新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.974、2010/1/26 12:01 https://www.shinginza.com/jitsumu.htm

法の支配と民事訴訟実務入門(平成20年8月21日改訂)
【総論18、控訴、上告、抗告、続審制、事後審制、三審制。】

Q:500万円の貸金請求訴訟で敗訴判決をもらいましたが、納得できません。次は何をしたらよいですか?高等裁判所でも敗訴した場合はどうですか。

A:
1. 貴方が原告の場合、上級裁判所(高等裁判所)で再度判断を仰ぐため控訴(民訴281条)することになります。控訴審は判決の前提となる事実認定を行う最終審(二審制)です。判決を受けとってから2週間以内(不変期間です。)に必ず第一審の地方裁判所に控訴状を提出し(民訴286条)、控訴の具体的理由は原則として控訴申し立て後50日以内に控訴審裁判所に準備書面で提出します(民訴規則182条、この期間は不変期間ではありません)。
2. 貴方が被告の場合、同じく控訴手続きを取ることになりますが、判決確定前に和解をして紛争を終結させることもできます。仮執行宣言がついていれば執行停止の手続き(民訴403条1項3号)をとる必要性が生じるでしょう。
3. 控訴審で敗訴すると、貴方は最高裁判所で上告審の判断を受けることが可能です。平成10年1月の新民訴法により上告の方式が2つに分かれましたので注意してください。まず憲法違反、絶対的上告理由がある場合の通常上告の手続き(民訴311条)ともう一つ最高裁の判例違反、法令の解釈に関して重要事項を含む事件について行なう上告受理申し立という制度です(民訴318条、上告を受理するかどうかの裁量権が最高裁にあるので裁量上告といわれています)。いずれも敗訴判決を受け取ってから2週間以内(不変期間)に控訴審の高等裁判所に上告状(受理申し立て書)を提出します(民訴285条)。同一書面でもかまいません(規則188条)。不服の理由書は当該高等裁判所が送達する上告提起通知書(又は上告受理申し立て通知書)を受け取ってから50日以内に高等裁判所に提出しなければいけません(民訴315条2項、民訴規則194条、民訴318条5項準用。この期間も不変期間ではありません)。法の支配の理念から上告審は、法律の解釈適用について憲法違反、法令違反の統一的判断を行う最終審になっています(憲法81条)。難解な面もあり上告審は法的専門家にも相談した方がいいと思います。

解説
1. 控訴の検討、提起。判決に不服であれば判決を受け取ってから(送達)2週間以内(民訴285条)に、判決を出した地方裁判所に対して、控訴状を提出して、控訴することができます(印紙は1.5倍です)。この2週間は不変期間と条文上明記されているので伸長できませんので注意してください(民訴96条、97条、不変期間と書いてなければこれを通常期間といい裁判所は職権主義、訴訟指揮により伸長できることになっています。例えば控訴理由書の提出期限)。一旦裁判所の判断が下された以上異議申立期間を変更できるとすれば公的紛争解決の実が事実上失われるからです。事物管轄(裁判所法33条、140万円まで)により簡易裁判所から地方裁判所、本件の場合は地方裁判所から高等裁判所というように、一段階上級の審級の裁判所で審理をしてもらうことができます。控訴すると一旦終結した訴訟が再開され口頭弁論が継続している状態になります。これを続審制と言います。従って、第一審と手続きは基本的に同じ方式により(民訴297条)、第一審の口頭弁論の結果は控訴審で陳述され(民訴296条2項)、第一審の訴訟行為は、控訴審においても効力があります(民訴298条1項)。又、口頭弁論が終結していないので原則的に主張立証等新しい攻撃防御方法も提出できることになります(民訴156条。時期に遅れてはいけないという制限はあります。民訴297条で準用。又、同301条参照)。その他公平の観点からの制限も生じます(反訴について民訴300条)。口頭弁論が継続し新たな訴訟資料が提出されますから、控訴を認容する判決(控訴審の本案判決は、控訴棄却と控訴認容、原判決取り消しになります)は自判(原判決取り消し後控訴審自身が判決する)が基本となります(民訴302条、同304条以下参照)。

2.  続審制の対立概念は事後審制といます。事後審制は原判決の適否を原審の訴訟資料により判断するので第一審の口頭弁論を再開しませんから、理論上新しい攻撃防御方法を提出はできないことになります。従って、控訴認容する判決は原判決を取り消したうえで差し戻しをして原審に判決させること(差し戻しまたは移送判決)が基本となります。刑事訴訟では理論上事後審制になっていますが事実上新たな主張、証拠を認めて迅速性、訴訟経済を考慮し調整して自判されています(刑訴382条の2、同393条、同400条)。

3.  どうして民事訴訟法では、理由の如何を問わず控訴を認め、一旦終結した口頭弁論を再開し審理をやり直すのかというと、法の支配の理念により、適正な解決を行うため、再度、経験を有し構成(裁判所法18条、原則3人)もさらに充実した裁判官(10年の法律職の経験が必要です。裁判所法42条)により、控訴審で再度審理を繰り返す必要があるからです。
 三審制と言われますが、事実の認定は、ここ第二審、控訴審で終了します。事実認定は、抽象的な法律の解釈よりも複雑性、難易性がないので二回で打ち切りになっているのです。三審制とは厳密に言うと法律の解釈適用についていうのです。従って、貴方も事実(直接、間接事実)主張の最後の段階ですから控訴審ですべて出しつくすことが必要となります。

4. 控訴審は慎重な判断につながり適正な解決には有効ですが、必然的に迅速、訴訟経済上難点があります。従って、単に訴訟、解決を遅延するために控訴した場合は私的自治原則に内在する、権利濫用禁止、信義側から制裁が用意されています(民訴303条)。又、実質的に控訴審の第一回の口頭弁論に攻撃防御方法を主張、提出しなければ公平、迅速、低廉の理想から訴訟指揮権により終結ということになるでしょう(民訴規則182条、183条)。

5. 経済的な争いである民事訴訟で時間と労力を要する続審制がとられ、生命身体の自由が問題となる刑事訴訟で迅速性を重視する事後審制が採用される理由がおかしいように思いますが、前述のように刑事事件における事後審制では控訴審において新たな主張、証拠の提出も認められており実質上制度上の不都合は回避されています。従って、控訴審において続審制も事後審制も結果的に差異は生じないよう工夫されています。以上のように裁判制度も法の支配の理念を実現するため適正、公平と迅速、低廉の調和をどうするかということで常に悩み運用されているのです。

6.     【書式 控訴状】

収入印紙(45000円)
 控訴状
              平成20年9月1日

東京高等裁判所民事部  御中

     郵便番号 
住所
電話、FAX番号
           控訴人 (原告)  氏      名

           被控訴人(被告)  氏      名     

貸金請求事件
訴訟物の価格  金500万円
貼用印紙    金45000円 

上記当事者間東京地方裁判所平成19年(ワ)第3445号貸金請求事件について平成 年 月 日に言い渡された下記判決は不服であるから控訴する。
           上記控訴人   氏      名 印    

原判決の表示
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。

控訴の趣旨

原判決を取り消す。

被控訴人は,控訴人に対し,金500万円及びこれに対する平成20年2月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は、1,2審とも被控訴人の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求める。

        控訴の理由
原判決には事実認定の誤りがある。詳細は追って理由書を提出する。

7. 次に、貴方が被告の場合には不服があるのですからもちろん控訴することになりますが、500万円の貸金請求訴訟では通常仮執行宣言が付いていると思います。差し押さられる財産が何もないようであれば構いませんが勤め先が判明しており、又は預金口座を知られているようであれば、給料差し押さえ等強制執行され、判決が確定していないのに社会生活上の不利益も考えられますので、回避する制度も用意されています。これを執行停止制度と言います(民訴403条1項3号)。同条の1号2号は、事実審が終了した後の債務名義による強制執行の停止なので停止要件は厳しいのですが、控訴審は事実審がまだ終了していないので判決変更の可能性もあり、要件「原判決の取消し若しくは変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと又は執行により著しい損害を生ずるおそれ」は緩やかになっています。控訴されても記録がある原審(例えば東京地裁)が管轄権を有するので申し立ても原審に行いますが(民訴404条1項)記録が高裁に移ると控訴裁判所に提出することになります。担保(保証金)は、申し立ての理由により決められますが判決額の50%前後は求められるようです。担保の立て方ですが、法務局への供託(民訴405条、同76条)と銀行との支払保証委託契約(民訴規則29条)の方法がありますので法務局、保証する銀行で聞くと説明してくれます。停止決定が出たら相手方(原告)に連絡し、強制執行が始まっていれば強制執行裁判所に決定正本を提出すれば停止されます(民事執行法39条1項7号)。

8.       【書式 強制執行停止決定申立書】

収入印紙(    円)

      強制執行停止決定申立書
 
              平成20年7月1日

東京地方(高等)裁判所 御中

           申立人(被告)   氏      名

           被申立人(原告)  氏      名     
     
           申立人     氏      名 印

      申立の趣旨
上記当事者間御庁平成19年(ワ)第3445号貸金請求事件についての仮執行宣言付判決に基づく強制執行は控訴審の判決があるまで停止するとの裁判を求める。
      
申立の理由

      疎明の方法 添付書類

 判決書の写し 
 控訴受理証明書

9. 控訴審(高等裁判所)でも敗訴した場合は、上告の道が残されています。上告審も、同じ上訴である控訴審の手続きが準用されていますので(民訴313条)、上告期間も2週間の不変期間です(印紙は第一審の2倍)。しかし、上告審は、最終事実審である控訴審と異なり法律審ですから、事実審を前提とする規定は準用されません。例えば反訴はできません(民訴300条)。

10. 上告審は、事実認定の権限はなく(民訴321条)、憲法違反の判断(憲法81条)、法令の解釈統一を行う法律審であり、法の支配の最後の砦です。個人の尊厳の保障は、最高法規である憲法の解釈適用、法令の解釈適用の統一なくして実現することは不可能です。控訴審で下された判決について憲法違反、法令解釈適用を判断するのみで主張立証を許す口頭弁論を再開するわけではありませんから(法律審ですから口頭弁論を開いても法令の解釈適用についての意見を聞くだけのものです)事後審制であり、原判決破棄の場合(上告審の本案終局判決は、請求棄却と原判決破棄の2つです)の基本は自判ではなく裁判のやり直しすなわち原審への差し戻し、移送判決になります(民訴325条)。例外的に迅速性、訴訟経済上「裁判に熟する時」は原審(控訴裁判所)に代わって最高裁が自ら判決(自判)することが可能です(民訴326条)。

11. 民事訴訟における裁判制度は三審制ですが、三審制の意味は厳格に言うと(事実認定は高裁で終了していますので二審制です。刑事訴訟は理論的に言えば高裁は事後審制であり事実認定は一審制ということになります)法の解釈、適用についていいます。
 どうして法律の解釈適用について、三審制が採用されているかというと、当該事件を超えて法律は遍く国民すべてに適用されるものであり、抽象的に規定されており矛盾対立する利益の均衡の上に成り立っているので解釈適用が難しく当該事件にのみ関する事実認定とは重要性が異なるからです。憲法違反の問題であればなおさらです。従って、適正公平な正義の法を求める法の支配の理念から法解釈だけは三回判断されるのです。しかし、最高裁判所は、日本に一つしかありませんし15人で構成されていますので(裁判所法5条3項)、上告事件の判断は遅延し、最高裁の負担増大、訴訟経済上からも問題です。そこで平成10年新民事訴訟法の施行により憲法違反、重要な法律違反は基本的上告事件として(民訴312条)、その他最高裁の判例違反、法令の解釈に重要事項を含む事件について裁量的上告事件として上告受理申し立て制度を作りました(民訴318条)。すなわち、最高裁判所が上告として受理するかどうか裁量的であり上告を受理してほしいという意味で名付けられています。受理の決定があって初めて上告があったものとみなされます(民訴318条4項)。改正前は、「判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違背」が一般的上告理由(旧民訴394条)になっていたのでこの点を改正したのです。最高裁の判例違反を上告理由としていますが、判例は法令とおなじく法規範性を有するので法令違反と同価値に考えているわけです。

12. 上告の具体的理由は、不服の理由書は当該高等裁判所が送達する上告提起通知書(又は上告受理申し立て通知書)を受け取ってから50日以内に高等裁判所に提出しなければいけません(民訴315条2項、民訴規則194条、民訴318条5項準用。不変期間ではありませんから伸長も可能です)。他に、上告審である最高裁の憲法適合性、法令の解釈適用の統一性を徹底するためその他特別上告(民訴327条。高裁が上告審の場合の制度)があります。

13.  貴方のご質問からは、上告理由があるかどうかわかりませんが、上告にふさわしい事件は、従来判例が存在しなかった事項が論点となった事件、従来の判例の事案とは異なる事案と考えられる事案、新しい法律の解釈についての事件、新しいモノや契約や人間関係に基づいて生じる、新しい法律関係についての事件、憲法13条に基づいて生じる「新しい権利(例えば肖像権、プライバシー権など)」の主張が必要な事件、だと思います。上告をすべきかどうかは、憲法問題、法令解釈の統一、最高裁の判例の検討を最終的に行うもので高度な法的判断となりますので、一度は弁護士に相談なさることをお勧めいたします。

14.  上告審で判決が確定しても、適正な判決を阻害する理由が確定後明らかになった場合は再審という制度がさらに用意されています(民訴338条)。

15.         【書式 上告状】

上告状
              平成20年11月1日

最高裁判所  御中

     郵便番号 
住所
電話、FAX番号
           上告人 (控訴人)  氏      名

           被上告人(被控訴人) 氏      名     

貸金請求事件
訴訟物の価格  金 500万円
貼用印紙    金60000円 

上記当事者間東京高等裁判所平成  年(ネ)第  号貸金請求事件について平成 年 月 日に言い渡された下記判決は不服であるから上告する。
           上記上告人   氏      名 印    

控訴審判決の表示
本件控訴を棄却する。
訴訟費用は控訴人の負担とする。

上告の趣旨

原判決を取り消す。
さらに相当の裁判を求める。

        上告の理由
詳細は追って理由書を提出する。

16. 【書式  上告受理申立書】
   

上告受理申立書
              
              平成20年11月1日

最高裁判所  御中

     郵便番号 
住所
電話、FAX番号
           上告人 (控訴人)  氏      名

           被上告人(被控訴人) 氏      名     

貸金請求事件
訴訟物の価格  金     万円
貼用印紙    金      円 

上記当事者間東京高等裁判所平成  年(ネ)第  号貸金請求事件について平成 年 月 日に言い渡された下記判決は民事訴訟法第318条1項の事由があるので不服であるから上告受理されたく申立てをする。
           上記上告人   氏      名 印    

控訴審判決の表示
本件控訴を棄却する。
訴訟費用は控訴人の負担とする。

上告の趣旨

原判決を取り消す。
さらに相当の裁判を求める。

        上告の理由
詳細は追って受理申立理由書を提出する。

17.  ここで判決以外の裁判である決定、命令についての上訴についてもご説明します。裁判(裁判所、裁判官の事件解決に関する公的判断)の形式には、判決と決定と命令があり紛争の本体である訴訟上の請求に対する裁判所の判断が判決です。判決、および判決を実現するために訴訟、執行手続きがありますが、その手続き自体を適正公平迅速に行うために裁判所、裁判官は当該手続きに関して当否の判断を行いますが、判断対象の重要性により裁判所が行う決定、裁判官が判断する命令に分かれます。手続きの適正が確保されなければ本来の争いである判決の公正も確保できないので上訴を認めています。最初の上訴を抗告と言いますが、一般的な通常抗告(民訴328条1項)と抗告期間を定めた即時抗告(民訴332条、例えば)に分かれています。即時抗告は1週間の不変期間内に申し立てなければならず、特に手続き進行の迅速性が求められる場合に個別的に規定されています。例えば、移送の決定(民訴21条)、控訴上告却下の決定(民訴287条2項、313条)、控訴、上告状の却下命令(民訴288条、289条)に対する抗告です。さらに憲法解釈、法令解釈の統一性を確保するために特別抗告(民訴336条)、許可抗告(民訴337条)が認められています。

18.  最後に、被告として敗訴判決を受けた後の和解交渉について説明します。もしも貴方が敗訴当事者であったとしても、上訴で取り消しの可能性がなければ判決確定までいつの時点でも和解の提案を考えましょう。証拠関係や主張関係に間違いが無いと原告が思っていても、万が一、控訴審で判決変更されるリスクもゼロとは言えませんし、再度、上級の裁判所で、双方の主張立証を繰り返すことは、相手方にとり経済的にも精神的にも大きな負担となる場合があるからです。また、判決に仮執行宣言が付いていたとしても、実際に強制執行をするとなると、原告側は財産を探さなければなりませんし、実際に弁済を受けるまでは煩雑な手続を経なければなりません。強制執行が空振りに終わるリスクもあると思います。そこで、貴方としては、「強制執行される前に弁済します」という条件を提示して、和解を提案することが可能です。相手方が譲歩する点は、通常は、「弁済額の減額」「分割払いの容認」となります。この場合、既に第一審敗訴判決が出ていますから、敗訴当事者としては、和解の条件が相当に厳しくなると思います。実務上は、弁済額の減額をせずに分割払いだけを認める和解が行われ、弁済額の減額があったとしても1割〜2割程度の減額に留まるケースが多いと言えるでしょう。 但し、貴方の財産状況が悪化していて、他にも債権者が居て、弁済が困難となっているような場合は、破産や民事再生や任意整理など、債務整理手続を行うことが考えられますから、もう少し柔軟な和解案を提案することも考えられます。破産や再生などの法的整理手続には、「強制執行の一時停止」の制度がありますので、債権者としても、強制執行が困難であるという事情があるので、「今すぐ破産されるよりはまし」と考えて和解に応じる場合もあります。次に、不幸にして敗訴判決が確定してしまった場合でも、相手は判決内容を実現するために、強制執行をしなければなりませんから、自発的に支払いに応じることを条件に和解を提案することができます。この場合は、通常は、弁済額の減額は行われず、分割払い等弁済方法についての和解となるケースが多いでしょう。

≪条文参照≫

憲法
第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

民事訴訟法
(担保提供の方法)
第七十六条  担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は裁判所が相当と認める有価証券(社債等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号)第百二十九条第一項に規定する振替社債等を含む。次条において同じ。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。
(担保物に対する被告の権利)
第七十七条  被告は、訴訟費用に関し、前条の規定により供託した金銭又は有価証券について、他の債権者に先立ち弁済を受ける権利を有する。
(担保不提供の効果)
第七十八条  原告が担保を立てるべき期間内にこれを立てないときは、裁判所は、口頭弁論を経ないで、判決で、訴えを却下することができる。ただし、判決前に担保を立てたときは、この限りでない。
(担保の取消し)
第七十九条  担保を立てた者が担保の事由が消滅したことを証明したときは、裁判所は、申立てにより、担保の取消しの決定をしなければならない。
2  担保を立てた者が担保の取消しについて担保権利者の同意を得たことを証明したときも、前項と同様とする。
3  訴訟の完結後、裁判所が、担保を立てた者の申立てにより、担保権利者に対し、一定の期間内にその権利を行使すべき旨を催告し、担保権利者がその行使をしないときは、担保の取消しについて担保権利者の同意があったものとみなす。
4  第一項及び第二項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(担保の変換)
第八十条  裁判所は、担保を立てた者の申立てにより、決定で、その担保の変換を命ずることができる。ただし、その担保を契約によって他の担保に変換することを妨げない。
(他の法令による担保への準用)
第八十一条  第七十五条第四項、第五項及び第七項並びに第七十六条から前条までの規定は、他の法令により訴えの提起について立てるべき担保について準用する。
(期間の伸縮及び付加期間)
第九十六条  裁判所は、法定の期間又はその定めた期間を伸長し、又は短縮することができる。ただし、不変期間については、この限りでない。
2  不変期間については、裁判所は、遠隔の地に住所又は居所を有する者のために付加期間を定めることができる。
(訴訟行為の追完)
第九十七条  当事者がその責めに帰することができない事由により不変期間を遵守することができなかった場合には、その事由が消滅した後一週間以内に限り、不変期間内にすべき訴訟行為の追完をすることができる。ただし、外国に在る当事者については、この期間は、二月とする。
2  前項の期間については、前条第一項本文の規定は、適用しない。
第三編 上訴
   第一章 控訴
(控訴をすることができる判決等)
第二百八十一条  控訴は、地方裁判所が第一審としてした終局判決又は簡易裁判所の終局判決に対してすることができる。ただし、終局判決後、当事者双方が共に上告をする権利を留保して控訴をしない旨の合意をしたときは、この限りでない。
(控訴期間)
第二百八十五条  控訴は、判決書又は第二百五十四条第二項の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に提起しなければならない。ただし、その期間前に提起した控訴の効力を妨げない。
(控訴提起の方式)
第二百八十六条  控訴の提起は、控訴状を第一審裁判所に提出してしなければならない。
2  控訴状には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一  当事者及び法定代理人
二  第一審判決の表示及びその判決に対して控訴をする旨
(口頭弁論の範囲等)
第二百九十六条  口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ、これをする。
2  当事者は、第一審における口頭弁論の結果を陳述しなければならない。
(第一審の訴訟手続の規定の準用)
第二百九十七条  前編第一章から第七章までの規定は、特別の定めがある場合を除き、控訴審の訴訟手続について準用する。ただし、第二百六十九条の規定は、この限りでない。
(第一審の訴訟行為の効力等)
第二百九十八条  第一審においてした訴訟行為は、控訴審においてもその効力を有する。
2  第百六十七条の規定は、第一審において準備的口頭弁論を終了し、又は弁論準備手続を終結した事件につき控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について、第百七十八条の規定は、第一審において書面による準備手続を終結した事件につき同条の陳述又は確認がされた場合において控訴審で攻撃又は防御の方法を提出した当事者について準用する。
(反訴の提起等)
第三百条  控訴審においては、反訴の提起は、相手方の同意がある場合に限り、することができる。
2  相手方が異議を述べないで反訴の本案について弁論をしたときは、反訴の提起に同意したものとみなす。
3  前二項の規定は、選定者に係る請求の追加について準用する。
(攻撃防御方法の提出等の期間)
第三百一条  裁判長は、当事者の意見を聴いて、攻撃若しくは防御の方法の提出、請求若しくは請求の原因の変更、反訴の提起又は選定者に係る請求の追加をすべき期間を定めることができる。
2  前項の規定により定められた期間の経過後に同項に規定する訴訟行為をする当事者は、裁判所に対し、その期間内にこれをすることができなかった理由を説明しなければならない。
(控訴棄却)
第三百二条  控訴裁判所は、第一審判決を相当とするときは、控訴を棄却しなければならない。
2  第一審判決がその理由によれば不当である場合においても、他の理由により正当であるときは、控訴を棄却しなければならない。
(控訴権の濫用に対する制裁)
第三百三条  控訴裁判所は、前条第一項の規定により控訴を棄却する場合において、控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の十倍以下の金銭の納付を命ずることができる。
2  前項の規定による裁判は、判決の主文に掲げなければならない。
3  第一項の規定による裁判は、本案判決を変更する判決の言渡しにより、その効力を失う。
4  上告裁判所は、上告を棄却する場合においても、第一項の規定による裁判を変更することができる。
5  第百八十九条の規定は、第一項の規定による裁判について準用する。
(第一審判決の取消し及び変更の範囲)
第三百四条  第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。
(第一審判決が不当な場合の取消し)
第三百五条  控訴裁判所は、第一審判決を不当とするときは、これを取り消さなければならない。
(第一審の判決の手続が違法な場合の取消し)
第三百六条  第一審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第一審判決を取り消さなければならない。
(事件の差戻し)
第三百七条  控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。
第三百八条  前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。
2  第一審裁判所における訴訟手続が法律に違反したことを理由として事件を差し戻したときは、その訴訟手続は、これによって取り消されたものとみなす。
(第一審の管轄違いを理由とする移送)
第三百九条  控訴裁判所は、事件が管轄違いであることを理由として第一審判決を取り消すときは、判決で、事件を管轄裁判所に移送しなければならない。
(控訴審の判決における仮執行の宣言)
第三百十条  控訴裁判所は、金銭の支払の請求(第二百五十九条第二項の請求を除く。)に関する判決については、申立てがあるときは、不必要と認める場合を除き、担保を立てないで仮執行をすることができることを宣言しなければならない。ただし、控訴裁判所が相当と認めるときは、仮執行を担保を立てることに係らしめることができる。
 第二章 上告
(上告裁判所)
第三百十一条  上告は、高等裁判所が第二審又は第一審としてした終局判決に対しては最高裁判所に、地方裁判所が第二審としてした終局判決に対しては高等裁判所にすることができる。
2  第二百八十一条第一項ただし書の場合には、地方裁判所の判決に対しては最高裁判所に、簡易裁判所の判決に対しては高等裁判所に、直ちに上告をすることができる。
(上告の理由)
第三百十二条  上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる。
2  上告は、次に掲げる事由があることを理由とするときも、することができる。ただし、第四号に掲げる事由については、第三十四条第二項(第五十九条において準用する場合を含む。)の規定による追認があったときは、この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三  専属管轄に関する規定に違反したこと(第六条第一項各号に定める裁判所が第一審の終局判決をした場合において当該訴訟が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときを除く。)。
四  法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
五  口頭弁論の公開の規定に違反したこと。
六  判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること。
3  高等裁判所にする上告は、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があることを理由とするときも、することができる。
(控訴の規定の準用)
第三百十三条  前章の規定は、特別の定めがある場合を除き、上告及び上告審の訴訟手続について準用する。
(上告提起の方式等)
第三百十四条  上告の提起は、上告状を原裁判所に提出してしなければならない。
2  前条において準用する第二百八十八条及び第二百八十九条第二項の規定による裁判長の職権は、原裁判所の裁判長が行う。
(上告の理由の記載)
第三百十五条  上告状に上告の理由の記載がないときは、上告人は、最高裁判所規則で定める期間内に、上告理由書を原裁判所に提出しなければならない。
2  上告の理由は、最高裁判所規則で定める方式により記載しなければならない。
(原裁判所による上告の却下)
第三百十六条  次の各号に該当することが明らかであるときは、原裁判所は、決定で、上告を却下しなければならない。
一  上告が不適法でその不備を補正することができないとき。
二  前条第一項の規定に違反して上告理由書を提出せず、又は上告の理由の記載が同条第二項の規定に違反しているとき。
2  前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。
(上告裁判所による上告の却下等)
第三百十七条  前条第一項各号に掲げる場合には、上告裁判所は、決定で、上告を却下することができる。
2  上告裁判所である最高裁判所は、上告の理由が明らかに第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由に該当しない場合には、決定で、上告を棄却することができる。
(上告受理の申立て)
第三百十八条  上告をすべき裁判所が最高裁判所である場合には、最高裁判所は、原判決に最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある事件その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件について、申立てにより、決定で、上告審として事件を受理することができる。
2  前項の申立て(以下「上告受理の申立て」という。)においては、第三百十二条第一項及び第二項に規定する事由を理由とすることができない。
3  第一項の場合において、最高裁判所は、上告受理の申立ての理由中に重要でないと認めるものがあるときは、これを排除することができる。
4  第一項の決定があった場合には、上告があったものとみなす。この場合においては、第三百二十条の規定の適用については、上告受理の申立ての理由中前項の規定により排除されたもの以外のものを上告の理由とみなす。
5  第三百十三条から第三百十五条まで及び第三百十六条第一項の規定は、上告受理の申立てについて準用する。
(口頭弁論を経ない上告の棄却)
第三百十九条  上告裁判所は、上告状、上告理由書、答弁書その他の書類により、上告を理由がないと認めるときは、口頭弁論を経ないで、判決で、上告を棄却することができる。
(調査の範囲)
第三百二十条  上告裁判所は、上告の理由に基づき、不服の申立てがあった限度においてのみ調査をする。
(原判決の確定した事実の拘束)
第三百二十一条  原判決において適法に確定した事実は、上告裁判所を拘束する。
2  第三百十一条第二項の規定による上告があった場合には、上告裁判所は、原判決における事実の確定が法律に違反したことを理由として、その判決を破棄することができない。
(職権調査事項についての適用除外)
第三百二十二条  前二条の規定は、裁判所が職権で調査すべき事項には、適用しない。
(仮執行の宣言)
第三百二十三条  上告裁判所は、原判決について不服の申立てがない部分に限り、申立てにより、決定で、仮執行の宣言をすることができる。
(最高裁判所への移送)
第三百二十四条  上告裁判所である高等裁判所は、最高裁判所規則で定める事由があるときは、決定で、事件を最高裁判所に移送しなければならない。
(破棄差戻し等)
第三百二十五条  第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由があるときは、上告裁判所は、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送しなければならない。高等裁判所が上告裁判所である場合において、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときも、同様とする。
2  上告裁判所である最高裁判所は、第三百十二条第一項又は第二項に規定する事由がない場合であっても、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原判決を破棄し、次条の場合を除き、事件を原裁判所に差し戻し、又はこれと同等の他の裁判所に移送することができる。
3  前二項の規定により差戻し又は移送を受けた裁判所は、新たな口頭弁論に基づき裁判をしなければならない。この場合において、上告裁判所が破棄の理由とした事実上及び法律上の判断は、差戻し又は移送を受けた裁判所を拘束する。
4  原判決に関与した裁判官は、前項の裁判に関与することができない。
(破棄自判)
第三百二十六条  次に掲げる場合には、上告裁判所は、事件について裁判をしなければならない。
一  確定した事実について憲法その他の法令の適用を誤ったことを理由として判決を破棄する場合において、事件がその事実に基づき裁判をするのに熟するとき。
二  事件が裁判所の権限に属しないことを理由として判決を破棄するとき。
(抗告をすることができる裁判)
第三百二十八条  口頭弁論を経ないで訴訟手続に関する申立てを却下した決定又は命令に対しては、抗告をすることができる。
2  決定又は命令により裁判をすることができない事項について決定又は命令がされたときは、これに対して抗告をすることができる。
(即時抗告期間)
第三百三十二条  即時抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。
(特別抗告)
第三百三十六条  地方裁判所及び簡易裁判所の決定及び命令で不服を申し立てることができないもの並びに高等裁判所の決定及び命令に対しては、その裁判に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに、最高裁判所に特に抗告をすることができる。
2  前項の抗告は、裁判の告知を受けた日から五日の不変期間内にしなければならない。
3  第一項の抗告及びこれに関する訴訟手続には、その性質に反しない限り、第三百二十七条第一項の上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定並びに第三百三十四条第二項の規定を準用する。
(許可抗告)
第三百三十七条  高等裁判所の決定及び命令(第三百三十条の抗告及び次項の申立てについての決定及び命令を除く。)に対しては、前条第一項の規定による場合のほか、その高等裁判所が次項の規定により許可したときに限り、最高裁判所に特に抗告をすることができる。ただし、その裁判が地方裁判所の裁判であるとした場合に抗告をすることができるものであるときに限る。
2  前項の高等裁判所は、同項の裁判について、最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは抗告裁判所である高等裁判所の判例)と相反する判断がある場合その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる場合には、申立てにより、決定で、抗告を許可しなければならない。
3  前項の申立てにおいては、前条第一項に規定する事由を理由とすることはできない。
4  第二項の規定による許可があった場合には、第一項の抗告があったものとみなす。
5  最高裁判所は、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるときは、原裁判を破棄することができる。
6  第三百十三条、第三百十五条及び前条第二項の規定は第二項の申立てについて、第三百十八条第三項の規定は第二項の規定による許可をする場合について、同条第四項後段及び前条第三項の規定は第二項の規定による許可があった場合について準用する。
  第四編 再審
(再審の事由)
第三百三十八条  次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。
一  法律に従って判決裁判所を構成しなかったこと。
二  法律により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したこと。
三  法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。
四  判決に関与した裁判官が事件について職務に関する罪を犯したこと。
五  刑事上罰すべき他人の行為により、自白をするに至ったこと又は判決に影響を及ぼすべき攻撃若しくは防御の方法を提出することを妨げられたこと。
六  判決の証拠となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。
七  証人、鑑定人、通訳人又は宣誓した当事者若しくは法定代理人の虚偽の陳述が判決の証拠となったこと。
八  判決の基礎となった民事若しくは刑事の判決その他の裁判又は行政処分が後の裁判又は行政処分により変更されたこと。
九  判決に影響を及ぼすべき重要な事項について判断の遺脱があったこと。
十  不服の申立てに係る判決が前に確定した判決と抵触すること。
2  前項第四号から第七号までに掲げる事由がある場合においては、罰すべき行為について、有罪の判決若しくは過料の裁判が確定したとき、又は証拠がないという理由以外の理由により有罪の確定判決若しくは過料の確定裁判を得ることができないときに限り、再審の訴えを提起することができる。
3  控訴審において事件につき本案判決をしたときは、第一審の判決に対し再審の訴えを提起することができない。
第八編 執行停止
(執行停止の裁判)
第四百三条  次に掲げる場合には、裁判所は、申立てにより、決定で、担保を立てさせて、若しくは立てさせないで強制執行の一時の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てて強制執行の開始若しくは続行をすべき旨を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。ただし、強制執行の開始又は続行をすべき旨の命令は、第三号から第六号までに掲げる場合に限り、することができる。
一  第三百二十七条第一項(第三百八十条第二項において準用する場合を含む。次条において同じ。)の上告又は再審の訴えの提起があった場合において、不服の理由として主張した事情が法律上理由があるとみえ、事実上の点につき疎明があり、かつ、執行により償うことができない損害が生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
二  仮執行の宣言を付した判決に対する上告の提起又は上告受理の申立てがあった場合において、原判決の破棄の原因となるべき事情及び執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
三  仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起又は仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立て(次号の控訴の提起及び督促異議の申立てを除く。)があった場合において、原判決若しくは支払督促の取消し若しくは変更の原因となるべき事情がないとはいえないこと又は執行により著しい損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったとき。
四  手形又は小切手による金銭の支払の請求及びこれに附帯する法定利率による損害賠償の請求について、仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起又は仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立てがあった場合において、原判決又は支払督促の取消し又は変更の原因となるべき事情につき疎明があったとき。
五  仮執行の宣言を付した手形訴訟若しくは小切手訴訟の判決に対する異議の申立て又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決に対する異議の申立てがあった場合において、原判決の取消し又は変更の原因となるべき事情につき疎明があったとき。
六  第百十七条第一項の訴えの提起があった場合において、変更のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点につき疎明があったとき。
2  前項に規定する申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。
(原裁判所による裁判)
第四百四条  第三百二十七条第一項の上告の提起、仮執行の宣言を付した判決に対する上告の提起若しくは上告受理の申立て又は仮執行の宣言を付した判決に対する控訴の提起があった場合において、訴訟記録が原裁判所に存するときは、その裁判所が、前条第一項に規定する申立てについての裁判をする。
2  前項の規定は、仮執行の宣言を付した支払督促に対する督促異議の申立てがあった場合について準用する。
(担保の提供)
第四百五条  この編の規定により担保を立てる場合において、供託をするには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

民事執行法
(強制執行の停止)
第三十九条  強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。
一  債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本
二  債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本
三  第二十二条第二号から第四号の二までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書
四  強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判法(平成十六年法律第四十五号)第二十一条第四項の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法第二十条第七項の調書の正本
五  強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書
六  強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本
七  強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本
八  債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書
2  前項第八号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、四週間に限るものとする。
3  第一項第八号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。
(執行処分の取消し)
第四十条  前条第一項第一号から第六号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。
2  第十二条の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合については適用しない。

民事訴訟法規則
(法第七十六条の最高裁判所規則で定める担保提供の方法)
第二十九条 法第七十六条(担保提供の方法)の規定による担保は、裁判所の許可を得て、担保を立てるべきことを命じられた者が銀行、保険会社、農林中央金庫、商工組合中央金庫、全国を地区とする信用金庫連合会、信用金庫又は労働金庫(以下この条において「銀行等」という。)との間において次に掲げる要件を満たす支払保証委託契約を締結する方法によって立てることができる。
一 銀行等は、担保を立てるべきことを命じられた者のために、裁判所が定めた金額を限度として、担保に係る訴訟費用償還請求権についての債務名義又はその訴訟費用償還請求権の存在を確認するもので、確定判決と同一の効力を有するものに表示された額の金銭を担保権利者に支払うものであること。
二 担保取消しの決定が確定した時に契約の効力が消滅するものであること。
三 契約の変更又は解除をすることができないものであること。
四 担保権利者の申出があったときは、銀行等は、契約が締結されたことを証する文書を担保権利者に交付するものであること。
2 前項の規定は、法第八十一条(他の法令による担保への準用)、第二百五十九条(仮執行の宣言)第六項(法において準用する場合を含む。)、第三百七十六条(仮執行の宣言)第二項及び第四百五条(担保の提供)第二項(他の法令において準用する場合を含む。)並びに他の法令において準用する法第七十六条(担保提供の方法)の最高裁判所規則で定める担保提供の方法について準用する。この場合において、前項第一号中「訴訟費用償還請求権」とあるのは「請求権」と、「確認するもので、確定判決」とあるのは「確認する確定判決若しくはこれ」と読み替えるものとする。
(第一審判決の取消し事由等を記載した書面)
第百八十二条 控訴状に第一審判決の取消し又は変更を求める事由の具体的な記載がないときは、控訴人は、控訴の提起後五十日以内に、これらを記載した書面を控訴裁判所に提出しなければならない。
(反論書)
第百八十三条 裁判長は、被控訴人に対し、相当の期間を定めて、控訴人が主張する第一審判決の取消し又は変更を求める事由に対する被控訴人の主張を記載した書面の提出を命ずることができる。
(上告提起と上告受理申立てを一通の書面でする場合の取扱い)
第百八十八条 上告の提起と上告受理の申立てを一通の書面でするときは、その書面が上告状と上告受理申立書を兼ねるものであることを明らかにしなければならない。この場合において、上告の理由及び上告受理の申立ての理由をその書面に記載するときは、これらを区別して記載しなければならない。
(上告提起通知書の送達等)
第百八十九条 上告の提起があった場合においては、上告状却下の命令又は法第三百十六条(原裁判所による上告の却下)第一項第一号の規定による上告却下の決定があったときを除き、当事者に上告提起通知書を送達しなければならない。
2 前項の規定により被上告人に上告提起通知書を送達するときは、同時に、上告状を送達しなければならない。
3 原裁判所の判決書又は判決書に代わる調書の送達前に上告の提起があったときは、第一項の規定による上告提起通知書の送達は、判決書又は判決書に代わる調書とともにしなければならない。
(上告理由書の提出期間・法第三百十五条)
第百九十四条 上告理由書の提出の期間は、上告人が第百八十九条(上告提起通知書の送達等)第一項の規定による上告提起通知書の送達を受けた日から五十日とする。

刑事訴訟法
第三百八十二条の二  やむを得ない事由によつて第一審の弁論終結前に取調を請求することができなかつた証拠によつて証明することのできる事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものは、訴訟記録及び原裁判所において取り調べた証拠に現われている事実以外の事実であつても、控訴趣意書にこれを援用することができる。
○2  第一審の弁論終結後判決前に生じた事実であつて前二条に規定する控訴申立の理由があることを信ずるに足りるものについても、前項と同様である。
○3  前二項の場合には、控訴趣意書に、その事実を疎明する資料を添附しなければならない。第一項の場合には、やむを得ない事由によつてその証拠の取調を請求することができなかつた旨を疎明する資料をも添附しなければならない。
第三百九十三条  控訴裁判所は、前条の調査をするについて必要があるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で事実の取調をすることができる。但し、第三百八十二条の二の疎明があつたものについては、刑の量定の不当又は判決に影響を及ぼすべき事実の誤認を証明するために欠くことのできない場合に限り、これを取り調べなければならない。
○2  控訴裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状につき取調をすることができる。
○3  前二項の取調は、合議体の構成員にこれをさせ、又は地方裁判所、家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官にこれを嘱託することができる。この場合には、受命裁判官及び受託裁判官は、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。
○4  第一項又は第二項の規定による取調をしたときは、検察官及び弁護人は、その結果に基いて弁論をすることができる。
第三百九十四条  第一審において証拠とすることができた証拠は、控訴審においても、これを証拠とすることができる。
第三百九十八条  不法に、管轄違を言い渡し、又は公訴を棄却したことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を原裁判所に差し戻さなければならない。
第三百九十九条  不法に管轄を認めたことを理由として原判決を破棄するときは、判決で事件を管轄第一審裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、その事件について第一審の管轄権を有するときは、第一審として審判をしなければならない。
第四百条  前二条に規定する理由以外の理由によつて原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によつて、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。

裁判所法
第五条 (裁判官)  最高裁判所の裁判官は、その長たる裁判官を最高裁判所長官とし、その他の裁判官を最高裁判所判事とする。
○2  下級裁判所の裁判官は、高等裁判所の長たる裁判官を高等裁判所長官とし、その他の裁判官を判事、判事補及び簡易裁判所判事とする。
○3  最高裁判所判事の員数は、十四人とし、下級裁判所の裁判官の員数は、別に法律でこれを定める。
第十八条 (合議制)  高等裁判所は、裁判官の合議体でその事件を取り扱う。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
○2  前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。但し、第十六条第四号の訴訟については、裁判官の員数は、五人とする。
第四十二条 (高等裁判所長官及び判事の任命資格) 高等裁判所長官及び判事は、次の各号に掲げる職の一又は二以上に在つてその年数を通算して十年以上になる者の中からこれを任命する。
一  判事補
二  簡易裁判所判事
三  検察官
四  弁護士
五  裁判所調査官、司法研修所教官又は裁判所職員総合研修所教官
六  前条第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授
○2  前項の規定の適用については、三年以上同項各号に掲げる職の一又は二以上に在つた者が裁判所事務官、法務事務官又は法務教官の職に在つたときは、その在職は、これを同項各号に掲げる職の在職とみなす。
○3  前二項の規定の適用については、第一項第二号乃至第五号及び前項に掲げる職に在つた年数は、司法修習生の修習を終えた後の年数に限り、これを当該職に在つた年数とする。
○4  三年以上前条第一項第六号の大学の法律学の教授又は准教授の職に在つた者が簡易裁判所判事、検察官又は弁護士の職に就いた場合においては、その簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数については、前項の規定は、これを適用しない。司法修習生の修習を終えないで簡易裁判所判事又は検察官に任命された者の第六十六条の試験に合格した後の簡易裁判所判事、検察官(副検事を除く。)又は弁護士の職に在つた年数についても、同様とする。

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