新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.200、2004/10/15 16:03 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴後]
質問:先日,夫が窃盗の容疑で警察に逮捕され,来週に第1回の公判があります。夫は,警察に自分のしたことを素直に話しているようです。私は,情状証人として裁判所に出頭することになっているのですが,こういうことは初めてであり,どのように刑事裁判が進むのかわかりません。刑事裁判というのは,どのように進行するのでしょうか。また,証人尋問において,注意すべき点がありましたら教えて下さい。

回答:
1、ご質問の公判は,第1審における公判だと思われますので,ここでは,第1審における刑事公判の進行の概略について説明します。また,被告人であるご主人は犯罪事実を認めているようですので,自白事件(犯罪事実について,被告人が裁判で争わない事件のこと。現状では,刑事事件のほとんどが自白事件となっています。)であることを前提にします。第1審の刑事公判は,大きく分けて,@冒頭手続,A証拠調べ手続,B論告・弁論・最終陳述,C判決言渡しという順に従って進行します。このうち,情状証人の方が直接かかわるのはA証拠調べ手続のみですが,その他の手続につきましても,以下,簡単にご説明します。
(1)冒頭手続き 
この手続は,刑事裁判が始まって一番最初に行われる手続です。ここでは,被告人への人定質問(法廷に出頭している被告人が,本当に被告人であるかを確認するため,被告人にその氏名や住所等を質問します。刑訴規則196条),検察官の起訴状朗読(刑訴法291条1項),裁判長から被告人への黙秘権などの権利の告知(刑訴規則197条1項,刑訴法291条2項),罪状認否(起訴状記載の事実を認めるか否かを被告人及び弁護人が回答します。刑訴法291条2項)という順で手続が進行します。証人の方は,この手続内では直接関与することはございません。
(2)証拠調べ手続
自白事件における証拠調べ手続では,まず,検察官が,被告人が起訴状記載の犯罪事実を本当に行ったかについてなどについて立証し,次に,弁護人が,そのような事実があることを前提に,被告人にとって有利な事情があることを立証するというパターンがほとんどです。まず,検察官立証については,情状証人の方が関与することはありませんので,ここでは詳細を割愛いたしますが,検察官が,主に供述調書などの証拠の取調べ請求を裁判所に行い,これに対し弁護人が証拠意見を陳述し(自白事件の場合は,ほとんどの場合,「同意」ないし「異議なし」と回答します。),裁判所が証拠を採用するかを決定し,採用決定した場合には,検察官が請求した証拠が裁判所に渡ります。次に,弁護側立証ですが,これも検察官と同様に証拠の取調べ請求をし,検察官がこれに対する意見を陳述し,裁判所が採否を決定します。また,本件のように,被告人の親族の方が情状証人として出頭している場合には,証人尋問の実施も請求します。この証人尋問については,嘘をつかないという宣誓書に署名をして,宣誓してから証言します。情状証人の方に対するものである場合,弁護人からの主尋問,検察官からの反対尋問,場合によっては,裁判官からの補充尋問という順序で行われるのが一般的です。弁護人からの主尋問では,日頃の性格や今後の生活状況指導監督など、被告人にとって有利な事情を引き出せるよう情状証人の方に質問していきます。どのような質問がなされるか不安だと思われますが,裁判前に弁護人と尋問についての打ち合わせやリハーサルが実施されることが通常ですので,さほど心配される必要はないと思われます。次に検察官からの反対尋問が行われますが,これは,主尋問で情状証人の言ったこと(例えば,今後,しっかり夫の監督をしていくと言ったことなど。)が本当なのかを確かめる質問がなされることが一般的です。反対尋問ですので,時には答えに窮する質問をされることもあります。尋問時の注意点ですが,証人の方が証言された内容は,裁判所書記官によって訴訟記録となりますので(録音もしくは速記によります。),言ったことがしっかりと記録されるように,大きな声でゆっくりと質問に答えることが重要です。また,質問者の質問が終わる前に回答を始めてしまうと,聞き取りにくくなりますので,質問が全部終わったあとで回答を始めることも大事です。さらに,質問は,左右から(弁護人と検察官から)聞かれますが,裁判長に向かって回答するように心掛けて下さい。証人尋問が終了すると,今度は,被告人質問が実施されます。この進行の仕方は,ほとんど証人尋問の場合と同様です。
(3)論告・弁論・最終陳述
証拠調べが終了すると,次は検察官による論告求刑が行われます。この手続では,検察が犯罪事実の証明が十分であることを述べつつ,被告人に科せられるべき刑について主張します(例えば,懲役5年など。)。これに対し,弁護人は,弁論を行います。これは,弁護側が立証した被告人に有利な事情などを挙げ,被告人になるべく温情ある判決が下されるよう主張する手続です。その後,被告人に最終陳述の機会が裁判長から与えられます。ここで,被告人は,反省の弁や被害者への謝罪の意を表したりすることが一般的です。これらの手続では,情状証人の方が関与されることはありません。
(4)判決言渡し
第1審の最後の手続が判決言渡しです。判決は,(3)までの手続が終わり,後日言い渡されるのが一般ですが,簡明な事案の場合には,その日のうちに言い渡される場合もあります。判決言渡しでは,裁判長から,主文(被告人にどれくらいの刑が科せられるかなど)とその理由などが読み上げられます。この判決言渡しで,第1審は終了します。
2、以上,第1審における自白事件のおおまかな流れを説明いたしましたが,事件によって,多少手続が異なったりすることがあります。情状証人として証言をされる場合では,何らかの形で弁護人が就いていることがほとんどかと思われますので,不明なことや不安なことなどがありましたら,担当の弁護人に質問されるとよろしいかと思います。

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