新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.286、2005/8/19 10:33 https://www.shinginza.com/qa-jiko.htm

[民事・不法行為]
質問:夫が交通事故に遭い,死亡してしまいました。妻である私と息子が残されてしましました。加害者の保険会社からは,逸失利益についての示談金額の提示を受けていますが,裁判をした場合は,どのような計算で認められるのですか。

回答:
1,逸失利益とは,被害者が死亡したことにより被った,仮に被害者が生きていれば,将来得られたであろうと考えられる所得などの経済的損害のことを言います。そして,死亡による逸失利益は,裁判実務では一般に,「基礎収入額×(1−生活費控除率)×労働可能年数に対応する中間利息控除係数」で計算されます。
2,まず,「基礎収入額」は,有職者の場合,原則として,事故前の年収額を基礎とします。次に,「生活費控除率」とは,仮に被害者が生きていれば,収入がある反面,生活費もかかりますので,その分を控除するべきとの考えに基づくものです。そして,裁判実務で尊重される,財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行している,民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称「赤本」)(平成17年版)によりますと,「生活費控除率」は,一家の支柱が死亡し,被扶養者が2人以上の場合,30%程度とされています。最後に,「労働可能年数」とは,裁判実務では一般に,67歳までとされ,「中間利息控除係数」とは,仮に被害者が生きていれば,67歳まで収入がありますが,将来に及んで発生する損害額を,通常は一時払いされることになりますので,その間の利息相当額を控除するべきとの考えに基づくものです。そして,中間利息控除の計算に用いる利息の割合は,平成17年6月14日最高裁第三小法廷判決は,民事法定利息の年5%であると判示し,それを前提とした中間利息控除の計算方式としては,裁判実務では一般に,ライプニッツ式が採用され,その方式による「中間利息控除係数」は,平成17年版赤本によりますと,例えば,30歳で死亡した場合,16.7112とされています。
3,よって,本件で,例えば,夫が死亡当時,30歳で,年収が500万円であった場合,裁判では,「500万円×(1−0.3程度)×16.7112=5848万9200円程度」の逸失利益が認められる可能性があります。
4,さらに,死亡による慰謝料の請求もでき,平成17年版赤本によりますと,2800万円程度認められる可能性があります(法律相談データベースNo.265参照)。もっとも,これらは,あくまで一つの目安であって,例えば,夫に交通事故の際,信号無視などの過失がありましたら,過失相殺により大幅に減額されることになりますので,ご注意下さい。
5,ただ,裁判をした場合,裁判で認められた損害額の1割程度を,弁護士費用として,これも損害として加害者側に請求できると考えるのが,裁判実務です。よって,死亡事案の場合のように,請求金額が多額になる場合は,裁判をした方が受け取れる金額が多くなり有利なケースも多いので,お近くの弁護士に相談されるのが良いでしょう。

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