新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.1153、2011/9/14 12:02 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

【刑事・裁判員裁判・公判前整理手続きと問題点・起訴状一本主義の趣旨に反しないか】

質問:私の友人が、コンビニで商品を盗み、その際店員をけがさせてしまい、強盗致傷罪で逮捕されました。裁判員制度について教えて下さい。従来の裁判手続きとどの点で変更になりましたか。特に公判前整理手続はどのようなものですか。問題点はないのですか。

回答:
1. 強盗致傷罪の成否については伺った事情のみでは何とも言い難いところです。具体的な事情によって今後の刑事手続きや刑事処分の見通し、防御方針等が変わってきますので、より詳細な事情を伺う必要があります。仮に強盗致傷罪で起訴された場合、あなたの友人は裁判員裁判の手続きによって審理されることになります。
2.裁判員裁判とは、一般市民の中から選ばれた裁判員が刑事裁判に参加する制度であり、裁判に対する国民の信頼向上が期待されています。事件の審理を数日間で集中的に行うため、公判前整理手続が必要的とされています。
3. 公判前整理手続により、被告人側に広範な証拠開示請求が認められた反面、予断排除の原則や公平な裁判との関係で問題点も指摘されています。
4. あなたの友人の場合、現段階では被害者に対する被害弁償及び検察官との交渉が極めて重要といえます。強盗致傷罪での起訴となった場合、法定刑が「無期または6年以上の懲役」(刑法240条)となっているため実刑を覚悟しなければならないことが多いですが、事案によっては示談の成否や検察官との交渉次第で強盗致傷罪での起訴自体を回避できる場合があります。出来るだけ早く弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。
5.法律相談事例集キーワード検索:裁判員裁判について1064番番、当事者主義、起訴状一本主義について886番参照。

解説:
1.(強盗致傷罪の構成要件該当性)
 逮捕されたあなたの友人には強盗致傷罪の容疑がかけられています。強盗致傷罪とは、強盗犯(暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者)が人を負傷させたときに成立する犯罪であり(刑法240条)、具体的には、@被害者に対して反抗を抑圧するに足りる程度の暴行、脅迫を加え、Aそれにより相手方の反抗を抑圧し、Bこれを手段として被害者の意思によらずに財物の事実上の占有を自己又は第三者に取得させ、かつ、C強盗の機会にされた行為により人に傷害を負わせた場合に成立します。ここでの「強盗」とは、窃盗犯人が財物を取得した後にこれを取り返されることを防ぐ目的で、あるいは逮捕を免れ又は罪証を隠滅する目的で暴行、脅迫を加えた場合を含むとされており(事後強盗)、したがって、これらの目的で暴行、脅迫を行った者がその機会に人を負傷させた場合、やはり強盗致傷罪が成立することになります(刑法238条)。

 あなたの友人は、コンビニで商品を盗んだ際店員にけがをさせてしまったとのことですが、強盗致傷罪の成否については伺った事情のみでは何とも言い難いところです。商品を盗んだ際に店員に対して暴行、脅迫を加えたのか、暴行脅迫を加えたとして、その程度が相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものだったのか、あるいは店員の負ったけがの程度が本罪の「負傷」に該当するのかどうか、といった点の確認、検討が必要となりますので、これらの点につき、より詳しくご事情を伺う必要があります。ただ、本罪は、主に身体生命の安全、自由を保護法益としており、これを確保する趣旨から「強盗の機会」というのは広く解釈されており、傷害の概念もかなり広いことから(全治1週間程度でも)傷害の診断書があれば強盗致傷として起訴されるでしょう。今後捜査が進み、仮に強盗致傷罪で起訴された場合、以下に述べるように、あなたの友人は裁判員裁判の手続きによって審理されることになります。

2.(裁判員裁判制度の概要と特徴)
 裁判員裁判とは、無作為に選ばれた一般市民が裁判員として裁判官とともに刑事訴訟手続きに関与する制度であり、平成21年5月21日に裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(以下、「裁判員法」といいます。)が施行されたことに伴い制度化されました。裁判員裁判においては、事件の審理は原則的に裁判官3名、裁判員6名の合議体で行われ(裁判員法2条2項)、裁判員は裁判官とともに公判に出席して証拠調べを行い(事実の認定)、有罪か無罪かの判断を行い(法令の適用)、有罪の場合には量刑の判断を行う(刑の量定)ことになります。国民の司法参加により、司法に対する国民の理解の増進とその信頼を向上させることが制度の目的です。裁判員裁判の制度趣旨の詳細については、当事務所ホームページ掲載の事例集1064番をご参照頂ければと思います。

 裁判員裁判の対象事件について、裁判員法は、@死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件、A法定合議事件(法律上合議体で裁判することが求められている一定の重大事件)のうち故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係る事件の2種類を定めています(裁判員法2条1項)。本件において、あなたの友人は強盗致傷罪で逮捕されたとのことですが、強盗致傷罪の法定刑は無期又は6年以上の懲役とされており(刑法240条)、「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」に該当するため、あなたの友人が強盗致傷罪で起訴された場合、事件の審理は裁判員裁判の手続きによることになります。

 裁判員裁判の手続きの流れ自体は、基本的に裁判官のみによる通常の裁判手続きと同じです。すなわち、公判においては、まず被告人に対する人定質問、検察官による起訴状朗読、被告人に対する権利告知、被告人に対する陳述の機会の付与という一連の手続きが行われます(冒頭手続)。これに続いて、検察官及び弁護人が証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張を明らかにした上で(冒頭陳述)、書証や人証等の証拠の取り調べが行われます(証拠調べ)。検察官及び弁護人は、証拠調べの手続きを踏まえてそれぞれの最終的な主張を行い(論告、弁論)、裁判員はこれら一連の手続きを踏まえた上で裁判官とともに判決の内容について話し合いを行うことになります(評議)。この評議の過程で、裁判員の意見が最終的に言い渡される判決の内容に反映されることになります。

 通常の裁判手続きと異なる特徴としては、検察官及び弁護人による説明が裁判員に分かり易い方法によって行われること(例えば、尚、弁護人の量刑意見については当該事件に関連する過去の判例を裁判所で調査し、裁判員にわかりやすく説明することが可能になっています。)、できる限り連日的に開廷され、事件の審理が数日間で集中的に行われることなどが挙げられます。このような審理に対応するため、裁判員裁判にあたっては、公判期日に先立って争点及び証拠の整理手続(公判前整理手続)を行わなければならないこととされています(裁判員法49条)。

3.(公判前整理手続の概要)
 公判前整理手続とは、裁判所が「充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行う必要がある」と認めたときに行われる「事件の争点及び証拠を整理するための公判準備」のための手続きのことであり、裁判員制度の導入を見越し、平成17年11月の改正刑事訴訟法の施行に伴い導入されました(刑事訴訟法(以下、「刑訴法」といいます。)316条の2第1項)。裁判員裁判においては、とりわけ連日的開廷による集中審理の要請が強く、継続的な証拠調べによる充実した審理を実現するためには予め事件の争点を明らかにし、公判で取り調べる証拠を決定した上で、明確な審理計画を策定することが不可欠であることから、裁判員裁判対象事件については第1回公判期日前に必ず公判前整理手続に付さなければならないとされているのです(裁判員法49条)。

 公判前整理手続においては、公判での審理予定を策定するため、裁判所主宰の下、以下のようなことが行われます(刑訴法316条の5)。
・訴因(検察官が審判を求める具体的事実の主張)、罰条の明確化及び追加、撤回、変更の許可
・公判期日に予定している主張の明確化、事件の争点の整理
・証拠調べの請求をさせ、その証拠についての立証趣旨、尋問事項等を明らかにさせること
・証拠調べの請求に関する意見の確認
・証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をすること
・証拠調べの順序、方法を定めること
・証拠開示に関する裁定
・公判期日の指定、変更、その他公判手続の進行上必要な事項を定めること

(公判前整理手続の流れ)
 この制度においては、事件の争点を明らかにするために、検察官と被告人又は弁護人の双方に一定の証拠開示義務が課せられており、具体的には以下のように段階的に開示がなされていくことになります。
 事件が公判前整理手続に付された場合、まず検察官が公判期日において証拠によって証明しようとする事実(証明予定事実)を記した書面を裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付し、公判で証明しようとする事実を明らかにした上で、裁判所に対して証拠調べ請求をすることになります(刑訴法316条の13)。
 当該証拠は速やかに被告人又は弁護人に対して開示するものとされ(刑訴法316条の14)、被告人側としてはこれを受けて、開示されていない検察官手持ち証拠のうち、法の定める一定の類型のいずれかに該当するもの(証拠物、検証調書、実況見分調書、鑑定書、検察官が証人尋問請求した者の供述録取書、被告人の供述録取書等)につき開示請求できることとされています。これらの類型に該当する証拠は類型証拠と呼ばれ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要かつ相当と認められる場合、速やかに開示されなければならないとされています(刑訴法316条の15)。

 次に、被告人又は弁護人は、被告人側としての証明予定事実及び公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張を明らかにするとともに、裁判所に対する証拠調べ請求及び検察官に対する証拠開示をなすこととされており(刑訴法316条の17、316条の18)、これにより事件の争点が明らかになります。
 さらに、被告人又は弁護人は、当該主張に関連する検察官手持ち証拠(主張関連証拠)についても開示請求することができ、検察官は相当と認められるときは速やかに開示しなければならないとされています(刑訴法316条の20)。
 
 開示対象となる証拠の範囲については議論があるところですが、この点については最決平成19年12月25日が「証拠開示命令の対象となる証拠は、必ずしも検察官が現に保管している証拠に限られず、当該事件の捜査の過程で作成され、又は入手した書面等であって、公務員が職務上現に保管し、かつ、検察官において入手が容易なものを含むと解するのが相当である。」との判断を示したことが注目に値します。事件の争点を明らかにし、証拠調べを有効かつ効率的に行うことで公判審理の充実を図るという証拠開示制度の趣旨からすれば、証拠開示の対象は検察官が現に保管する証拠に限定されないというべきことになります。

 上記のように、被告人側に段階的かつ広範な証拠開示請求が認められたことにより、被告人側としては従前であれば入手が困難であった一定の証拠についても開示を受けることが可能となりました。公判に向けてより一層の防御を尽くすことが可能になったといえ、この点では被告人側に有利な制度といえるでしょう。

(公判前整理手続の問題点)
 他方、本手続はとりわけ公平な裁判との関係で全く問題がないわけではありません。
 刑事訴訟法上、起訴状には、裁判官に事件について予断を生ぜしめるおそれのある書類その他の物を添付し又はその内容を引用してはならないとされています(刑訴法256条6項)。これは、起訴状に捜査機関側の資料が添付されると、裁判所が有罪の心証を持った状態で審理を開始することとなり、不公平な裁判がなされる危険があることから、裁判所が公判前に事件についての心証を形成することを防止するために制度化されたものであり(予断排除の原則)、起訴にあたっては事件を特定するための最低限の内容のみを記載した起訴状だけを裁判所に提出することから、起訴状一本主義と呼ばれています。

 この建前は、捜査機関の持つ有罪の心証が裁判所に一方的に引き継がれることを防止するために、裁判所に白紙の状態で審理を始めることを要請するものであり、証拠裁判主義や「疑わしきは被告人の利益に」といった刑事裁判の原則を実質的に担保し、憲法37条1項の保障する公平な裁判所を実現する上で不可欠な原則ということができます(解釈上、公平な裁判所とは具体的裁判内容の公平性ではなく、当事者の一方に不当に利益、不利益な裁判手続をする恐れがない裁判所を意味しますので、起訴状一本主義は当事者主義を基本とした公平な裁判所を実質的に手続保障することになります。具体的には、証人尋問における反対尋問権の保障(刑事訴訟法304条2項)や、証拠調べ手続における異議申立権(刑事訴訟法309条1項)、証拠の証明力を争う機会(刑事訴訟法308条)などが法定されています。これらの手続保障が無い状態での事実上の証拠調べを排斥するのが起訴状一本主義です。)。

 ところで、公判前整理手続において、裁判所は検察官や弁護人に対して証拠調べの請求をさせ、証拠調べをする決定をし、証拠調べをする決定をした証拠については取り調べの順序及び方法を定めるといった積極的・主体的な関与をするため、手続きの過程において証拠の内容を事実上把握できてしまうことになります。したがって、このことが上記予断排除の原則に反しないかが問題となるのです。
 この点、裁判実務においては、公判前整理手続の目的が犯罪事実の有無等に関する心証の形成ではなく、事件の争点や証拠の整理の点にあること、検察官のみならず被告人側も含めた両当事者が関与する中で行われるため、捜査機関の心証を一方的に引き継ぐものではないこと等を根拠に、公判前整理手続は予断排除の原則に反しないという理解を前提に運用されているようです。

 しかし、裁判官が第1回公判期日前に事実上予断を抱きうるか否かという問題において、手続関与が検察官による一方的なものか当事者双方によるものかといった点は必ずしも重要ではなく、手続きの目的如何についても有罪の心証形成の危険性との関係では明らかに無関係と言わざるを得ません。
 したがって、裁判官が事実上事件について予断を抱きうる以上、公判前整理手続は予断排除の原則に抵触するおそれが高く、少なくとも公平な裁判所の裁判を受ける権利(憲法37条1項)は制度的に一歩後退しているといわざるを得ないでしょう。

4.(本件における対応)
 あなたの友人の場合、今後の刑事手続きの見通しについては、強盗致傷罪に当たるのか、裁判員裁判によって審理されるのかといった点を含め、伺った事情のみでは何とも言えないところです。しかし、いずれにしても現段階では出来るだけ早く弁護士に相談の上、被害者(本件の場合、コンビニ及び店員)との示談交渉及び検察官交渉を行うことを検討すべきです。
 強盗致傷罪は前記のとおり、無期又は6年以上の懲役に当たる重い罪ですが、捜査段階で被害者との間で円満に示談を成立させることができれば、具体的事情にもよりますが、検察段階で不起訴処分(起訴猶予)となる可能性も十分ありえます。また、たとえ起訴されてしまう場合であっても、暴行、脅迫の具体的態様や被害者の傷害の程度等によっては、検察官に対し強盗致傷罪より軽い窃盗罪及び傷害罪での処分をするよう働きかけが可能な場合も考えられます。

 強盗致傷罪で起訴された場合、一般論として執行猶予判決を獲得することはかなり困難になる上、前記のとおり、裁判員裁判においては量刑に裁判員の意見が反映される結果、想定される量刑相場を逸脱した思いもよらない重い判決が下される可能性もないとはいえないため、弁護士による被害弁償の示談交渉や捜査機関との交渉といった活動が極めて重要となります。勿論、傷害の程度にもよりますが、被告人に前科がなく、被害者との示談ができて、被害者の宥恕(被告人を許すこと)の意思表示がなされれば、執行猶予の可能性は高くなります。
 したがって、起訴されて裁判となる場合はもちろんのこと、起訴前の段階においても一刻も早く弁護士に相談されることを強くお勧めいたします。

≪参照条文≫

憲法
第三十七条  すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。

刑法
(執行猶予)
第二十五条  次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その執行を猶予することができる。
一  前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2  前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
(酌量減軽)
第六十六条  犯罪の情状に酌量すベきものがあるときは、その刑を減軽することができる。
(法律上の減軽の方法)
第六十八条  法律上刑を減軽すべき一個又は二個以上の事由があるときは、次の例による。
二  無期の懲役又は禁錮を減軽するときは、七年以上の有期の懲役又は禁錮とする。
三  有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。
(酌量減軽の方法)
第七十一条  酌量減軽をするときも、第六十八条及び前条の例による。
(事後強盗)
第二百三十八条  窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
(強盗致死傷)
第二百四十条  強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

刑事訴訟法
第二百五十六条  公訴の提起は、起訴状を提出してこれをしなければならない。
○2  起訴状には、左の事項を記載しなければならない。
一  被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項
二  公訴事実
三  罪名
○6  起訴状には、裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添附し、又はその内容を引用してはならない。
第二百九十三条  証拠調が終つた後、検察官は、事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない。
○2  被告人及び弁護人は、意見を陳述することができる。
第三百十六条の二  裁判所は、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うため必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴いて、第一回公判期日前に、決定で、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、事件を公判前整理手続に付することができる。
第三百十六条の五  公判前整理手続においては、次に掲げる事項を行うことができる。 一  訴因又は罰条を明確にさせること。
二  訴因又は罰条の追加、撤回又は変更を許すこと。
三  公判期日においてすることを予定している主張を明らかにさせて事件の争点を整理すること。
四  証拠調べの請求をさせること。
五  前号の請求に係る証拠について、その立証趣旨、尋問事項等を明らかにさせること。
六  証拠調べの請求に関する意見(証拠書類について第三百二十六条の同意をするかどうかの意見を含む。)を確かめること。
七  証拠調べをする決定又は証拠調べの請求を却下する決定をすること。
八  証拠調べをする決定をした証拠について、その取調べの順序及び方法を定めること。
九  証拠調べに関する異議の申立てに対して決定をすること。
十  第三目の定めるところにより証拠開示に関する裁定をすること。
十一  第三百十六条の三十三第一項の規定による被告事件の手続への参加の申出に対する決定又は当該決定を取り消す決定をすること。
十二  公判期日を定め、又は変更することその他公判手続の進行上必要な事項を定めること。
第三百十六条の十三  検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実(公判期日において証拠により証明しようとする事実をいう。以下同じ。)を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない。この場合においては、当該書面には、証拠とすることができず、又は証拠としてその取調べを請求する意思のない資料に基づいて、裁判所に事件について偏見又は予断を生じさせるおそれのある事項を記載することができない。
○2  検察官は、前項の証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。
第三百十六条の十四  検察官は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠(以下「検察官請求証拠」という。)については、速やかに、被告人又は弁護人に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
一  証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
二  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等(供述書、供述を録取した書面で供述者の署名若しくは押印のあるもの又は映像若しくは音声を記録することができる記録媒体であつて供述を記録したものをいう。以下同じ。)のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧する機会(弁護人に対しては、閲覧し、かつ、謄写する機会)を与えること。
第三百十六条の十五  検察官は、前条の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、次の各号に掲げる証拠の類型のいずれかに該当し、かつ、特定の検察官請求証拠の証明力を判断するために重要であると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その重要性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、同条第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
一  証拠物
二  第三百二十一条第二項に規定する裁判所又は裁判官の検証の結果を記載した書面
三  第三百二十一条第三項に規定する書面又はこれに準ずる書面
四  第三百二十一条第四項に規定する書面又はこれに準ずる書面
五  次に掲げる者の供述録取書等
イ 検察官が証人として尋問を請求した者
ロ 検察官が取調べを請求した供述録取書等の供述者であつて、当該供述録取書等が第三百二十六条の同意がされない場合には、検察官が証人として尋問を請求することを予定しているもの
六  前号に掲げるもののほか、被告人以外の者の供述録取書等であつて、検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの七  被告人の供述録取書等
八  取調べ状況の記録に関する準則に基づき、検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務上作成することを義務付けられている書面であつて、身体の拘束を受けている者の取調べに関し、その年月日、時間、場所その他の取調べの状況を記録したもの(被告人に係るものに限る。)
第三百十六条の十七  被告人又は弁護人は、第三百十六条の十三第一項の書面の送付を受け、かつ、第三百十六条の十四及び第三百十六条の十五第一項の規定による開示をすべき証拠の開示を受けた場合において、その証明予定事実その他の公判期日においてすることを予定している事実上及び法律上の主張があるときは、裁判所及び検察官に対し、これを明らかにしなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第一項後段の規定を準用する。
○2  被告人又は弁護人は、前項の証明予定事実があるときは、これを証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない。この場合においては、第三百十六条の十三第三項の規定を準用する。
第三百十六条の十八  被告人又は弁護人は、前条第二項の規定により取調べを請求した証拠については、速やかに、検察官に対し、次の各号に掲げる証拠の区分に応じ、当該各号に定める方法による開示をしなければならない。
一  証拠書類又は証拠物 当該証拠書類又は証拠物を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。
二  証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人 その氏名及び住居を知る機会を与え、かつ、その者の供述録取書等のうち、その者が公判期日において供述すると思料する内容が明らかになるもの(当該供述録取書等が存在しないとき、又はこれを閲覧させることが相当でないと認めるときにあつては、その者が公判期日において供述すると思料する内容の要旨を記載した書面)を閲覧し、かつ、謄写する機会を与えること。
第三百十六条の二十  検察官は、第三百十六条の十四及び第三百十六条の十五第一項の規定による開示をした証拠以外の証拠であつて、第三百十六条の十七第一項の主張に関連すると認められるものについて、被告人又は弁護人から開示の請求があつた場合において、その関連性の程度その他の被告人の防御の準備のために当該開示をすることの必要性の程度並びに当該開示によつて生じるおそれのある弊害の内容及び程度を考慮し、相当と認めるときは、速やかに、第三百十六条の十四第一号に定める方法による開示をしなければならない。この場合において、検察官は、必要と認めるときは、開示の時期若しくは方法を指定し、又は条件を付することができる。
第三百十六条の三十  公判前整理手続に付された事件については、被告人又は弁護人は、証拠により証明すべき事実その他の事実上及び法律上の主張があるときは、第二百九十六条の手続に引き続き、これを明らかにしなければならない。この場合においては、同条ただし書の規定を準用する。

裁判員の参加する刑事裁判に関する法律
(趣旨)
第一条  この法律は、国民の中から選任された裁判員が裁判官と共に刑事訴訟手続に関与することが司法に対する国民の理解の増進とその信頼の向上に資することにかんがみ、裁判員の参加する刑事裁判に関し、裁判所法 (昭和二十二年法律第五十九号)及び刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の特則その他の必要な事項を定めるものとする。
(対象事件及び合議体の構成)
第二条  地方裁判所は、次に掲げる事件については、次条の決定があった場合を除き、この法律の定めるところにより裁判員の参加する合議体が構成された後は、裁判所法第二十六条 の規定にかかわらず、裁判員の参加する合議体でこれを取り扱う。
一  死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件
二  裁判所法第二十六条第二項第二号 に掲げる事件であって、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るもの(前号に該当するものを除く。)
2  前項の合議体の裁判官の員数は三人、裁判員の員数は六人とし、裁判官のうち一人を裁判長とする。ただし、次項の決定があったときは、裁判官の員数は一人、裁判員の員数は四人とし、裁判官を裁判長とする。
3  第一項の規定により同項の合議体で取り扱うべき事件(以下「対象事件」という。)のうち、公判前整理手続による争点及び証拠の整理において公訴事実について争いがないと認められ、事件の内容その他の事情を考慮して適当と認められるものについては、裁判所は、裁判官一人及び裁判員四人から成る合議体を構成して審理及び裁判をする旨の決定をすることができる。
(公判前整理手続)
第四十九条  裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。
(評議)
第六十六条  第二条第一項の合議体における裁判員の関与する判断のための評議は、構成裁判官及び裁判員が行う。
2  裁判員は、前項の評議に出席し、意見を述べなければならない。
3  裁判長は、必要と認めるときは、第一項の評議において、裁判員に対し、構成裁判官の合議による法令の解釈に係る判断及び訴訟手続に関する判断を示さなければならない。
4  裁判員は、前項の判断が示された場合には、これに従ってその職務を行わなければならない。
5  裁判長は、第一項の評議において、裁判員に対して必要な法令に関する説明を丁寧に行うとともに、評議を裁判員に分かりやすいものとなるように整理し、裁判員が発言する機会を十分に設けるなど、裁判員がその職責を十分に果たすことができるように配慮しなければならない。
(評決)
第六十七条  前条第一項の評議における裁判員の関与する判断は、裁判所法第七十七条 の規定にかかわらず、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見による。
2  刑の量定について意見が分かれ、その説が各々、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見にならないときは、その合議体の判断は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見になるまで、被告人に最も不利な意見の数を順次利益な意見の数に加え、その中で最も利益な意見による。

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