新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.344、2006/1/25 15:25 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・違法性]
質問: ケーブルテレビを無料で見られる違法チューナーが電気街で販売されていますが、このようなチューナーを販売することは犯罪になりませんか。法的な規制はされていないのでしょうか。

回答:
1、大阪などの電器街において、取り付けるだけで、有料ケーブルテレビを無料で見られるというチューナーが堂々と販売されています。ケーブルテレビを違法に視聴することが可能となり、ケーブルテレビ会社に多大な損害を与え、大きな社会問題になっております。
2、民事的には料金を支払うことなく無償でケーブルテレビを視聴する利益を享受しているので、不当利得に該当するといえ、視聴者はケーブルテレビ会社に対して料金相当額の返還義務が生じると考えられます。また、違法チューナーの販売者は共同不法行為になる可能性があります。ただ、いまだ裁判所の判例はなく、具体的にどのような裁判がなされるかは未知数です。
3、ただ、刑事的に犯罪になるかについては、直接的に違法チューナーを規制する具体的な法律があるわけではないので、法的な規制は難しいといわれております。既存の法律に抵触するかが問題となります。具体的には窃盗罪、詐欺罪、業務妨害罪などが考えられます。ただ、それぞれの犯罪について、構成要件上理論的に問題があります。すなわち、窃盗罪については、有体物の窃取が構成要件であるところ、ケーブルテレビを視聴する利益は無形の財産であり有体物とは評価するのは難しいといえます。また、詐欺罪については、販売業者が客に対し違法チューナーを販売すること自体を欺もう行為と評価することは難しいでしょう。さらに、業務妨害罪については、一番実態に即し可能性はあるといえますが、しかし、業務妨害罪は、偽計または威力を用いて業務を妨害する必要があるところ、販売業者が客に対し違法チューナーを販売することが、偽計または威力に当たると評価できるか問題となります。また、販売業者の主観として、ケーブルテレビ会社の業務を妨害する故意があるかも問題となります。
4、このような中、平成16年5月、大阪府警は、違法チューナーの販売業者を、電気用品安全法違反(無表示販売)の疑いで逮捕しました。電気用品安全法27条1項は、電気用品の製造、輸入又は販売の事業を行う者は、経済産業大臣への届出と表示をしなければ、電気用品を販売し、又は販売の目的で陳列してはならないとし、届出・表示を義務付けています。大阪府警は、無表示販売の点を捉えて、電気用品安全法違反で検挙をしたのです。ただ、この見解によると、届出・表示さえすれば問題はないことになり、本件違法チューナー自体の違法性を問うものとはいえないことになります。大阪府警は、電気用品安全法の適用による検挙により、業者に対する警告をし、違法チューナーの一掃を狙うとともに、販売ルートの解明を進める方針と考えられます。
5、以上の通り、このような違法チューナーを既存の法律で規制することは理論的に難しいところが多数あります。基本的には立法的な解決を図るべきでしょう。今後、違法チューナーの流通の増大により、ケーブルテレビ会社の業務に重大な損害が生じることを回避するためにも早急な法整備が必要と思われます。

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