法の支配と民事訴訟実務入門(平成30年7月15日改訂)
各論4、婚姻費用分担請求を自分でやる。家事審判、非訟事件、人事訴訟。


質問
 離婚を前提に別居しています。私はパートで月5万円ほどの収入で、夫は年収800万円の会社員です。私は子供(3歳と6歳)と一緒に生活していますが、もちろん5万円では生活できませんので、夫に生活費として月20万円請求していますが、支払ってくれません。家庭裁判所に調停を申し立てたいと思いますので、手続きについて教えてください。


回答、
1. 別居している貴女と子供の生活費の請求は、財産的請求ですが一般の民事訴訟を提起できません。家庭裁判所で家事審判手続きにより審判(決定)で決められます(家事審判法9条乙類3号)。
2. 不服があれば審判に対して即時抗告をして高等裁判所で再度判断してもらえます(法14条)。

解説
まず、どうして財産的請求なのに家庭裁判所で特殊な家事審判手続きにより審理されるか説明します。「法の支配」の理念の現れです。法の支配の理想は個人の尊厳の保障ですが、個人の尊厳は社会生活の核である健全な家族関係及び家族構成員個人の権利の平等、保障なくしてはあり得ません(憲法24条。法1条)。家族生活内の紛争について、財産的争いを予想した当事者主義を原則とする民事訴訟法(対審、公開等、口頭弁論主義)をそのまま適用しては、目的が達成できないのです。すなわち、紛争の勝ち負けより家族内個人の実質的権利保障し健全な家庭関係維持を目的としなければならないからです。そこで、地方裁判所(簡易裁判所)の他に家庭裁判所が設置され、民事訴訟と異なる2つの手続きを用意しました。そのひとつが家事審判手続き(家事審判法)であり、もうひとつが人事訴訟手続き(人事訴訟法)です(裁判所法31条の31項)。家族生活内の紛争を夫婦、親子の基本的身分関係の争いとその他の家庭内の紛争に分けて、基本的身分関係は家庭生活の中心となるものですから通常訴訟の形式をとりながら当事者主義を修正し(人訴20条、22条、24条。職権探知主義の要素を加えるので裁判所に判断の裁量権が加重されています。通常訴訟と異なり、一部非公開ですし、第三者効もあります。)、その他の家庭内の事件は訴訟形式を放棄し家事審判という非訟事件手続(法7条。非対審、非公開、職権探知が原則とする)により裁判所に後見的裁量権を認めて合目的判断を最優先にします。その一つが本件夫婦間の婚姻費用分担です。しかし、家族法の事件でも財産的色彩が強いものは、その必要がないので地方裁判所の管轄にもなっていますので少し分かりにくく複雑になっています。例えば遺留分請求等です。

手続きについて以下説明します。

1 婚姻費用の分担について
民法760条で「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を負担する。」と規定されています。夫婦の財産については、原則として夫婦それぞれの特有財産とされ、いずれに属するか不明の場合は夫婦の共有とされています(民法762)から、夫あるいは妻が得た給料は、それぞれ夫と妻のものとなります。しかし、婚姻生活ですから生活費の割り勘というわけにはいかず収入や資産に応じて婚姻の費用を負担すること、あたりまえのことですが民法にも定められています。
  
2 どのように請求するか
法律では、「・・婚姻から生じる費用を負担する。」と規定されているだけで、具体的に請求できる金額は明らかではありません。その金額を定めるに際しては「その資産、収入その他一切の事情を考慮して」負担する額を決めることとされています。
もちろん、夫婦の協議によって決めることが原則ですが、協議ができないあるいは支払いを拒否している場合には、裁判所によって決定してもらうことになります。

3 どのような裁判をすればよいのか
家事審判法という法律があります。家事審判法となっていますが、「家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。」(法17条)と規定し、また「前条の規定により調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をしなければならない。」と規定してあり、家庭に関する事件については、事前に家庭裁判所に調停を申立てる必要があります(法18条、調停前置主義)。本件は訴えでなく審判事項ですから調停前置主義は適用になりませんが、対等な夫婦関係を維持するため職権で調停になることが多いでしょう(法11条)。調停はあくまで話し合いで、当事者双方の了解が得られない場合は「不調」といって、終了してしまいます。不調となった場合、乙類に定められている事件は必ず審判が行われると定められています(法26条)。婚姻費用の事件は乙類となっていますから(同法9、乙類3)調停が不調であれば必ず審判手続きに移行し、家事審判官(同法2)という家庭裁判所の裁判官が審判を下すことになっています。
なお、地方裁判所に婚姻費用の請求の裁判を起こせるのでは、と考える方がいるかと思いますが、この点について出来ないというのが裁判所の扱いです。なぜかというと、前述のように婚姻費用の分担は、対等な夫婦関係を維持するため夫婦の収入や資産その他一切の事情を考慮して定めることになっており、金額の決定には裁判所の大幅な裁量が認められますので、非訟事件といって地方裁判所で裁判をする訴訟事件とは違う扱いになっているからです。法律はこのように訴訟事件と非訟事件を区別しているため、非訟事件を地方裁判に申し立てることはできないとされているのです。

4 そこで、裁判所に申し立てるには家庭裁判所に調停を申し立てることになりますので、まず調停手続きについて説明します。
@ どうやって申し立てるか。相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に住民票、戸籍謄本と印鑑を持っていけば相談の窓口で用紙に記入し、その場で申し立てができます(家事審判規則45条)。家庭裁判所に定型書式がありますから、事前に御自分で申立書を用意する必要はありません。

参考URL(裁判所の手続解説および書式)
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_03/index.html

A  申立後の手続。申立が受理されると、後日裁判所から調停の日時(調停期日)が指定される手紙が来ます。急いでいる場合や日時に希望がある場合は、申し立ての際担当の書記官に面談をお願いすることもできます。
B 調停期日の手続きについて。初回に調停についての説明があります。調停は家事審判官と調停委員2名で行われますが、家事審判官ははじめと最後の調停に臨席するだけで実際の調停は調停委員が行います。調停委員は男女各1名で有識経験者の中から選ばれた方達です。調停では、健全な家庭生活建設のための話し合いですから原則的に本人が出頭します。通常訴訟や他の調停のように代理人に任せきりにするようなことはできません(審判規則5条、弁護士に同席してもらうことは勿論可能です)。相手方と直接面会することは原則としてありません。待合室も別々に用意されていますし、調停室にも別々に呼ばれます。調停委員は双方から交互に話を聞き、必要な資料の提出を求めます。法律にあるように収入、資産、その他一切の事情に関する資料を提出することになります。あなたが用意するのは、自分の給料の源泉徴収票や給与明細、生活費の説明のための資料(家賃があれば契約書、その他学費や塾の費用、光熱費の領収書など)ですので、あらかじめ用意して持って行った方が良いでしょう。その際、裁判所と相手方、自分の記録用に3部コピーを用意していくと便利です。このような資料は相手方も提出を求められますが、もしあなたが用意できるのであれば準備して行けば話が早いでしょう。調停委員は提出された資料と双方の意見、希望を聞いて最終的に調停案を提示してそれを了承するか否か双方に確認します。調停の回数に制限はありませんが通常は月1回の調停を4,5回行われるようです。
C 金額はどのように決められているのか。法律では一切の事情を考慮して裁判所の裁量により決めることになっていますが、最近は双方の年収、子供の数を基準にした一覧表が作成されそれに基づいて金額が決められています。一覧表では、夫が会社員で年収800万円、妻の年収が60万円、子供が14歳以下2名とすると月14万円から16万円の金額となっています。具体的計算方法は新銀座法律事務所ホームページ参照。
D 審判について。調停案について当事者が一方でも了解しなければ、調停は不調となり審判の手続きに当然に移行します。当事者が特に手続をする必要はなく、調停の際の家事審判官が担当しますので、心配は要りません。審判になっても今まで提出した資料はそのまま使用されますから改めて提出する必要はありません。また、新しい資料を提出することもできます。審判の回数に決まりはありませんが、新しい争点がない限りは2,3回で終わり、その後、審判書が郵送されますが、訴訟と違って審判の言い渡しの期日というのは指定していません。あまり遅い場合は裁判所に電話で問い合わせて下さい。
E このようにして調停、審判が終了すると調停調書、審判書が裁判所によって作成され、それにより強制執行も可能となります(法15条)。
F 審判内容に対して不服があれば、2週間以内(通常1週間の不変期間。民訴332条)に即時抗告ができますから(法14条)高等裁判所で審判の内容を再度審理することができます(審判規則14条)。さらに、決定、命令について最高裁判所の法令解釈統一権を保障するために認められている特別抗告、許可抗告も理論的には可能です(民訴336条、337条)。
G なお、過去の分の婚姻費用の支払いが認められるかという問題があり、通常は申立のあった日から以降の婚姻費用について審判されることが多いようです。過去の養育費請求と同じ問題であり新銀座法律事務所事例集NO790、766、684号等を参考にしてください。

≪参照条文≫
憲法
第二十四条  婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
○2  配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

家事審判法
第一条  この法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等を基本として、家庭の平和と健全な親族共同生活の維持を図ることを目的とする。
第二条  家庭裁判所において、この法律に定める事項を取り扱う裁判官は、これを家事審判官とする。
第七条  特別の定めがある場合を除いて、審判及び調停に関しては、その性質に反しない限り、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)第一編 の規定を準用する。ただし、同法第十五条 の規定は、この限りでない。

第九条  家庭裁判所は、次に掲げる事項について審判を行う。
甲類
一 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第七条 及び第十条 の規定による後見開始の審判及びその取消し
二 民法第十一条 、第十三条第二項及び第三項、第十四条並びに第八百七十六条の四第一項及び第三項の規定による保佐開始の審判、その取消しその他の保佐に関する処分
二の二 民法第十五条第一項 、第十七条第一項及び第三項、第十八条、第八百七十六条の九第一項並びに同条第二項において準用する同法第八百七十六条の四第三項 の規定による補助開始の審判、その取消しその他の補助に関する処分
二の三 民法第十九条 の規定による後見開始、保佐開始又は補助開始の審判の取消し
三 民法第二十五条 から第二十九条 までの規定による不在者の財産の管理に関する処分
四 民法第三十条 及び第三十二条第一項 の規定による失踪の宣告及びその取消し
五 民法第七百七十五条 の規定による特別代理人の選任
六 民法第七百九十一条第一項 又は第三項 の規定による子の氏の変更についての許可
七 民法第七百九十四条 又は第七百九十八条 の規定による養子をするについての許可
七の二 民法第八百十一条第五項 の規定による未成年後見人となるべき者の選任
八 民法第八百十一条第六項 の規定による離縁をするについての許可
八の二 民法第八百十七条の二 及び第八百十七条の十 の規定による縁組及び離縁に関する処分
九 民法第八百二十二条 又は第八百五十七条 (同法第八百六十七条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による懲戒に関する許可その他の処分
十 民法第八百二十六条 (同法第八百六十条 において準用する場合を含む。)の規定による特別代理人の選任
十一 民法第八百三十条第二項 から第四項 まで(同法第八百六十九条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の管理者の選任その他の財産の管理に関する処分
十二 民法第八百三十四条 から第八百三十六条 までの規定による親権又は管理権の喪失の宣告及びその取消し
十三 民法第八百三十七条 の規定による親権又は管理権を辞し、又は回復するについての許可
十四 民法第八百四十条 、第八百四十三条第一項から第三項まで(同法第八百七十六条の二第二項 及び第八百七十六条の七第二項 において同法第八百四十三条第二項 及び第三項 の規定を準用する場合を含む。)、第八百四十九条、第八百四十九条の二、第八百七十六条の二第一項、第八百七十六条の三第一項、第八百七十六条の七第一項又は第八百七十六条の八第一項の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の選任
十五 民法第八百四十四条 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の二第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の七第二項及び第八百七十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の辞任についての許可
十六 民法第八百四十六条 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の二第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の七第二項及び第八百七十六条の八第二項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の解任
十七 民法第八百五十三条第一項 ただし書(同法第八百五十六条 及び第八百六十七条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による財産の目録の作成の期間の伸長
十八 民法第八百五十九条の二第一項 及び第二項 (これらの規定を同法第八百五十二条 、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による数人の成年後見人、成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人の権限の行使についての定め及びその取消し
十九 民法第八百五十九条の三 (同法第八百五十二条 、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による成年被後見人、被保佐人又は被補助人の居住用不動産の処分についての許可
二十 民法第八百六十二条 (同法第八百五十二条 、第八百六十七条第二項、第八百七十六条の三第二項、第八百七十六条の五第二項、第八百七十六条の八第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人に対する報酬の付与
二十一 民法第八百六十三条 (同法第八百六十七条第二項 、第八百七十六条の五第二項及び第八百七十六条の十第一項において準用する場合を含む。)の規定による後見、保佐又は補助の事務の報告、財産の目録の提出、当該事務又は財産の状況の調査、財産の管理その他の当該事務に関する処分
二十二 民法第八百七十条 ただし書(同法第八百七十六条の五第三項 及び第八百七十六条の十第二項 において準用する場合を含む。)の規定による管理の計算の期間の伸長
二十二の二 民法第八百七十六条の二第三項 又は第八百七十六条の七第三項 の規定による臨時保佐人又は臨時補助人の選任
二十三 民法第八百九十五条 の規定による遺産の管理に関する処分
二十四 民法第九百十五条第一項 ただし書の規定による相続の承認又は放棄の期間の伸長
二十五 民法第九百十八条第二項 及び第三項 (これらの規定を同法第九百二十六条第二項 、第九百三十六条第三項及び第九百四十条第二項において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の保存又は管理に関する処分
二十五の二 民法第九百十九条第四項 の規定による相続の限定承認又は放棄の取消しの申述の受理
二十六 民法第九百二十四条 の規定による相続の限定承認の申述の受理
二十七 民法第九百三十条第二項 (同法第九百四十七条第三項 、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)、第九百三十二条ただし書(同法第九百四十七条第三項 及び第九百五十条第二項 において準用する場合を含む。)又は第千二十九条第二項の規定による鑑定人の選任
二十八 民法第九百三十六条第一項 の規定による相続財産の管理人の選任
二十九 民法第九百三十八条 の規定による相続の放棄の申述の受理
三十 民法第九百四十一条第一項 又は第九百五十条第一項 の規定による相続財産の分離に関する処分
三十一 民法第九百四十三条 (同法第九百五十条第二項 において準用する場合を含む。)の規定による相続財産の管理に関する処分
三十二 民法第九百五十二条 及び第九百五十三条 又は第九百五十八条 の規定による相続財産の管理人の選任その他相続財産の管理に関する処分
三十二の二 民法第九百五十八条の三第一項 の規定による相続財産の処分
三十三 民法第九百七十六条第四項 又は第九百七十九条第三項 の規定による遺言の確認
三十四 民法第千四条第一項 の規定による遺言書の検認
三十五 民法第千十条 の規定による遺言執行者の選任
三十六 民法第千十八条第一項 の規定による遺言執行者に対する報酬の付与
三十七 民法第千十九条 の規定による遺言執行者の解任及び遺言執行者の辞任についての許可
三十八 民法第千二十七条 の規定による遺言の取消し
三十九 民法第千四十三条第一項 の規定による遺留分の放棄についての許可
乙類
一 民法第七百五十二条 の規定による夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する処分
二 民法第七百五十八条第二項 及び第三項 の規定による財産の管理者の変更及び共有財産の分割に関する処分
三 民法第七百六十条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担に関する処分
四 民法第七百六十六条第一項 又は第二項 (これらの規定を同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護者の指定その他子の監護に関する処分
五 民法第七百六十八条第二項 (同法第七百四十九条 及び第七百七十一条 において準用する場合を含む。)の規定による財産の分与に関する処分
六 民法第七百六十九条第二項 (同法第七百四十九条 、第七百五十一条第二項、第七百七十一条、第八百八条第二項及び第八百十七条において準用する場合を含む。)又は第八百九十七条第二項 の規定による同条第一項 の権利の承継者の指定
六の二 民法第八百十一条第四項 の規定による親権者となるべき者の指定
七 民法第八百十九条第五項 又は第六項 (これらの規定を同法第七百四十九条 において準用する場合を含む。)の規定による親権者の指定又は変更
八 民法第八百七十七条 から第八百八十条 までの規定による扶養に関する処分
九 民法第八百九十二条 から第八百九十四条 までの規定による推定相続人の廃除及びその取消し
九の二 民法第九百四条の二第二項 の規定による寄与分を定める処分
十 民法第九百七条第二項 及び第三項 の規定による遺産の分割に関する処分
○2  家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に家庭裁判所の権限に属させた事項についても、審判を行う権限を有する。
第十一条  家庭裁判所は、何時でも、職権で第九条第一項乙類に規定する審判事件を調停に付することができる。
第十四条  審判に対しては、最高裁判所の定めるところにより、即時抗告のみをすることができる。その期間は、これを二週間とする。
第十五条  金銭の支払、物の引渡、登記義務の履行その他の給付を命ずる審判は、執行力ある債務名義と同一の効力を有する。


第三章 調停
    第一節 通則
第十七条  家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について調停を行う。但し、第九条第一項甲類に規定する審判事件については、この限りでない。
第十八条  前条の規定により調停を行うことができる事件について訴を提起しようとする者は、まず家庭裁判所に調停の申立をしなければならない。
○2  前項の事件について調停の申立をすることなく訴を提起した場合には、裁判所は、その事件を家庭裁判所の調停に付しなければならない。但し、裁判所が事件を調停に付することを適当でないと認めるときは、この限りでない。
第十九条  第十七条の規定により調停を行うことができる事件に係る訴訟が係属している場合には、裁判所は、何時でも、職権でその事件を家庭裁判所の調停に付することができる。

第二十六条  第九条第一項乙類に規定する審判事件について調停が成立しない場合には、調停の申立の時に、審判の申立があつたものとみなす。
○2  第十七条の規定により調停を行うことができる事件について調停が成立せず、且つ、その事件について第二十三条若しくは第二十四条第一項の規定による審判をせず、又は第二十五条第二項の規定により審判が効力を失つた場合において、当事者がその旨の通知を受けた日から二週間以内に訴を提起したときは、調停の申立の時に、その訴の提起があつたものとみなす。
家事審判規則

第五条 事件の関係人は、自身出頭しなければならない。但し、やむを得ない事由があるときは、代理人を出頭させ、又は補佐人とともに出頭することができる。
第十七条 即時抗告の期間は、即時抗告をすることができる者が、審判の告知を受けたときは告知を受けた日から、告知を受けないときは事件の申立人が告知を受けた日から進行する。但し、特別の定のあるときは、この限りでない。

第十九条 高等裁判所は、即時抗告が理由があるものと認めるときは、審判を取り消して、事件を家庭裁判所に差し戻さなければならない。
2 高等裁判所は、相当であると認めるときは、前項の規定にかかわらず、審判を取り消して、みずから事件につき審判に代わる裁判をすることができる。




第五節 婚姻関係
第四十五条 夫婦の同居その他の夫婦間の協力扶助に関する審判事件は、相手方の住所地の家庭裁判所の管轄とする。
民事訴訟法
(即時抗告期間)
第三百三十二条  即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
(特別抗告)
第三百三十六条  地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2  前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。
3  第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。
(許可抗告)
第三百三十七条  高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2  前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。
3  前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
4  第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。
5  最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。
6  第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。
裁判所法
第三十一条の三 (裁判権その他の権限)  家庭裁判所は、次の権限を有する。
一  家事審判法 (昭和二十二年法律第百五十二号)で定める家庭に関する事件の審判及び調停
二  人事訴訟法 (平成十五年法律第百九号)で定める人事訴訟の第一審の裁判
三  少年法 (昭和二十三年法律第百六十八号)で定める少年の保護事件の審判
四  少年法第三十七条第一項 に掲げる罪に係る訴訟の第一審の裁判
○2  家庭裁判所は、この法律に定めるものの外、他の法律において特に定める権限を有する。
人事訴訟法
(職権探知)
第二十条  人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない。
(当事者尋問等の公開停止)
第二十二条  人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
2  裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等及び証人の意見を聴かなければならない。
3  裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。
(確定判決の効力が及ぶ者の範囲)
第二十四条  人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法第百十五条第一項 の規定にかかわらず、第三者に対してもその効力を有する。


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