新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1799、2017/10/31 15:04 https://www.shinginza.com/qa-sagi.htm

【民事、クーリングオフ、消費者契約法、特定商取引法、詐欺取消、錯誤無効】

交換型の原野商法への対応


質問:
 先日,見知らぬ不動産業者の営業マンから,私が所有している那須の土地の買取りを提案する電話が掛かってきて,興味があったので喫茶店で会って話をすることになりました。
 営業マンの話では,500万円での買取りが可能ということでしたが,「普通に売ってしまうと,100万円近くの税金が発生するので勿体無い」「業者所有地をあなたに仮装譲渡して一時的に交換する形にすれば,税金が発生しないため節税になる」「実際には業者所有地をあなたに売るわけではなく,売買代金は後日支払う」といった説明を受けました。私は,営業マンの誘導にしたがって,何通かの契約書に署名・捺印しましたが,高齢で内容をあまり理解できていませんでした。
 その後,営業マンから,「あなたから買い受ける土地を転売用に造成するので,売買契約を解除された場合は造成費用50万円が無駄になってしまう。それを避けるために,50万円を事前に預けて欲しい。契約が解除されなければ50万円は後日返還する。」と言われ,私はその話を信じて50万円を交付しました。また,土地の権利証、印鑑証明書、登記の委任状を交付するように言われましたので,交付しました。
 しかし,その後いつまで経っても売買代金が振り込まれません。不安になって契約書をよく確認したところ,私が署名したのは,土地を相互に売却し合う内容の売買契約書2通でした。それぞれの契約書には,売買代金を相殺するという趣旨の規定があり,業者から私に売買代金が直接支払われるというような記載は見当たりませんでした。また,業者所有地の方が50万円高い金額となっており,当該差額分の支払いとして,契約締結日に50万円を交付したことになっていました
 私は,業者から売買代金が直接支払われないのであれば,契約を締結しませんでしたし,業者所有地が欲しいわけでもありません。業者に騙されたのであれば,元の状態に戻して欲しいと思いますが,可能でしょうか。
 クーリングオフという制度を聞いたことがあるのですが,売買契約書には,クーリングオフの対象外であるという記載がありました。



回答:
1 残念ながら,あなたは業者に騙されてしまった可能性が高いでしょう。
  あなたが署名したのは,土地を相互に売却し合う売買契約書であり,売買代金を相殺する旨の規定があることから,業者からあなたに売買代金が支払われることは前提となっていません。税金のために一時的に仮装譲渡するという営業マンの説明は嘘と考えられます。
  造成費用分を担保する趣旨で交付した50万円も,契約書上は,売買代金の差額分の負担と位置付けられており,戻ってくることは前提となっていませんので,この点の説明も虚偽でしょう。
2 2つの契約を無かったことにするための方策ですが,@クーリングオフによる解除,A消費者契約法に基づく意思表示の取消し,B詐欺による意思表示の取消し,C錯誤無効の主張等が可能です。
  いずれの方法でもよいのですが、まずは弁護士などの専門家に相談して、上記の解除、取消について相手の業者に対して内容証明郵便を出す必要があります。
3 その上で,業者に対して原状回復請求を行うことになります。所有権移転登記の手続きが既に完了している場合は,抹消登記手続請求を行うことになります。また,交付済みの50万円も返還を求めることになります。
  業者が任意にこれらの請求に応じてくれれば良いですが,こういった悪徳業者の場合,任意の交渉で解決できるとは限りません。最終的には,訴訟提起をするか否かについて選択を迫られる可能性があることを念頭に置く必要があります。内容証明郵便を出すだけであれば、弁護士に依頼しても10万円以内で可能ですが、原状回復の交渉となると費用倒れになる危険性もあります。あなたが売却した那須の土地に価値があればよいのですが、価値がないとすると、支払った50万円が回復可能な損害ということになります。また、解除したとしても50万円についても業者が返済してくれるか確実とは言えませんから、費用倒れにならないよう注意が必要です。


解説:

第1 原野商法について

   原野商法とは,原野などの価値の無い土地を騙して売りつける悪徳商法のことをいい,1960年代から1980年代が全盛期でした。当時は,新聞の折り込み広告や雑誌の広告などを使った勧誘が盛んに行われていたようですが,社会問題となったことから,現在では表立って広告が行われることは少なくなりました。

   しかし,こういったビジネスが消失したわけではなく,チラシ,ダイレクトメール,勧誘電話等で一人一人に接触を試みる悪徳業者は依然として後を絶ちません。特に,判断能力が低下したお年寄り等が狙い撃ちに遭いやすく,注意が必要です。

   原野商法の代表的な手口としては,存在しないはずの開発計画(リゾート開発計画,新幹線や高速道路等の交通網の開発計画)を存在するものと誤信させ,土地の値上がりが確実であるかのような虚偽の説明を行うことで,価値のない土地を高値で買い取らせるというものです。

   ご相談の場合、本当に業者が所有地を貴殿に仮装譲渡するつもりがあったのか否か不明ですが、詐欺ではないという弁解をするために、所有地を一度あなた売却したことにしている可能性もあります。仮にそうだとしても、そのような土地は価値のない土地でしょうから原野商法の一形態ということができます。

   また、一度原野商法に引っ掛かった人が,別の手口でまた騙されるという二次被害も多数報告されています。原野商法で掴まされた土地を対象に,地籍調査や公共事業が行われると称して測量代を騙し取るような手口がその典型例です。二度と騙されないよう注意する必要があります。


第2 本件について

   営業マンからは,税金対策で業者所有地をあなたに一時的に仮装譲渡するという話があったようですが,あなたが署名・捺印したのは,お互いの所有地を売却し合う2通の売買契約書であり,代金を相殺する旨の条項によって土地を交換したのと同じ状態となっています。これらの契約書を前提とする限り,あなたに那須の土地の売却代金が現実に支払われることはあり得ないということになります。

   また,仮にあなたが売買契約を解除した際に無駄になってしまう造成費用を担保するために,50万円を預けて欲しいと言われ,営業マンに50万円を交付したということですが,これも売買契約書によれば,土地代金の差額分の負担ということになっており,契約書上は返ってくるはずのないお金ということになります。

   営業マンの説明が虚偽に溢れている事実からして,本件も,原野商法の一種である可能性が高いと言って良いでしょう。そもそもあなたが所有している那須の土地自体も,原野商法によって掴まされた価値のない土地である可能性があり,その場合,本件は二次被害ということになるでしょう。


第3 本件契約を無かったことにするための方策

1、 特定商取引法9条,58条の14に基づく解除

(1) クーリングオフとは

   売買契約書にはクーリングオフの対象外である旨の記載があるようですが,本件でクーリングオフは本当にできないのでしょうか。

   クーリングオフとは,一定の契約類型について,一定期間,無条件での申込みの撤回または契約の解除を認める法制度です。具体的な規定は,特定商取引に関する法律(以下「特商法」といいます。),宅地建物取引業法等の個別の法令の中に存在しますが,特商法の適用が問題となるケースが多いです。

   特商法は,クーリングオフ可能な契約類型として,訪問販売(特商法9条),訪問購入(特商法58条の14),電話勧誘販売(特商法24条),連鎖販売取引(特商法40条),特定継続的役務提供(特商法48条),業務提供誘引販売取引(特商法58条)を規定しています。

   なお,必ず書面で解除の意思表示を行う必要がありますので,注意が必要です(特商法9条2項等)。

  (2) 本件でのクーリングオフ解除の可否

   本件でのクーリングオフは可能です。上記類型のうち,本件でも問題となるのは,「訪問販売」「訪問購入」の2つです。
販売業者が,営業所等以外の場所において売買契約の申込みを受けた場合は,「訪問販売」に該当することになります(特商法2条1項1号)。また,購入業者が営業所等以外の場所において,売買契約の申込みを受けた場合は「訪問購入」に該当することになります(特商法58条の4)。

   本件において,あなたは業者から架かってきた勧誘の電話を受けて,営業所等以外の場所(喫茶店)で土地の販売と購入の申込みをしていることから,これらに該当するものといえます。

   ただし,クーリングオフの期間には制限があり,訪問販売,訪問購入の場合,申込みの内容を記載した書面(クーリングオフに関する事項含む,特商法4条,58条の7)の受領を受けた日から起算して8日間が,クーリングオフ可能期間です(特商法9条,58条の14第1項)。しかし,そもそも当該書面の交付を受けていない場合は,いつでもクーリングオフ可能とされており,本件でも当該書面を受け取っていない以上,期間制限の適用はないでしょう。

   したがって,特商法9条1項,2項及び58条の14第1項,2項の規定に基づき,書面にて各契約を解除できることになります。

2、 消費者契約法4条に基づく取消し

   事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際して,当該消費者に対 して,重要事項について事実と異なることを告げることにより,当該消費者がその内容を事実であると誤認し,それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは,これを取り消すことができます(消費者契約法4条1項1号)。

   「重要事項」とは,消費者契約の目的となるものの質,用途その他の内容又は対価その他の取引条件等,当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいいます(消費者契約法4条4項)。

   本件各契約にかかる契約書の記載は,税金対策のための仮装譲渡,とい う営業マンから受けた説明とは全く異なるものです。そのため,営業マンの勧誘,説明は,契約の対価そのものや契約の条件といった重要事項に関して虚偽の情報を伝えたものであることが明白です。

   そして,当該虚偽の説明によって,あなたは,実際には業者所有地を購  入することにはならない(単なる土地の交換という結果にはならず,あなたの所有地の売買代金を手にすることができる)と誤信して,本件各契約の締結に向けた意思表示をしたことになりますので,消費者契約法第4条1項1号の規定に基づき,本件各契約の意思表示を取り消すことが可能です。

   取消しの意思表示の方法について特に規定はありませんが,証拠化する意味で,書面による方法が適切です(出来れば内容証明)。

   なお,追認をすることができる時から6か月で時効が成立しますので,注意が必要です(消費者契約法7条1項)。

3、 詐欺取消し(民法96条1項),錯誤無効(民法95条本文)

   最後に,民法上の詐欺取消し,錯誤無効の主張も考えられます。

   詐欺取消しの主張は,上記消費者契約法4条に基づく取消しと大部分が 被ることになるので,ここでは割愛します。

   法律行為が錯誤により無効となるためには,「法律行為の要素」に関する錯誤である必要があります。要素の錯誤とは,当該錯誤がなければ行為者が法律行為をしなかったであろうと考えられ,かつ,一般人も取引通念に照らして当該意思表示をしなかったであろうといえる場合を意味するものと解されています。

   またこれに加え,表示行為の錯誤ではなく,意思表示の動機に錯誤があるに過ぎない場合は,相手方保護の観点から,その動機が相手方に表示されていない限り,要素の錯誤になり得ないと解されており,相手方への表示は明示でも黙示でも構いません。

   本件において,あなたは,営業マンの説明どおり,業者所有地の購入があくまでも税金対策のための一時的な仮装譲渡であることを前提に本件各契約を締結しており,意思表示の動機に錯誤があります。そして,当該前提は,当然に共通認識となっていたものと言えます。その上で,営業マンの説明が虚偽であることが判明していれば,あなたも一般人も本件各契約を締結しなかったものと言えますので,錯誤無効の主張も可能となります。


第4 業者に対する具体的な請求手続き

1、 原状回復請求

   以上のとおり,本件では,意思表示の取消し,売買契約の解除,売買契約の無効等の複数の原因により,双方の売買契約をなかったものとすることが可能です。どの法律構成を採るにせよ,当事者は,その効果として原状回復義務を負うことになります。
   具体的には,所有権移転登記手続きが完了してしまっている場合は,抹消登記手続きを求めることになります。所有権に基づく妨害排除請求権としての所有権移転登記抹消登記手続き又は解除に基づく原状回復請求権としての所有権移転登記抹消登記手続請求を行うことになります。

   また,不当利得に基づき,交付済みの50万円の返金も求めることになります。

2、 宅建業法に基づく措置命令

   とはいえ,登記手続きは,買主と売主の共同申請が原則であり,登記手続きへの協力が得られない場合は,訴訟提起をして判決を得ない限り単独申請ができません。また,金銭の返還請求を無視された場合も,訴訟提起又は調停等を検討せざるを得ないところです。

   これらの法的手続きは時間もお金もある程度掛かりますので,可能な限り交渉で解決したいところですが,こういった悪徳業者の場合,一筋縄ではいかないことが多いのも事実です。

   しかし,たとえば監督行政庁に宅建業法の措置命令等を出してもらうよう交渉し,実際に上手くいけば,宅地建物取引業の許可に影響を及ぼすことを危惧した業者が一定の譲歩を見せる可能性もあり得るところです。

   まずは弁護士を通じて,内容証明郵便を差し出し,交渉での早期解決を目指すと良いでしょう。

以上



【参照条文】

●特定商取引に関する法律
第二条  この章及び第五十八条の十八第一項において「訪問販売」とは、次に掲げるものをいう。
一  販売業者又は役務の提供の事業を営む者(以下「役務提供事業者」という。)が営業所、代理店その他の主務省令で定める場所(以下「営業所等」という。)以外の場所において、売買契約の申込みを受け、若しくは売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は役務を有償で提供する契約(以下「役務提供契約」という。)の申込みを受け、若しくは役務提供契約を締結して行う役務の提供
二  販売業者又は役務提供事業者が、営業所等において、営業所等以外の場所において呼び止めて営業所等に同行させた者その他政令で定める方法により誘引した者(以下「特定顧客」という。)から売買契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と売買契約を締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は特定顧客から役務提供契約の申込みを受け、若しくは特定顧客と役務提供契約を締結して行う役務の提供
2  この章及び第五十八条の十九において「通信販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の主務省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う商品若しくは指定権利の販売又は役務の提供であつて電話勧誘販売に該当しないものをいう。
3  この章及び第五十八条の二十第一項において「電話勧誘販売」とは、販売業者又は役務提供事業者が、電話をかけ又は政令で定める方法により電話をかけさせ、その電話において行う売買契約又は役務提供契約の締結についての勧誘(以下「電話勧誘行為」という。)により、その相手方(以下「電話勧誘顧客」という。)から当該売買契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該売買契約を郵便等により締結して行う商品若しくは指定権利の販売又は電話勧誘顧客から当該役務提供契約の申込みを郵便等により受け、若しくは電話勧誘顧客と当該役務提供契約を郵便等により締結して行う役務の提供をいう。
4  この章並びに第五十八条の十九及び第六十七条第一項において「指定権利」とは、施設を利用し又は役務の提供を受ける権利のうち国民の日常生活に係る取引において販売されるものであつて政令で定めるものをいう。

(訪問販売における書面の交付)
第四条  販売業者又は役務提供事業者は、営業所等以外の場所において商品若しくは指定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたとき又は営業所等において特定顧客から商品若しくは指定権利につき売買契約の申込みを受け、若しくは役務につき役務提供契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約又は役務提供契約を締結した場合においては、この限りでない。
一  商品若しくは権利又は役務の種類
二  商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
三  商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
四  商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
五  第九条第一項の規定による売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は売買契約若しくは役務提供契約の解除に関する事項(同条第二項から第七項までの規定に関する事項(第二十六条第三項又は第四項の規定の適用がある場合にあつては、同条第三項又は第四項の規定に関する事項を含む。)を含む。)
六  前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

(訪問販売における契約の申込みの撤回等)
第九条  販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客から商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等以外の場所において商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約又は役務提供契約を締結した場合を除く。)若しくは販売業者若しくは役務提供事業者が営業所等において特定顧客と商品若しくは指定権利若しくは役務につき売買契約若しくは役務提供契約を締結した場合におけるその購入者若しくは役務の提供を受ける者(以下この条から第九条の三までにおいて「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又はその売買契約若しくは役務提供契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五条の書面を受領した日(その日前に第四条の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、販売業者若しくは役務提供事業者が第六条第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は販売業者若しくは役務提供事業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該販売業者又は当該役務提供事業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約又は当該役務提供契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。
2  申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。
3  申込みの撤回等があつた場合においては、販売業者又は役務提供事業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
4  申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、販売業者の負担とする。
5  販売業者又は役務提供事業者は、商品若しくは指定権利の売買契約又は役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合には、既に当該売買契約に基づき引き渡された商品が使用され若しくは当該権利の行使により施設が利用され若しくは役務が提供され又は当該役務提供契約に基づき役務が提供されたときにおいても、申込者等に対し、当該商品の使用により得られた利益若しくは当該権利の行使により得られた利益に相当する金銭又は当該役務提供契約に係る役務の対価その他の金銭の支払を請求することができない。
6  役務提供事業者は、役務提供契約につき申込みの撤回等があつた場合において、当該役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、申込者等に対し、速やかに、これを返還しなければならない。
7  役務提供契約又は指定権利の売買契約の申込者等は、その役務提供契約又は売買契約につき申込みの撤回等を行つた場合において、当該役務提供契約又は当該指定権利に係る役務の提供に伴い申込者等の土地又は建物その他の工作物の現状が変更されたときは、当該役務提供事業者又は当該指定権利の販売業者に対し、その原状回復に必要な措置を無償で講ずることを請求することができる。
8  前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

(定義)
第五十八条の四  この章及び第五十八条の二十四第一項において「訪問購入」とは、物品の購入を業として営む者(以下「購入業者」という。)が営業所等以外の場所において、売買契約の申込みを受け、又は売買契約を締結して行う物品(当該売買契約の相手方の利益を損なうおそれがないと認められる物品又はこの章の規定の適用を受けることとされた場合に流通が著しく害されるおそれがあると認められる物品であつて、政令で定めるものを除く。以下この章、同項及び第六十七条第一項において同じ。)の購入をいう。

(訪問購入における書面の交付)
第五十八条の七  購入業者は、営業所等以外の場所において物品につき売買契約の申込みを受けたときは、直ちに、主務省令で定めるところにより、次の事項についてその申込みの内容を記載した書面をその申込みをした者に交付しなければならない。ただし、その申込みを受けた際その売買契約を締結した場合においては、この限りでない。
一  物品の種類
二  物品の購入価格
三  物品の代金の支払の時期及び方法
四  物品の引渡時期及び引渡しの方法
五  第五十八条の十四第一項の規定による売買契約の申込みの撤回又は売買契約の解除に関する事項(同条第二項から第五項までの規定に関する事項を含む。)
六  第五十八条の十五の規定による物品の引渡しの拒絶に関する事項
七  前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

(訪問購入における契約の申込みの撤回等)
第五十八条の十四  購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は購入業者が営業所等以外の場所において物品につき売買契約を締結した場合(営業所等において申込みを受け、営業所等以外の場所において売買契約を締結した場合を除く。)におけるその売買契約の相手方(以下この条及び次条において「申込者等」という。)は、書面によりその売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、申込者等が第五十八条の八の書面を受領した日(その日前に第五十八条の七の書面を受領した場合にあつては、その書面を受領した日)から起算して八日を経過した場合(申込者等が、購入業者が第五十八条の十第一項の規定に違反して申込みの撤回等に関する事項につき不実のことを告げる行為をしたことにより当該告げられた内容が事実であるとの誤認をし、又は購入業者が同条第三項の規定に違反して威迫したことにより困惑し、これらによつて当該期間を経過するまでに申込みの撤回等を行わなかつた場合には、当該申込者等が、当該購入業者が主務省令で定めるところにより当該売買契約の申込みの撤回等を行うことができる旨を記載して交付した書面を受領した日から起算して八日を経過した場合)においては、この限りでない。
2  申込みの撤回等は、当該申込みの撤回等に係る書面を発した時に、その効力を生ずる。
3  申込者等である売買契約の相手方は、第一項の規定による売買契約の解除をもつて、第三者に対抗することができる。ただし、第三者が善意であり、かつ、過失がないときは、この限りでない。
4  申込みの撤回等があつた場合においては、購入業者は、その申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
5  申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る代金の支払が既にされているときは、その代金の返還に要する費用及びその利息は、購入業者の負担とする。
6  前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。

●消費者契約法
(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)
第四条  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一  重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認
二  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認
2  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。
3  消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
一  当該事業者に対し、当該消費者が、その住居又はその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、それらの場所から退去しないこと。
二  当該事業者が当該消費者契約の締結について勧誘をしている場所から当該消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、その場所から当該消費者を退去させないこと。
4  第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。
一  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容
二  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件
5  第一項から第三項までの規定による消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消しは、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

●民法
(錯誤)
第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

(詐欺又は強迫)
第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。



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