新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1214、2012/1/17 16:21 https://www.shinginza.com/qa-roudou.htm

【労働・外国人研修・技能実習制度と労働関係法違反・その効果・刑事処分・名古屋高等裁判所平成22年3月25日判決】

質問:自営業で縫製の工場を経営しています。数年前から,事業者協同組合を通じて,研修生や技能実習生として来日している中国人を数名受け入れていました。最近,労働基準監督署の取り締まりが厳しいと聞いて不安になっています。中国人研修生を使用することにはどのような問題がありますか。労基署の臨検を受けたらどのように対応すればよいですか。

回答:
1.近年,外国人研修・技能実習制度を利用した悪質な労働関係法違反事例が多数発生しているといわれ,厚労省も厳しい対応で臨む立場を示しているところです。労基署は悪質な事例に対しては,刑事事件として取り扱ってくることもあります。甘く考えずに,是正勧告には誠実に対応し,違法状態の解消・予防に努めましょう。
2.刑事処分が予想される場合は,弁護人を選任し,協議して労働基準法違反の事態を早急に解消し,不起訴処分を検察官に要請することが必要です。
3.名古屋高等裁判所平成22年3月25日判決 (平成21年(ネ)第353号 損害賠償本訴請求,賃金等反訴請求控訴事件,平成21年(ネ)第559号 同附帯控訴事件)参照。
4.労働 法参考事例,法律相談事例集キーワード検索:1133番1062番925番915番842番786番763番762番743番721番657番642番458番365番73番5番手続は,995番879番参照。

解説:

1 (外国人研修・技能実習制度)

  外国人研修・技能実習制度とは,在留資格「研修」と「技能実習」を設け(出入国管理及び難民認定法別表第一の22),入国した外国人はそれぞれ「研修生」「技能実習生」として日本の企業等で技術を習得することができるという制度です。制度の目的は,国際協調主義(憲法98条2項,前文)の考えに基づき,技術の輸出を通じた国際貢献にあり,毎年数万人がこの制度を利用して来日しているということです。
  しかし,制度の実態は必ずしも正しく機能していないとも言われています。外国人研修生や技能実習生を,事実上低賃金な労働者として使用し,利益を上げる経営者が後を絶たないのです。このような事態を問題視する動きは強まりつつあり,近年は行政機関の取り締まりが強化されているほか,外国人側からの民事上の訴えも起こされるようになってきました。

2 (労働者としての取扱い)

 ・従来の扱いと問題点
  平成22年7月1日に出入国管理及び難民認定法が改訂され,研修・技能実習制度が新しくなりました。それまでは,簡単にいうと1年目は研修,2年目と3年目は技能実習という扱いで,1年目の研修生の間は実務研修として労務に従事させても労働者としての扱いにならないという解釈が一般的でした。このため,労働関係諸法規の保護が及ばず,最低賃金を下回る低賃金で長時間労働させるなどの行為の温床となってしまったのです。
 ・改正法
  改正法では,実務を伴う研修を廃止するとともに1年目からの技能実習制度を設け,実質的に技能実習へ1本化しました。技能実習中の労務への従事は労働契約と扱われ,技能実習生は労働関係諸法規の保護を受けることができます。名目が研修であっても実質が労働契約の実態を兼ね備えていれば通常の労働者と同様に基準法の保護を受けるのは当然です。労働基準法は,使用者の指揮命令を受けて労働力を提供し,その対価として賃金を受けて生活する労働者の生きる権利を保障するものであり,研修であっても労働契約の実態を有するものは同様に保護に値するからです。勿論外国人であっても差別することはできません(憲法14条,法の下の平等)。名古屋高等裁判所平成22年3月25日判決 参照。

3 (労基署による取締り)

 ・行政指導
  労働基準監督署は,労働法規違反の事例に対して,是正勧告という行政指導を行います。是正勧告に先だって必要な事実の調査を行うため,事業場に臨検し,書類の提出を求めたり,関係者に尋問を行うこともできます(労働基準法101条)。
 
 ・司法処分
  しかし,本当に悪質な事例に対しては,悠長に是正勧告を発して自主的な是正を求める時間を取らずに,労働基準法違反事件として,警察と同じような犯罪捜査に入ることがあります。労働基準監督官は労働基準法違反の罪については警察と同じ職務を行うとされているためで(同法102条),このような対応を司法処理とか司法処分と呼んでいます。
  労働者である外国人技能実習生を労働基準法に違反して酷使しているような事例の場合,司法処分となる可能性が高いです。このことは,厚労省が発表している「平成22年度地方労働行政の重点施策」に,技能実習生問題への厳しい対応がうたってあることから伺われます。

4 (事業者側の対応)

 ・労基署の臨検,行政指導に対する対応
  外国人研修生や技能実習生を,制度目的に従って正当に研修・実習に従事させている限り,なんの問題もありません。しかし,外国人労働者自身が希望しているから,安く使えて経営が助かるから,周りの経営者も同じことをしているから,等の理由で,労働基準法に違反する違法な労働をさせてしまっていた方もいるでしょう。労基署への対応としては,まずは臨検に素直に応じることです。不合理な弁解をしたり資料を隠ぺいしたりすると,心証を悪くし,司法処分へ切り替えられる可能性が高いです。予め捜索令状を用意して臨検にやってきて,状況により令状を執行して直ちに捜索に着手するということもあるようです。資料の隠ぺいは,悪くすると別個の犯罪(労基法120条4号)を構成することもあります。

 ・司法処分となった場合の対応
  司法処分となった場合,労基署が捜査をした後検察庁へ書類送検され,検察庁が起訴するか不起訴とするかの判断をします。労基法違反の罪の場合,略式起訴による罰金刑で終わる可能性が比較的高いでしょう。ただ,被害者へ賃金の不足額を一括支払いしたり,職場の労働環境改善を徹底するなどの良い情状を整え文書で釈明することで,軽い処分にしてもらったり起訴猶予としてもらうよう交渉する余地はあります(刑訴248条,起訴便宜主義)。労働事犯であっても刑事被疑者であることに変わりなく,弁護人選任権があるので,弁護士の力が必要なときは依頼も検討されるとよいでしょう。

  最後に,とくに司法処分となった場合の注意点として,被害者たる外国人労働者との接触の問題があります。通常,刑事事件の被害者に捜査中の被疑者が四六時中接触可能な状態に置かれるということはありえません。ところが,外国人研修生や技能実習生の場合,刑事事件になったからといって研修等をやめて本国に帰るわけにもいかず,当面は同じ使用者の下で労働を続けることになります。この状況で,刑事被疑者となっている使用者が腹いせに何らかの不利益取扱いをした場合,刑事事件の情状が悪くなるだけでなく,身柄拘束の必要を認められて勾留されてしまう可能性が出てきます。そうなれば中小企業にとって経営どころではなくなってしまいます。くれぐれも,不当な圧力を与えないよう,通常にも増して慎重に接するべきです。

5 (判例検討)
(1)名古屋高等裁判所平成22年3月25日判決

  中国人の技能実習生らの労働条件改善(仕事場のミシンの高さの変更等)の要求を当然の権利と認め,これに対して暴行,脅迫を行い解雇した使用者の責任を認めています。又,外国人外国人技能実習生らの 研修生としての期間中の研修の内容は,労働者の労働と同一であるから,最低賃金法の定める額との差額賃金請求を認めています。そのほか,解雇権濫用,割り増し賃金の他未払い通常賃金についても付加金請求を認めています。(後記判例参照)

第3 当裁判所の判断

2 原判決の付加訂正

  (6)原判決15頁25行目冒頭から16頁4行目末尾までを次のとおり改める。
  「その際,控訴人代表者は,興奮して早口の日本語で捲し立てた末,怒りを露わにして,怒鳴りながら机を叩いたり,被控訴人Bの座っていた重い椅子を思い切り蹴飛ばしたり,被控訴人Dの左足くるぶしの辺りを蹴飛ばしたりし,Lも,被控訴人ら以外の実習生が食べていたパンを取り上げて投げ捨てるなどしたため,日本語の理解も十分でない被控訴人らは,これらの暴力に恐怖を感じ,階下に降りて再び作業をすることができなくなった。」

  (7)原判決16頁11行目冒頭から19行目末尾までを次のとおり改める。
  「(20)被控訴人らは,すぐに中国に帰る意思はなく,会社の変更が叶わなければ,やむなく控訴人において働き続けるしかないとも考えており,G理事の言葉に納得したわけではなく,実習生として就労し続けることを希望していたが,G理事は,被控訴人らを中国に追い返すべく,被控訴人らがすぐに帰国するものとして話を進め,また,控訴人代表者にも被控訴人らが帰国を希望している旨伝え,同月28日には,在留期間の切れていた被控訴人Dら2名を名古屋入国管理局に連れて行き,出国準備のための在留資格変更許可申請手続を行った。しかし,被控訴人Dら2名は,入管手続に疎く,G理事にこれらを任せていたので,従前のように,帰国を前提としない在留期間の更新に行ったものにすぎないと思っていた。
  (21)実習生としての就労継続を希望していた被控訴人らは,平成19年8月29日,四日市労働基準監督署及び日本労働評議会に連絡を取り,一連の経緯を説明するに至った。
  (22)日本労働評議会は,平成19年9月1日,このような被控訴人らの意向を受けて,協議事項の1つに「実習満了までの就労を保障すること」との記載がある同日付け団体交渉申入書(〈証拠略〉)を控訴人に差入れ,同日,日本労働評議会,F事業協同組合,控訴人代表者が話合いを持った。その際,控訴人代表者は,就労保障を求めた日本労働評議会に対し,仕事はなくなっているとか,もう材料も全部返したなどと述べ,被控訴人らの就労を拒絶した。その結果,被控訴人らは,控訴人が残業代の未払分を即時に支払うのであれば,日本での就労を断念して中国に帰国することをやむなく受け入れるに至ったが,控訴人は,残業代の未払分を支払わなかった。」

(8)原判決17頁16行目末尾を改行して,次のとおり付加する。
  「(28)被控訴人らは,その後の平成20年2月,中国に帰国した。」
(9)原判決18頁8行目末尾に次のとおり付加する。
  「そして,当審における証人L(甲10の陳述書を含む。)も,これに沿った供述をするが,前記(付加訂正後の原判決)1(11)のような4月28日までの経緯があって,日本語と共通する漢字も多く含まれた同月30日の張り紙があったというにもかかわらず,中国語がほとんど分からないので,張り紙の内容も全く理解できなかった旨を述べるなど,不自然な部分が多く,採用の限りではない。」
(10)原判決18頁11行目冒頭から20頁5行目末尾までを次のとおり改める。
  「(2)争点(2)8月27日の不就労につき被控訴人らの帰責性の有無
  ア 前記(付加訂正後の原判決)1(18)に認定のとおり,控訴人代表者及びLが被控訴人らに対し,暴力を振るい,特に控訴人代表者の激高の様子や振るった暴力の状況は激しいものであったということができるから,いずれも比較的若年の女性で,日本語を十分に理解できない被控訴人らにとって,これら暴力に恐怖を感じ,就労することができなかったとしても不思議なことではない。
  もっとも,前記(付加訂正後の原判決〉1(16)ないし(18)に認定の事実によれば,控訴人代表者らの暴力は,控訴人がミシン台の高さを下げたことに対し,被控訴人らがこれを元に戻すように要求して紛糾したことに端を発しているが,控訴人が平成19年6月以降,被控訴人らの使用するミシン台の高さを一方的に下げたことによって,被控訴人らが腰を曲げて作業しなければならなくなり,背中などに痛みを覚えるようになっていたところへ,控訴人が作業効率を上げるなどとして,再度ミシン台の高さを一方的に下げようとしたものであったこと,ミシン台の高さを下げれば作業効率が上がるというのは,被控訴人らにとっては必ずしもそうであるとはいえないこと,それにもかかわらず,仕事のノルマを増やし,規定の時間内にノルマを達成しなければ残業代を支払わないことを一方的に通告したこと,控訴人によれば,ミシン台の高さを下げることについては,株式会社Iからの指導に基づくものであるとされるが,上記指導に従うかどうかは最終的に控訴人の経営判断であることなどが認められる。これらによれば,被控訴人らがミシン台の高さのような自分たちの労働条件に関わる重要な事柄につき,控訴人に対して労働環境に関する要求をすることは当然許されるべきことであると解されるが,控訴人は,そのような切実ともいえる要求をした被控訴人らに対し,暴力によって威嚇し,恐怖感を抱かせ,控訴人において就労できないようにさせたものであるから,8月27日の不就労については,専ら控訴人が招いたことであり,被控訴人らには帰責性はないというべきである。

  イ この点,控訴人は,ノルマを達成しなければ残業代を支払わないと言ったことはなく,明日の納品分を間に合わさなければ,仕事量が減らされて残業がなくなると言っただけであり,暴行の事実は存在せず,被控訴人らは自らの労働の義務を放棄し控訴人との直接の話合いに応じないから,控訴人の利益を故意に侵害するものであって,帰責性がある旨主張し,原審における控訴人代表者は,平成19年8月27日にミシン台の高さを変更した事実,ノルマを達成しなければ残業代を支払わないと告げた事実,暴行の事実はいずれもない,8月27日の不就労は,被告らがお盆休みで遊びボケをしてしまったことが原因ではないかなどと供述する。しかし,中国の送出機関に対して多額の手数料や保証金を支払っている被控訴人らが(〈証拠略〉),そのような理由で就労を拒絶するとは到底考えられない上,控訴人代表者の上記供述を前提とすると,被控訴人らは,平成19年8月27日に何の事情の変更もないのに突然不就労を始めたということになるが,それではあまりにも不自然であって,かかる供述は,具体的かつ詳細で信用性が高いと認められる原審における被控訴人B及び同Eの供述に比して格段に信用性は低く,これに沿う当審における証人Lの供述もまた同様に信用性が低いというべきであり,控訴人の上記主張は採用し難い。また,上記のとおり,控訴人代表者に暴行の事実が認められることからすれば,被控訴人らに控訴人代表者との直接の話合いに応じる義務があるとはいえないから,この点についても,控訴人の主張は採用できない。」

3 反訴請求について
 (1)争点(1),控訴人は被控訴人らを解雇したか
  前記(付加訂正後の原判決)1(19)ないし(22)に認定の事実によれば,被控訴人らは,8月27日の不就労の後にも,すぐに中国に帰る意思はなく,暴力を振るう控訴人代表者の下では働きたくはないが,会社の変更が叶わなければ,やむなく控訴人において働き続けるしかないとも考えていたこと,したがって,無条件で控訴人を退社して帰国する旨の意思を表明したことはないこと,むしろ,日本での就労継続を希望して,平成19年8月29日には,労働基準監督署や日本労働評議会に連絡を取るなどし,同年9月1日には,このような被控訴人らの意向を受けて,日本労働評議会が控訴人に対し,就労の保障を求めて団体交渉の申入れがなされ,これを受けて,同日話合いがもたれたこと,しかるに,控訴人代表者は,既に仕事はなくなっており,材料も取引先に全部返した旨述べて,今後の被控訴人らの就労を一切拒絶したことが認められ,控訴人によるこのような労務受領拒否は,被控訴人らに対する解雇にほかならないというべきである。
  なお,被控訴人らの陳述書(〈証拠略〉)には,被控訴人らが平成19年9月1日より前に中国に帰国する意思を有していたかに読める記載もあるが,原審における被控訴人B本人及び同E本人の供述と合わせ読み,その前後の経緯を見れば,同日より前には被控訴人らが帰国に同意していなかったものと解するのが自然であって,控訴人による解雇より前に被控訴人らが退職の意思表示をしていたとか,労働契約が合意解約されたといった事実を認めることはできない。そして,前記(付加訂正後の原判決)1(20)の事実の下では,被控訴人Dら2名が出国準備のための在留資格変更許可申請手続を行った事実が認められるからといって,上記のとおり控訴人が被控訴人らを解雇したという事実認定の妨げになるものではない。

 (2)争点(2)解雇の無効及び賃金の額
  ア 次に,控訴人による上記解雇がやむを得ないものであったといえるかどうかを検討するに,被控訴人らを解雇した際の上記控訴人代表者の発言は,被控訴人らの就労拒否によって取引先を失って仕事がなくなり,材料も取引先に全部返したという趣旨の発言であると解されるものの,上記発言のみでは期間の定めのある労働契約における解雇理由が明示されているとはいい難い上,これまで述べたところによれば,被控訴人らによる8月27日の就労拒否は,控訴人に非はあっても被控訴人らに非のあることではないこと,控訴人は,当初日本人のパートを5人くらいは雇っており,日本人を雇うことで殊更人件費が嵩むものでもないこと(当審における証人L)や,外国人研修生や外国人技能実習生を受入れるために相当多額の投資ないし支出をしていながら,当時未だそれを回収できておらず,むしろ多額のリース代の債務が残り,今後10年以上にわたり利益を上げることを望んでいたこと(本訴状の記載ほか弁論の全趣旨)等からすれば,たとえ株式会社Iとの取引がなくなったからといって,縫製の仕事をすぐに廃業すべき必然性も合理性もなかったといえるところであるから,控訴人が被控訴人らに対してなした解雇がやむを得ないものであったとは認め難く,このような解雇は解雇権の濫用として無効であるといわざるを得ない。

 (12)原判決22頁5行目末尾に次のとおり付加する。
  「この点,控訴人は,控訴人と被控訴人らとの間には労働契約が締結されていないこと,外国人研修生はまさに「研修生」であることなどを強調して,被控訴人らの労働者性を否定しようとするが,被控訴人らの生活の実態を無視した形式的な主張であり,到底採用し難い。」

 (18)原判決23行目19行目末尾を改行して,次のとおり付加する。
  「エ さらに,控訴人は,被控訴人らが控訴人以外の仕事場で研修指導を受けていた平成17年10月1日から同年12月31日までの間については,控訴人には差額賃金の支払義務はない旨主張する。
 確かに,被控訴人らは,平成17年10月1日から同年12月31日までの間,第一次受入機関の代表者が経営する三重県鈴鹿市所在の「Mテック」と称する仕事場において就労していた事実は認められる(当審における証人L,弁論の全趣旨)。しかし,当審における証人Lによれば,同証人をはじめ,控訴人,Mテックらは,受入機関以外の場所で外国人研修生を就労させることが名義貸し(飛ばし)として禁止されていることを十分に理解しながら,被控訴人らを他の仕事場であるMテックで就労させ,研修費用は控訴人名で支払っていたものであることが認められ,この事実からすれば,この間も被控訴人らを控訴人に属する外国人研修生として,控訴人の業務命令に基づき,上記仕事場で就労させていたというべきであり,この間だけその労働者性が失われていたともいえないところであるから,当然に控訴人に差額賃金の支払義務が生じるものというべきである。よって,控訴人の上記主張は採用し難い。

  オ 付加金について
  他方,上記時間外労働賃金の不払いは,労基法37条1項に違反するものであるから,被控訴人らは控訴人に対し,労基法114条の付加金をも請求し得るところ,その範囲は,労基法37条1項の割増賃金部分のみならず,通常の賃金も含めたものであると解され,本件においては,最大で,上記各未払時間外労働賃金(被控訴人Aら3名につき各45万4925円,被控訴人Dら2名につき各54万9523円)と同額の付加金の支払を命じる余地があり(後記除斥期間により認められない部分は除く。),これまで述べたところによれば,裁判所の裁量によって付加金を減額するのが相当とされるような事情は全く窺われないところである。

(2)福岡高等裁判所平成22年9月13日判決 (損害賠償等請求控訴事件)。
  この判決も,最低賃金法違反,長時間労働について研修生に通常労働者と同様の保護を認めています。

(参照条文)

労働基準法
第101条 労働基準監督官は,事業場,寄宿舎その他の附属建設物に臨検し,帳簿及び書類の提出を求め,又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
2 前項の場合において,労働基準監督官は,その身分を証明する証票を携帯しなければならない。
第102条 労働基準監督官は,この法律違反の罪について,刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う。
(報告等)
第104条の二  行政官庁は,この法律を施行するため必要があると認めるときは,厚生労働省令で定めるところにより,使用者又は労働者に対し,必要な事項を報告させ,又は出頭を命ずることができる。
○2  労働基準監督官は,この法律を施行するため必要があると認めるときは,使用者又は労働者に対し,必要な事項を報告させ,又は出頭を命ずることができる。
第十三章 罰則
第117条  第五条の規定に違反した者は,これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。
第118条  第六条,第五十六条,第六十三条又は第六十四条の二の規定に違反した者は,これを一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
○2  第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十三条又は第六十四条の二の規定に係る部分に限る。)に違反した者についても前項の例による。
第119条  次の各号の一に該当する者は,これを六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
一  第三条,第四条,第七条,第十六条,第十七条,第十八条第一項,第十九条,第二十条,第二十二条第四項,第三十二条,第三十四条,第三十五条,第三十六条第一項ただし書,第三十七条,第三十九条,第六十一条,第六十二条,第六十四条の三から第六十七条まで,第七十二条,第七十五条から第七十七条まで,第七十九条,第八十条,第九十四条第二項,第九十六条又は第百四条第二項の規定に違反した者
二  第三十三条第二項,第九十六条の二第二項又は第九十六条の三第一項の規定による命令に違反した者
三  第四十条の規定に基づいて発する厚生労働省令に違反した者
四  第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第六十二条又は第六十四条の三の規定に係る部分に限る。)に違反した者
第120条  次の各号の一に該当する者は,三十万円以下の罰金に処する。
一  第十四条,第十五条第一項若しくは第三項,第十八条第七項,第二十二条第一項から第三項まで,第二十三条から第二十七条まで,第三十二条の二第二項(第三十二条の四第四項及び第三十二条の五第三項において準用する場合を含む。),第三十二条の五第二項,第三十三条第一項ただし書,第三十八条の二第三項(第三十八条の三第二項において準用する場合を含む。),第五十七条から第五十九条まで,第六十四条,第六十八条,第八十九条,第九十条第一項,第九十一条,第九十五条第一項若しくは第二項,第九十六条の二第一項,第百五条(第百条第三項において準用する場合を含む。)又は第百六条から第百九条までの規定に違反した者
二  第七十条の規定に基づいて発する厚生労働省令(第十四条の規定に係る部分に限る。)に違反した者
三  第九十二条第二項又は第九十六条の三第二項の規定による命令に違反した者
四  第百一条(第百条第三項において準用する場合を含む。)の規定による労働基準監督官又は女性主管局長若しくはその指定する所属官吏の臨検を拒み,妨げ,若しくは忌避し,その尋問に対して陳述をせず,若しくは虚偽の陳述をし,帳簿書類の提出をせず,又は虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした者
五  第百四条の二の規定による報告をせず,若しくは虚偽の報告をし,又は出頭しなかつた者

出入国管理及び難民認定法
   第一章 総則
(目的)
第一条  出入国管理及び難民認定法は,本邦に入国し,又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに,難民の認定手続を整備することを目的とする。

別表第一の二


在留資格本邦において行うことができる活動
投資・経営本邦において貿易その他の事業の経営を開始し若しくは本邦におけるこれらの事業に投資してその経営を行い若しくは当該事業の管理に従事し又は本邦においてこれらの事業の経営を開始した外国人(外国法人を含む。以下この項において同じ。)若しくは本邦におけるこれらの事業に投資している外国人に代わつてその経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動(この表の法律・会計業務の項の下欄に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営若しくは管理に従事する活動を除く。)
法律・会計業務外国法事務弁護士,外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動
医療医師,歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動
研究本邦の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動(一の表の教授の項の下欄に掲げる活動を除く。)
教育本邦の小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,特別支援学校,専修学校又は各種学校若しくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動
技術本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学,工学その他の自然科学の分野に属する技術又は知識を要する業務に従事する活動(一の表の教授の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の投資・経営の項,医療の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
人文知識・国際業務本邦の公私の機関との契約に基づいて行う法律学,経済学,社会学その他の人文科学の分野に属する知識を必要とする業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項,芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の投資・経営の項から教育の項まで,企業内転勤の項及び興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
企業内転勤本邦に本店,支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が本邦にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術の項又は人文知識・国際業務の項の下欄に掲げる活動
興行演劇,演芸,演奏,スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動(この表の投資・経営の項の下欄に掲げる活動を除く。)
技能本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動
技能実習一 次のイ又はロのいずれかに該当する活動
 イ 本邦の公私の機関の外国にある事業所の職員又は本邦の公私の機関と法務省令で定める事業上の関係を有する外国の公私の機関の外国にある事業所の職員がこれらの本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関の本邦にある事業所の業務に従事して行う技能,技術若しくは知識(以下「技能等」という。)の修得をする活動(これらの職員がこれらの本邦の公私の機関の本邦にある事業所に受け入れられて行う当該活動に必要な知識の修得をする活動を含む。)
 ロ 法務省令で定める要件に適合する営利を目的としない団体により受け入れられて行う知識の修得及び当該団体の策定した計画に基づき,当該団体の責任及び監理の下に本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関の業務に従事して行う技能等の修得をする活動
二 次のイ又はロのいずれかに該当する活動
 イ 前号イに掲げる活動に従事して技能等を修得した者が,当該技能等に習熟するため,法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関において当該技能等を要する業務に従事する活動
 ロ 前号ロに掲げる活動に従事して技能等を修得した者が,当該技能等に習熟するため,法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関において当該技能等を要する業務に従事する活動(法務省令で定める要件に適合する営利を目的としない団体の責任及び監理の下に当該業務に従事するものに限る。)

刑事訴訟法
第二百四十八条  犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができる。

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