新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.335、2006/1/13 11:10 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[民事・消費者]
質問:最近、偽造カードや盗難カードを使った、ATMでの不正な預貯金引き出しが増えていると聞いて心配です。勝手に取られたお金は戻ってこないのでしょうか。

回答:
1.これまで、ATMを使った不正な引き出しについては、金融機関側に過失がなければ責任はない、つまり、カードと暗証番号の照合というシステムを使い、そのことを取引約款に記載して、利用する人の了承を得た形になっているので、通常は、引き出された金額について、責任を負わない、とされることが多いのが現実でした(民法478条)。
2.しかし、2005年8月、「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」(以下、「保護法」といいます。)が成立しました。2006年2月から施行されますので、施行後の被害については、この保護法で救済されうることになります。
3.偽造カード等(金融機関が発行したカードでないもの)を用いた払戻しによる損害については、@払戻しを預貯金者が故意で行ったか、A金融機関が、そのことを知らず、知らないことについて過失もなく、逆に、預貯金者に重大な過失がある場合を除いて、払戻しは無効となり、預貯金の金額はそのままとなります(保護法第4条第1項)。
4.盗難カード等(金融機関が発行したカードだが、盗まれたもの)を用いた払戻しによる損害についても、@盗まれたとわかった後、速やかに金融機関に通知し、A金融機関から求められた状況説明も遅滞なく十分に行い、B警察等への被害届の提出申出等、盗難が推測される事実を示している、と認められれば、原則として、@の時点から30日前までの損害(払戻額)が、金融機関から補填されます(保護法第5条第1項)。但し、盗まれたときから2年以内に請求する必要があります(保護法第7条)。
5.もっとも、いずれの場合も、預貯金者が、できるだけの対応をどれだけ行ったか、つまり、過失の有無や程度が、問題になってきます。被害にあったことがわかった場合、あわてずに、あきらめずに、速やかに、所定の手続きを行うだけでなく、そのことを書面やメモの形で、できるだけ記録に残しておくことも大事になってきます。今後、具体的に保護が受けられるかどうか、微妙なケースも出てくると思います。金融機関との交渉がうまくいかない場合は、お近くの法律事務所等にご相談下さい。

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