新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.151、2004/3/30 15:59 https://www.shinginza.com/qa-seikyu.htm

[民事・契約]
質問:友人からお金を貸して欲しいと頼まれ、その場で現金30万円を手渡ししました。友人からは必ず返済すると言われていたのですが、連絡が取れなくなってしまいました。お金を貸すときに、必ず戻してもらう方法はないでしょうか。また、今から返済してもらうために、何か良い法的手続きはないでしょうか。

回答:
1、このような場合,あなたと友人との間には,法律上,金銭消費貸借契約(民法587条)が成立していますので,あなたは,友人に対して貸金の返還を請求する権利があります。
2、そこで,以下,この権利を実現するための方法と,お金を貸す際の注意点とを説明しますが,お金を「必ず」戻してもらう方法はありません。特に,あなたの場合,友人にその場で手渡ししたとのことなので,友人が自分の意思で返済してくれない限り,権利の実現は難しいと言わざるを得ません。
3、お金を貸す際の注意点
(1)まず,お金を貸すときには,上記の金銭消費貸借契約が成立したことを証明するために,契約書や借用証を作成する必要があります。これらは,契約が成立したことの有力な証拠となるので,後に,訴訟等になったとしても,あなたが勝訴判決等を得られる可能性が高くなります(ただ,契約書等が一切なくても,振込みの事実等から契約の成立が認められることもありますので,簡単には諦めないで下さい。)
(2)また,もし,借主の同意が得られるなら,契約書を公正証書の形で残しておくことをお勧めします。公正証書に,借主が直ちに強制執行に服する旨の陳述(執行受諾文言)を記載してもらえば,後に,借主が返済を怠った場合に,訴訟等をしなくても強制執行をすることが可能になります(民事執行法22条5号)。
(3)ただし,仮に公正証書があったり,勝訴判決等が得られたりして,法律上は強制執行が可能であっても,相手に支払能力がなければ,現実にお金を返してもらうことができませんから,財産や,きちんとした勤務先がないような相手にお金を貸す場合は,特に慎重な判断が必要です。
4、返済を求める方法
(1)まず,内容証明郵便で返還を求めることが考えられます。内容証明郵便は,文書の内容,差出日が公的に証明されるというもので,民法153条の催告として6か月間の一時的な時効中断効が認められる以外に特別の法的効果はありませんが,相手が請求に応じない場合には法的措置に移行する旨の差出人の強い態度・意思を表明することができるという事実上の効果が期待できます。なお,内容証明郵便だけでは,文書が受取人に到達したことや,その時期の証明ができませんので,配達証明も付ける必要があります。
(2)法的手段に出る場合の手続きとしては,支払督促,民事調停,通常の訴訟が考えられます。
 ア 支払督促は,正式な裁判手続をせずに,書面審査だけで裁判所から債務者に対して金銭などの支払を命じる督促状(支払督促)を送ってもらえる制度で,債務者がこの督促状を放置して2週間が経過すれば、債権者は債務者の財産に強制執行することも可能になります(民事訴訟法382条以下,民事執行法22条4号)。また,事実上の効果としても,債務者に対して内容証明郵便よりも多大な心理的プレッシャーを与えることができ、支払いに応じさせる可能性を高めることが期待できます。ただし, 債務者が異議を申立てた場合には通常訴訟へ移行することになります。
 イ 民事調停は,裁判官又は調停委員会(裁判官と一般市民の中から選ばれた2人以上の調停委員によって構成されます。)の仲介を通して,話し合いによる自主的な紛争解決をめざす手続きで、合意が成立すれば,強制執行を行うことも可能です(民事調停法,民事執行法22条7号)。通常訴訟と異なり,簡易な手続で,柔軟な解決を得られることもありますが,かならずしも合意が成立するとはかぎらないので,その場合は通常訴訟によるほかありません。
 ウ 通常訴訟は,当事者の主張について,証拠によって事実を明らかにした上で、法律に従って公権的な解決を図る方法です。なお,60万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについては,少額訴訟を求めることもできます(従来,少額訴訟の上限は30万円でしたが,成16年4月1日以降に提起するものについては,法改正により,60万円まで認められます)。少額訴訟は,簡易迅速な特別の手続による審理と裁判を行うものであり,原則として,1回の期日で審理を終え,直ちに判決の言渡しが行われます(民事訴訟法368条以下)。

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