直ちに(ただちに)、速やかに(すみやかに)、遅滞なく(ちたいなく)(最終改訂、平成25年12月23日)

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 「直ちに」、「速やかに」、「遅滞なく」は、時間的即時性に関する語句である点で共通しますが、法律用語としては、使い分けがなされています。
 最も時間的即時性が強く求められるのが「直ちに」、その次が「速やかに」、この3つの中では最も即時性の弱いのが「遅滞なく」であるとされています。

 「直ちに」は、「即時に」、「まさにすぐに」、という意味で用いられます。いかなる理由をもってしても遅れてはならない、とのニュアンスがあります。
  使用例 何人も、理由を『直ちに』告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、『直ちに』本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。(憲法34条。二重かぎ括弧は筆者が挿入。以下同じ。)
      憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、『直ちに』これを公布する。(憲法96条2項)

 「速やかに」は、「可能な限りはやく」との意味合いで用いられ、訓示的な意味で用いられることが多いとされています。つまり、法的拘束力は強くはなく、仮に、すみやかに行われなかったとしても違法ということにはならないが、できる限り急いでくださいね、というニュアンスで用いられることが多いということです。
  使用例 弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、『速やかに』、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。(刑事訴訟法31条の2、2項)
      弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、『速やかに』、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。(刑事訴訟法31条の2、3項)
      銃砲又は刀剣類を発見し、又は拾得した者は、『すみやかに』その旨をもよりの警察署に届け出なければならない。(銃砲刀剣類所持等取締法23条。以下、銃刀法という。)
      なお、この銃刀法23条の規定に違反して、すみやかに届出をしない場合には、20万円以下の罰金に処せられることになっている(同法35条2号)ため、この規定における「すみやかに」については、訓示的なものにとどまらず、法的拘束力を持っているということになります。
 また、判例では、「速やかに」の文言解釈が問題となった事件もあります。銃刀法に関する事件です。被告人が、法定の除外事由がないのに、自宅において刃渡り76センチメートルの日本刀一振を所持していたとして、銃刀法違反で起訴された事案の控訴審で、「登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続し、又はこれらの貸付若しくは保管の委託をした者は、文化財保護委員会規則で定める手続により、すみやかにその旨を文化財保護委員会に届け出なければならない」と規定する旧銃刀法17条1項について、「すみやかに」という用語を用いる同条項の規定の内容が不明確であり、したがって同条項違反の罰則(同法33条)を全面的に無効であるということはできない、との判示をしています(後掲大阪高判昭和37年12月10日刑集15巻8号649頁)。
 現在では、この規定は改正により、「すみやかに」から「二十日以内に」へと具体的なものに改められています。

 「遅滞なく」は、「事情の許す限りはやく」、とのニュアンスで用いられます。正当な、または合理的な理由による遅れは許されると解されています。
  使用例 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、『遅滞なく』、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。(民法1004条1項)

 このように、「直ちに」→「速やかに」→「遅滞なく」と時間的即時性が緩やかになって行き、このことは、すぐ後でご紹介する判例でも示されているところです(後掲大阪高判昭和37年12月10日刑集15巻8号649頁)。
 したがって、もし、契約書等の文書を作成する際に、これらの時間的即時性に関する語句を使用する場合には、この順序に従って、どの語句を使用すれば良いのかの判断をすれば良いということにはなるのですが、後の紛争を避けるには、期限などを明確に定めておく形の方が望ましいといえるかもしれません。ご心配なようでしたら、お近くの法律事務所へご相談なさってみてください。

大阪高判昭和37年12月10日刑集15巻8号649頁の要旨
 「「すみやかに」は、「直ちに」「遅滞なく」という用語とともに時間的即時性を表わすものとして用いられるが、これらは区別して用いられており、その即時性は、最も強いものが「直ちに」であり、ついで「すみやかに」、さらに「遅滞なく」の順に弱まつており、「遅滞なく」は正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解されている。
 ところで「すみやかに」というのは、「何日以内に」という数量的な観念とちがつて、価値判断を伴う用語であつて、その判断には解釈を必要とするのであるが、このことは「直ちに」「遅滞なく」についても同様であり、さらに広く法律用語の大部分についても共通の性格であつて、ひとり「すみやかに」の用語にのみ限られたものではない。一定の行為を命ずる場合に「何日以内」というような確定期限をもつてするか、或いは「直ちに」「すみやかに」というような定め方をするかは、その法令の立法趣旨、要求される行為の直接の目的、性質、方式等によつて合目的的合理的に考えられるべきであつて、作為又は不作為を命ずる場合に確定期限による定め方のみですべての場合に対処することは、複雑多岐にわたる社会生活事象に照らせば、現実に不可能、不適当であることは明らかである。」


<参照条文>
憲法
第三十四条 何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。又、何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
A 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

民法
(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
2 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
3 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。

刑事訴訟法
第三十一条の二 弁護人を選任しようとする被告人又は被疑者は、弁護士会に対し、弁護人の選任の申出をすることができる。
A 弁護士会は、前項の申出を受けた場合は、速やかに、所属する弁護士の中から弁護人となろうとする者を紹介しなければならない。
B 弁護士会は、前項の弁護人となろうとする者がないときは、当該申出をした者に対し、速やかに、その旨を通知しなければならない。同項の規定により紹介した弁護士が被告人又は被疑者がした弁護人の選任の申込みを拒んだときも、同様とする。

銃砲刀剣類所持等取締法
(登録を受けた銃砲又は刀剣類の譲受け、相続、貸付け又は保管の委託の届出等)
第十七条 登録を受けた銃砲又は刀剣類を譲り受け、若しくは相続により取得し、又はこれらの貸付け若しくは保管の委託をした者は、文部科学省令で定める手続により、二十日以内にその旨を当該登録の事務を行つた都道府県の教育委員会に届け出なければならない。貸付け又は保管の委託をした当該銃砲又は刀剣類の返還を受けた場合においても、また同様とする。
(発見及び拾得の届出)
第二十三条 銃砲又は刀剣類を発見し、又は拾得した者は、すみやかにその旨をもよりの警察署に届け出なければならない。
第三十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
 一 第三条の八及び第三条の十一の規定により禁止されるけん銃部品の譲渡しと譲受け又は貸付けと借受けの周旋をした者
 二 第十条の八第三項の規定による命令に違反した者
 三 第十七条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 四 第二十一条の三第一項の規定に違反した者
 五 第二十二条の三第一項の規定に違反した者
 六 第二十六条第一項の規定による禁止又は制限に違反した者
第三十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、二十万円以下の罰金に処する。
 一 第四条の二(第五条の四第三項、第六条第三項、第七条の三第三項、第九条の五第四項及び第九条の十第三項において準用する場合を含む。)の許可申請書若しくは添付書類又は第九条の十三第一項の認定申請書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者
 二 第四条の四第一項、第七条第二項(第九条の十三第三項において準用する場合を含む。)、第八条第二項(第九条の十五第二項において準用する場合を含む。)、第三項、第四項(第九条の十五第三項において準用する場合を含む。)若しくは第五項、第九条第三項、第九条の五第三項後段(第九条の十第三項において準用する場合を含む。)、第九条の七第二項(第九条の十一第二項及び第十条の八第二項において準用する場合を含む。)若しくは第五項(第九条の十一第二項において準用する場合を含む。)、第十条第四項若しくは第五項(第二十一条において準用する場合を含む。)、第十条の四第一項から第三項まで、第十五条第二項、第十六条第一項、第十八条第三項、第二十一条の二、第二十二条の二第一項、第二十二条の四、第二十三条又は第二十四条第一項の規定に違反した者(第三十三条第二号に該当する者を除く。)
 三 第四条の四第二項若しくは第九条の六第三項(第九条の十一第二項において準用する場合を含む。)の規定による打刻命令又は第八条第七項、第九条の八第三項、第九条の十二第二項、第十一条第七項若しくは第八項、第十三条の三第一項、第二十六条第二項若しくは第二十七条第一項の規定による銃砲若しくは刀剣類の提出命令に応じなかつた者
 四 第八条の二第二項、第十一条の二第一項若しくは第三項又は第十三条の三第三項の規定によるけん銃部品の提出命令に応じなかつた者
 五 第九条の六第二項(第九条の十一第二項において準用する場合を含む。)、第九条の七第四項(第九条の十一第二項及び第十条の八第二項において準用する場合を含む。)又は第二十三条の二の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
 五の二 第十条の五の二の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかつた者
 六 第十条の六第二項又は第二十七条の二第二項の規定により警察職員が行う検査を拒み、妨げ、又は忌避した者
 七 第十三条前段の規定により警察職員が行う銃砲若しくは刀剣類、許可証若しくは第十条の五の二の帳簿の提示の要求若しくは検査又は第二十四条第二項の規定により警察官が行う許可証、年少射撃資格認定証若しくは登録証の提示の要求を拒み、妨げ、又は忌避した者
 八 第十三条後段又は第二十七条の二第一項の規定による報告の要求に応ぜず、又は虚偽の報告をした者



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