海難審判とその特色について

行政|刑事事件と行政処分|海難審判とその特色|業務上過失傷害罪

質問

私は,一級小型船舶操縦士免許を持っており,趣味でクルージングに出掛けたりしているのですが,先日,クルージングの最中に不注意で岩に乗り上げてしまい,ヨットを沈没させてしまいました。すぐに海上保安庁に通報して,難は逃れましたが,岩に乗り上げた際の衝撃で,同乗者の1人が負傷しています。現在も,海上保安庁から事情を聞かれていますが,私は今後どうなるのでしょうか。

回答

1.まず,今回の事故で,同乗者1名が負傷しているとのことですから,あなたの行為は業務上過失傷害罪(刑法211条1項,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)に当たる可能性が有り,刑事処罰の対象(刑事手続き)となり得ます。今後,海上保安庁と検察庁から事情を聞かれ,あなたに対する刑事処分が決まることになるでしょう。又,船舶の航行を不能にして,海上交通の障害の具体的危険性が発生した場合は,一級小型船舶操縦士免許を持っており業務上過失往来危険罪(刑法129条2項,3年以下の禁固又は50万円以下の罰金)に問われることになるでしょう。前者は,生命身体の自由を保護法益としていますが,後者は,海上交通の安全が保護法益です。両者は観念的競合となり重い方の罪で処罰されます(刑法54条,業務上過失傷害で処罰。)。ただ、これらの刑事処分は、被害者との和解、贖罪寄付等により回避する方法も残されています。

2.また,今回の事故は,海難審判法の定める「海難」にも当たりますから,あなたは海難審判手続による懲戒処分の対象となります。

3.どちらの手続も,あなたが起こした事故に関するものではありますが,その趣旨・目的はそれぞれ異なり,手続としては全く別個のものですが,その構造は非常によく似たものとされています。懲戒裁決の予想ですが,怪我の程度にもよりますが,業務停止数か月内と思われます。ここで業務停止というのは,小型船舶免許の免許停止のことです。他に,免許取消や,戒告処分があります。

4.国土交通省 海難審判所ホームページ参照。具体的な海難審判裁決例も公開されています。http://www.mlit.go.jp/jmat/

その他の関連事例集参照。

解説

1.刑事手続について

刑事手続とは,犯罪事件の犯人を明らかにするとともに証拠を収集して犯罪の事実を確定し,刑事裁判により科すべき刑罰を定める手続のことです。

(1) 業務上過失致傷罪について

ア 今回,あなたはクルージングの最中に不注意で岩に乗り上げ,同乗者を負傷させていますから,「業務上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた」ことになり,あなたの行為に業務上過失致傷罪(刑法211条1項)が成立する可能性があります。

イ 現在,海上保安庁から事情を聞かれているとのことですが,海上保安官は,海上での犯罪について,刑事訴訟法上の司法警察職員として職務を行うとされていますので,海上保安官は,刑事訴訟法の規定に従って今回の事件について捜査し,事件を検察官に送致します(海上保安庁法31条,刑事訴訟法189条2項,246条)。そして,送致を受けた検察官が,あなたに対する処分を決定することになります。尚,又,沈没により船舶の航行を不能にして,海上交通の障害の具体的危険性が発生した場合は,一級小型船舶操縦士免許を持っており業務上過失往来危険罪(刑法129条2項,3年以下の禁固又は50万円以下の罰金)に問われることになるでしょう。前者は,生命身体の自由を保護法益としていますが,後者は,海上交通の安全が保護法益です。両者は観念的競合となり重い方の罪で処罰されます(刑法54条,業務上過失傷害で処罰。)。

(2) 今後の処分の見通しについて

業務上過失傷害罪の法定刑は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金となっています。この範囲内でどの程度の刑が選択されるかは,被害の大きさと過失の程度を中心に,あなたの反省の情など様々な事情を考慮して決せられることになります。

ただ,被害者がある犯罪ですので,被害者と示談が成立し,被害者の宥恕が得られていれば,略式手続による罰金刑あるいは不起訴処分となり,正式な裁判にかけられずに済むことも十分に考えられます。業務上過失往来危険罪については社会全体に対する罪なので贖罪寄付が有効です。

いずれにしても,早期に弁護士と相談の上,示談の成立と言ったあなたに有利な事情を積極的に捜査機関に提出していくことが重要であるといえるでしょう。

2.海難審判手続について

(1) 海難審判とは

ア 海難審判とは,国土交通省の特別の機関である海難審判所が行う行政審判のことです。車両による交通事故の場合も道路交通における交通の安全を確保するため免許停止,取消がありますが,海難審判は,海上交通の安全を守るために特に規定されています。海難事件は,時として複数の生命,身体の自由が危険にさらされ,財産的損害も巨大化する危険があり特殊な審判手続きが置かれています。尚,船舶事故の原因の究明については国土交通省運輸安全委員会が航空事故,鉄道事故と同様船舶事故の原因究明を扱うことになります(運輸安全委員会設置法1条)。

「海難」とは,「船舶の運用に関連した船舶又は船舶以外の施設の損傷」,「船舶の構造,設備又は運用に関連した人の死傷」,または「船舶の安全又は運航の阻害」のことをいいますが,海難審判は,この「海難」が海技士・小型船舶操縦士・水先人の職務上の故意または過失によって発生したか否かを明らかにし,これらの者の故意または過失によって海難が発生したと認められるときに裁決によって受審人に懲戒(免許取消,業務停止または戒告)の行政処分を行なうことで,海難の発生の防止に寄与することを目的としています(海難審判法1条ないし4条)。この海難審判手続は,上記1の刑事裁判ではありませんので,刑罰等は科されませんし,民事裁判でもありませんので,関係者に損害賠償が命じられることもありません。ただ,審判の対審と裁決は公開の審判廷で行われることとされており,手続としては訴訟に似通った構造を有しています(海難審判法31条)。審判手続の詳細については,後記(3)で詳しく解説します。

イ 今回のケースでは,クルージングの最中に不注意で岩に乗り上げ,ヨットを沈没させるとともに,同乗者1名を負傷させていますから,「船舶の運用に関連した船舶の損傷」と「船舶の運用に関連した人の死傷」があり,「海難」が発生しています。そのため,海難審判が開かれ,この「海難」があなたの故意または過失によるものであると認められた場合には,あなたは懲戒処分(免許取消,業務停止,戒告)を受ける可能性があるのです。

そこで,以下では,あなたが審判を受けるまでの手続について説明します。

(2) 審判を受けるまでの手続

ア 海上保安官,警察官及び市町村長は,海難が発生したことを知ったときは,直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければなりません(海難審判法24条2項)。理事官とは,刑事裁判における検察官に相当する役割と担っています。具体的には,理事官は,海難関係人を出頭させて事情を聴取したり,船舶を検査するなどして事実調査や証拠収集を行い,検討の結果,海難が海技士もしくは小型船舶操縦士または水先人の職務上の故意または過失によって発生したものであると認めたときは,海難審判所に対して,その者を受審人とする審判開始の申立てをしなければならないとされています(海難審判法25ないし28条)。

イ あなたは,既に海上保安庁から事情を聞かれているとのことですから,海上保安官から理事官に通報がされているものと思われます。今後,理事官があなたや同乗者から事情を聞き,またその他の事情についても調査することになるでしょう。その結果,今回の海難が,あなたの故意または過失によるものと判断されれば,理事官はあなたを受審人として審判開始の申立てをすることになります。

ウ 事前に弁護士を依頼している場合は,審判不開始の申し立てを意見書という形式で理事官に対して行います。その場合,事実関係を確認し,被害者側との示談,破損船舶の処分等の有利な事情を証拠として提出します。

(3) 審判

ア 審判手続の概要

海難審判所は,上記の理事官の審判開始申立てによって,審判を開始します(海難審判法30条)。審判は,海難の発生した区域を管轄する各地方海難審判所において(良くあることですが受審人の居住地が海難の発生地域と異なれば事件を居住地の地方海難審判所に移送してもらうことも可能です。同18条),原則1人の審判官により行われますが,1人の審判官で審判を行うことが不適当であると認めるときは3名の審判官で構成する合議体で審判を行う旨の決定をすることができるとされています(海難審判法14条及び16条1項)。

ただし,海難審判法施行規則5条に定める重大な海難については,東京の海難審判所において,3人の審判官による合議体で海難審判が行われることになります。審判官は,行政官ですが船舶操縦の資格を有して船舶航行に専門的知識を有する一般人が任命されることもあります。後記「海難審判所 審判官・理事官の募集」を参照。海難審判は,行政処分でありながら,後述のように民事,刑事訴訟と同じように対審構造をとっています。審判官は,手続き進行の指揮を執りますが刑事訴訟と異なり証拠の提出については特に制限がありません。対審構造は海難事故の重大性(場合により生命身体の自由,財産的損失が大きい場合がある)から海上交通,船舶航行必要性が重要であった時代の沿革的理由によると思われます。すなわち,海難審判の認定が,後の刑事,民事訴訟等に影響を及ぼすのであり対審構造にして十分主張,立証を尽くさせようとするものです。

イ 補佐人の選任

この審判手続において,受審人は,補佐人を選任することができます(海難審判法19条)。補佐人は刑事裁判における弁護人に相当する役割を担うもので,受審人が自らの主張を審判の場において行う際,その手助けをします。

この補佐人ですが,弁護士の資格を有する者であれば,登録により,補佐人として活動することが可能です(海難審判法施行規則19条5号,高額ではありませんが一定の登録料(登録免許税3万円)が必要です。)。

ウ 手続の進行

補佐人が選任された場合,審判手続は概ね以下の順番で進行します。

① 人定尋問(海難審判法施行規則55条)

出廷している受審人が人違いでないかどうかの確認がなされます。

② 重大な海難でないことの確認

海難審判法施行規則5条に定める重大な海難にあたらないことの確認がなされます。

③ 審判開始申立て理由の陳述(海難審判法施行規則56条)

続いて,理事官が,事案の概要と,審判に付した理由を読み上げます。

刑事裁判でいえば,検察官による起訴状朗読にあたるものです。

④ ③に対する受審人及び補佐人の意見の確認

理事官が読み上げた③の事実について,間違いがないかどうか,受審人及び補佐人に対して確認が行われます。

⑤ 証拠調べ手続(海難審判法施行規則57条)

その後,証拠調べ手続が行われます。

これも刑事手続と同様ですが,まず,理事官が提出した証拠書類を取調べ,続いて,受審人や補佐人が提出したい証拠書類があれば,その取調べが行われます。

次に,証人がいる場合には証人尋問が行われ,いなければ受審人に対する質問が行われます。尋問・質問の順番については,刑事裁判と異なり,まず審判官から質問し,次に理事官,補佐人が質問することとなっています。

⑥ 理事官の意見陳述等(海難審判法施行規則67条)

証拠調べ手続を終えると,理事官は,事実を示して受審人に係る職務上の故意又は過失の内容及び懲戒の量定について意見を陳述します。刑事裁判でいえば,検察官による論告にあたるものです。

これに対し,受審人及び補佐人も意見を述べることができます。補佐人が意見を述べることは,刑事裁判でいえば弁論にあたるものといえるでしょう。

⑦ 最終意見陳述(海難審判法施行規則68条)

最後に,受審人及び補佐人に陳述の機会が与えられ,これが終われば審理は終了となります。

エ 裁決

審理の終了後,審判官は,審理内容を踏まえ裁決を言い渡します(海難審判法40ないし42条)。本案についての裁決には,懲戒(免許取消,業務停止,戒告)の裁決のほか,懲戒免除の裁決もあります(海難審判法4条及び5条)。海難審判は一審制で,司法権は裁判所が独占していますので(憲法76条2項 行政機関の終審裁判の禁止)海難審判所の裁決の取消しの訴えは,東京高等裁判所の専属管轄に属します(海難審判法第44条1項)。

オ 今回のケースについて

このような手続により,あなたに対する懲戒処分が決められることになりますが,海難審判法は,懲戒処分の適用について「その行為の軽重に従ってこれを定める」(4条)としています。この条文によれば,あなたが免許取消になるか,業務停止になるか,戒告になるかは,もっぱらあなたの過失の軽重や結果の重大性のみによって決せられ,被害者と示談が成立していることや,あなたの反省等といった事情は考慮されないようにも思えます。

しかし,他方で,海難審判法5条は,「海難の性質若しくは状況又はその者の経歴その他の情状により,懲戒の必要がないと認めるときは,特にこれを免除することができる」と定めています。この規定(特に「その者の経歴その他の情状」の文言)が存在することに照らせば,懲戒処分を決する際に考慮される事情は,必ずしも過失の軽重や結果の重大性のみに限られるわけではなく,示談の成立や反省状況といった情状に関する事情を主張することも許されると考えられます。

3.両手続の異同

このように考えると,両手続は,その趣旨・目的がそれぞれ異なり,全く別個の手続ではあるものの,その手続において判断される要素は極めて接近してきます。したがって,刑事手続についてはもちろん,海難審判手続についても,弁護士に補佐人として活動してもらうことを検討されると良いでしょう。

船舶の沈没については車両と同じように保険が掛けられていることが通常ですが,本件と異なり積み荷などの損害が大きい場合,海難審判の認定が後の損害賠償請求訴訟の故意過失認定に大きな影響があるのでその場合は重要な手続きになるでしょう。

4.裁決例

イカ釣りのモーターボートの岩礁乗り上げ転覆が船長の判断ミスによるもので怪我人が発生した事案で,業務停止2か月です。

平成23年横審第16号

裁 決

モーターボート フジ丸乗揚事件

言 渡 年 月 日 平成23年6月22日

審 判 所 横浜地方海難審判所(長谷川峯清)

理 事 官 横井幸治

受 審 人 A

職 名 フジ丸船長

操縦免許 小型船舶操縦士

主 文

受審人Aの小型船舶操縦士の業務を2箇月停止する。

理 由

(海難の事実)

1 事件発生の年月日時刻及び場所

平成22年10月11日09時15分

三重県五ケ所港

2 船舶の要目

船 種 船 名 モーターボート フジ丸

全 長 6.24メートル

機関の種類 電気点火機関

出 力 62キロワット

3 事実の経過

フジ丸は,昭和60年に第1回定期検査を受けたFRP製プレジャーモーターボートで,A受審人が1人で乗り組み,友人1人を同乗させ,餌木(えぎ)によるアオリイカの竿釣りの目的で,船首0.2メートル船尾0.5メートルの喫水をもって,平成22年10月11日07時10分三重県五ケ所港北西部港奥の内瀬浦にある定係地を発し,風力2の西北西風が吹く状況下,同港南東部の宿田曽漁港西側にある葛島の北西岸沖合の釣り場に向かった。

ところで,フジ丸は,船首から船体中央までの前部甲板下に後方が開放されたキャビンがあり,同甲板の船首端にクリート1個,同甲板中央にハッチ1個がそれぞれ設けられ,キャビン後部の右舷側に操縦席,同左舷側に助手席,操縦席前部に磁気コンパス,舵輪,機関回転計及び魚群探知機並びに同席右側の側壁に機関遠隔操縦レバーを備え,レーダーやGPS等の航海計器は装備されていなかった。

こうして,A受審人は,発航後,途中数箇所で重量が約8キログラムの自作の四爪錨を投入してアオリイカ釣りを行ったものの,十分な把駐力が得られない錨であったことから,船体が風下に圧流されるたびに,同錨を引き上げては移動して同釣りを続けたのち,09時10分五ケ所港宿田曽沖防波堤灯台(以下「宿田曽灯台」という。)から338.5度(真方位,以下同じ。)610メートル水深約12メートルの地点で,船首を000度に向け,同錨を投入して直径10ミリメートルのナイロンロープを約30メートル繰り出し,船首端のクリートに止めて停留を開始し,自らが右舷船尾で右舷側を向き,同乗者が助手席後部で左舷側を向き,それぞれ餌木を付けた仕掛けの竿を舷外に出してアオリイカ釣りを再開した。

09時13分A受審人は,葛島の景色の変わり方を見ているうちに,船首方に受けた北北西風が強まり,船首が000度に向いたまま船体が風下側に圧流され,葛島から沖合に向かってその周囲に拡延する岩礁に接近していることに気付き,このまま圧流が続くと同岩礁に乗り揚げるおそれのあることを認めたが,このときちょうど同乗者が餌木を投入したばかりで,機関を使用して移動すると高価な釣り竿を損傷させてしまうことをおそれたことから,同乗者が餌木を巻き揚げるまで待っても何とか岩礁に乗り揚げることはないものと思い,直ちに機関を使用して移動するなど船体の圧流を防止するための措置を十分にとることなく,また,同乗者に巻き揚げを急がせることもせずに,圧流されるに任せて巻き揚げ終わるのを待った。

その後,A受審人は,船体が圧流されて船尾が岩礁に近づいたことから,ボートフックを使用して船体を押し離しているうちに同乗者の餌木の巻き揚げが終わったので,急いで機関を前進にかけたものの,効なく,09時15分宿田曽灯台から337度550メートルの地点において,フジ丸は,船首が000度に向いたまま,葛島北西岸から沖合に向かって拡延する岩礁内の洗岩に乗り揚げた。

当時,天候は晴で,風力4の北北西風が吹き,潮候は下げ潮の初期であった。

その後,A受審人は,自力で離礁を試みているうちに,クリートから解放したナイロンロープが船外機のプロペラに絡みついて運航不能となり,携帯電話によって海上保安部に118番通報するなど,事後の措置に当たった。

乗揚の結果,フジ丸は,打ち寄せる波浪にもまれて転覆し,船体全体に破口を伴う亀裂を生じ,のち全損として解体処理された。また,自らは擦り傷を負っただけであったが,同乗者は右側頭皮,右肩及び右肘各挫創により,1週間の入院後,1箇月の通院治療を要する傷を負った。

(原因及び受審人の行為)

本件乗揚は,三重県五ケ所港において,自作の錨を海中に投入して停留中,船首方に受けた北北西風が強まってきた際,船体の圧流防止の措置が不十分で,船首が風上に向いたまま,風下の葛島に向かって圧流されたことにより発生したものである。

A受審人は,三重県五ケ所港において,自作の錨を海中に投入して停留中,船首方に受けた北北西風が強まり,船首が風上に向いたまま,風下の葛島に向かって圧流されていることに気付いた場合,このまま圧流が続くと葛島から沖合に向かってその周囲に拡延する岩礁に乗り揚げるおそれがあったから,同岩礁に接近することのないよう,直ちに機関を使用して移動するなど船体の圧流を防止するための措置を十分にとるべき注意義務があった。ところが,同人は,同乗者が餌木を投入したばかりで,機関を使用して移動すると高価な釣り竿を損傷させてしまうことをおそれたことから,同乗者が餌木を巻き揚げるまで待っても何とか同岩礁に乗り揚げることはないものと思い,船体の圧流を防止するための措置を十分にとらなかった職務上の過失により,同乗者の餌木の巻き揚げが終わったので,急いで機関を前進にかけたものの,効なく,船首が風上に向いたまま,風下の葛島に向かって圧流され,同岩礁内の洗岩への乗揚を招き,船体全体に破口を伴う亀裂を生じて全損させるとともに,自ら及び同乗者を負傷させるに至った。

以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を2箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。

<参考条文>

刑法

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第54条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ,又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは,その最も重い刑により処断する。

2 第四十九条第二項の規定は,前項の場合にも,適用する。

(過失往来危険)

第129条 過失により,汽車,電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ,又は汽車若しくは電車を転覆させ,若しくは破壊し,若しくは艦船を転覆させ,沈没させ,若しくは破壊した者は,三十万円以下の罰金に処する。

2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは,三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する

(業務上過失致死傷等)

第211条 業務上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も,同様とする。

海上保安庁法

第三十一条 海上保安官及び海上保安官補は,海上における犯罪について,海上保安庁長官の定めるところにより,刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察職員として職務を行う。

刑事訴訟法

第百八十九条 警察官は,それぞれ,他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより,司法警察職員として職務を行う。

○2 司法警察職員は,犯罪があると思料するときは,犯人及び証拠を捜査するものとする。

第二百四十六条 司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,この法律に特別の定のある場合を除いては,速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し,検察官が指定した事件については,この限りでない。

海難審判法

(目的)

第一条 この法律は,職務上の故意又は過失によつて海難を発生させた海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人に対する懲戒を行うため,国土交通省に設置する海難審判所における審判の手続等を定め,もつて海難の発生の防止に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「海難」とは,次に掲げるものをいう。

一 船舶の運用に関連した船舶又は船舶以外の施設の損傷

二 船舶の構造,設備又は運用に関連した人の死傷

三 船舶の安全又は運航の阻害

(懲戒)

第三条 海難審判所は,海難が海技士(船舶職員及び小型船舶操縦者法 (昭和二十六年法律第百四十九号)第二十三条第一項 の承認を受けた者を含む。第八条及び第二十八条第一項において同じ。)若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであるときは,裁決をもつてこれを懲戒しなければならない。

(懲戒の種類)

第四条 懲戒は,次の三種とし,その適用は,行為の軽重に従つてこれを定める。

一 免許(船舶職員及び小型船舶操縦者法第二十三条第一項 の承認を含む。第四十九条及び第五十一条において同じ。)の取消し

二 業務の停止

三 戒告

2 業務の停止の期間は,一箇月以上三年以下とする。

(懲戒免除)

第五条 海難審判所は,海難の性質若しくは状況又はその者の経歴その他の情状により,懲戒の必要がないと認めるときは,特にこれを免除することができる。

(構成)

第十四条 海難審判所は,三名の審判官で構成する合議体で審判を行う。ただし,地方海難審判所においては,一名の審判官で審判を行う。

2 地方海難審判所において,審判官は,事件が一名の審判官で審判を行うことが不適当であると認めるときは,前項の規定にかかわらず,三名の審判官で構成する合議体で審判を行う旨の決定をすることができる。

3 合議体で審判を行う場合においては,審判官のうち一人を審判長とする。

(事件の管轄)

第十六条 審判に付すべき事件のうち,旅客の死亡を伴う海難その他の国土交通省令で定める重大な海難以外の海難に係るものは,当該海難の発生した地点を管轄する地方海難審判所(海難の発生した地点が明らかでない場合には,その海難に係る船舶の船籍港を管轄する地方海難審判所)が管轄する。

2 同一事件が二以上の地方海難審判所に係属するときは,最初に審判開始の申立てを受けた地方海難審判所においてこれを審判する。

3 国外で発生する事件の管轄については,国土交通省令の定めるところによる。

(管轄の移転)

第18条 理事官又は受審人は,国土交通省令の定めるところにより,海難審判所長に管轄の移転を請求することができる。

2 海難審判所長は,前項の規定による請求があつた場合において,審判上便益があると認めるときは,管轄を移転することができる。

(補佐人の選任)

第十九条 受審人は,国土交通省令の定めるところにより,補佐人を選任することができる。

(海難の発生の通報)

第二十四条 国土交通大臣(船員法 (昭和二十二年法律第百号)第百三条第一項 の規定により国土交通大臣の行うべき事務を日本の領事官が行う場合にあつては,当該領事官)は,同法第十九条 の規定により海難について報告があつたとき,又は海難が発生したことを知つたときは,直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければならない。

2 海上保安官,警察官及び市町村長は,海難が発生したことを知つたときは,直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければならない。

(理事官による調査)

第二十五条 理事官は,この法律によつて審判を行わなければならない事実があつたことを認知したときは,直ちに,事実を調査し,かつ,証拠を集取しなければならない。

(理事官の義務)

第二十六条 理事官は,事実の調査及び証拠の集取については,秘密を守り,関係人の名誉を傷つけないように注意しなければならない。

(調査のための処分)

第二十七条 理事官は,その職務を行うため必要があるときは,次の処分をすることができる。

一 海難関係人に出頭をさせ,又は質問をすること。

二 船舶その他の場所を検査すること。

三 海難関係人に報告をさせ,又は帳簿書類その他の物件の提出を命ずること。

四 国土交通大臣,運輸安全委員会,気象庁長官,海上保安庁長官その他の関係行政機関に対して報告又は資料の提出を求めること。

五 鑑定人,通訳人若しくは翻訳人に出頭をさせ,又は鑑定,通訳若しくは翻訳をさせること。

2 理事官は,前項第二号の処分をするには,その身分を示す証票を携帯しなければならない。

(審判開始の申立て)

第二十八条 理事官は,海難が海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであると認めたときは,海難審判所に対して,その者を受審人とする審判開始の申立てをしなければならない。ただし,理事官は,事実発生の後五年を経過した海難については,審判開始の申立てをすることはできない。

2 前項の申立ては,海難の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を示して,書面でこれをしなければならない。

(審判の開始)

第三十条 海難審判所は,理事官の審判開始の申立てによつて,審判を開始する。

(審判の公開)

第三十一条 審判の対審及び裁決は,公開の審判廷でこれを行う。

海難審判法施行規則

(重大な海難)

第五条 海難審判法 (昭和二十二年法律第百三十五号。以下「法」という。)第十六条第一項 に規定する重大な海難は,次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 旅客のうちに,死亡者若しくは行方不明者又は二人以上の重傷者が発生したもの

二 五人以上の死亡者又は行方不明者が発生したもの

三 火災又は爆発により運航不能となつたもの

四 油等の流出により環境に重大な影響を及ぼしたもの

五 次に掲げる船舶が全損となつたもの

イ 人の運送をする事業の用に供する十三人以上の旅客定員を有する船舶

ロ 物の運送をする事業の用に供する総トン数三百トン以上の船舶

ハ 総トン数百トン以上の漁船

六 前各号に掲げるもののほか,特に重大な社会的影響を及ぼしたものとして海難審判所長が認めたもの

(海事補佐人の資格)

第十九条 海事補佐人は,次の各号のいずれかに掲げる資格があることを要する。

一 一級海技士(航海),一級海技士(機関),一級海技士(通信)又は一級海技士(電子通信)の免許を受けた者

二 審判官又は理事官の職にあつた者(国土交通省設置法 等の一部を改正する法律(平成二十年法律第二十六号)第三条 の規定による改正前の法第十条第一項 に規定する海難審判庁審判官若しくは海難審判庁理事官又は三年以上海難審判庁副理事官の職にあつた者を含む。)

三 令第二条第二号 ニに定める教授若しくはこれに相当する職にあつた者又は三年以上同号 ニに定める准教授若しくはこれに相当する職にあつた者

四 次に掲げる教育機関の船舶の運航又は船舶用機関の運転に関する学科の教員のうち十年以上教諭若しくはこれに相当する職にあつた者

イ 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 の高等学校又は中等教育学校

ロ 独立行政法人海技教育機構

ハ 海上保安学校

ニ 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律第八条 の規定による改正前の独立行政法人海員学校法(平成十一年法律第二百十四号)に規定する独立行政法人海員学校,旧国土交通省組織令 に規定する海員学校又は旧運輸省組織令に規定する海員学校

五 弁護士の資格がある者

(人定尋問)

第五十五条 審判長は,開廷を宣した後,まず受審人及び指定海難関係人に対して,その人違いがないことを確かめるために必要な事項を尋問しなければならない。

(審判開始申立て理由の陳述)

第五十六条 前条の尋問が終わつたときは,理事官は,事件の概要及び審判開始の申立てをした理由を陳述しなければならない。

(審判関係人の尋問及び証拠調べ)

第五十七条 審判関係人の尋問及び証拠調べは,審判長がこれを行う。

2 陪席の審判官,理事官及び補佐人は,審判長に告げて審判関係人を尋問することができる。

(理事官等の意見陳述)

第六十七条 証拠調べが終わつたときは,理事官は,事実を示して受審人に係る職務上の故意又は過失の内容及び懲戒の量定について意見を陳述しなければならない。

2 受審人,指定海難関係人及び補佐人は,前項の理事官の陳述に対して意見を述べることができる。

(最終陳述)

第六十八条 受審人,指定海難関係人及び補佐人には,最終に陳述する機会を与えなければならない。

海難審判所 審判官・理事官の募集

40787

1.職種 : 審判官 [海難審判を主宰し,裁決を行う。]

理事官 [海難を調査し,審判開始の申立てを行い,審判に立会い,

裁決を執行する。]

2.配属先 : 各地方海難審判所(全国異動)

3.待遇 : 一般職の国家公務員 [行政職(一)]

4.応募資格 : 昭和31年4月2日以降に生まれた者で,以下の(1)~(3)のいずれ

かの要件に該当する者

(1) 一級海技士(航海)又は一級海技士(機関)の免許を受けた後,2年以上,次の

いずれかの船舶の船長又は機関長の経歴を有する者

① 近海区域又は遠洋区域を航行区域とする船舶

② 第三種の従業制限を有する漁船

③ 総トン数1000トン以上の船舶

(2) 次のいずれかの職の経歴を通算5年以上有する者

① 行政職俸給表(一)の4級以上の海事に関する事務を所掌する職

② 海事補佐人

③ 公安職俸給表(二)の4級又はこれに相当すると認められる級以上の海上保安官

④ 専門行政職俸給表の3級以上の船舶検査官,海技試験官,船舶事故調査官又は

地方事故調査官

⑤ 大学,独立行政法人海技教育機構,独立行政法人航海訓練所,海上保安大学校,

旧水産大学校又は旧海技大学校の船舶の運航又は船舶用機関の運転に関する学科

の教授又は准教授

(3) 簡易裁判所判事の任命資格を有する者

5.採用予定数 : 若干名

6.採用予定日 : 平成24年4月1日

7.応募方法 : 下記の書類等を郵送(直接持参も可)

(1) 履歴書(市販のもの可。写真貼付)

(2) 上記4.の応募資格を証明するもの

(3)「再発防止のための海難調査のあり方について」と題する小論

文(800文字以内)

※ 提出先 海難審判所総務課総務係

〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-2

電話 03-5253-8821

(内線55113 又は55114)

締切日 平成23年11月15日(火) 必着

8.選 考 方 法 : (1) 一次選考【書類審査】

(2) 二次選考【面接試験】(一次選考合格者に別途連絡)

試 験 日:平成23年12月上旬

試験場所:海難審判所

(3) 合格通知 12月中旬頃を目途に本人あて通知

9.そ の 他 : (1) 履歴書等は合否の結果によらずお返しできません。

(2) 現在会社等に勤務している者は,採用にあたって所属する会社

等の同意書が必要となります。

(3) 日本の国籍を有しない者及び国家公務員法第38条の規定に

該当する者は応募できません。

関連事例集

その他の事例集は下記のサイト内検索で調べることができます

参考条文

刑法

(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)

第54条 一個の行為が二個以上の罪名に触れ,又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは,その最も重い刑により処断する。

2 第四十九条第二項の規定は,前項の場合にも,適用する。

(過失往来危険)

第129条 過失により,汽車,電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ,又は汽車若しくは電車を転覆させ,若しくは破壊し,若しくは艦船を転覆させ,沈没させ,若しくは破壊した者は,三十万円以下の罰金に処する。

2 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは,三年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金に処する

(業務上過失致死傷等)

第211条 業務上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた者は,5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も,同様とする。

海上保安庁法

第三十一条 海上保安官及び海上保安官補は,海上における犯罪について,海上保安庁長官の定めるところにより,刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)の規定による司法警察職員として職務を行う。

刑事訴訟法

第百八十九条 警察官は,それぞれ,他の法律又は国家公安委員会若しくは都道府県公安委員会の定めるところにより,司法警察職員として職務を行う。

○2 司法警察職員は,犯罪があると思料するときは,犯人及び証拠を捜査するものとする。

第二百四十六条 司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,この法律に特別の定のある場合を除いては,速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。但し,検察官が指定した事件については,この限りでない。

海難審判法

(目的)

第一条 この法律は,職務上の故意又は過失によつて海難を発生させた海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人に対する懲戒を行うため,国土交通省に設置する海難審判所における審判の手続等を定め,もつて海難の発生の防止に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「海難」とは,次に掲げるものをいう。

一 船舶の運用に関連した船舶又は船舶以外の施設の損傷

二 船舶の構造,設備又は運用に関連した人の死傷

三 船舶の安全又は運航の阻害

(懲戒)

第三条 海難審判所は,海難が海技士(船舶職員及び小型船舶操縦者法 (昭和二十六年法律第百四十九号)第二十三条第一項 の承認を受けた者を含む。第八条及び第二十八条第一項において同じ。)若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであるときは,裁決をもつてこれを懲戒しなければならない。

(懲戒の種類)

第四条 懲戒は,次の三種とし,その適用は,行為の軽重に従つてこれを定める。

一 免許(船舶職員及び小型船舶操縦者法第二十三条第一項 の承認を含む。第四十九条及び第五十一条において同じ。)の取消し

二 業務の停止

三 戒告

2 業務の停止の期間は,一箇月以上三年以下とする。

(懲戒免除)

第五条 海難審判所は,海難の性質若しくは状況又はその者の経歴その他の情状により,懲戒の必要がないと認めるときは,特にこれを免除することができる。

(構成)

第十四条 海難審判所は,三名の審判官で構成する合議体で審判を行う。ただし,地方海難審判所においては,一名の審判官で審判を行う。

2 地方海難審判所において,審判官は,事件が一名の審判官で審判を行うことが不適当であると認めるときは,前項の規定にかかわらず,三名の審判官で構成する合議体で審判を行う旨の決定をすることができる。

3 合議体で審判を行う場合においては,審判官のうち一人を審判長とする。

(事件の管轄)

第十六条 審判に付すべき事件のうち,旅客の死亡を伴う海難その他の国土交通省令で定める重大な海難以外の海難に係るものは,当該海難の発生した地点を管轄する地方海難審判所(海難の発生した地点が明らかでない場合には,その海難に係る船舶の船籍港を管轄する地方海難審判所)が管轄する。

2 同一事件が二以上の地方海難審判所に係属するときは,最初に審判開始の申立てを受けた地方海難審判所においてこれを審判する。

3 国外で発生する事件の管轄については,国土交通省令の定めるところによる。

(管轄の移転)

第18条 理事官又は受審人は,国土交通省令の定めるところにより,海難審判所長に管轄の移転を請求することができる。

2 海難審判所長は,前項の規定による請求があつた場合において,審判上便益があると認めるときは,管轄を移転することができる。

(補佐人の選任)

第十九条 受審人は,国土交通省令の定めるところにより,補佐人を選任することができる。

(海難の発生の通報)

第二十四条 国土交通大臣(船員法 (昭和二十二年法律第百号)第百三条第一項 の規定により国土交通大臣の行うべき事務を日本の領事官が行う場合にあつては,当該領事官)は,同法第十九条 の規定により海難について報告があつたとき,又は海難が発生したことを知つたときは,直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければならない。

2 海上保安官,警察官及び市町村長は,海難が発生したことを知つたときは,直ちに管轄する海難審判所の理事官にその旨を通報しなければならない。

(理事官による調査)

第二十五条 理事官は,この法律によつて審判を行わなければならない事実があつたことを認知したときは,直ちに,事実を調査し,かつ,証拠を集取しなければならない。

(理事官の義務)

第二十六条 理事官は,事実の調査及び証拠の集取については,秘密を守り,関係人の名誉を傷つけないように注意しなければならない。

(調査のための処分)

第二十七条 理事官は,その職務を行うため必要があるときは,次の処分をすることができる。

一 海難関係人に出頭をさせ,又は質問をすること。

二 船舶その他の場所を検査すること。

三 海難関係人に報告をさせ,又は帳簿書類その他の物件の提出を命ずること。

四 国土交通大臣,運輸安全委員会,気象庁長官,海上保安庁長官その他の関係行政機関に対して報告又は資料の提出を求めること。

五 鑑定人,通訳人若しくは翻訳人に出頭をさせ,又は鑑定,通訳若しくは翻訳をさせること。

2 理事官は,前項第二号の処分をするには,その身分を示す証票を携帯しなければならない。

(審判開始の申立て)

第二十八条 理事官は,海難が海技士若しくは小型船舶操縦士又は水先人の職務上の故意又は過失によつて発生したものであると認めたときは,海難審判所に対して,その者を受審人とする審判開始の申立てをしなければならない。ただし,理事官は,事実発生の後五年を経過した海難については,審判開始の申立てをすることはできない。

2 前項の申立ては,海難の事実及び受審人に係る職務上の故意又は過失の内容を示して,書面でこれをしなければならない。

(審判の開始)

第三十条 海難審判所は,理事官の審判開始の申立てによつて,審判を開始する。

(審判の公開)

第三十一条 審判の対審及び裁決は,公開の審判廷でこれを行う。

海難審判法施行規則

(重大な海難)

第五条 海難審判法 (昭和二十二年法律第百三十五号。以下「法」という。)第十六条第一項 に規定する重大な海難は,次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 旅客のうちに,死亡者若しくは行方不明者又は二人以上の重傷者が発生したもの

二 五人以上の死亡者又は行方不明者が発生したもの

三 火災又は爆発により運航不能となつたもの

四 油等の流出により環境に重大な影響を及ぼしたもの

五 次に掲げる船舶が全損となつたもの

イ 人の運送をする事業の用に供する十三人以上の旅客定員を有する船舶

ロ 物の運送をする事業の用に供する総トン数三百トン以上の船舶

ハ 総トン数百トン以上の漁船

六 前各号に掲げるもののほか,特に重大な社会的影響を及ぼしたものとして海難審判所長が認めたもの

(海事補佐人の資格)

第十九条 海事補佐人は,次の各号のいずれかに掲げる資格があることを要する。

一 一級海技士(航海),一級海技士(機関),一級海技士(通信)又は一級海技士(電子通信)の免許を受けた者

二 審判官又は理事官の職にあつた者(国土交通省設置法 等の一部を改正する法律(平成二十年法律第二十六号)第三条 の規定による改正前の法第十条第一項 に規定する海難審判庁審判官若しくは海難審判庁理事官又は三年以上海難審判庁副理事官の職にあつた者を含む。)

三 令第二条第二号 ニに定める教授若しくはこれに相当する職にあつた者又は三年以上同号 ニに定める准教授若しくはこれに相当する職にあつた者

四 次に掲げる教育機関の船舶の運航又は船舶用機関の運転に関する学科の教員のうち十年以上教諭若しくはこれに相当する職にあつた者

イ 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第一条 の高等学校又は中等教育学校

ロ 独立行政法人海技教育機構

ハ 海上保安学校

ニ 独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律第八条 の規定による改正前の独立行政法人海員学校法(平成十一年法律第二百十四号)に規定する独立行政法人海員学校,旧国土交通省組織令 に規定する海員学校又は旧運輸省組織令に規定する海員学校

五 弁護士の資格がある者

(人定尋問)

第五十五条 審判長は,開廷を宣した後,まず受審人及び指定海難関係人に対して,その人違いがないことを確かめるために必要な事項を尋問しなければならない。

(審判開始申立て理由の陳述)

第五十六条 前条の尋問が終わつたときは,理事官は,事件の概要及び審判開始の申立てをした理由を陳述しなければならない。

(審判関係人の尋問及び証拠調べ)

第五十七条 審判関係人の尋問及び証拠調べは,審判長がこれを行う。

2 陪席の審判官,理事官及び補佐人は,審判長に告げて審判関係人を尋問することができる。

(理事官等の意見陳述)

第六十七条 証拠調べが終わつたときは,理事官は,事実を示して受審人に係る職務上の故意又は過失の内容及び懲戒の量定について意見を陳述しなければならない。

2 受審人,指定海難関係人及び補佐人は,前項の理事官の陳述に対して意見を述べることができる。

(最終陳述)

第六十八条 受審人,指定海難関係人及び補佐人には,最終に陳述する機会を与えなければならない。

判例