一時保護と児童養護施設入所措置の回避|幼児の虐待を疑われた事例

行政・児童福祉法|児童福祉法33条に基づく一時保護の期間・延長の有無|一時保護の早期解除に向けた具体的対応

目次

  1. 質問
  2. 回答
  3. 解説
  4. 関連事例集
  5. 参照条文

質問

私の生後半年の子どもが児童相談所に一時保護されてしまいました。きっかけは、子どもがミルクを吐くようになったので病院で検査したところ、頭部(脳)に外傷があるとのことでした。心あたりとしては、子どもが一度高さ80cmほどのベビーベッドから寝返りを打って落ちたことがあったため、そう伝えたのですが、病院が児童相談所に通報し、そのまま一時保護となっています。

児童相談所の担当者からは、「あなたの言い分は信用できない。医師の意見でも事故では無いと判断されている。児童養護施設(乳児院)に入所させる必要があるから同意してください。」と言われています。

もし児童相談所の指示に従って施設入所に同意した場合、どうなってしまうのでしょうか。子どもを早く自宅復帰させるためにはどうしたら良いのでしょうか。

回答

1 現在、お子さんは、児童相談所で「一時保護」を受けている状況です。一時保護とは、虐待等の恐れなどがある児童について、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するために行なわれる処分です(児童福祉法33条)。あなたのようなケースですと、保護期間が延長され少なくとも「4か月」程度の期間継続することが多いといえます。

2 また、児童相談所の担当者が乳児院への入所の同意を求めているとのことですので、この同意をした場合、お子様は施設(乳児院)への入所措置が取られることになります。同条による入所措置には期間が定められていませんので、少なくとも、数か月以上の長期間の入所措置が考えられるところであり、ケースによっては数年以上の長期間の入所という事態も否定できません。仮にあなたが同意をしなかった場合でも、児童相談所は、家庭裁判所の承認の審判を受ければ、お子さんを強制的に施設に入所させることが可能となります(児童福祉法28条1項)。

3 虐待等の事実がないということで、施設入所を回避するためには、保護期間の延長や入所への同意を明確に拒否した上で、本件が法律上の施設入所の要件に該当しないことを児童相談所、又は承認審判をする裁判所に詳細に主張する必要があります。具体的には、外傷の受傷原因が虐待ではないことを医師等の専門家の意見書や論文等をもって主張すること、虐待の疑いを完全に払しょくすることができないとしても親族(祖父母等)の同居などにより同種事態の発生を防止する等の対策を講じることなどが考えられます。

4 一時保護、さらにそれに引き続く施設入所の手続きは、親と幼い子を分離する非常に重い効果を持つ処分でありながら、児童相談所の強権により手続きが形式的に進んでしまうことも多い手続きです。児童福祉法の手続きを良く理解した上で適切な対応が必要です。限られた時間の中で最善の対応が取れるよう、速やかに経験のある弁護士に相談されることをお勧めいたします。

5 その他本件に関連する事例集はこちらをご覧ください。

解説

1 現在及び今後の手続きについて

(1)現在の状況|一時保護とは

まず、あなたのおかれている現在の状況について説明します。現在、お子さんは、児童相談所で「一時保護」を受けている状況です。

一時保護とは、虐待等の恐れなどがある児童について、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するために行なわれる処分です(児童福祉法33条)。

一時保護は緊急かつ暫定的な措置ですから、児童本人やその保護者の同意がない場合でも、家庭裁判所の承認を経ず職権で実施することが可能とされています。

その期間については、「2か月間を超えない期間」(法33条3項)とされていますが、一方で必要があるときには延長が可能とされており(同条4項、親権者等の意思に反する延長について児童福祉審議会の意見聴取を要する点につき同条5項)、実務上は多くのケースで延長がなされています。

もっとも、一時保護はあくまで、児童養護施設等に入所させる措置(法26条1項、法27条1項、同2項)等の適切な措置をとるまでの間、暫定的に認められる処分です。

そのため、無限定に延長されることは少なく、多くの場合は1度の延長、つまり「4か月」程度の期間継続することが多いといえます。

(2)一時保護後の処分

児童相談所は、上記の一時保護の期間中に当該児童に対する措置を決定することになりますが、その措置としては、大きく分けて①在宅指導と②児童養護施設への入所や里親への委託等の措置があります。

①在宅指導とは、一時保護を解除してお子さんを自宅に帰宅させながら、必要に応じて児童相談所が親権者に対して子の養育について面会や指導をすることです。

一方本件では、児童相談所の担当者が乳児院への入所の同意を求めているとのことですので、児童相談所の方針としては、②の児童福祉法27条1項3号に規定されている措置のうち「児童養護施設」への入所についての同意を求められている状態です。

この同意をした場合、お子様は施設への入所措置が取られることになります。同条による入所措置には期間が定められていませんので、少なくとも、数か月以上の長期間の入所措置が考えられるところであり、ケースによっては数年以上の長期間の入所という事態も否定できません。

もし親権者が同意をしなかった場合でも、児童相談所は、家庭裁判所の承認の審判を受ければ、お子さんを強制的に施設に入所させることが可能となります(児童福祉法28条1項)。

なお、この承認の審判がなされた場合の入所措置については、上記同意による入所と異なり、最長2年間の期間制限があります(同条2項)。ただし、一定の要件のもとでは、改めて家庭裁判所の審判を受けることで、さらなる延長が可能です。

(3)小括

以上の通り、このまま児童養護施設への入所に同意をしてしまった場合には、相当長期間、お子様を自宅で養育することが困難となってしまいます。

以下では、虐待等の事実がない場合で、児童施設への入所を回避するための適切な対応について説明致します。

2 一時保護の早期解除に向けた対応

(1)審査請求

まず、児童相談所の一時保護の処分に対しては、行政不服審査法に基づく審査請求の申立てが可能です。

もっとも、一時保護の要件は、法律上「必要があるとき」としか制限されておらず、実務上は幅広く一時保護の必要性が認められています。また一時保護が2か月以内の暫定的な処分もあるため、審査期間も考慮すれば審査請求の実効性はそこまで高くありません。

そのため、現実的な対応としては「延長を回避すること」を主眼に据えた対応の方が良い場合が多いといえます。

(2)延長の回避の交渉

2か月を超えて一時保護を継続するためには、原則として親権者の同意が必要です(児童福祉法33条4項)。親権者が同意をしない場合には、家庭裁判所の承認が必要となります(同5項)。承認の手続きは、家庭裁判所での審判の形式により実施します。

本件では、まだ一時保護の延長はされていないとのことですので、まず保護の延長を回避するための活動が考えられます。

一時保護の延長を回避するためには、まず「保護の延長には同意しない」旨をきちんと意思表示すること、が必要となります。児童相談所の担当者によっては、「延長しても必要がなくなればすぐに帰宅させます。」「延長に同意しないとお子さんとの面会はできません」等の説明をして、同意を執拗に求めてくることもあります。しかし、保護の延長に同意してしまうと、2か月間の保護が決まってしまいます。そのため、延長を希望しないのであれば、まずはその意思を明確に示すことが必要です。

加えて、児童相談所か家庭裁判所に延長の承認を求める審判を申立てないように交渉することも必要となります。すなわち、保護の必要性がないこと(虐待の事実がないこと)を、客観的な証拠等を示した上で具体的に説明する必要があります。具体的な活動内容については、下記3項を参照下さい。

もっとも本件では、生後半年のお子様の脳に外傷が存在しているとのことです。このような乳児期の脳への外傷は、いわゆる揺さぶられっこ症候群(SBS)として、虐待の疑惑がもたれやすい事例となっています。脳への外傷ということで生命、身体の重篤な傷害に分類されることもあり、児童相談所の対応としても原則として保護の延長となる可能性は高い類型です。SBSは、虐待によるもの(故意による傷害)であるとの認定が困難であり、刑事上の無罪の判決も多い事例ですが、一時保護の延長は最終的な処分の決定ではなく、あくまで「虐待の有無の原因を調査するための期間の確保」という意味合いが強いことから、「2か月で調査を尽くすのは困難」との理由で延長が認められる可能性は高いところです。

そのため、本件のような事案では、保護の1度の延長はやむを得ないとして、「施設入所の回避」に的を絞って進めた方が良い場合もあります。

なお、その場合でも、軽々しく延長には同意せず、家庭裁判所の審判に委ねた方が良い場合もあります。延長に同意せず家庭裁判所の審判手続きが実施されれば、その審判申立書の内容や提出された資料から、児童相談所がいかなる資料により虐待を疑っているのか、その根拠や手の内が判る場合もあります。これらの資料が、後の施設入所の手続きにおいて有益な資料として利用できることになります。

どのような対応が最も適切かは、事案によって判断が異なりますので、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。

3 施設入所回避に向けた対応

(1)手続きの概要

児童相談所が施設入所の方針である場合には、まず親権者に対して施設入所の同意を求めて協議を実施するのが通常です。それでも親権者が同意しなかった場合、児童相談所としては、家庭裁判所に承認の審判を申し立てることになります。

そのため、施設入所を回避するためには、まず①協議において児童相談所の方針を変えてもらうよう説得することになります。本件のように児童相談所が施設入所の方針を強く示している場合でも、親権者側で適切な対応をすれば、方針変更を勝ち取ることは決して不可能ではありません。

それでも家庭裁判所へ審判申立がされた場合には、②家庭裁判所に対して、却下となるよう意見を述べることが必要となります。家庭裁判所は、法28条1項による承認の審判を行う場合、親権者等の陳述の機会を設ける必要があります(家事事件手続法236条)。また、審判申立て後に、家庭裁判所の調査官が改めて事実等の調査をおこないますので、必要に応じて調査官とも協議をすることになります。

上記①②の活動は、いずれも「施設入所の要件を満たさないこと」を主張するものですので、内容は変わりません。

(2)具体的な対応策

法28条1項は、親権者の意に反しても施設入所の措置をとる要件として、「その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」と定めています。どのような状況が「保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」に該当するか、については、明確ではありません。

まだ承認審判の制度ができてから数年しか経過していないため、過去の審判例の蓄積も少ないところですが、本件のような事例の場合、大きく分けて2つの点が重要になってきます。

① 虐待の事実の有無

本件では、医師の診断により、故意の外傷(虐待)の疑いをもたれているとのことですので、まずはこの点を否定する必要があります。もっとも、児童相談所としても、虐待の防止は至上命題であり、現にお子様がけがをしている以上は、虐待の疑いを晴らすことは大変です。

本件では、外傷の原因の心当たりとしてベビーベッドからの転落事故が考えられるとのことですので、まずはそのような事故態様でも、本件の傷害結果が生じ得る(虐待以外の可能性が存在する)ことを説明する必要があります。

そのためには、医師等の専門家に意見書の作成を依頼し、受傷原因(機転に関する)意見を証拠として述べてもらった方が良いでしょう。また、SBSの疑いについても、近年では安易に虐待に結び付けることに否定的な医学論文も多数存在していますので、これらの資料も準備すると良いでしょう。

また、上で述べたように、一時保護の延長の審判等の資料を参考にし、児童相談所が「何を一番問題にしているのか」「何を根拠に虐待を認定しようとしているのか」を分析して対応することも重要です。

② 自宅での環境調整

上記の虐待の否定と併せて、例え虐待ではなくともお子さんがけがをしたこと自体は事実ですので、その再発防止策は必要です。

具体的には、ベビーベッドからの転落事故が原因であれば、ベッドに柵をつけて高さを低くする、マットを敷く等の具体的な行動を取ることが必要です。

さらに、児童相談所からの虐待の疑いを完全に払しょくすることができない以上は、「虐待(暴力)があったとしても今後は防ぐ」という対策も取る必要があります。例えば、親族(祖父母等)に同居してもらい監督してもらうなどの対策も、当方から積極的に提案して示した方が良いでしょう。必要に応じて、児童相談所が定めている家族再統合プログラムについても自ら受講を希望することも考えられます。

③ その他児童相談所との交渉の進め方

家庭裁判所の審判となった場合を見据えると、上記のような対応策は可能な限り証拠に残しておく必要があります。児相相談所との交渉過程自体も、書面等で証拠化して記録に残しておいた方が良い場合もあります。

施設入所は、子と親を引き離す重大な処分ですので、それが認められる場合は、施設入所以外の他の手段がない場合に限られるとして、非常に謙抑的に解釈される必要があります。そのため、児童相談所には、一時保護の期間中に、受傷機転のみならず家庭関係や養育環境について調査を尽くし、場合によっては親子面会を実施した上で、施設入所その必要性を十分に吟味する必要があります。一方で、児童相談所の職員数は限られていることもあり、現実的には4か月の一時保護期間が漫然と進行してしまい、定型的に施設入所の審判申立がされてしまうケースも多くあります。

そのため、このような漫然とした審判申立を許さないために、親権者側からもなるべく早期に準備を下うえで、児童相談所に早期の判断と手続き進行を書面での要請を証拠化しておき、もしそれでも一時保護期間中に何の対応も見られないようであれば、審判の場で裁判所に主張する方法もあります。

もちろん、審判申立を回避するためにはある程度児童相談所の担当者と信頼関係を形成する必要もありますので、その見極めは必要です。

4 まとめ

一時保護、さらにそれに引き続く施設入所の手続きは、親と幼い子を分離する非常に重い効果を持つ処分でありながら、児童相談所の強権により手続きが形式的に進んでしまうことも多い手続きです。

限られた時間の中で最善の対応が取れるよう、速やかに経験のある弁護士に相談されることをお勧めいたします。

以上

関連事例集

その他の事例集は下記のサイト内検索で調べることができます。

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参照条文
児童福祉法

第一章 総則

第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。

第二条 全て国民は、児童が良好な環境において生まれ、かつ、社会のあらゆる分野において、児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない。
○2 児童の保護者は、児童を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負う。
○3 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

第二節 定義

第四条 この法律で、児童とは、満十八歳に満たない者をいい、児童を左のように分ける。
一 乳児 満一歳に満たない者
二 幼児 満一歳から、小学校就学の始期に達するまでの者
三 少年 小学校就学の始期から、満十八歳に達するまでの者
○2 この法律で、障害児とは、身体に障害のある児童、知的障害のある児童、精神に障害のある児童(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害児を含む。)又は治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であつて障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)第四条第一項の政令で定めるものによる障害の程度が同項の厚生労働大臣が定める程度である児童をいう。

第二十七条 都道府県は、前条第一項第一号の規定による報告又は少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。
一 児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させること。
二 児童又はその保護者を児童相談所その他の関係機関若しくは関係団体の事業所若しくは事務所に通わせ当該事業所若しくは事務所において、又は当該児童若しくはその保護者の住所若しくは居所において、児童福祉司、知的障害者福祉司、社会福祉主事、児童委員若しくは当該都道府県の設置する児童家庭支援センター若しくは当該都道府県が行う障害者等相談支援事業に係る職員に指導させ、又は市町村、当該都道府県以外の者の設置する児童家庭支援センター、当該都道府県以外の障害者等相談支援事業を行う者若しくは前条第一項第二号に規定する厚生労働省令で定める者に委託して指導させること。
三 児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童自立支援施設に入所させること。
四 家庭裁判所の審判に付することが適当であると認める児童は、これを家庭裁判所に送致すること。
2 都道府県は、肢体不自由のある児童又は重症心身障害児については、前項第三号の措置に代えて、指定発達支援医療機関に対し、これらの児童を入院させて障害児入所施設(第四十二条第二号に規定する医療型障害児入所施設に限る。)におけると同様な治療等を行うことを委託することができる。
3 都道府県知事は、少年法第十八条第二項の規定による送致のあつた児童につき、第一項の措置を採るにあたつては、家庭裁判所の決定による指示に従わなければならない。
4 第一項第三号又は第二項の措置は、児童に親権を行う者(第四十七条第一項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の意に反して、これを採ることができない。
5 都道府県知事は、第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更する場合には、児童相談所長の意見を聴かなければならない。
6 都道府県知事は、政令の定めるところにより、第一項第一号から第三号までの措置(第三項の規定により採るもの及び第二十八条第一項第一号又は第二号ただし書の規定により採るものを除く。)若しくは第二項の措置を採る場合又は第一項第二号若しくは第三号若しくは第二項の措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。
第二十八条 保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。
一 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。
二 保護者が親権を行う者又は未成年後見人でないときは、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すこと。ただし、その児童を親権を行う者又は未成年後見人に引き渡すことが児童の福祉のため不適当であると認めるときは、家庭裁判所の承認を得て、第二十七条第一項第三号の措置を採ること。
2 前項第一号及び第二号ただし書の規定による措置の期間は、当該措置を開始した日から二年を超えてはならない。ただし、当該措置に係る保護者に対する指導措置(第二十七条第一項第二号の措置をいう。以下この条並びに第三十三条第二項及び第九項において同じ。)の効果等に照らし、当該措置を継続しなければ保護者がその児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しく当該児童の福祉を害するおそれがあると認めるときは、都道府県は、家庭裁判所の承認を得て、当該期間を更新することができる。
3 都道府県は、前項ただし書の規定による更新に係る承認の申立てをした場合において、やむを得ない事情があるときは、当該措置の期間が満了した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き当該措置を採ることができる。ただし、当該申立てを却下する審判があつた場合は、当該審判の結果を考慮してもなお当該措置を採る必要があると認めるときに限る。
4 家庭裁判所は、第一項第一号若しくは第二号ただし書又は第二項ただし書の承認(以下「措置に関する承認」という。)の申立てがあつた場合は、都道府県に対し、期限を定めて、当該申立てに係る保護者に対する指導措置を採るよう勧告すること、当該申立てに係る保護者に対する指導措置に関し報告及び意見を求めること、又は当該申立てに係る児童及びその保護者に関する必要な資料の提出を求めることができる。
5 家庭裁判所は、前項の規定による勧告を行つたときは、その旨を当該保護者に通知するものとする。
6 家庭裁判所は、措置に関する承認の申立てに対する承認の審判をする場合において、当該措置の終了後の家庭その他の環境の調整を行うため当該保護者に対する指導措置を採ることが相当であると認めるときは、都道府県に対し、当該指導措置を採るよう勧告することができる。
7 家庭裁判所は、第四項の規定による勧告を行つた場合において、措置に関する承認の申立てを却下する審判をするときであつて、家庭その他の環境の調整を行うため当該勧告に係る当該保護者に対する指導措置を採ることが相当であると認めるときは、都道府県に対し、当該指導措置を採るよう勧告することができる。
8 第五項の規定は、前二項の規定による勧告について準用する。

第三十三条 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
○2 都道府県知事は、必要があると認めるときは、第二十七条第一項又は第二項の措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。)を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。
○3 前二項の規定による一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。
○4 前項の規定にかかわらず、児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。
○5 前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない。
○6 児童相談所長又は都道府県知事は、前項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てをした場合において、やむを得ない事情があるときは、一時保護を開始した日から二月を経過した後又は同項の規定により引き続き一時保護を行つた後二月を経過した後も、当該申立てに対する審判が確定するまでの間、引き続き一時保護を行うことができる。ただし、当該申立てを却下する審判があつた場合は、当該審判の結果を考慮してもなお引き続き一時保護を行う必要があると認めるときに限る。
○7 前項本文の規定により引き続き一時保護を行つた場合において、第五項本文の規定による引き続いての一時保護に係る承認の申立てに対する審判が確定した場合における同項の規定の適用については、同項中「引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた」とあるのは、「引き続いての一時保護に係る承認の申立てに対する審判が確定した」とする。
○8 児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第一項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、次に掲げる措置を採るに至るまで、引き続き一時保護を行い、又は一時保護を行わせることができる。
一 第三十一条第四項の規定による措置を要すると認める者は、これを都道府県知事に報告すること。
二 児童自立生活援助の実施が適当であると認める満二十歳未満義務教育終了児童等は、これをその実施に係る都道府県知事に報告すること。
○9 都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、第二項の規定により一時保護が行われた児童については満二十歳に達するまでの間、第三十一条第四項の規定による措置(第二十八条第四項の規定による勧告を受けて採る指導措置を除く。第十一項において同じ。)を採るに至るまで、児童相談所長をして、引き続き一時保護を行わせ、又は一時保護を行うことを委託させることができる。
○10 児童相談所長は、特に必要があると認めるときは、第八項各号に掲げる措置を採るに至るまで、保護延長者(児童以外の満二十歳に満たない者のうち、次の各号のいずれかに該当するものをいう。以下この項及び次項において同じ。)の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は保護延長者の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、保護延長者の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
一 満十八歳に満たないときにされた措置に関する承認の申立てに係る児童であつた者であつて、当該申立てに対する審判が確定していないもの又は当該申立てに対する承認の審判がなされた後において第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書若しくは第二項ただし書の規定による措置が採られていないもの
二 第三十一条第二項から第四項までの規定による措置が採られている者(前号に掲げる者を除く。)
○11 都道府県知事は、特に必要があると認めるときは、第三十一条第四項の規定による措置を採るに至るまで、保護延長者の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は保護延長者の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童相談所長をして、保護延長者の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させることができる。
○12 第八項から前項までの規定による一時保護は、この法律の適用については、第一項又は第二項の規定による一時保護とみなす。