新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1530、2014/7/9 12:00 https://www.shinginza.com/qa-seikyu.htm

【民事   最高裁第一小法廷平成22年10月14日判決 集民235号21頁、判時2097号34頁   最高裁二小昭和52年6月20日判決 民集31巻4号449頁。いわゆる岐阜商工信用組合事件 】

請負代金の請求と入金リンク条項、その解釈と有効性

質問:

 私は個人事業で建築の下請を主にやっています。よく仕事をいただく元請がいますが、その元請から仕事を請け負う際、請負代金の支払いについては、「注文者(施主)から請負代金の入金があったときに、支払うものとする」という特約が毎回定められています。

 同じように請け負った仕事の一つについてなのですが、仕事をきちんと行ったので、いつものように元請に対して請負代金の請求をしたところ、施主が破産し、請負代金が入って来なくなってしまった、施主からの入金が無いので請負代金は支払えない、と支払いを拒まれてしまいました。理由はもちろん上記特約があるから、ということなのですが、やはり特約がある以上、元請に対して請負代金を請求することはできないのでしょうか?



回答:

 ご相談のケースのように「注文者(施主)から請負代金の入金があったときに、支払うものとする」という特約を「入金リンク条項」と呼び、その効力については、特約の文言だけでは判断できないため、約束した当事者の意思により結論が異なります。

1、まず、当事者間で請負代金の支払いの期限について「施主から請負代金が元請けに支払われた時」と定めたという場合は、入金リンク条項は不確定期限となり、支払いができないことが確定した場合は期限が到来したことになり、下請けとしては元請けに対し下請代金支払を請求することができます。

2、次に、当事者の意思が不明の場合、たとえば元請けとしては「施主から請負代金が元請けに支払われた」場合に下請代金を支払うという認識(元請けからの支払いがなければ下請けにも支払わないという認識)だったが、下請けとしては施主からの支払いがあった時が支払いの期限という認識だった場合。裁判になるのはこのような場合が多いと考えられますが、このような場合について最高裁判例において、入金リンク条項につき不確定期限を付したものであるとの判断がなされています(最一小判平成22年10月14日集民235号21頁、判時2097号34頁)。

 不確定期限と解するということは、つまり、元請が注文者(施主)から請負代金の支払いを受けたとき、または、元請が注文者からの請負代金の支払いを受ける見込みがなくなったときには、元請の下請に対する請負代金の支払いをしなければならなくなる、ということになります。

3、次に、元請け下請け当事者双方が「施主から請負代金が元請けに支払われた」場合を停止条件と考えていた場合ですが、この点については、前項の判例は当てはまりませんので、検討が必要です。当事者双方が、停止条件と考えて契約したのであれば、契約は守らなければならないという私的自治の原則からは停止条件としての効力を認めれば良いとも考えられます。しかし、下請けの弱者としての立場を考慮すると、たとえ下請けの側が停止条件ということを認識していたとしても、元請けの支払い拒否を認めることは疑問が残ります。判例で確立したものではありませんし、反対の考え方もできますが、このような場合も、当該停止条件は元請業者の破綻の場合には無効であり、下請代金は請求できると考える余地は十分にあります。私的自治の原則に内在する信義誠実の原則(民法1条)から、公平の理念に基づく契約解釈が求められるからです。判断を基礎付ける事実関係の詳細な検討が求められます。当事者間で明文の合意をしている契約条項であっても、文字通り解釈した場合に契約当事者の一方に著しい不利益を及ぼすような契約条項については、法的効力を生じないと解釈される場合もあります。これを当事者の合理的意思解釈に基づく例文解釈と言います。

4、ご相談のケースでは、施主(注文者)が破産しているということですが、これは支払いを受ける見込みがなくなったといえるでしょうから、入金リンク条項を不確定期限を付したものだといえれば、あなたは元請に対して請負代金を請求することができるということになります。相手方との意見の隔たりがどうしても埋まらない場合は、弁護士に依頼して法的手続きにおいて解決を図ることも検討されると良いでしょう。

5、関連事務所事例集1302番 参照。



解説:

1、入金リンク条項の法的性質

(1)本件において問題となるのは、請負代金の支払いに関する「注文者から請負代金の入金があったときに、支払うものとする」という特約の法的性質です。この種の特約は、一般に「入金リンク条項」と呼ばれています。

(2)法律行為に付随して、その法律行為に特別の制限を付加する定めを法律行為の付款といいます。法律行為というのは、ここでは、契約のことだと思っていただいて構いません。

  法律行為の付款の代表的なものとして、条件や期限というものを挙げることができます。法律行為の効力の発生または消滅について、将来発生するか否かが不確実な事実にかからせるものを条件といい、発生が確実な事実にかからせるものを期限といいます。

  例えば、「大学に合格したら、仕送りを開始する。」という約束は、条件に当たります。大学に合格するかどうかは分からないからです。この例でいう条件は、正確には、停止条件といい、停止条件とは、条件の成就によって法律行為の効力を発生させる場合のことをいいます。

  「自分が死んだら、仕送りはストップする。」という約束の場合であれば、期限に当たります。人間はいつかは必ず死にますから、死ぬことは将来発生することが確実な事実だといえます。この例でいう期限は、正確には、不確定期限といいます。不確定期限とは、到来することは確実であるが、到来する時期が不確定である場合です。いつ死ぬかは分からないからです。

(3)このように、条件と期限は区別されています。条件においては、法律行為の効力の発生または消滅それ自体が不確実な事実に影響を受け、発生するのか、しないのか、消滅するのか、しないのかは、どうなるのか分かりません。これに対して、期限においては、法律行為の効力の発生または消滅することは確実であり、その発生または消滅の時期が将来の事実に影響を受けるに過ぎない、つまり、いつ発生するのか、消滅するのかが分からないだけで、発生、消滅そのものが生じることは決まっているということであり、ここに条件と期限の違いがあります。

(4)こうして見ると、区別が簡単なように思われるかもしれませんが、実際には、その区別が非常に難しいケースというのがあります。もちろん、条件か期限かは当事者間で決めるのが原則ですから、それが明らかであれば原則として当事者の取り決めに従った結論になります。しかし、単に「出世したら支払う」というだけの取り決めしかないという(裁判では証拠上不明)場合、当事者の合理的意思解釈により判断することになります。

  条件と期限の区別は、これまで判例でも争われてきており、いわゆる出世払いの約束でお金の貸し借りをした場合において争われることが多い状況でした。この出世払いの約束が、条件と期限の区別が難しい場合の一つとして挙げることができます。

  出世払いの約束について、「出世をしたら返済をする」、という風に考えると、停止条件を定めたものだということになり、「出世するか、出世しないかがはっきりするまでは返済を猶予する」という風に考えると、不確定期限を定めたものだということになります。

  停止条件と考えると、出世できなければ返済をする義務はないということになり、不確定期限であると考えると、出世したとき、または、出世する見込みがなくなったときに返済をしなければならなくなる、ということになります。

  この点、多くの判例では、出世払いの法的性質を不確定期限であると解しています。その根底には、借金は返さなければならないものである、との考え方があるためだと思われますが、画一的に不確定期限であるとしている訳ではなく、個別の事情を踏まえて、条件であるのか、期限であるのかを判断をしています。期限なのか条件なのかは当事者が契約締結の際に合意で決めることですから、契約締結の際の事情によって結論が異なってきますが、どちらとも決められない場合は、借金であれば返すのが原則であるとして不確定期限と判断するか、返さなくても良いお金だが出世したら返しますということであれば停止条件と判断することになります。

  条件、期限の詳しい説明や、出世払いの約束については、【当事務所事例集1302番】に、より詳しい解説がございますので、こちらをご覧いただくと、よりご理解いただけるのではないかと思います。

2、条件であるか期限であるか不明確な場合

(1)本件の「入金リンク条項」においても、その条件を付したものであるのか、期限を付したものであるのかが問題となります。入金リンク条項の解釈が問題となった事案について判断をした判例がありますので、ご紹介します。

   「本件請負契約が有償双務契約であることは明らかであるところ、一般に、下請負人が、自らは現実に仕事を完成させ、引渡しを完了したにもかかわらず、自らに対する注文者である請負人が注文者から請け負い代金の支払を受けられない場合には、自らも請け負い代金の支払が受けられないなどという合意をすることは、通常は想定し難いものというほかはない。特に、本件請負契約は、代金が3億1500円と高額であるところ、……公共事業に係るものであって、……発注者……からの請負代金の支払は確実であったことからすれば、XとYとの間においては、……請負代金の支払も順次確実に行われることを予定して、本件請負契約が締結されたものとみるのが相当であって、Xが、自らの契約上の債務を履行したにもかかわらず、Yにおいて上記請負代金の支払を受けられない場合には、自らもまた本件代金を受領できなくなることを承諾していたとは到底解し難い。
   したがって、XとYとが、本件請負契約の締結に際して本件入金リンク条項のある注文書と請書とを取り交わし、Yが本件機器の製造等に係る請負代金の支払を受けた後にXに対して本件代金を支払う旨を合意したとしても、有償双務契約である本件請負契約の性質に即して、当事者の意思を合理的に解釈すれば、本件代金の支払につき、Yが上記支払を受けることを停止条件とする旨を定めたものとはいえず、本件請負契約においては、Yが上記請負代金の支払を受けたときは、その時点で本件代金の支払期限が到来すること、また、Yが上記支払を受ける見込みがなくなったときは、その時点で本件代金の支払期限が到来することが合意されたものと解するのが相当である。Yが、本件入金リンク条項につき、本件機器の製造等に係る請負代金の支払を受けなければ、Xに対して本件代金の支払をしなくてもよいという趣旨のものととらえていたことは、上記判断を左右するものではない。」(最一小判平成22年10月14日集民235号21頁、判時2097号34頁)。
 
(2)この判例の事実関係は、元請けとしては停止条件と考えていたが、下請けは不確定期限と考えていたという場合です(通常下請けとしては停止条件であったと裁判上で主張することはありません。元請けが停止条件と考えていたということは契約締結の際にも停止条件という話が出ていたことは下請けも知っていた、ということまでの事実は認定できる、あるいはせざるを得ないという事案と考えられます。この点は裁判上の主張立証によりどこまで事実を明らかにできるかという問題ですが、元請けだけが条件と認識していた場合という事実関係についての裁判所の結論としてとらえる必要があります。

ア ご相談の事案の請負契約における入金リンク条項についても、当事者がどのような趣旨で特約を定めたのかが問題となり、「元請が注文者から請負代金の支払いを受けられたら、下請に請負代金を支払う」という約束だと捉えると、停止条件を付したものだと考えることになり、「元請が注文者から請負代金の支払いを受けることができるかどうかはっきりするまでは、元請の下請に対する請負代金の支払いは猶予される」という約束だと捉えると、不確定期限を付したものだと考えることになります。

   停止条件を付したものと考えると、元請が注文者から請負代金の支払いが受けられなければ、元請の下請に対する請負代金の支払義務はないということになり、不確定期限を付したものと考えると、元請が注文者から請負代金の支払いを受けたとき、または、元請が注文者からの請負代金の支払いを受ける見込みがなくなったときには、元請の下請に対する請負代金の支払いをしなければならなくなる、ということになります。

イ  この点、最高裁判例の原審は、「本件入金リンク条項は、……請負代金の支払いを受けることを停止条件とする旨を定めたものと解する」として、Yが支払いを受けていない段階においては、停止条件は成就していないとして、Xの請求を棄却しています。

ウ  しかし、上記のとおり、最高裁は、元請けが停止条件と考えていたという事実を前提にしても、Yが予定通り支払いを受ければ、その時点でXに対する支払期限も到来することになるのはもちろんであるが、支払いを受ける見込みがなくなったときも、やはりその時点で支払期限が到来する、との判断をしています。これは、入金リンク条項を不確定期限を付したものだと考えたということになります。

   その根拠として、最高裁は、請負契約が有償双務契約であることを挙げています。有償契約とは、契約当事者が互いに対価的な意義を有する出捐(しゅつえん)をする契約のことをいいます。また、双務契約とは、契約当事者が互いに対価的な意義を有する債務を負担する契約のことをいいます。対価的な意義を有するというのは、簡単に言えば、あれの代わりのこれ、という関係があることです。出捐というのは、経済的な損失、分かり易く言い換えるならば、自腹を切ることです。つまり、有償双務契約というのは、契約当事者が互いにあれの代わりのこれという債務を負担し合って、加えてそれらが経済的な損失を伴っているもの、ということになります。

   最高裁は、このような互いに経済的出捐を伴う債務を負担し合っている状況であるのに、自らは債務を履行していたとしても、自分に代金を支払うべき相手が、その原資といえる代金の支払いを受けられない場合には、自らも代金の支払いを受けられなくても構わない、という合意をすることは通常あり得ないだろう、と言っているのです。

   上記判例の事案においては、更に、公共事業という代金支払いが確実に行われるものであるという特殊性も加味しており、よりそのような合意をしていたとは考えられないとしています。

エ なお、この最高裁の事案では、Xの請求が認められたということではなく、期限が到来しているのか、すなわち、支払いを受ける見込みがなくなったのか、などにつき更に審理を尽くさせるため、原審を破棄して、原審に差し戻しています。

(3)ご相談の事案において、元請は入金リンク条項を、施主から入金を受けられなければ、下請である相談者に請負代金の支払いをしなくても良い、と捉えていたようですが、そうであったとしても、下請け側が不確定期限と考えていたのであれば最高裁の立場からは、入金リンク条項は不確定期限を付したものと解することになります。

  そして、ご相談の事案では、施主(注文者)が破産しているということですが、これは支払いを受ける見込みがなくなったといえ、入金リンク条項を不確定期限を付したものと解するときには、この支払いを受ける見込みがなくなった時点で、元請は、下請たる相談者に対する請負代金の支払期限が到来することになりますので、相談者は元請に対して、請負代金の請求をすることができることになると考えらます。

3、停止条件であることが明記されている場合

 上記判例においては、代金を支払う側、ご相談の事案でいえば元請が、入金リンク条項を停止条件であると捉えていたが、下請け側は不確定期限と捉えていた場合についてしか言及していません。そのため、契約書で入金リンク条項の特約を付して、これが停止条件であることが明記され、元請も下請も双方が入金リンク条項を停止条件であるとする合意がなされていたような場合については、どうなるのかは定かではありません。

 上記最高裁の立場を一般的に当てはめると、ご相談の事案のように注文者が破産してしまったケースなど、注文者から請負代金の支払いが得られない場合には、元請がその不払いのリスクを負うことになってしまいますので、このリスクを回避するために、入金リンク条項が停止条件である旨を契約書で明記しておこうとするかもしれません。契約における当事者の意思を尊重すれば停止条件であることが明らかな以上は請負代金は請求できないとの結論になります。

 しかし、これは、建設業法19条の3が禁止する、不当に低い請負代金に当たる可能性があるでしょうし(不払いのリスクを下請けだけが負うことになるのですから、リスクを負う以上は下請け代金もそれなりに高額でなくてはならないはずです)、優越的地位の濫用行為の禁止(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(いわゆる独占禁止法)2条9項5号)に当たる可能性も出てきます。
  
 但し、これらの法律違反があったとしても私法上の効力までは直ちに無効となるものではないとするのが判例です(「独禁法一九条に違反した契約の私法上の効力については,その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として,……同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではない。けだし,独禁法は,公正かつ自由な競争経済秩序を維持していくことによつて一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするものであり,同法二〇条は,専門的機関である公正取引委員会をして,取引行為につき同法一九条違反の事実の有無及びその違法性の程度を判定し,その違法状態の具体的かつ妥当な収拾,排除を図るに適した内容の勧告,差止命令を出すなど弾力的な措置をとらしめることによって,同法の目的を達成することを予定しているのであるから,同法の趣旨に鑑みると,同法一九条に違反する不公正な取引方法による行為の私法上の効力についてこれを直ちに無効とすることは同法の目的に合致するとはいい難いからである。」(最二小判昭和52年6月20日民集31巻4号449頁。いわゆる岐阜商工信用組合事件)。

 また、入金リンク条項が停止条件であることが明記されている場合でも、当該停止条件は元請業者の破綻の場合には無効であり、下請代金は請求できると考える余地も十分にあります。私的自治の原則に内在する信義誠実の原則(民法1条)から、公平の理念に基づく契約解釈が求められるからです。判断を基礎付ける事実関係の詳細な検討が求められます。当事者間で明文の合意をしている契約条項であっても、文字通り解釈した場合に契約当事者の一方に著しい不利益を及ぼすような不都合を生じる契約条項については、法的効力を生じないと解釈される場合もあります。これを当事者の合理的意思解釈に基づく例文解釈と言います。下請けの契約書に注文者からの入金が停止条件であると規定されているのは、多少の弁済期の遅れがあったとしても元請業者が支払いを受けた金銭の中から下請け業者に対して支払いを為すという趣旨であり、注文者が破綻して一切の支払いが得られなくなってしまった場合に、下請け業者に全ての経済的負担を押し付けるという趣旨ではなかった、と主張するのです。もしも、そのような、全てのリスクを下請け業者が負担するのであれば、形式的な停止条件の文言だけでなく、注文者破綻のリスクを下請け業者が負担することまで契約条項に明記されるべきであるし、下請け業者が全てのリスクを負担するという特殊な契約が有効に成立するためには、元請契約の金額と下請け契約の金額などを比較して、契約のほとんどの利益を下請け業者が享受し、下請け業者と注文者が直接連絡して下請け業者の債権回収手段も確保されているような特別の事情が必要であると主張するわけです。

 従って、停止条件であることが明らかな入金リンク条項が定められている場合は、注文主破綻の場合も含めてそのような約束をすることが公序良俗違反になるということを、契約締結の経緯や、契約内容や、工事の状況など、総合的に主張立証していく必要があるといえます。お困りの場合はお近くの法律事務所にご相談なさると良いでしょう。


※下請法の詳しい解説(公正取引委員会のホームページ)
http://www.jftc.go.jp/shitauke/


<参考条文>
民法
(条件が成就した場合の効果)
第百二十七条 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示したときは、その意思に従う。
(期限の到来の効果)
第百三十五条 法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請求することができない。
2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。
(請負)
第六百三十二条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

建設業法
(定義)
第二条 この法律において「建設工事」とは、土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう。
2 この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
3 この法律において「建設業者」とは、第三条第一項の許可を受けて建設業を営む者をいう。
4 この法律において「下請契約」とは、建設工事を他の者から請け負つた建設業を営む者と他の建設業を営む者との間で当該建設工事の全部又は一部について締結される請負契約をいう。
5 この法律において「発注者」とは、建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者をいい、「元請負人」とは、下請契約における注文者で建設業者であるものをいい、「下請負人」とは、下請契約における請負人をいう。
(不当に低い請負代金の禁止)
第十九条の三 注文者は、自己の取引上の地位を不当に利用して、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない。
(公正取引委員会への措置請求等)
第四十二条 国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四又は第二十四条の五第三項若しくは第四項の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第十九条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
2 国土交通大臣又は都道府県知事は、中小企業者(中小企業基本法(昭和三十八年法律第百五十四号)第二条第一項に規定する中小企業者をいう。次条において同じ。)である下請負人と下請契約を締結した元請負人について、前項の規定により措置をとるべきことを求めたときは、遅滞なく、中小企業庁長官にその旨を通知しなければならない。
第四十二条の二 中小企業庁長官は、中小企業者である下請負人の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、元請負人若しくは下請負人に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に元請負人若しくは下請負人の営業所その他営業に関係のある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証票を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。
3 中小企業庁長官は、第一項の規定による報告又は検査の結果中小企業者である下請負人と下請契約を締結した元請負人が第十九条の三、第十九条の四、第二十四条の三第一項、第二十四条の四又は第二十四条の五第三項若しくは第四項の規定に違反している事実があり、その事実が私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第十九条の規定に違反していると認めるときは、公正取引委員会に対し、同法の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
4 中小企業庁長官は、前項の規定により措置をとるべきことを求めたときは、遅滞なく、当該元請負人につき第三条第一項の許可をした国土交通大臣又は都道府県知事に、その旨を通知しなければならない。

別表第一
土木一式工事 土木工事業
建築一式工事 建築工事業
大工工事 大工工事業
左官工事 左官工事業
とび・土工・コンクリート工事 とび・土工工事業
石工事 石工事業
屋根工事 屋根工事業
電気工事 電気工事業
管工事 管工事業
タイル・れんが・ブロツク工事 タイル・れんが・ブロツク工事業
鋼構造物工事 鋼構造物工事業
鉄筋工事 鉄筋工事業
ほ装工事 ほ装工事業
しゆんせつ工事 しゆんせつ工事業
板金工事 板金工事業
ガラス工事 ガラス工事業
塗装工事 塗装工事業
防水工事 防水工事業
内装仕上工事 内装仕上工事業
機械器具設置工事 機械器具設置工事業
熱絶縁工事 熱絶縁工事業
電気通信工事 電気通信工事業
造園工事 造園工事業
さく井工事 さく井工事業
建具工事 建具工事業
水道施設工事 水道施設工事業
消防施設工事 消防施設工事業
清掃施設工事 清掃施設工事業


私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第二条 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。
A この法律において「事業者団体」とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者の結合体又はその連合体をいい、次に掲げる形態のものを含む。ただし、二以上の事業者の結合体又はその連合体であつて、資本又は構成事業者の出資を有し、営利を目的として商業、工業、金融業その他の事業を営むことを主たる目的とし、かつ、現にその事業を営んでいるものを含まないものとする。
 一 二以上の事業者が社員(社員に準ずるものを含む。)である社団法人その他の社団
 二 二以上の事業者が理事又は管理人の任免、業務の執行又はその存立を支配している財団法人その他の財団
 三 二以上の事業者を組合員とする組合又は契約による二以上の事業者の結合体
B この法律において「役員」とは、理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役若しくはこれらに準ずる者、支配人又は本店若しくは支店の事業の主任者をいう。
C この法律において「競争」とは、二以上の事業者がその通常の事業活動の範囲内において、かつ、当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく次に掲げる行為をし、又はすることができる状態をいう。
 一 同一の需要者に同種又は類似の商品又は役務を供給すること
 二 同一の供給者から同種又は類似の商品又は役務の供給を受けること
D この法律において「私的独占」とは、事業者が、単独に、又は他の事業者と結合し、若しくは通謀し、その他いかなる方法をもつてするかを問わず、他の事業者の事業活動を排除し、又は支配することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
E この法律において「不当な取引制限」とは、事業者が、契約、協定その他何らの名義をもつてするかを問わず、他の事業者と共同して対価を決定し、維持し、若しくは引き上げ、又は数量、技術、製品、設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業活動を拘束し、又は遂行することにより、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限することをいう。
F この法律において「独占的状態」とは、同種の商品(当該同種の商品に係る通常の事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えることなく供給することができる商品を含む。)(以下この項において「一定の商品」という。)並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)の価額(当該商品に直接課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)又は国内において供給された同種の役務の価額(当該役務の提供を受ける者に当該役務に関して課される租税の額に相当する額を控除した額とする。)の政令で定める最近の一年間における合計額が千億円を超える場合における当該一定の商品又は役務に係る一定の事業分野において、次に掲げる市場構造及び市場における弊害があることをいう。
 一 当該一年間において、一の事業者の事業分野占拠率(当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品で国内において供給されたもの(輸出されたものを除く。)又は国内において供給された当該役務の数量(数量によることが適当でない場合にあつては、これらの価額とする。以下この号において同じ。)のうち当該事業者が供給した当該一定の商品並びにこれとその機能及び効用が著しく類似している他の商品又は役務の数量の占める割合をいう。以下この号において同じ。)が二分の一を超え、又は二の事業者のそれぞれの事業分野占拠率の合計が四分の三を超えていること。
 二 他の事業者が当該事業分野に属する事業を新たに営むことを著しく困難にする事情があること。
 三 当該事業者の供給する当該一定の商品又は役務につき、相当の期間、需給の変動及びその供給に要する費用の変動に照らして、価格の上昇が著しく、又はその低下がきん少であり、かつ、当該事業者がその期間次のいずれかに該当していること。
  イ 当該事業者の属する政令で定める業種における標準的な政令で定める種類の利益率を著しく超える率の利益を得ていること。
  ロ 当該事業者の属する事業分野における事業者の標準的な販売費及び一般管理費に比し著しく過大と認められる販売費及び一般管理費を支出していること。
G 経済事情が変化して国内における生産業者の出荷の状況及び卸売物価に著しい変動が生じたときは、これらの事情を考慮して、前項の金額につき政令で別段の定めをするものとする。
H この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。
 一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。
  イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
  ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。
 二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
 三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
 四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
  イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
  ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。
 五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。
  イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
  ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
  ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。
 六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの
  イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。
  ロ 不当な対価をもつて取引すること。
  ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。
  ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。
  ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。
  ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。
第十九条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。
第二十条 前条の規定に違反する行為があるときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、事業者に対し、当該行為の差止め、契約条項の削除その他当該行為を排除するために必要な措置を命ずることができる。
A 第七条第二項の規定は、前条の規定に違反する行為に準用する。
第二十条の六 事業者が、第十九条の規定に違反する行為(第二条第九項第五号に該当するものであつて、継続してするものに限る。)をしたときは、公正取引委員会は、第八章第二節に規定する手続に従い、当該事業者に対し、当該行為をした日から当該行為がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは、当該行為がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。)における、当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の供給を受ける相手方に対するものである場合は当該行為の相手方との間における政令で定める方法により算定した購入額とし、当該行為の相手方が複数ある場合は当該行為のそれぞれの相手方との間における政令で定める方法により算定した売上額又は購入額の合計額とする。)に百分の一を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし、その額が百万円未満であるときは、その納付を命ずることができない。

下請代金支払遅延等防止法
(目的)
第一条 この法律は、下請代金の支払遅延等を防止することによつて、親事業者の下請事業者に対する取引を公正ならしめるとともに、下請事業者の利益を保護し、もつて国民経済の健全な発達に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。
2 この法律で「修理委託」とは、事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合にその修理の行為の一部を他の事業者に委託することをいう。
3 この法律で「情報成果物作成委託」とは、事業者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。
4 この法律で「役務提供委託」とは、事業者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること(建設業(建設業法(昭和二十四年法律第百号)第二条第二項に規定する建設業をいう。以下この項において同じ。)を営む者が業として請け負う建設工事(同条第一項に規定する建設工事をいう。)の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせることを除く。)をいう。
5 この法律で「製造委託等」とは、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託をいう。
6 この法律で「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。
 一 プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)
 二 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
 三 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
 四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの
7 この法律で「親事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 一 資本金の額又は出資の総額が三億円を超える法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十六号)第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者に対し製造委託等(情報成果物作成委託及び役務提供委託にあつては、それぞれ政令で定める情報成果物及び役務に係るものに限る。次号並びに次項第一号及び第二号において同じ。)をするもの
 二 資本金の額又は出資の総額が千万円を超え三億円以下の法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者に対し製造委託等をするもの
 三 資本金の額又は出資の総額が五千万円を超える法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が五千万円以下の法人たる事業者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託(それぞれ第一号の政令で定める情報成果物又は役務に係るものを除く。次号並びに次項第三号及び第四号において同じ。)をするもの
 四 資本金の額又は出資の総額が千万円を超え五千万円以下の法人たる事業者(政府契約の支払遅延防止等に関する法律第十四条に規定する者を除く。)であつて、個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をするもの
8 この法律で「下請事業者」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。
 一 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が三億円以下の法人たる事業者であつて、前項第一号に規定する親事業者から製造委託等を受けるもの
 二 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第二号に規定する親事業者から製造委託等を受けるもの
 三 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が五千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第三号に規定する親事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの
 四 個人又は資本金の額若しくは出資の総額が千万円以下の法人たる事業者であつて、前項第四号に規定する親事業者から情報成果物作成委託又は役務提供委託を受けるもの
9 資本金の額又は出資の総額が千万円を超える法人たる事業者から役員の任免、業務の執行又は存立について支配を受け、かつ、その事業者から製造委託等を受ける法人たる事業者が、その製造委託等に係る製造、修理、作成又は提供の行為の全部又は相当部分について再委託をする場合(第七項第一号又は第二号に該当する者がそれぞれ前項第一号又は第二号に該当する者に対し製造委託等をする場合及び第七項第三号又は第四号に該当する者がそれぞれ前項第三号又は第四号に該当する者に対し情報成果物作成委託又は役務提供委託をする場合を除く。)において、再委託を受ける事業者が、役員の任免、業務の執行又は存立について支配をし、かつ、製造委託等をする当該事業者から直接製造委託等を受けるものとすれば前項各号のいずれかに該当することとなる事業者であるときは、この法律の適用については、再委託をする事業者は親事業者と、再委託を受ける事業者は下請事業者とみなす。
10 この法律で「下請代金」とは、親事業者が製造委託等をした場合に下請事業者の給付(役務提供委託をした場合にあつては、役務の提供。以下同じ。)に対し支払うべき代金をいう。
(下請代金の支払期日)
第二条の二 下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日。次項において同じ。)から起算して、六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
2 下請代金の支払期日が定められなかつたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期日が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して六十日を経過した日の前日が下請代金の支払期日と定められたものとみなす。
(書面の交付等)
第三条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより下請事業者の給付の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。ただし、これらの事項のうちその内容が定められないことにつき正当な理由があるものについては、その記載を要しないものとし、この場合には、親事業者は、当該事項の内容が定められた後直ちに、当該事項を記載した書面を下請事業者に交付しなければならない。
2 親事業者は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該下請事業者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて公正取引委員会規則で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該親事業者は、当該書面を交付したものとみなす。
(親事業者の遵守事項)
第四条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
 一 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むこと。
 二 下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないこと。
 三 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。
 四 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせること。
 五 下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること。
 六 下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させること。
 七 親事業者が第一号若しくは第二号に掲げる行為をしている場合若しくは第三号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすること。
2 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号を除く。)に掲げる行為をすることによつて、下請事業者の利益を不当に害してはならない。
 一 自己に対する給付に必要な半製品、部品、附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。
 二 下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
 三 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。
 四 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。
(遅延利息)
第四条の二 親事業者は、下請代金の支払期日までに下請代金を支払わなかつたときは、下請事業者に対し、下請事業者の給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日)から起算して六十日を経過した日から支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該未払金額に公正取引委員会規則で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払わなければならない。
(書類等の作成及び保存)
第五条 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、公正取引委員会規則で定めるところにより、下請事業者の給付、給付の受領(役務提供委託をした場合にあつては、下請事業者がした役務を提供する行為の実施)、下請代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成し、これを保存しなければならない。
(中小企業庁長官の請求)
第六条 中小企業庁長官は、親事業者が第四条第一項第一号、第二号若しくは第七号に掲げる行為をしているかどうか若しくは同項第三号から第六号までに掲げる行為をしたかどうか又は親事業者について同条第二項各号の一に該当する事実があるかどうかを調査し、その事実があると認めるときは、公正取引委員会に対し、この法律の規定に従い適当な措置をとるべきことを求めることができる。
(勧告)
第七条 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第一号、第二号又は第七号に掲げる行為をしていると認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその下請事業者の給付を受領し、その下請代金若しくはその下請代金及び第四条の二の規定による遅延利息を支払い、又はその不利益な取扱いをやめるべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。
2 公正取引委員会は、親事業者が第四条第一項第三号から第六号までに掲げる行為をしたと認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその減じた額を支払い、その下請事業者の給付に係る物を再び引き取り、その下請代金の額を引き上げ、又はその購入させた物を引き取るべきことその他必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。
3 公正取引委員会は、親事業者について第四条第二項各号のいずれかに該当する事実があると認めるときは、その親事業者に対し、速やかにその下請事業者の利益を保護するため必要な措置をとるべきことを勧告するものとする。
(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律との関係)
第八条 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)第二十条及び第二十条の六の規定は、公正取引委員会が前条第一項から第三項までの規定による勧告をした場合において、親事業者がその勧告に従つたときに限り、親事業者のその勧告に係る行為については、適用しない。
(報告及び検査)
第九条 公正取引委員会は、親事業者の下請事業者に対する製造委託等に関する取引(以下単に「取引」という。)を公正ならしめるため必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 中小企業庁長官は、下請事業者の利益を保護するため特に必要があると認めるときは、親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員に親事業者若しくは下請事業者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
3 親事業者又は下請事業者の営む事業を所管する主務大臣は、中小企業庁長官の第六条の規定による調査に協力するため特に必要があると認めるときは、所管事業を営む親事業者若しくは下請事業者に対しその取引に関する報告をさせ、又はその職員にこれらの者の事務所若しくは事業所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
4 前三項の規定により職員が立ち入るときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
5 第一項から第三項までの規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(罰則)
第十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした親事業者の代表者、代理人、使用人その他の従業者は、五十万円以下の罰金に処する。
 一 第三条第一項の規定による書面を交付しなかつたとき。
 二 第五条の規定による書類若しくは電磁的記録を作成せず、若しくは保存せず、又は虚偽の書類若しくは電磁的記録を作成したとき。
第十一条 第九条第一項から第三項までの規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処する。
第十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。


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