新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.214、2004/12/16 11:39 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

[家事・相続]
質問:先日,父が亡くなりました。母は既に亡くなっており,相続人は,子供である私と兄だけです。父の遺産は預金1000万円ですが,兄は,父の生前,家を買うときに父から400万円の贈与を受けていました。これに対して,妹である私は,父が亡くなる前の数年,自分の生活を犠牲にしてまで父の面倒をずっとみてきました。兄と遺産分割協議をする際,こういった事情は考慮されるのですか。

回答:
1,民法は,共同相続人中に,被相続人から遺贈を受けたり,生前贈与を受けているといった特別の受益を受けている者がいる場合,その者の相続分を減らすことにより,共同相続人間の実質的公平を図る制度として,特別受益という制度を設けています(民法903条)。民法903条には,「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻,養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし,…相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し,その残額を以てその者の相続分とする。」と規定されています。よって,兄は,父の生前,家を買うときに父から400万円の贈与を受けていたので,「生計の資本として贈与を受けた者」に該当します。但し、父の生前の意志として、相続時にそれを考慮しないという意思(持戻免除の意思:民法903条の3)があるとみられる場合には、相続時にその贈与を考慮することはできませんので、兄からそのような主張がなされる余地は否定できません。
2,また,民法は,共同相続人中に,被相続人の財産の維持・形成に特別の寄与・貢献をした者がいる場合,その者の相続分を増やすことにより,共同相続人間の実質的公平を図る制度として,寄与分という制度を設けています(民法904条の2)。民法904条の2には,「共同相続人中に,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした者があるときは,被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし,…相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。」と規定されています。但し、通常の親子としての扶養義務の範囲内とされてしまうと、「特別」の寄与とはいえないことにはなりますが、今回の場合、例えば,妹は,父が亡くなる前の数年,自分の生活を犠牲にしてまで父の面倒をずっとみていたので,特別寄与者に該当する可能性はあると思われます。
3、以上の通り、仮に、兄への贈与が特別受益として相続において考慮され、さらに、仮に,妹の寄与分が認められ,その寄与分が200万円と定められた場合(実際には、この金額の算定についても、いくらと評価するのか難しい裁判所の判断となります。)には、具体的相続分の計算方法は以下のようになります。まず、1000万円+400万円−200万円=1200万円が,相続財産とみなされます。そして,相続人が子供2人のみの場合,その法定相続分は2分の1づつですから,1200万円÷2−400万円=200万円が兄の相続分となり,1200万円÷2+200万円=800万円が妹の相続分となります。詳しくは、お近くの法律事務所にご相談ください。

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