新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.539、2006/12/6 10:09

質問:私が死亡したら,先祖の墓に入れずに散骨してほしいと思っています。散骨に関する規制があれば教えてください。また,葬式や法要について生前に決めておくことはできますか。

回答:
■■散骨について■■
【結論】
平成18年11月現在,国レベルの法律では散骨は規制されていません。ただし,地方公共団体レベルでは条例で規制しているところ(例:北海道長沼町)もあります。また,散骨が適法とされる根拠により合致させるため,地域の実情等に照らし,事実上遵守することが望ましい事項が存する場合もありますので,お住まいの都道府県及び市区町村にお問い合わせになるか,弁護士に調査等を依頼してください。
【解説】
散骨について厳密な定義は必ずしも定まっていませんが,一般的には火葬後の遺骨を粉末状にして散骨用の墓域や海・山に撒く葬法であるということができます。この散骨と直接関係がありそうな法律としては,「墓地,埋葬等に関する法律(墓埋法)4条」及び「刑法190条(遺骨遺棄罪)」があります。まず,墓埋法との関係ですが,同法は,火葬後の遺骨を墳墓に埋蔵し,または納骨堂に収蔵することについての手続を定めているものの,これら以外の方法については特段の規制をしていません。そして,実務上も,散骨が公衆衛生上の問題を生じたり,社会通念上国民の宗教的感情を損なうような形で行われるのでなければ,現行法上特に規制の対象にする必要がないというのが現在の行政の考え方であり,散骨は同法の射程外であると理解されています。次に,遺骨遺棄罪との関係ですが,実務上,この条項の規定が社会習俗としての宗教的感情などを保護することを目的とすることから、散骨が葬送のための祭祀として節度を持って行われる限り問題ないと理解されています。なお,散骨という葬法自体が規制されていなくても,他人の所有地に勝手に撒くことは当然のことですが許されません。

【法令】
≪墓地,埋葬等に関する法律≫
第4条1項 埋葬又は焼骨の埋蔵は,墓地以外の区域に,これを行つてはならない。
≪刑法≫
(死体損壊等)
第190条 死体,遺骨,遺髪又は棺に納めてある物を損壊し,遺棄し,又は領得した者は,三年以下の懲役に処する。
≪長沼町さわやか環境づくり条例≫ 平成17年3月16日成立 条例第10号
(目的)
第1条 この条例は、町の環境美化を推進するために、町、町民等、事業者及び土地占有者等の責務その他必要な事項を定め、良好でさわやかな環境を確保し、清潔で美しいまちづくりを進めることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)〜(4)略
(5) 焼骨 人の遺体を火葬した遺骨(その形状が顆粒状のものを含む。)をいう。
(6) 散布 物を一定の場所にまくことをいう。
(7) 墓地 墓地、埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)第2条第5項に規定するものをいう。
第3条〜第7条 略
(散布の禁止)
第8条
何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。
(勧告)
第9条
町長は、第4条第3項、第7条又は第8条の規定に違反していると認めたときは、その違反者に対し、必要な措置を講じるよう勧告することができる。
(命令)
第10条
町長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由がなくその勧告に従わないときは、期限を定めて勧告に従うことを命じることができる。
第11条,第12条 略
(罰則)
第13条
1 焼骨を散布する場所を提供することを業とした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
2 略
3 第8条の規定に違反し、第10条の規定による命令に従わなかった者は、2万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
4 略
第14条,第15条 略
附 則 この条例は、平成17年5月1日から施行する。

■■葬式・法要について■■
【結論】
遺言で葬式や法要の方法について定めておいても,法的効力はありません。
【解説】
葬式や法要については,祭祀主宰者の自由に委ねられています。被相続人は,祭祀主宰者を指定することができますが,祭祀主宰者にどのような葬式や法要をしろとまで法的に義務付けることはできません。そこで,今のうちから家族とよく話し合い,場合によっては信頼できる祭祀主宰者を予め指定しておくとよいでしょう。こうしておけば,あなたの意思を尊重してくれるように期待することができます。祭祀主宰者の指定について特別の方式はありませんので,口頭ですることも可能ですが,遺言などの書面に残しておけば後の紛争をできるだけ予防することができます。遺言については,法律の定める様式を遵守することが要求されていますので,作成の際は弁護士にご相談されることをお勧めします。

【法令】
≪民法≫
(相続の一般的効力)
第896条  相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りでない。
(祭祀に関する権利の承継)
第897条1項  系譜,祭具及び墳墓の所有権は,前条の規定にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし,被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは,その者が承継する。
2項  前項本文の場合において慣習が明らかでないときは,同項の権利を承継すべき者は,家庭裁判所が定める。
(遺言の方式)
第960条  遺言は,この法律に定める方式に従わなければ,することができない。

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