新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.333、2006/1/13 11:01 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:夫が犯罪を犯し,身柄を拘束されています。夫の母が心労から倒れ,入院することになりましたが,医者からは先が長くないことを言われています。何とか母の死に目には会わせて上げたいのですが,どうしようもないのでしょうか。お葬式にでることもできませんか。

回答:
1、刑事の身柄拘束には,@被疑者段階(起訴前)の身柄拘束とA被告人段階(起訴後)の身柄拘束があります。@起訴前の身柄拘束には逮捕と勾留がありますが,逮捕というのは法的には身柄拘束をされて最初の最大で72時間の拘束のことをいい,その後は勾留状に基づいて身柄を拘束されることになるので,ここでは,@起訴前の勾留とA起訴後の勾留に分けて考えます。
2、起訴前の勾留は法律上最大で20日(特別な犯罪については最大30日ですが,通常の犯罪は最大20日と考えて頂いて結構です。)の期間と定められています。検察官はこの20日間の間で起訴するか否かを決定しなければならず,起訴しない場合には釈放しなければなりません。この段階で,勾留を解くための手段としては,@勾留に対する準抗告A勾留の取り消し請求B勾留に対する執行停止の申請があります。これらの違いは簡単に言えば,@は勾留をするという決定自体が不当だという争い方であり,Aは勾留するという決定自体は争わないとしても,その後の事情変更によって勾留する必要性がなくなったから,釈放しろという争い方,Bは勾留自体は適法として,一時的に釈放を求めるというもの,というように言えます。@,Aの方法は,いつの時点の問題かの違いはあるものの,いずれにせよ,勾留の理由あるいは必要がないということを言うわけですが,この勾留の理由や必要というのは,あくまで,犯罪の嫌疑の程度や,逃亡のおそれ,罪証隠滅のおそれなどを考慮するもので,ご相談のような親族が危篤であるとか,事件外の要因で影響されるものでは基本的にはありません。もちろん,逃亡のおそれも罪証隠滅のおそれもないということで,@,Aのような形で,身柄拘束について争うことは可能ですが,ご相談のような事情で,一時的にでも出たいということであれば,Bの勾留の執行停止の申請という手続きをとることになります。勾留の執行停止の申請がなされると,裁判所は「適当と認めるとき」に期間やその他の条件(例えば,居住地の制限など)を付して,身柄を解放することになります。実務上「適当と認めるとき」というのは病気治療のための入院,両親・配偶者の危篤または死亡,家庭の重大な災害,就職試験,学校の試験などの場合に認められたケースがありますが,当然犯罪の軽重や,逃亡のおそれ,罪証隠滅のおそれなども考慮し,総合判断ということになりますから,認められるかどうかはケースバイケースです。なお,後述の保釈と違い,保証金の納付は必要ありません。
3、起訴前の勾留のあと起訴の選択がなされると,通常そのまま起訴後の勾留に移行します。起訴後の勾留についても,起訴前の勾留について説明した@からBの手続きを使って,身柄の解放を求めることは可能です。ご相談の事情であれば,Bの手続きをとることになります。起訴後については,これらに加えてC保釈の請求が可能です。保釈とは勾留を観念的には維持しながら,保証金の納付等を条件とすることで,身柄を解放する制度です。保釈された人物が逃亡したような場合には,その保証金を没収することとし,これによる心理的な強制によって出頭を確保するというものであり,事案にもよりますが,100万円から300万円くらいの保証金を納付することを求められることが多いようです。保釈の決定に際しても,逃亡のおそれや,罪証隠滅のおそれというものは当然考慮されますし,訴訟の進行の程度(例えば,証拠調べが終わっていれば,罪証隠滅の可能性はもうないので,保釈が認められる可能性は高いということがいえます。)によっても,保釈が認められかどうかは変わってくるので,認められるかどうかはやはりケースバイケースということになるでしょう。保釈された場合には,裁判の期日には,制限住居から出頭することになりますが,それ以外の日については,判決の日まで基本的に自由にしていることができます。実刑判決が下された場合には,保釈は効力を失って,判決の日から,再度身柄を拘束されることになりますが,実刑判決がでたとしても保釈保証金は返還されます。
4、以上のように,あなたのケースでは,起訴前であれば勾留の執行停止,起訴後であれば,これに加えて保釈の申請をすることになるかとは思いますが,どの手段が適当かはいちがいに言えないところもありますので,準抗告,勾留取り消しの手段も含めて,専門家に相談することをお薦めします。

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