新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.342、2006/1/13 11:51 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

[家事・相続]
質問:妻に先立たれた後,長男と2人で農業をしているのですが,自分が死んだときは,農業を長男に継がせるため,農地を長男に全部相続させ,次男,三男にはわずかばかりの銀行預金を半分ずつ残したいと思っています。考えられる方法を教えてください。

回答:
1、本件の場合,法定相続によれば,3人の息子さんがあなたの遺産を遺産分割により3分の1ずつ分けることになりますので(民法887条1項,900条4号本文),かならずしも農地を長男が取得する結果にはなりません。
2、したがって,あなたとしては,生存中に以下のような内容の遺言を残す必要があります。@遺言者の所有する農地の全部を長男○○に相続させる。A××銀行の定期預金全額は,次男△△と三男□□に2分の1ずつ相続させる。
3、ただし,子には,遺言によっても侵害することができない相続分(遺留分)がありますので,もし,農地の評価額に対して銀行預金が非常に少額である場合には,遺留分についての配慮が不可欠になります。子に認められる遺留分の割合は法定相続分の2分の1であり(同法1028条2号),本件では,次男及び三男の遺留分はそれぞれ相続財産全体の6分の1に相当する財産ということになりますから,もし,銀行預金の残高がこれに満たない場合には,上記のような内容の遺言を残すと,次男と三男の遺留分を侵害することになり,あなたの死後,兄弟間での紛争が生じるおそれがあります。したがって,あなたとしては,生存中に,次男及び兄弟に対し,長男に農業を承継させたいというあなたの真意を理解してもらえるように務めることが大切です。遺留分は,相続の発生前であっても,家庭裁判所の許可を得て放棄することができますので(同法1043条1項),次男及び三男があなたの希望を受け入れて遺留分を放棄してくれれば,農地を長男に相続させるというあなたの希望どおりの結果になります。
4、なお,(長男に)「相続させる」ではなく,「遺贈する」と記載しても,同様の効果が生じますが,「遺贈する」と記載した場合は,不動産の相続登記の際に相続人全員の実印が必要とされたり,遺言執行者に手続を行ってもらったりしなければなりませんし,登録免許税の税額も,「相続」の場合が固定資産税評価額の0.6%であるのに対して「遺贈」の場合は2.5%となるため,一般的には「相続させる」という文言を用いるほうが望ましいといえます。
5、具体的な遺言の作成方法等については,弁護士に相談してみてください。

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