新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.202、2004/10/15 16:57 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:電車内で痴漢(ちかん)をし、東京都の迷惑防止条例違反で逮捕されたのですが、どういう罪なのでしょうか。また、現在弁護士に依頼し、被害者と示談交渉を進めているのですが、被害者からは、『示談金は受取らないが、謝罪の気持ちが伝わったので許します。』と言って貰えました。そんな場合でも、示談金は支払ったほうがいいのでしょうか。

回答:
1、あなたが逮捕された『条例』とは、地方公共団体がその自治権に基づき、法律の範囲内で議会の議決によって制定された法令(憲法94条)です。『東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的行為等の防止に関する条例違反』、これを一般的に『迷惑防止条例違反』と呼んでいます。同条例第五条では、『何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。』とあり、罰則の第八条では、六ヶ月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処するとあります。あなたが常習犯である場合は、罰則も異なってきますので、ご注意ください。
2、さて、今回被害者からは、『示談金は受取らないが、あなたを許します』と言われたようですが、まずは、被害者から被害届取下書及び告訴取消書を頂き、早急に警察署若しくは検察庁に提出するようにしてください。ご質問では、今回は示談金の受取りを拒否されているようですが、本条例の罰金50万円以下という処罰を考慮しても、被害者への示談金の支払いは必要不可欠であり、相当な代償が為されたかで、処分に大きな影響があります。最終的な判断は、検察官の裁量になりますが、痴漢という社会問題自体、取締りが厳しくなっている状況もありますので、不起訴処分を得るためには、被害者に対し、何らかの償いが必要です。
3、刑事事件として依頼を受けた場合、弁護人としては、被害者が示談金の受取りを拒否したとしても、できるだけ受取って頂くよう交渉します。勿論、被害者側にも受取りたくない事情がありますので、交渉の結果、完全に受取って頂けない場合には、罰金に近い金額で、最寄りの法律扶助協会などに贖罪寄付をする方法もあります。ただ、贖罪寄付はあくまで寄付行為であり、1つの謝罪の意思表示ですので、高額な贖罪寄付をしたからと言って、それだけで必ず不起訴処分になるわけではありませんので、ご注意ください。仮に、示談金の支払いや贖罪寄付を行ったのであれば、検察官に領収証などを提出し、処分の判断材料になるようよう努めてください。その他、相手がいつでも受取れるようにしておく供託手続きも考慮すべきです。
4、最後に、痴漢(女性に対する犯罪)などの迷惑防止条例違反と同様な犯罪で、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪(刑法176条)、強姦罪・準強姦罪(刑法177条)があります。これらは、親告罪(刑法135条)と言い、被害者等の告訴がなければ検察官が公訴を提起することができない罪となっています。迷惑防止条例は非親告罪ですが、これらと比較考慮して、本条例においても、被害届取下書及び告訴取消書が為された場合には、先例や処罰刑の均衡上から考慮し、不起訴処分になる可能性がありますので、まず、逮捕された場合には、お近くの法律事務所にご相談ください。

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