猶予)次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。

刑事訴訟法
第二百二条  検察事務官又は司法巡査が逮捕状により被疑者を逮捕したときは、直ちに、検察事務官はこれを検察官に、司法巡査はこれを司法警察員に引致しなければならない。
第二百三条  司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に書類及び証拠物とともにこれを検察官に送致する手続をしなければならない。
第二百四条  検察官は、逮捕状により被疑者を逮捕したとき、又は逮捕状により逮捕された被疑者(前条の規定により送致された被疑者を除く。)を受け取つたときは、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者が身体を拘束された時から四十八時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。但し、その時間の制限内に公訴を提起したときは、勾留の請求をすることを要しない。
第二百五条  検察官は、第二百三条の規定により送致された被疑者を受け取つたときは、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料するときは被疑者を受け取つた時から二十四時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければならない。
第二百八条  前条の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
2  裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
第二百四十八条  犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。

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