新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.656、2007/8/7 10:06 https://www.shinginza.com/qa-souzoku.htm

【相続・相続人が行方不明の場合・失踪宣告・不在者の財産管理人・不動産登記の方法】

質問:先日、父が亡くなりました。相続人は私1人で、財産は、住んでいた不動産があるだけですが、戸籍を調べたところ、父には、認知した子どもがいることが判明しました。今後どのようにしたら良いでしょうか。その不動産を私に「贈与する」というという遺言がある場合はどうでしょうか。

回答:
1.遺言がなければ、基本的には相続分に従って、共同相続することになります。認知された子供は、嫡出子の相続分の半分ですから、相続人が、あなたと、認知された子供だけというような場合には、それぞれ、2/3、1/3の割合で共同相続することになります。共有の持分の登記は、保存行為にあたるので(民法254条但し書き)、共同相続人1人で申請することが可能です。ただ、上記の方法では、あなたの単独名義の登記をすることはできません。

2.単独名義にする方法として、そのお父さんが認知した子と連絡がつくのであれば、連絡を取って、遺産分割の協議をすることになります。その際、認知した子との間で、あなたの単独名義にするということで、合意が取れるかどうかは、ケースバイケースというほかありません。通常、相手としても、権利を主張することが多いでしょうから、持分に相当する金員を代償として支払って解決するということも考えなければならないでしょう。

合意が整えば、遺産分割協議書を作成し、実印と印鑑証明を添えて法務局で登記移転の請求をします。尚、本件は相続人が2人ですが、相続人が御兄弟(多数の)の代襲相続などのように多人数の場合は、各人から個別的に相続分なき証明書という文書(実印と印鑑証明をつけて)を受け取り申請も出来ます。勿論単独相続にするため文書に表示はしませんが代償の金員を支払う事になります。遺産分割協議書の形式でも出来ますし、協議書面は1通である必要がなく個別的に何通も作成しても有効ですから地方に相続人が分散している場合などはその方式の方が便利です(協議書を1通ですると他の相続人に郵送した場合に隠匿毀損の危険性が残ります)。

3.@相手と連絡が取れないような場合には、遺産分割協議ができないので、単独名義にするため別の方法を考えなければなりません。お父さんが認知した子が7年以上生死不明の場合には、「利害関係人」として失踪宣告(30条)を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、「生死不明の時」から7年経過した時点で死亡したものとみなされることになります。

お父さんが認知した子に相続人がいなければ、あなたが単独相続したことになりますが、相続人がいる場合には、その者が代襲相続することになりますので、結局、代襲相続したものと遺産分割協議をする必要がでてきます。ところで本件の場合、戸籍上調査により認知された子供が発見されたのですから申し立てる場合失踪宣告の7年の算定開始時期を何時にするか問題となります。7年の起算時期は捜索願などの公的証明又はこれに順ずる証明があった時と解釈されています。失踪宣告は不在者を死亡とみなし失踪者の財産を他の相続人に引き継がせるののですから不在者の利害に大きく関わるため起算時期を厳格にしなければなりません。しかし、本件の場合、そのような手続きはとられていることを証明できないと思いますので申し立て自体ができない可能性もあります。

Aそこで、7年以上、生死不明ということが証明できなければ、失踪宣告はできないので、そのような場合には、「利害関係人」として、不在者の財産管理人を選任してもらうように請求する(25条)という方法が考えられます。

選任された財産管理人が、遺産分割協議を成立させるには、家庭裁判所の許可が必要ということにはなりますが、状況によっては、財産管理人との間で、あなたの単独名義とする遺産分割協議を成立させることが可能と思われます。管理人を誰にするかという問題がありますが、貴方は、本件土地の単独所有とすることを希望するようであれば不在者の不動産相続持分の買い取りという形になりますから(不動産を売却し金銭分割の場合も)、公正な価格査定を円滑にするためし知り合いの弁護士さんを推薦するかたちで申し立てる方法もあります。管理人の報酬は持分の処分金の中から裁判所の許可を得て支払われます(29条2項)からその点心配は要りません。

4.最後に、あなたに「贈与する」という遺言がある場合ですが、遺言を添付して、法務局に登記申請をしようとしても、「贈与する」という文言だとすると「遺贈」と解釈されますから、実務上、登記義務者は相続人全員という扱いになり、お父さんに認知されたという子の実印、印鑑証明等が必要となります。そして、協力が得られないのであれば、登記移転訴訟を提起し、債務名義を経て、はじめて登記を移転することが可能となります。なお、「相続させる」という文言の場合には、検認を経た遺言を添付すれば、当該不動産の承継を受けた相続人が単独で登記申請できるというのが登記実務の扱いです。尚、遺言書で遺言執行者が決まっていれば、執行者の印鑑証明を添付して移転登記手続きする事もできます。

≪参考条文≫

(失踪の宣告)
第三十条  不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
2  戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
(不在者の財産の管理)
第二十五条  従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2  前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。

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