新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.625、2007/5/30 10:47 https://www.shinginza.com/rikon/index.htm

【民事・親族・離婚・婚姻費用の貯蓄した一部も財産分与の対象になるか】

質問:今、夫から、性格が合わないから離婚したいと言われていますが、離婚するだけでなく、私名義の貯金もあるだろうと言われ、夫婦の財産だから半分渡すようにと言われています。結婚してから、収入は全て夫自身が管理し、私は、専業主婦として、夫から毎月生活費をもらって生活の出費に充てていましたが、夫はお金をすぐ使ってしまう人なので、計画的に貯蓄をしているとは思えず、将来が心配だったので、少しずつではありますが、やりくりをしたへそくりから、貯金をしてきました。お金があると言えば夫に使われてしまう、と思い、こっそり貯めていました。それでも、おそらく、離婚して別居する、私自身の転居費用程度にしかならないと思います。私も、離婚には応じてもかまわないと思いますが、このわずかな貯金まで、渡さなければいけないものでしょうか。私には他に資産もなく、仕事の目途もたたないので、生活ができなくなってしまいます。

回答:
1.離婚に際して、それまでの夫婦双方の共有財産について、財産分与として精算をする場合(民法768条)、その精算割合の基準が問題となります。厳密には、どちらがどれだけ財産の形成に貢献したかは、それぞれの夫婦によって異なるはずですが、そういった個別の家庭内の事情を、詳細に裁判で立証、認定していくのは、実際には困難ですから、結局、等分に、2分の1ずつとされる例が多いと思います。過去の裁判例を見ますと、共稼ぎの夫婦では、どちらかが自らの特殊技能で高収入を上げているような特別な例を除けば、やはり2分の1が多く、専業主婦ですと、少し割合が下がる場合もありますが、裁判の前に行われることが多い調停の段階では、専業主婦であっても、2分の1を基本に話し合いが進められることが多いというのが実感です。

2.確かに、奥様がこれまでこつこつと貯めてこられた貯金については、むしろ、奥様の努力により形成された、というお気持ちもおありかと存じますが、ご主人様のご収入から形成されたという面も否定できません。夫婦が婚姻費用の分担として金銭を拠出し、家計費に充てられた後の剰余金を生じた場合には、拠出した者の特有財産になるのではなく、夫婦間では共有財産になるという裁判例(東京地裁昭和46年1月18日判決)から考えても、清算方法としては、夫婦共有財産として、半分ずつ分ける、という判断が基本になるとは思います。

3.ただ、そうはいっても、奥様も、これまで専業主婦を続けてこられたのですから、離婚するからといって、そのような精算だけで、あとは自力で生活を、といわれても難しい場合もあります。財産分与は、この精算的側面だけでなく、どちらか一方だけが生活に困窮することのないよう、扶養的な側面も、補充的に認められる場合があります。ご主人自身の資産、収入も乏しければ、結局は、あまり期待できないのですが、この貯金の半額では転居すらできないので、全額、あるいはもう少し割合を増額できないか、という交渉も考えられると思います。また、性格の不一致だけで、すぐ法的に離婚するのは難しいことも多いですから、将来の生活の保障もないので離婚に応じられない、とご主人様に伝えて、交渉でこちらの取り分の増額を図ることも考えられます。ご主人様に、離婚に応じるだろう、と思われると、この交渉は難航します。離婚に応じると伝える前に、どう応じていくかの、進め方が大事になってきます。まずは、お近くの法律事務所に、ご相談下さい。

≪参考条文≫

(財産分与)
第七百六十八条  協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。
2  前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。
3  前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

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