新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.500、2006/10/17 18:36

[民事・裁判]
質問:調停を申し立てていましたが、相手が出頭せず、不調ということになりました。裁判をしても相手が欠席したら意味がないのであれば、と思って裁判をするかどうか躊躇しています。裁判を起こして、相手がこれを全く無視した場合にどうなるのか教えてください。

回答:
1、裁判手続きは当事者双方が、裁判所の面前で主張立証を尽くすことが予定される手続きですが、この理屈を貫き、当事者が出頭しない場合には、期日が一切無駄になり、さらには紛争解決も一切できないという結論は不当です。そこで、法は一方当事者が欠席した場合の扱いを定めています。
2、まず最初の口頭弁論期日に当事者の一方が欠席した場合には、裁判所は欠席した者が提出した書面を訴訟において陳述したものとして、出頭した相手方に弁論をさせることが出来るということになっています(陳述擬制・民事訴訟法158条)。通常の訴訟実務でも、第1回期日については、被告側は、答弁書だけ提出して欠席するということが多いです。(ただし、当事者双方が欠席した場合にはこの条文は適用されず、期日が無駄になってしまうので、原告は実務上は必ず出席しています。)
3、仮に、被告が答弁書も出さないで欠席する場合には、上記の陳述擬制はなされません。法は当事者の一方が欠席した場合の効果として、もう一つ、このような陳述擬制もなされないような場合に、相手方が提出した書面(この場合は訴状)に記載してある事実について、自白したものとして扱ってよい(擬制自白・同法159条1項・3項)ということを定めています。一方当事者が自白したということは、その事実を立証する必要が無くなるということで(同法179条・裁判所の立場からいえば、証拠調べをしないで事実として認定してよいということ)、したがって、被告が第1回期日に書面も出さずに欠席した場合には、裁判所としては、原告の申し出があれば、この時点で結審し、判決を下すことは可能(同法243条・244条)ということになります。ただし、公示送達で被告の呼び出しが行なわれたようなケースでは擬制自白は成立しません。
4、以上の一方当事者が欠席した場合でも、紛争解決基準を示す必要があるという価値判断は、例えば離婚訴訟のような家事事件でも同様と考えられます。もっとも、家事事件は身分関係を決定する手続きであり、このような扱いは慎重になされる必要があり、法律上も上記の擬制自白等の条文については適用されないと明確に規定されています(人事訴訟法19条は159条、244条については準用していません。)そもそも、通常の民事訴訟での上記のような扱いも、あくまで、当事者が欠席したあるいは自白しているという事情も含めて、裁判所が判決を出してもよいと判断をしたときに、第1回であっても結審し、判決を下せるということにすぎません。(当事者が書面も出さずに欠席したら必ず裁判が一回で結審するというわけではないということです。)離婚訴訟のような家事事件の場合には、第1回期日に被告が欠席したとしてもすぐに判決ということはなく、ただし、裁判所としては、原告に主張する事実関係を立証させ、立証十分と判断したときには、相手方がその後も一切裁判所にこなかったとしても、判決を下すことは可能ということになります。(民事訴訟法243条)

≪参照条文≫
(訴状等の陳述の擬制)第百五十八条  原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。
(自白の擬制)第百五十九条  当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2  相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3  第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。
(証明することを要しない事実)第百七十九条 裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。
(終局判決)第二百四十三条  裁判所は、訴訟が裁判をするのに熟したときは、終局判決をする。
2  裁判所は、訴訟の一部が裁判をするのに熟したときは、その一部について終局判決をすることができる。
3  前項の規定は、口頭弁論の併合を命じた数個の訴訟中その一が裁判をするのに熟した場合及び本訴又は反訴が裁判をするのに熟した場合について準用する。
第二百四十四条  裁判所は、当事者の双方又は一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合において、審理の現状及び当事者の訴訟追行の状況を考慮して相当と認めるときは、終局判決をすることができる。ただし、当事者の一方が口頭弁論の期日に出頭せず、又は弁論をしないで退廷をした場合には、出頭した相手方の申出があるときに限る。
(民事訴訟法 の規定の適用除外)第十九条  人事訴訟の訴訟手続においては、民事訴訟法第百五十七条 、第百五十七条の二、第百五十九条第一項、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条、第二百二十九条第四項及び第二百四十四条の規定並びに同法第百七十九条 の規定中裁判所において当事者が自白した事実に関する部分は、適用しない。
2  人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条 及び第二百六十七条 の規定は、適用しない。

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