新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.289、2005/9/6 10:46 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事]
質問: 知人の息子が先日強制わいせつ事件を起こしてしまいました。しかし知人の息子は精神に高度の障害をかかえていることから、不起訴処分になりました。このような場合、不起訴処分になったその男性は強制的に入院させられることがあるという話を耳にしたのですが、これはどういうことなのでしょうか。

回答:心神喪失者等医療観察法(2005年7月15日施行)に基づき検察官の申し立てにより裁判所がその処遇を判断し、医療機関への入院決定をする場合があります。裁判所から入院決定が出された場合には、原則として入院しなければなりません。本件においても、入院の決定がなされれば(不服申し立てが認められない限り)入院しなければならないことになります。
1、心神喪失者等医療観察法は正式名称を「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」といいます。
2、精神障害の状態で犯罪を行った場合、被害者に甚大な損害が生じるのはもちろんのこと、加害者自身にとっても不幸な事態となってしまうことから、この法律では、そのような人たちについて、裁判所において適切な処遇を選択した上で、医療機関において専門的な治療を行うとともに、地域において継続的に医療を受けられる仕組みを作ることによってその人の病状を改善し、同じようなことが発生することを防止し、円滑な社会復帰の促進を目指すことを目的としています(同法1条)。
3、殺人、放火、強盗、強姦、強制わいせつ等の重大な行為(法2条2項)を行った人のうち、心神喪失(刑法39条1項)又は心神耗弱(刑法39条2項)を理由として、刑事裁判において無罪となったり、刑を減軽されたり、あるいは検察官により不起訴処分を受けるなどして刑罰が科されなかった人が対象となります(法2条3項)。上記に該当する人(対象者と呼びます)については、検察官は原則として裁判所に適切な処遇を選択してもらうべく、申立てをしなければなりません(同法33条1項)
4、裁判所は、検察官からの申立てを受け、対象者を一時的に入院させて(法34条)、医師に対象者の精神状態等を鑑定してもらったり(法37条)、保護観察所に生活環境の調査をしてもらったりします(法38条)。そして、その結果を報告してもらい、対象者からも意見を聴いた上で,入院(法42条1項1号)、通院(同項2号)、あるいは不処遇(同項3号)といった判断をします。なお,対象者の権利擁護のため、裁判所は対象者が自ら付添人(弁護士)を選任していない場合には、付添人を選任しなければならないことになっています(法30条,35条)。
5、裁判所において入院の決定がなされた場合、対象者は医療施設(厚生労働大臣の定める指定入院医療機関)に入院して医療を受けなければならないこととなります(法43条1項)。入院期間について法律上定めはありませんが、少なくとも6か月ごとに入院を続ける必要があるかどうかについて裁判所が審査する仕組みとなっています。また,対象者はいつでも退院等を求める申立てができます(法50条)。通院の決定がなされた場合には、医療施設(厚生労働大臣の定める指定通院医療機関)に通院して医療を受けなければならず(法43条2項)、その間、保護観察所の精神保健観察に付され、指導などを受けることになります(法106条1項,2項)。期間は3年間で、2年の範囲内で延長されることがあります(法44条)。入院や通院の決定を受けたが、これに不服があるという場合には、決定を受けてから2週間以内に高等裁判所に不服申立(抗告)をすることができます(法64条2項)。

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