新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.195、2010/6/11 10:16 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

[家事・相続]
質問:母と離婚して音信不通だった父親が亡くなったと聞きました。父の財産を調査するにはどうしたらよいでしょうか。父親と同居していた後妻が相続財産を一人占めしようとしています。

回答:

音信不通でも、子供には法定相続分がありますので、相続財産を調査し、他の相続人がいれば遺産分割を行い、名義変更など必要な相続手続を行う必要があります。逆に相続財産が債務超過であれば、債務の相続開始を知ってから3ヶ月以内(通常は死亡を知って3ヶ月以内)に家庭裁判所に対して相続放棄の申述を行うと、支払義務を相続する必要はなくなります。被相続人(亡くなった方)の財産調査をする方法について、財産毎に検討してみたいと思います。調査業者・探偵業者等に調査を依頼する事も出来ますが、基本的なやり方は同じです。生前贈与の有無も、下記の方法で同様に調査することが出来ます。特別受益や遺留分減殺に影響することがありますので、弁護士に相談し慎重に調査なさることをお勧めいたします。相続人は、「包括承継人」と言い、法律的には、被相続人と同じ立場に立ちますので、本人と同じ権限で調査をすることが出来ます。

1、不動産

毎年1月1日時点の所有権名義人に対して、固定資産税の納付書が5月頃発送されます。故人の住所地に発送されるはずですので、同居人がいる場合は、その人に確認してみると良いでしょう。免税点(固定資産税評価額で土地30万円、建物20万円)以下の評価額の物件の場合には納付書は送られてきませんので、注意が必要です。市町村の固定資産税課には、個人別の不動産を集めた「名寄帳」というものが、あります。個人の住所地の市町村の役所に問い合わせて、故人名義の不動産を調査することができます。税務署や市区町村役場(税務課)で、故人の納税証明書(所得税、住民税)を発行してもらうことができる場合があります。具体的な手続きは各役所に問い合わせ下さい。税務署では「申告書等閲覧サービス」を行っていますが、平成21年7月2日事務運営指針により、相続人全員が共同で閲覧申請しなければ閲覧できません。他の相続人が協力しない場合は、後日遺産確認請求訴訟を提起して、裁判所に文書送付嘱託の申し立てを行う手段が考えられます。記録の保管期間が5〜7年ですので、それより前のものは閲覧できない恐れがあります。相続人が確定申告を行っていた場合、青色申告であれば、付属書類として貸借対照表が入っており、そこに全財産が記載されているはずです。申告書を作成した関与税理士が居れば、そちらに連絡を取ってみても良いでしょう。また、被相続人が公正証書遺言を残している場合は、そこに相続財産の目録が記載されている可能性があります。公正証書遺言が残されているかどうかを調べるために、公証役場に遺言書の謄写申請を行うことが出来ます。お近くの公証役場にお問い合わせ下さい。

2、預貯金・借金

銀行や郵便局に対して、取引明細や残高証明書発行を請求することができます。預金通帳の記録に相当する取引履歴を開示してもらうことが出来ます。一部の相続人に勝手に引き出されてしまう恐れがある場合は、銀行に対して、@被相続人が死亡して相続が発生していること、A一部の相続人のみから解約の請求があっても応じてもらいたくないこと、を内容証明通知書で通知する方法があります。銀行は、名義人に相続が発生したことを知った場合は、原則として、法定相続人全員の印鑑証明書付きの払い渡し請求書でないと応じません。どこの銀行か分からない場合は、給与や年金など、収入が振込される口座を調べてみると良いでしょう。給与の場合は、勤務先に問い合わせをすれば教えてもらえるはずですし、年金の場合は社会保険庁に問い合わせて下さい。故人の住所地に支店を持つ全ての銀行に通知を行う方法も考えられます。被相続人の借金(負債)を確認したいときは、「全国銀行協会」の信用情報閲覧サービスを利用して、負債の状況を確認することができます。

3、出資金

信用金庫や信用組合などの出資金や、生協などの出資金がある場合は、相続人として払い戻しや名義変更を請求できます。こうした組合などは、通常、年に1回、組合員に対して、決算報告書を送付しますので、故人の住所の郵便物を確認されると良いでしょう。

4、死亡退職金

会社の就業規則や退職金規程で、在職中に死亡した場合は、死亡退職金を支払う旨規定されている場合があります。死亡時に在職していた場合は、会社に問い合わせて、そのような権利があるかどうか聞いてみると良いでしょう。

5、生命保険

被相続人が被保険者の場合、生命保険金は相続財産に含まれませんが、被保険者が被相続人以外の場合は、普通の預貯金同様、権利が相続されます。相続人が契約を解除して、解約返戻金を受け取ることもできます。どのような契約をしているか分からない場合は、預貯金の通帳や銀行の取引明細を調べて、保険会社に対して自動引き落としされている契約がないかどうか、調査します。

6、株式

故人が株式会社や有限会社の株式(持分)を持っていた場合、相続人は名義書換を請求することができます。毎年、住所地宛に株主総会招集通知と配当金の為替が送られてきますので、住所地宛の郵便物を確認すると良いでしょう。

7、自動車

自動車のナンバーが判明している場合は、陸運支局で、登録事項証明書の交付申請をして、所有者名義人を調べる事が出来ます。ナンバー不明の場合は、自動車税の納入通知書が自動車の使用本拠地の都道府県から故人の住所地宛に送付されてきますので、郵便物を御確認下さい。

8、骨董品など、その他の動産、貸付金

価値のある骨董品や、知人に対する貸付金などある場合は、骨董品を売却したり、貸付金を回収して相続財産として分割する事が出来ます。しかしながら、どこにどのような財産・貸付金があるか、分からない場合も多いと思います。その場合は、過去数十年に渡って、故人の預金通帳・取引履歴を調査し、出金したお金の中から、そのような財産に変形したものを推定して調査していくほかありません。骨董品を倉庫業者(トランクルーム)に預けている場合や、貸付金の借用書(金銭消費貸借契約書)などの書類を、銀行の貸金庫に保管している場合があります。故人名義で貸金庫やトランクルームの契約があるかどうかを、可能性のある倉庫業者や銀行に問い合わせをすると良いでしょう。

調査を開始すると、相手が動きを察知して財産を隠してしまう可能性もありますので、調査の前に、弁護士に相談されると良いでしょう。

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