新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.426、2006/6/14 10:51 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

[債務整理・破産]
質問:2ヶ月前に、弁護士に破産申立を依頼しました。弁護士は、債権者にすぐさま通知を出してくれたので、債権者への支払が止まりました。支払がなくなったおかげでお金に余裕ができてきたので、新しいパソコンを買おうと思うのですが、問題ありませんか?破産した後は、財産は自由に使ってかまわないと聞いたことがあるのですが・・・

回答:
1、通常、弁護士が破産申立を含む債務整理を受任した場合、各債権者に受任通知(介入通知とも呼びます)を送ります。たいていの場合、これが送られると、債権者からの督促はストップします。しかし、これは法的には、弁護士が介入したことを通知するだけの効力しかありません。ではなぜ督促が止まるのかというと、貸金業者などは、弁護士が債務整理のために介入した場合は、弁護士の業務に協力すべきであり、督促などをしてはならないという貸金業のガイドラインを遵守しているからです(事務ガイドラインは法律ではありませんので、強制力はありませんが、大抵の業者は遵守します)。また、「破産した後の財産は自由・・・」という点についてですが、破産手続は、破産決定までに存在した債務について、破産決定までに存在した財産で弁済することで、残額の免除を得るのが基本です。したがって、破産決定が出た後のお給料などについて、差し押さえを受けたりする心配はなく、原則として決定後の財産は自由にできます(管財手続の内容によっては、追加の金銭を要求されることがありますので、一概には断定はできません)。
2、しかし、これはあくまで「破産決定後」の話であり、「受任通知後」のことではありません。通常、弁護士に債務整理を依頼し、破産申立が方針として選択されたとした場合、弁護士は破産申立に必要な情報や資料を集め、裁判所に提出する申立書を作成します。その申立書を裁判所に提出し、裁判所がこれを受理して「破産決定」を出します。つまり、弁護士が「受任通知」を出していても、まだ破産決定が出たと言うわけではありません。申立の準備をしている段階であり、破産決定の前段階です。
3、すでに購入してしまったパソコンの処理についてですが、管財人が、破産者の財産を減少させ、債権者間に不公平をもたらす行為であると判断した場合、否認権(160条以下)を行使することにより、当該取引の効力を否定する場合があります。また、ローンで購入した場合には、破産者には購入代金の債務が残り、物にはローン会社の所有権留保が付いているのが通常ですから、商品を返還し、債務を清算し、残債が残る場合には破産手続きに組み込まれることになります(破産手続を予定しており、債務を支払えないことを認識していながらローンを組んだ場合、詐欺罪などに該当する可能性もあります)。現金で購入した場合で、当該商品が破産者が生活するうえでなくてはならないものである場合には、日常生活に必要な経済活動として、商品の保持が許される場合もありますが、20万円を超える高価な物の場合、日用品の購入であるという判断は出にくいと考えられ、いずれにせよ購入したパソコンを保持できる可能性は低いといえるでしょう。
4、そして、破産決定の直前に、高価な財産(20万円程度)を処分したり購入したりした事実があると、破産することを知りながら各債権者に不公平な経済行為をしたことになり、購入した財産を保持できないばかりではなく、免責不許可事由に該当するとして免責を受けられない可能性が生じたり、破産手続きに様々な悪影響を及ぼします。
5、相談者の場合、依頼した弁護士が破産申立まで完了しているかどうか定かではありませんが、申立準備には1〜2ヶ月かかることもありますので、申立未了の可能性が高いと思われます。パソコンなどの高価な物品を購入するときは、買っても構わないか依頼している弁護士に必ず確認を取ってから購入するようにしましょう。

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