新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.287、2005/8/19 10:45 https://www.shinginza.com/qa-sarakin.htm

[民事・消費者]
質問:私の祖母は、経済的に苦しく借金があるらしいのですが、どうも年金の入ってくる通帳を業者に預けてしまっているようです。借りたものは返さなければならないのだとは思いますが、祖母にも生活があります。「高齢者支援」、という宣伝文句の業者から借りたようなのですが、このような業者を罰したり、通帳を返してもらうことはできないものでしょうか。カードも預けてしまっているようです。

回答:
1、最近、高齢で年金生活を送っている方々から、受給している年金を事実上担保にとって、高利の貸付を行う、いわゆる年金担保融資というものが一部の貸金業者によって行われ、社会問題となっています。手口としては、ご質問のように、「高齢者支援」「高齢者・年金生活者でもOK」などといううたい文句で利用者を誘い、申込者に対し、国民年金証書や、年金が振り込まれる銀行口座の通帳、カードなどを差し出すことを条件に貸し出しを行います。業者は、定期的に振り込まれる年金を一方的に引き出して、利用者には一切渡さないことも多く、利用者はますます経済的に困窮してしまうのです。
2、そもそも、年金などの社会保障に関連する金銭の受給権は、原則として、その性質上、譲渡、担保差し入れ、差押が禁止されています。公的年金は、原則として差押が法律で禁止されています(国民年金法第24条、厚生年金法第41条1項等)。しかし、ここでいう禁止とは、民事上無効というだけで、刑事上違法な行為とまではされていませんでした。すなわち、実際に年金を担保に取られてしまった場合、裁判所を利用して民事上の手続を行えば、担保差し入れを無効とすることは可能ですが、担保に取った業者を罰することはできなかったのです。さらに、前述したような、預金通帳を預かるという行為の場合、預かった通帳から、本人に代わって預金(年金)を引き出し、本人から受け取ったという形を装うことができる(受給する権利を担保に取ったわけではなく、代わりに引き出してあげて、現金を受け取ったことにしている)ため、この規制にさえかからない場合もあるのです。
3、このような状況を改善するため、平成16年12月から、「貸金業の規制等に関する法律の一部を改正する法律」が施行されました。これにより、貸金業者が、公的な年金、手当等の受給権者の借り入れ意欲をそそるような表示又は説明をしてはならないと規定されました(16条2項4号)。これは、一般的に「借り入れが容易であることを過度に強調すること」を禁止している(16条2項3号)ことと比べて、「過度」でなくても規制の対称にしている点で、年金などの受給権を保護する趣旨を強めているといえます。また、違反した場合には、同法36条、48条などにより、業務停止、刑事罰などの処罰も予定されています。
4、次に、貸金業を営む者は、貸付の契約について、公的給付がその受給者である債務者等または債務者の親族その他の者の預金又は貯金口座に払い込まれた場合に当該預金又は貯金の口座にかかる資金から当該貸付の契約に基づく債権の弁済を受けることを目的として、その者の預金通帳等の引渡し若しくは提供を求め、又はこれらを保管してはならないこととする、という規制もなされました。公的給付とは、国民年金など、前述した差押等が禁止されている権利のことです。また、預金通帳等というのは、通帳、カード、証書、暗証番号なども含みます(20条の2、24条から24条の6まで)。このような保管等の制限に違反して、当該預金通帳等の引渡しもしくは提供を求めたり、保管したりしたものについては、一年以下の懲役または300万円以下の罰金などの罰則があります(48条5号の2)。
5、このように、貸金業者が公的年金の証書や振込口座の通帳などの提供を要求したり、保管したりすることが規制の対象になっているので、要求された場合はもちろん断ることができます。また、質問のように、現在保管されている場合も、刑事告訴などしかるべき手続をとれば取り戻すことは可能だと思われます。また、実質的な対抗策として、年金の振込先を変更することも考えられるとよいでしょう(ご本人であれば自由にできます。担保に取ることが禁止されているので、貸金業者の許可も要りません)。さらに、弁護士に依頼すれば、罰則があることを前提として、業者と交渉して(交渉で解決できれば、裁判等よりも時間的に早く解決できます)通帳等を取り戻すことができる可能性もあります。このような被害に遭われている方は、お早めにお近くの弁護士にご相談ください。

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