法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年8月13日改訂)
総論10、訴えを提起する前にすること。訴訟の最終目的。社会生活の平穏の迅速な回復。

Q:今すぐ知人への500万円の貸金についての民事訴訟を起こしたいのですが。最初に何を為すべきですか?

A:
1. 気持ちは分かりますが、いきなり裁判をおこしてはいけません。何事も準備が重要ですが、裁判でも同じです。裁判を起こす前に為すべきことを考えてみましょう。
2. 民事訴訟の目的理想は、紛争を適正、当事者の公平、迅速、低廉に解決することですが、真の最終目的は、勝訴判決をもらうことではありません。紛争当事者が一刻も早く経済的、精神的に平穏な社会生活を回復し復帰することです。なぜなら、裁判制度(憲法76条)の最終目的は、個人の尊厳確保(憲法13条)にあり正常な社会生活に戻ることなくしてその最終目的を達成することはできないからです。その視点から訴訟前の準備も考えるのが肝要です。
3. 訴えを提起する前に500万円の請求の法的構成、要件事実が出きたら、裏付けとなる証拠の収集、確保を確実に行い、証拠が集まったら隠さずそれを相手方に提示し提起前に一度話し合いましょう。これを和解といいます。これが、社会生活上の平穏を回復する一番の近道です。
4. 証拠事前収集保全には以下の手続きが考えられます。
@ 書証、人証の確保。
A 予告通知手続(民事訴訟法132条の2)。
B 証拠保全(民事訴訟法234条)。
C 保全処分(民事保全法)。
D 公証役場の確定日付付与手続。
E 収集して証拠の価値の専門家への相談。


1. 民事訴訟の目的理想は私的紛争を強制的に適正公平、迅速低廉に解決することですから、勝訴判決をもらえば全ての目的理想が達せられたように思います。しかし、勝訴判決というのは、必ず敗訴するほうがいるということを忘れてはいけません。勝てば官軍でそんなことどうでもいいじゃないかと思うかもしれません。しかし、勝訴判決を確定させるには法制度上三審制がとられていますから、もし3回争えば最低でも2年近くかかることを覚悟する必要があります。しかし確定しても終わりません。執行があります。不動産の強制執行ならさらに1年。給料差し押さえ、強制的取り立てとなれば別個取り立て訴訟を提起する可能性があります。争えばさらに半年から1年。期間の経過とともにさらに敗訴者の精神的敵意は高まります(互いの準備書面は当事者をさらに興奮、エキサイとさせます)。労力経費の増大も軽視できません。さらに裁判外問題の発生。たとえば相続なら一生絶縁となります。あなたも相手方の財産から強制執行して500万円の満足を得たら相手方との精神的溝はさらに深まります。また、法治国家では敗訴者が最後まで抵抗しようとすれば種々の方法が残されているのです。これでは、平穏な社会生活は事実上回復されません。そこで、精神的経済的な平穏の回復は、相手方の自発的降服により実現されます。そのために裁判に勝てる圧倒的な証拠を収集し相手方の降伏を待つのです。相手方の降伏しやすいように証拠を提示するのです。これが和解です。和解に精神的財産的遺恨は基本的にありません。優秀な裁判官とはこれができる人です。弁護士も同じです。判決は、侍の刀、戦争の武器と同じようなもので使ったら誰かが不幸になります。抑止力を十分使いやむを得ない場合に使用しましょう。時代劇映画と異なり昔の武士は刀をむやみに抜くことを恥としていたそうです。また相手方も対峙して自分の力量、非を認めて刀を納めることは名誉ある態度と評価されていたそうです。判決も似ているところがあります。法的構成を確実に行いしっかり証拠を集めましょう。

2. 法律構成(訴状の組み立て)、証拠の収集、人証の確保。裁判(判決)は、法的三段論法により証拠に基づいて要件事実を認定し、これを法律に当てはめて、法的な結論を出していきます。要件事実は、法律構成により異なってきます。従って、事前に、裁判で相手に請求する場合の、法的な根拠を練っておく必要があります。次に、要件事実を認定する証拠が無ければ勝訴できません。裁判が始まった後では、証拠の収集はできない場合もあります。被告が何らかの妨害をしてくる可能性もあります。証拠のうち、人証つまり、証人の確保も重要です。現場を目撃している証人が、原告側で証言するのか、それとも、被告側で証言するのか、これは裁判の結果を左右しかねない重大事項です。証人尋問が必要となるような事件は本人訴訟には向いていない面もありますが、それでも、万が一の為に、証人を確保しておくことは必要だと思います。つまり、当初は証人申請しないで訴訟提起するけれども、双方の主張立証の程度に応じて、途中から代理人弁護士を依頼し、人証の申し出を行うことも考えられます。本件では借用書等の直接証明する証拠がないようであれば、500万円について事情を知っている第三者を証人として用意し、知っている事情を陳述書という形で作成署名をもらっておくことが考えられます。テープにとっておくと陳述の再現も正確になるでしょう。

3. 種々の訴訟における物的証拠の例を挙げます。
@ 契約書、借用書。
A 内容証明郵便、配達証明書。
B 手紙、念書、領収書、覚書。
C 納品書、受取書、見積書、発注書。
D 預金通帳、振込記録(財産的請求)。
E 土地建物謄本、商業登記簿謄本(不動産に関する訴訟)。
F 事故証明書(交通事故)。
G 当事者間の録音テープ。現場の写真、対象物の写真(境界画定)。
H 医師の診断書、診療報酬明細書(交通事故)。
I 本件では、借用書がないようであれば、500万円を預金していた預金通帳が貸借した間接事実の証拠になります。

4. 証拠保全申立(民事訴訟法234条)。
@  裁判が開始されれば証拠の収集は、当事者主義、弁論主義から原告である貴方の責任ですからあなたが自らその責任を果たさなければいけません。しかし、適正、迅速な裁判をするためには適正な証拠が必要ですから訴訟開始前でも証拠が隠滅、変更、事実上の消滅の危険があるようであれば裁判所は裁判が開始していなくても証拠調べをしてもらえます。これが証拠保全です(保全といっても証拠調べです)。しかし、立証する要件事実も裁判所に明らかになっていないのに証拠調べを行うのですから「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情」に関し資料を付けて説明しなければいけません(一応確からしい程度の説明。証明と対比して疎明と言います。あまり厳しく説明を要求すると適正な証拠が確保できません)。
A 例えば、500万円を貸借の事情を詳しく知っている第三者が、重病で将来の尋問が期待できないので訴訟前に証人尋問をしてもらう場合です。医療過誤事件などでは、訴訟を提起するとカルテを改竄されてしまう恐れがありますので、証拠保全を行いますが、それ以外の事件でも、損害賠償請求における火災の現場検証等証拠物が変容散逸してしまう恐れがあり、被告側の隠滅工作の恐れがある場合は、認められる可能性がおおきいとおもいます。
B 執行官と一緒に現場に出かけていき、写真を撮影したり、記 録のコピーを取ったり、録音テープをダビングし証拠調べをします。

5. 訴え提起前における予告通知、照会(民事訴訟法132条の2)、証拠収集処分申立手続き(民事訴訟法132条の4)。
@  前述した証拠保全は、やむを得ない事情を必要としていますから利用される場面が限定されています。しかし、法の支配による適正迅速な裁判の実現は訴訟前でも広く証拠の収集を当事者に認める必要があります。そこで要件を緩和して平成15年度に「訴訟提起前の予告通知」「訴訟提起前の照会」「証拠収集処分」制度がつくられました。
A  「予告通知、照会、証拠収集処分申し立て手続き」は、貴方が、被告となるべき知人に対し500万円の貸金請求訴訟提起の予告を通知した場合通知の内容は規則52条の2に明記されています)に、訴え提起後の主張立証に必要であることが明らかな事項について、相当の期間を定めて、知人に書面で回答するよう、書面で照会することができる手続です(記載内容規則52条の4)。相手の返答が不十分であり返答が無い場合自ら証拠収集が困難であれば、裁判所に訴え提起前の証拠収集処分申立(文書送付、調査嘱託、執行官調査)をすることもできます。
B 例えば、予告通知の要旨として、 私(通知人)は、あなた(被通知人)に貸金金請求として500万円の支払いの請求をいたします。平成15年6月から11月まで数回に分けて合計500万円を貸し渡しました。貸金は、あなたとの特別な信頼関係に基づき行われたものであり借用書は作成していませんが最近あなたから貸借の事実を否定する説明があり民事訴訟法132条の2により貸金請求訴訟の予告通知をいたしました。
C 照会の要旨。私は、あなたに以下の3回の貴殿の自宅、ホテル等における金銭消費貸借契約の成立事実を認めるかどうか照会致します。第一平成15年6月18日京王プラザホテル、300万円、用途事業運営資金として。その他の消費貸借契約を記載します。
D 証拠収集処分として、2号の調査嘱託(公的機関である裁判所が第三者機関に調査を委託する)として相手方預金先の金融機関に対する消費貸借期間の取引状況の照会等の申し立てがある。申し立ての理由として本件消費貸借は借用書がなく相手方は借用の事実を否定しているので本件借入金利用の(間接)事実(入金状況、金融機関からの借入金返済)を明らかにする証拠として必要性が高く自ら収集が困難である点を説明することになります(弁護士会照会では拒否される可能性がある)。
E 要件を満たしていれば、裁判所による証拠収集決定により、証拠収集が容易になり公正迅速な手続きが期待されます。また、予告通知に対して不誠実な態度をとれば、事実上、訴え提起後の裁判所の心証に悪影響があることは否定できませんので、原告側の立証がそういう点で容易になる可能性はあります。
F 収集された証拠は訴訟提起後証拠として採用判断されます。

6. 次に、公証役場の確定日付付与手続があります。
 事案によっては、契約書などの証拠書類を公証役場に持参し、「確定日付の付与」を得る必要がある場合もあります。確定日付は、公証人が書類を確認し、年月日の記載された確定日付印を押印することにより、当日、その文書が存在していた事を証明する手続です。これにより、書類が後日作成された、という主張を封じる事ができます。あなたの場合利用できるかどうか不明ですが、例えば、金銭消費貸借に関する当事者間の手紙や合意書が複数あって、どちらが時系列で先なのか後なのか、確実に証明したい場合などに効果的な手続です。

7. 執行のための保全処分申立。
@ 上記の手段により、証拠収集が確実に行われている場合でも、勝訴判決後に事実上強制執行できなくなってしまえば勝訴判決をもらっても意味がありません。具体的には、相手方の財産が隠され処分されてしまった場合には、実効性がなくなってしまいます。そこで、本件貸金請求訴訟の場合、知人である相手方の財産である不動産を仮差押して強制執行を確保するための、保全処分を検討する必要があります。民事保全法に詳しく規定されています。事前の相手方財産の凍結ですから濫用をなくすため請求金額に応じて保証金(15%前後)が必要となります。迅速性が要請されるので専門家のアドヴァイスも大切です。
A 保全処分の例。
B 貸金返還請求事件→被告の預貯金仮差押、自宅土地建物仮差押。
C 財産分与請求事件→自宅土地建物仮差押。
D 建物明渡請求事件→占有移転禁止仮処分。
E 尚、保全の必要性、要件の詳細については、新銀座法律事務所ホームページ、「保全処分」で検索し事例集(NO688号、NO487号等)を参照してください。

8. 弁護士・認定司法書士への相談の必要性。全ての資料が揃い、保全処分の要否についても検討完了したとしても、必ず、全ての資料を持参し、一度は、弁護士又は認定司法書士(簡易裁判所事件)の相談を受けて下さい。自分では完璧だと思っても、思わぬ見落としをしている場合もあります。

9. 最後に、前述のとおり和解交渉の努力が必要です。法の支配の理念から弁護士事務所でも、裁判を提起する前に、最大限交渉の努力をして最後の手段として、裁判を起こすのが基本です。本来私的紛争は当事者の争いなのです。裁判所はスイスのような中立国です。いくら裁判所に対する書面、証拠を大量に用意、提出しても当事者である貴方が平和を求め紛争解決の努力をしなければ社会生活の平穏は何時までたっても戻ってきません。あなたの平和を求める情熱、努力が最終的に決め手になるでしょう。そういう意味で、訴訟は技術ではなく魂です。尚、示談で終わらせる場合でも、必ず「合意書」を作成し、必ず、内容につき事前に弁護士などの法律専門家に相談することをお勧めいたします。合意書の書式等については新銀座法律事務所のホームページ書式集を参照しご質問ください。


≪条文参照≫

民事訴訟法
(証拠保全)
第二百三十四条  裁判所は、あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると認めるときは、申立てにより、この章の規定に従い、証拠調べをすることができる。
民事訴訟規則
第六章 訴えの提起前における証拠収集の処分等
(平一五最裁規一九・追加)
(予告通知の書面の記載事項等・法第百三十二条の二)
第五十二条の二 予告通知の書面には、法第百三十二条の二(訴えの提起前における照会)第三項に規定する請求の要旨及び紛争の要点を記載するほか、次に掲げる事項を記載し、予告通知をする者又はその代理人が記名押印するものとする。
一 予告通知をする者及び予告通知の相手方の氏名又は名称及び住所並びにそれらの代理人の氏名及び住所
二 予告通知の年月日
三 法第百三十二条の二第一項の規定による予告通知である旨
2 前項の請求の要旨及び紛争の要点は、具体的に記載しなければならない。
3 予告通知においては、できる限り、訴えの提起の予定時期を明らかにしなければならない。
(平一五最裁規一九・追加)
(予告通知に対する返答の書面の記載事項等・法第百三十二条の三)
第五十二条の三 予告通知に対する返答の書面には、法第百三十二条の三(訴えの提起前における照会)第一項に規定する答弁の要旨を記載するほか、前条(予告通知の書面の記載事項等)第一項第一号に規定する事項、返答の年月日及び法第百三十二条の三第一項の規定による返答である旨を記載し、その返答をする者又はその代理人が記名押印するものとする。
2 前項の答弁の要旨は、具体的に記載しなければならない。
(平一五最裁規一九・追加)
(訴えの提起前における照会及び回答の書面の記載事項等・法第百三十二条の二等)
第五十二条の四 法第百三十二条の二(訴えの提起前における照会)第一項の規定による照会及びこれに対する回答は、照会の書面及び回答の書面を相手方に送付してする。この場合において、相手方に代理人があるときは、照会の書面は、当該代理人に対し送付するものとする。
2 前項の照会の書面には、次に掲げる事項を記載し、照会をする者又はその代理人が記名押印するものとする。
一 照会をする者及び照会を受ける者並びにそれらの代理人の氏名
二 照会の根拠となる予告通知の表示
三 照会の年月日
四 照会をする事項(以下この条において「照会事項」という。)及びその必要性
五 法第百三十二条の二第一項の規定により照会をする旨
六 回答すべき期間
七 照会をする者の住所、郵便番号及びファクシミリの番号
3 第一項の回答の書面には、前項第一号及び第二号に掲げる事項、回答の年月日並びに照会事項に対する回答を記載し、照会を受けた者又はその代理人が記名押印するものとする。この場合において、照会事項中に法第百三十二条の二第一項第一号に掲げる照会に該当することを理由としてその回答を拒絶するものがあるときは、法第百六十三条(当事者照会)各号のいずれに該当するかをも、法第百三十二条の二第一項第二号又は第三号に掲げる照会に該当することを理由としてその回答を拒絶するものがあるときは、そのいずれに該当するかをも記載するものとする。
4 照会事項は、項目を分けて記載するものとし、照会事項に対する回答は、できる限り、照会事項の項目に対応させて、かつ、具体的に記載するものとする。
5 前各項の規定は、法第百三十二条の三(訴えの提起前における照会)第一項の規定による照会及びこれに対する回答について準用する。
(平一五最裁規一九・追加)
(証拠収集の処分の申立ての方式・法第百三十二条の四)
第五十二条の五 法第百三十二条の四(訴えの提起前における証拠収集の処分)第一項各号の処分の申立ては、書面でしなければならない。
2 前項の書面には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 申立ての根拠となる申立人がした予告通知又は返答の相手方(以下この章において単に「相手方」という。)の氏名又は名称及び住所
二 申立てに係る処分の内容
三 申立ての根拠となる申立人又は相手方がした予告通知(以下この項並びに次条(証拠収集の処分の申立書の添付書類)第一項各号及び第二項において単に「予告通知」という。)に係る請求の要旨及び紛争の要点
四 予告通知に係る訴えが提起された場合に立証されるべき事実及びこれと申立てに係る処分により得られる証拠となるべきものとの関係
五 申立人が前号の証拠となるべきものを自ら収集することが困難である事由
六 予告通知がされた日から四月の不変期間内にされた申立てであること又はその期間の経過後に申立てをすることについて相手方の同意があること。
3 第一項の書面には、前項各号に掲げる事項のほか、次の各号に掲げる場合の区分に
応じ、それぞれ当該各号に定める事項を記載しなければならない。
一 法第百三十二条の四第一項第一号の処分の申立てをする場合 当該文書の所持者の居所当該嘱託を受けるべき同号に規定する官公署等の所在地当該特定の物の所在地当該調査に係る物の所在地
二 法第百三十二条の四第一項第二号の処分の申立てをする場合
三 法第百三十二条の四第一項第三号の処分の申立てをする場合であって、その申立てが特定の物についての意見の陳述の嘱託
に係る場合四 法第百三十二条の四第一項第四号の処分の申 立てをする場合
4 法第百三十二条の四第一項第一号の処分の申立てにおける第二項第二号に掲げる事項の記載は、送付を求める文書(法第二百三十一条(文書に準ずる物件への準用)に規定する物件を含む。)を特定するに足りる事項を明らかにしてしなければならない。法第百三十二条の四第一項第三号又は第四号の処分の申立てにおける前項第三号又は第四号に定める物についても、同様とする。
5 法第百三十二条の四第一項第二号又は第四号の処分の申立てにおける第二項第二号に掲げる事項の記載は、調査を求める事項を明らかにしてしなければならない。同条第一項第三号の処分の申立てにおける意見の陳述を求める事項についても、同様とする。
6 第二項第五号の事由は、疎明しなければならない。
(平一五最裁規一九・追加)
(証拠収集の処分の申立書の添付書類・法第百三十二条の四)
第五十二条の六 前条(証拠収集の処分の申立ての方式)第一項の書面(以下この条において「申立書」という。)には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 予告通知の書面の写し
二 予告通知がされた日から四月の不変期間が経過しているときは、前条第二項第六号の相手方の同意を証する書面
2 予告通知に対する返答をした被予告通知者が法第百三十二条の四(訴えの提起前における証拠収集の処分)第一項の処分の申立てをするときは、当該申立書には、前項各号に掲げる書類のほか、当該返答の書面の写しを添付しなければならない。
3 法第百三十二条の四第一項第三号の処分の申立てをする場合において、当該処分が特定の物についての意見の陳述を嘱託するものであり、かつ、当該特定の物に関する権利が登記又は登録をすることができるものであるときは、当該申立書には、当該特定の物の登記事項証明書又は登録原簿に記載されている事項を証明した書面を添付しなければならない。同項第四号の処分の申立てをする場合において、調査に係る物に関する権利が登記又は登録をすることができるものであるときも、同様とする。
(平一五最裁規一九・追加、平一七最裁規六・一部改正)
(証拠収集の処分の手続等・法第百三十二条の六)
第五十二条の七 裁判所は、必要があると認めるときは、嘱託を受けるべき者その他参考人の意見を聴くことができる。
2 法第百三十二条の四(訴えの提起前における証拠収集の処分)第一項第一号に規定する文書の送付は、原本、正本又は認証のある謄本のほか、裁判所が嘱託を受けるべき者の負担その他の事情を考慮して相当と認めるときは、写しですることができる。
3 第百三条(外国における証拠調べの嘱託の手続)の規定は、法第百三十二条の六(証拠収集の処分の手続等)第五項において準用する法第百八十四条(外国における証拠調べ)第一項の規定により外国においてすべき法第百三十二条の四第一項第一号から第三号までの処分に係る嘱託の手続について準用する。
4 執行官は、法第百三十二条の四第一項第四号の調査をするに当たっては、当該調査を実施する日時及び場所を定め、申立人及び相手方に対し、その日時及び場所を通知しなければならない。
5 第四条(催告及び通知)第一項、第二項及び第五項の規定は、前項に規定する通知について準用する。この場合において、同条第二項及び第五項中「裁判所書記官」とあるのは「執行官」と、「訴訟記録上」とあるのは「報告書において」と読み替えるものとする。
6 法第百三十二条の四第一項第四号の調査の結果に関する報告書には、調査をした執行官の氏名、調査に係る物の表示、調査に着手した日時及びこれを終了した日時、調査をした場所、調査に立ち会った者があるときはその氏名、調査を命じられた事項並びに調査の結果を記載しなければならない。
(平一五最裁規一九・追加)
(訴えの提起の予定の有無等の告知)
第五十二条の八 予告通知者は、予告通知をした日から四月が経過したとき、又はその経過前であっても被予告通知者の求めがあるときは、被予告通知者に対し、その予告通知に係る訴えの提起の予定の有無及びその予定時期を明らかにしなければならない。
民事保全法
第一章 総則
(趣旨)
第一条  民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。


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