新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.174、2004/6/17 14:16 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:私は、旅行先で、偶然知り合ったある女性を、無理矢理に強姦してしまいました。その後、私は逮捕されました。逮捕後すぐに弁護士を依頼し、その女性と示談しようとしましたが、検察官、警察署が、被害者の被害感情を理由に、被害者の住所、連絡先を教えてくれず、示談が出来ないまま起訴されました。起訴後も被害者の住所連絡先がわからず示談不成立で、地方裁判所で実刑判決を受けました。私は控訴しようと考えていますが、控訴しても実刑となることには変わりはないのでしょうか。

回答:
1、このケースでは、起訴されて罪を認める以上は有罪となることはほぼ間違いありません。有罪になるとして、実刑判決を受けるかどうかですが、執行猶予判決を受けるのは困難であるかと思われます。控訴審の場合も同様です。
2、勿論、本件で公訴前に示談ができ、告訴が取り消しに成れば(刑事訴訟法 237条)、公訴権は消滅し不起訴処分となります。すなわち、強姦、強制わいせつ、名誉毀損、器物損壊のような親告罪(刑法232条)では起訴前に被害者との和解交渉により告訴が取り消されてしまえば、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。親告罪では示談交渉が、弁護人の最も重要な弁護活動です。しかし、起訴前に弁護人が被害者側と示談しようとしても、被害者側が、望んでいないとの理由で、捜査機関が、被害者側の連絡先を明らかにせず、結局起訴されてしまうということはよくあることです。捜査機関も被害者側のプライバシーを無視できないということを理由にしています。示談の内容を捜査機関は、被害者に詳細に伝えてくれませんから、本当に、被害者が示談を望んでいないと、捜査機関の言葉を信じて諦めてしまうのも問題です。弁護人から、一刻も早く被害者と具体的な話ができるように捜査機関に何度も要請してもらい、話し合いのきっかけをつかむことが大切です。親告罪における起訴前の弁護活動は、被害者側との示談交渉にあるといっても過言ではありません。なぜなら、罪を認めている以上、いずれ示談をしなければ、後述するように刑事裁判において実刑になる可能性が十分にあり、実刑を避けるためには示談は不可避なのです。それならば、起訴前に交渉をすることに越したことありません。実刑を避けたいと思うならば、示談はいずれしなければならないのです。
3、では、第1審で実刑判決を受けた場合、控訴しても実刑となってしまうのかについてですが、控訴審は第1審の「事後審」というかたちがとられています。事後審とは、第1審の内容を再度審理するもので、第1審の判決後に特に新たな事実が判明しない限りは、第1審の判決内容を覆すことはできません。そこで、もしこのまま示談が成立しなければ、前述のように、控訴審で実刑判決を受ける可能性は非常に高いといえるでしょう。 しかしながら、控訴後、公判が開かれるまでの間に示談が成立する可能性もあります。もし示談が成立すれば、第1審後に「示談の成立」という新たな事実が発生したわけですから、たとえ第1審が実刑判決でも、控訴審で執行猶予判決が出る可能性はあるといえます。通常、起訴になった場合、被害者の供述調書には、被害者側の連絡先が明記されているのが通常です。しかし、検察官が、被害者のプライバシーから、連絡先が判明させない場合もあります。このような場合、起訴後も被害者側の連絡先がわからず、示談ができないことがあるのです。
4、本件の場合、検察官が、起訴後も被害者の住所を明らかにしないのであれば、弁護人を通じ被害者の住所をあきらかにするように何度も検察官に要請することです。方法については、弁護人と話し合いましょう。この場合、弁護人の熱意が重要です。第1審終了までの間に連絡先がわからず、依頼した弁護士が示談出来なかった場合には、思い切って、他の弁護士に相談するのもよいと思われます。また示談の方法については弁護士によっていろいろなやり方がありますので示談の方法等について経験のある弁護士と何度も協議することも大切です。刑事事件に熱心な弁護士に具体的に相談してみましょう。

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