新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.273、2005/7/25 13:34 https://www.shinginza.com/qa-fudousan.htm

[民事・登記]
質問:不動産を購入予定ですが、名義人の方が既に死亡しているようです。何か、気を付けることはありますか?現在の名義人が「相続」で名義を取得している場合はどうですか。

回答:
1、不動産の購入は、高額な取引になりますので、情報を集めて、慎重に進めることが重要です。不動産の購入にあたって気をつけるべき要素のひとつに、権利関係のチェックが挙げられます。不動産の所有者は誰か、担保は付いていないかなどについて、登記簿謄本などで調査します。
2、調査の結果、名義人が既に死亡していることが判明した場合、どのような点に注意すべきでしょうか。亡くなった人(被相続人)が財産を持っている場合、相続が発生し、原則として財産は相続人に渡ることになります。そこで、名義が被相続人のままになっていても、実際は誰か別の人の物になっているので、現在の本当の所有者が誰かを調べる必要があります。
3、誰が相続人になるかは民法が定めており、被相続人と相続人の身分関係を知るためには、被相続人の出生までさかのぼり、身分関係を調査する必要があります。身分関係は戸籍簿に記録されていますが、新戸籍を編成していたり、途中で他の戸籍に移った場合には、元の戸籍のほかに、除籍された戸籍も調べる必要があります。
4、身分関係を調査して、相続人が誰で、全部で何人いるのかを調べます。相続人が複数いる場合、相続財産は共有となります。共有財産を処分する場合、共有者全員の同意が必要となります。共有者の一人でも反対した場合、不動産全部の売買はできません。したがって、そのような不動産を購入する場合には、相続人全員の合意の下に売買契約を結ぶ必要があります。一部の共有者の意思に反していた場合、購入者は賛成した相続人の持分だけしか取得できないことになります。
5、相続財産を具体的に分ける話し合いのことを、遺産分割協議といいます。遺産分割協議が調わない間は、上記4のように相続財産は共有になります。この協議が調い、不動産が相続人のうちの一人の単独所有になった場合、その持ち主と契約をすればよいことになります(ただし、単独相続の登記を済ませてからのほうが安心です)。
6、上記のような問題のほかにも、被相続人(亡くなった人)が遺言を遺していた場合にも問題になります。遺言が出てきて、不動産をAのみに「相続させる」といった内容であった場合、遺言なしで法定相続分を取得する場合と同様、特段の行為(登記など)がなくても、当然にその遺言のとおりになってしまうというのが最近の判例の立場(最判平成14年6月10日)です。つまり、あとから遺言が出てくれば、登記の記載を信用して取引をした場合でもひっくり返されてしまうことになります。登記簿上、法定相続のとおりに登記がしてあった場合でも、この理屈は当てはまりますので、現在の名義人が、「相続」で登記している場合にも同じことになります。遺言の存在は外部からはわかりにくいので、不完全な方法ではありますが、実際は取引の際に、遺言がない(公証役場への問い合わせをしてもらい、公正証書遺言の存在のおそれだけでも減少させた方がいいと思います)、または遺言のとおりに実行したこと(遺言書を見せてもらった方がいいと思います)を相続人に確認し、そうでなかった場合の解除権や違約金の特約をつけておくなどといった手当をすることになると思われます。
7、以上のように、不動産が亡くなった人の名義である場合、相続関係の調査をする必要があります。「相続」で登記してある場合にも、その登記が行われた経緯について調査する必要があります。このような調査は複雑で、見落としもしやすいものですので、お近くの専門家に相談されることをお勧めします。

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