新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.235、2005/3/31 11:41 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

[商事]
質問:会社を経営していますが、高齢になってきて、後継者もいないので、会社をたたもうと思っています。私の会社は、それなりに順調に経営できているので、特に債務超過等にはなっていません。破産や再生以外で、会社をたたむ方法があれば教えてください。

回答:
1、会社を終了させる手続きとしては、@解散する、A営業譲渡をして休業する、B休業する、C株式(持分)を売却する、D(吸収)合併(される)、E会社を分割し売却する、F株式交換によって会社を売却する、G破産、特別清算、会社更生法などの各種倒産手続きを利用する、以上のような方法があります。今回のケースでは、会社は特に債務超過に陥っていないということなので、G以外の方法をメインに考えていくことになります(会社の規模にもよりますが、会社を終了させる手続きを踏む過程で、会社の現在の財産状況を明らかにしていくわけですが、一見債務超過に陥っていなくても、きちんと調べてみたら負債が見つかるというケースもあります。その場合には倒産手続きに移行する可能性もあります)。
2、会社を消滅させる場合ですが、個人事業と異なり、会社の場合には、経営者の一存で会社を終了させることはできません。上記の@解散、A営業譲渡、D吸収合併、E会社分割、F株式交換の手続きには、株主総会の決議が必要で(有限会社の場合には社員総会)、しかも特別決議が必要になります。特別決議とは、株式会社の場合で、発行済み株式総数の過半数以上の株式を有する株主が出席して、その議決権の3分の2以上によって決議するものです。有限会社の場合は、総社員の半数以上で、かつ総社員の議決権の4分の3以上の同意によって成立する手続です。
3、上記のうち、Cの株式(持分)の売却については、特にこれといった手続きは必要ではなく、第三者の手に会社の経営権を渡すことができます。しかし、あくまで売却なので、買ってくれる相手が必要であり、その場合の金額についても交渉の必要があります。ただ、この手続きによった場合、会社はそのままの形で存続することになりますので、ご自身が経営から身を引くことは可能ですが、会社自体を消滅させることはできないことになります。また、その後の経営については譲り受けた人が決めることになるので、ご自身の手で幕を引くということはできないことになります。
4、営業譲渡、会社分割、合併は、いずれも今ある会社の人的、物的な設備を、第三者に譲り渡す方法です。これについては、株式(持分)を第三者に譲渡するときと同様の問題、すなわち、引き受けてくれる相手がいないと進められないこと、条件面での交渉が必要になること、会社自体は実質的に存続し、経営から身を引くという形になることになります。
5、次に、休業するという場合は、特に手続きはありません。単純に取引をやめてしまって、会社自体は放っておいても、これ以上仕事をしないという意味では「会社をたたむ」という状態にはなります。5年間以上、商業登記の申請を行わない場合、休眠会社として登記官が職権で解散登記をする場合があります(商法406条の3、商業登記法91条の2)。しかし、仕事をやめても、法人税法上の申告義務(法人税法160条)や、商法上の登記義務(商法498条)は残りますので、放置したままでは、刑事罰を受ける恐れがあります。また、商法上の取締役の責任(取締役の第三者に対する責任=商法266条の3、株主代表訴訟=商法267条)は残りますので、民事上の責任を追及される恐れもあります。正式な意味で会社を「たたむ」ということとは少し意味が異なると思われます。弁護士としてもお勧め出来ません。
6、上記の方法と異なり、現在存在する会社を完全に消滅させるには、解散という手続を取ることになります。解散の方法ですが、前述の特別決議の後、解散する旨を登記します。会社は、解散の後も清算という手続きが必要になり、清算が終了するまでは手続きは完了しませんので、解散の登記とあわせて、清算人を指定し、従業員の解雇や債権者との交渉、それらが終了した後の残余財産の分配等を行い、清算の終了登記を経て解散が完了したことになります。
7、解散という手続は、会社を完全に消滅させることになるので、ご相談の趣旨に最もあっているものと思われます。しかし、債務超過に陥っておらず、業績が安定している会社の場合、単純に解散するのではなく、合併や譲渡などによって、人的・物的資源を存続させることも考えてみられることをお勧めします。解散にせよ、譲渡、合併にせよ、実際に行う場合には、さまざまな手続が必要になり、なかなか一人でできる作業ではありません。お近くの弁護士、司法書士、会計士などに相談されることをお勧めします。

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