新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.222、2005/3/1 11:02 https://www.shinginza.com/qa-hanzai.htm

[刑事・起訴前]
質問:私は地方公務員なのですが、駅の近くで偶然知り合った中学生1年生を「パソコンの操作について教えてあげる。家のお掃除を手伝って。」などと偽って、車に載せて自宅に誘い、ワイセツな行為をしてしまいました。その後、私は逮捕されました。私はどうなるのでしょうか。

回答:
1、犯罪の成立と今後の手続、裁判の予想  あなたが行った行為は、強姦罪(刑法177条)、又は、強制わいせつ罪(刑法176条)と、未成年者誘拐罪(刑法224条)、又は、わいせつ目的誘拐罪(刑法225条)の2つが考えられます。誘拐とは、欺もう、誘惑的な方法により自分の事実的支配内に被害者を置くことです。暴行脅迫を手段にする略取罪と異なっています。当初からわいせつな目的があるとわいせつ目的誘拐罪となり、法定刑は倍の重さになります(未成年者誘拐の場合は、5年以下の懲役ですが、わいせつ目的の場合は10年以下の懲役です。)。この場合、「偽って」とありますから、いかなる目的にしろ誘惑的行為により車に乗せて自宅に連れてきている以上未成年者誘拐罪の成立する可能性は十分にあります。手続ですが、今後逮捕、勾留され、逮捕の日から数えてから数えて最大23日後に起訴されて裁判が行われます。前科前歴がなくても、検察官の求刑は成立する罪によっても異なりますが、3年−5年前後になるものと予想されます。裁判になった場合、結論から言いますと、被害者側と和解、示談の成立がなければ、執行猶予判決を受けるのは困難であるかと思われます。近時、未成年者の連れ去り行為が、社会問題化しており、重い処罰の可能性があります。
2、本罪の特殊性、  通常の犯罪と異なり、本罪は、全て、名誉毀損罪(刑法230条)、未成年者略取罪(刑法224条)、器物損壊罪(刑法261条)、侮辱罪(刑法231条)と同様に親告罪(刑法229条)となっており、起訴前に示談ができ、告訴が取り消しに成れば(刑事訴訟法237条)、公訴権は消滅し不起訴処分となります。すなわち、親告罪では、起訴前に被害者との和解交渉により告訴が取り消されると、検察官は、公訴権が消滅している以上被疑者を釈放しなければなりません。その理由は、犯罪の性質上、公訴を提起し裁判を行うかどうかについて被害者の意思を尊重していることと、公開裁判を行うことにより被害者の人権がさらに侵害される可能性があるため裁判を行うかどうか被害者の意思に委ねているからです。一般的に知られていませんが、未成年者誘拐罪、わいせつ目的誘拐罪、は、営利目的略取誘拐罪(刑法225条)(身代金目的で誘拐する行為は親告罪ではありません。)と違い親告罪なのです。
3、公務員について、  貴殿が、公務員であれば、起訴になった場合、当然失職の可能性があります。このように公務員、著名人、上場会社社員の事件では、報道等により起訴前であっても、公表される場合があります。捜査機関には、報道機関の司法記者が随時出入りしており、ニュース価値のある事件を求めています。捜査機関も報道の自由からこれに応ぜざるを得ないのです。注意する必要があります。貴殿のように地方公務員であり、失職の可能性がある以上、一刻も早く、弁護人を選任し被害者側と示談交渉を開始し不起訴処分として捜査を終了させることが大切です。被疑者に刑事訴訟法上認められている権利ですから、知り合いの弁護士さんに至急相談してください。
4、示談の必要性、 被害者のある犯罪では、親告罪に限らず被害者側との示談、和解交渉は不可欠です(親告罪でなくとも、公訴提起前に示談ができれば、事情により起訴を猶予される場合もあります。)。起訴前に示談ができず、万が一裁判になった場合でも、量刑に大きな影響があるからです。犯罪事実をほぼ認めている場合、被害者のある犯罪では、示談交渉が執行猶予の可能性にも大きく影響します。勿論裁判の量刑は、動機、被害の程度、前科の有無など総合的に判断され、被害者側との話し合いの結果によってのみ決まるものではありません。しかし、裁判所が、被害者の処罰感情を量刑理由の重要な部分と考えていることも事実なのです。国家の処罰権は、被害者に替わって行使するといういう面も一概に否定できないのです。被害者のある犯罪とは、殺人(刑法199条)、窃盗(刑法235条)、強盗(刑法236条)、詐欺(刑法246条)、本罪、傷害(刑法204条)、横領(刑法252条)、業務妨害(刑法233条)、逮捕監禁(刑法220条)、住居侵入(刑法130条)、親告罪に該当する罪等です。被害者のない犯罪とは、麻薬、覚せい剤の薬物関係の罪(覚せい剤取締法、麻薬取締法、大麻取締法、刑法136〜141条)、賭博(刑法185条)、公務執行妨害(刑法95条)、偽造(刑法148〜168条)、汚職(刑法193〜198条)、公務執行妨害、等国家、社会に対する犯罪です。すなわち、公訴が提起され裁判になった場合でも、被害者のある犯罪では、いずれ示談はしなければならないのです。それなら、公訴が提起される前に示談を開始したほうが被疑者にとって有利であることは言うまでもありません。
5、被疑事実に争いがない場合、被害者側との交渉を積極的に進めてくれる弁護士さんに相談してみましょう。

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