新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.232、2005/3/22 10:58 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・違法性]
質問:他人のパスワードを盗用し、不正に他人のコンピューターを作動させたり、侵入防護壁を破って侵入する行為は、違法なのでしょうか。

回答:
1、平成12年2月13日より、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」が施行されており、ご質問の行為はこの法律に触れる可能性が高い行為です。同法8条1号、3条は「不正アクセス行為をした者」は1年以下の懲役又は、50万円以下の罰金に処すると定め、また、同法9条、4条は「不正アクセス行為を助長した者」は30万円以下の罰金に処すると定めています。ここで、「不正アクセス行為」というのは同法3条2項各号に定めてありますが、簡単にいえば、ここで禁止されるのは@コンピューターにアクセス制限がついている場合にA他人になりすます行為あるいはその他の行為によってB制限がされているにもかかわらず利用することです。これらの行為はアクセス管理権者あるいは利用権者の承諾がない場合には違法ということになります。ここで、「なりすます行為」というのは、コンピューターの正規の利用者である他人の識別符号(ID・パスワードなど)を無断で入力して、コンピューターを利用可能にする行為をいい、「その他の行為」とは上記以外の情報・指令をコンピューターに与える行為、例えば、コンピューターの安全対策上の不備(セキュリティ・ホール)や侵入防護壁(ファイア・ウォール)を攻撃するなどして、コンピューターを利用可能にする行為などが考えられます。
2、したがって、ご質問の行為は、まさに「不正アクセス行為」にあたり、刑罰の対象となるので、注意してください。例えそれが、自分の技術を試したいなどの動機での行為で、利益目的や加害目的がない場合であっても、免責されることはありません。なお、不正アクセス行為を助長する行為とは、上記を助けるような行為、例えば、他人のIDを無断で第3者に提供する行為を指します。この助長行為については、その提供の手段や有償・無償を問わず、処罰の対象とされています。
3、上記法律は「アクセス行為」自体を罰するものですが,さらにアクセスするだけにとどまらず,アクセス先のコンピューターに不正データを入力し,又は正規のデータを消去するような場合には,刑法犯として処罰される場合も考えられます。
(1)電子計算機使用詐欺(刑法246条2項)
@人が事務処理に使用するコンピューターにA虚偽の情報もしくは不正な指令を与えてB人の財産の取得・喪失・変更等に関する虚偽のデータを作成する等してC自己又は他人が不法の財産上の利益を得たような場合に成立します。コンピューターにアクセス制限がかかっているかは問いませんが,娯楽用のコンピユーターの場合は該当しませんし,また,実際に不法の利益を得なければ未遂罪という点などが異なるところです。例えば,@金融機関が業務に使用しているコンピューターにA入金がないのに入金したとのデータを入力して,B金融機関の元帳ファイルに一定額の預金残高があるように作出し,Cその預金を引き出せるような地位を取得した場合には同条より10年以下の懲役刑が科されることになります。
(2)電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条2項)
@人が業務に使用するコンピューターにA虚偽の情報もしくは不正な指令を与えてBコンピューターを使用目的と異なる動作をさせてC人の業務を妨害した場合に成立します。Aに関して,もともとあったデータを消去して,BCの結果を発生させる場合も本条にあたるとされており,いずれの場合も5年以下の懲役刑または100万円以下の罰金刑が科されることになります。本条には未遂犯を処罰する規定はありませんから業務を妨害するという結果が生じなければ犯罪は成立しませんが(3)の電磁的記録毀棄罪が成立する可能性があります。
(3)電磁的記録毀棄(刑法258条,259条)
(1)(2)にあたらず,単にデータを消去あるいは改ざんしたにとどまる場合であっても,そのデータが使えなくなってしまったような場合には,そのデータが公務所で使うデータであった場合には3月以上7年以下の懲役,私人が使うデータでも他人の権利義務に関する場合には5年以下の懲役となります。
4、あなたが、もし、これらの行為をやったとして誤解され、何かのトラブルに巻き込まれた場合には、すぐ回答せずに、弁護士が法的に説明できる場合がありますので、お近くの弁護士までご相談ください。

<参考>

不正アクセス禁止行為等の禁止等に関する法律第3条2項
@アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別記号を入力して当該特定電子計算機を作動させ,当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)
Aアクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別記号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ,その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又の承諾を得てするものを除く。次号についても同じ)
B電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ,その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

刑法246条の2(電子計算機使用詐欺) 前条(詐欺)に規定するもののほか,人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り,又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して,財産上不法の利益を得,又は他人にこれを得させた者は,十年以下の懲役に処する。

刑法234条の2 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し,若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正の指令を与え,又はその他の方法により,電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず,又は使用目的に反する動作をさせて,人の業務を妨害した者は五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

刑法258条 公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は,3月以上7年以下の懲役に処する。

刑法259条 権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は,5年以下の懲役に処する。

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