新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.228、2005/3/1 13:29 https://www.shinginza.com/cooling.htm

[民事・消費者]
質問:友人から良い美顔器があると勧められ、とある事務所に連れて行かれました。そこで事務所の人に「この商品は非常に素晴らしいものなので、是非世の中の人々に広めてあげたい。あなたも普及活動に参加しませんか。素晴らしい商品なので、すぐに売れますし、売れたらあなたにも報酬金が出ますよ。ただし、この活動に参加するためには、あなた自身にもこの商品を買っていただかなくてはなりません」といわれました。商品は40万円と高額であったため私が迷っていると、「毎月一定の台数の美顔器をあなたに買っていただき、それをあなたがさらに販売することになりますが、簡単に売れるので、報酬もかなりの高額になります。あっという間にもとがとれて、利益も確実に出ます」などといわれたため、私はつい商品を購入し、商品を販売する活動に加わる契約をしてしまいました。しかし、商品が高額だということもあって、1台も売ることが出来ず、しかも、ノルマだといって、毎月美顔器を購入させられています。私はついにサラ金に手を出すようになってしまい、どうしようもない状態です。早くこの契約を打ち切りたいのですが、やめることはできないのでしょうか。

回答:
1、本件は、いわゆる連鎖販売取引というものにあたると考えられます(個々の事例が連載販売取引にあたるかどうかについては、専門家の判断を仰ぐようにして下さい)。連鎖販売取引の場合、契約書面を受け取ってから20日以内であればクーリングオフできますが、本件ではそれ以上経っているようですので、クーリングオフはできません。しかし、将来に向かって契約を解約する(中途解約)することはできます。また、連鎖販売取引の契約を締結してから1年以内であれば、ノルマと称して契約させられた美顔器の購入についても解除することが出来ます(ただし、一定の要件あり)。また、美顔器を購入する際、クレジット契約を結んでいたような場合には、中途解約・解除等をそのクレジット会社に対抗することが出来ます。
2、「連鎖販売取引」は特定商取引法33条1項により定義されており、@商品の再販売、受託販売、販売のあっせんをする者、または同種役務の提供、その役務の提供の斡旋をする者を、A特定利益を収受し得ることもって誘引し、Bその者と特定負担の伴う、C商品の販売・斡旋、同種役務の提供・役務提供の斡旋にかかる取引をいいます。
3、連鎖販売取引について契約を締結する場合、連鎖販売業を行う業者は、契約の相手方(無店舗個人に限る)に対して、契約書面を交付しなくてはなりません(法37条2項)。そして、この契約書面を受け取った相手方(本件の相談者など)は、契約書面を受け取った日から20日以内であれば、クーリングオフをすることが出来ます(法40条1項)。訪問販売の場合と同じく、連鎖販売業者がクーリングオフの妨害・回避を行った場合には、業者がクーリングオフすることを出来ることを説明し、その旨記載した書面を公布した日から20日以内であれば、なおクーリングオフすることが出来ます。
4、クーリングオフの期間が過ぎたとしても、将来に向けて連鎖販売取引の契約を解約することは可能です。また、その中途解約が上記契約書面を受け取ってから1年以内であれば、ノルマ等と称して買い取らされていた商品の売買契約も解除することが出来ます(法40条の2第2項)。ただし、商品の引渡しを受けた日から起算して90日を経過した場合(1号)、その商品を再販売したとき(2号)、その商品を使用・消費したとき(3号)、参加者の責めに帰すべき事由によってその商品の全部または一部を滅失または毀損したとき(4号、政令10条の2)には解除することは出来ません。
5、商品販売契約が解除された場合の損害賠償の予定または違約金の定めがある場合であっても、商品の販売を行った者は、一定の額を超える支払いを請求することが出来ないことになっています(法40条の2第4項)。
6、契約の取消等は本来、善意の第三者には対抗できない(事情を知らない第三者には主張することができない)ことになっていますが、連鎖販売取引において商品をクレジット契約によって購入したような場合には、クレジット会社は「第三者」とは扱われておらず、クーリングオフ、中途解約、解除等といった事情をクレジット会社に対して主張することは可能です(割賦販売法30条の4)。

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