新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.440、2006/7/7 18:26

[民事・契約]
質問:保証制度に関して民法が改正されたとのことですが、改正内容について教えてください。

回答:
1.平成16年民法改正において保証制度について改正が行われましたが、その趣旨は、保証人が過大な責任を負いがちな保証契約(特に根保証契約)について、その契約内容を適正化するための法整備を行うということです。背景としては、以前より、中小企業が融資を受ける際には、信用を補完する手段として経営者またはその親族などによる根保証がしばしば行われている実情がありましたが、改正前の法では根保証に関する規定はなく、契約自由の原則のもと、特段の法的規制が存在しない状態で、そのため特に中小企業向けの融資における経営者などの個人保証においては、保証の限度額や保証期間の定めのない、いわゆる包括根保証契約が多用され(判例上も包括根保証契約の有効性が認められていた)、その結果として、近時の厳しい経済状況の下で、保証人が予想を超える過大な責任の追及を受ける等の事例が多発したことから、包括根保証契約に対する何らかの法的規制を講ずるべきではないかという指摘がなされていたことです。
2.改正項目としては、民法第3編の第1章総則の第3節「多数当事者の債権」を「多数当事者の債権及び債務」とし、そのうち第4款保証債務を「第1目 総則」と「第2目 貸金等根保証契約」とに分けた上で、保証契約一般に適用される規律として、「第1目 総則」の中に、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」とする第446条2項の規定が新設されました。これは保証契約の要式行為化と呼ばれ、書面によらない保証契約は無効とするものです。一般に保証契約は、契約締結時には実際に保証人としての責任を追及されるかどうか定まっていないこともあって、安易に保証人になってしまう場合が多いこともあり、危険な契約については慎重に締結するようにとの趣旨で、書面により、外形的・客観的に保証意思が明らかとなっている場合に限って契約としての拘束力を認めようとするものです(なお、電磁的記録に関する民法446条3項の新設もあります)。次に、「第2目 貸金等根保証契約」(第465条の2以下)の規定が上記1.の趣旨に従って新設されました。概要としては、貸金等根保証契約については、極度額の定めのない根保証契約を無効とするとともに、その保証期間を制限することを主な内容としています。以下に詳述します。
3.貸金等根保証契約に該当するためには、@根保証契約(一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約)であること、A主たる債務の範囲に貸金等債務(金銭の貸し渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務)が含まれるものであること、B個人を保証人とするものであることが必要となります(民法465条の2第1項)。Aの要件は、根保証契約のうちでも融資に関する根保証契約に限定する趣旨のもので、継続的な売買取引による根保証契約などは含まれません。融資に関する保証人の保護を早急に講ずる趣旨です。Bは、保証人が法人である場合には貸金等根保証契約には該当しないとするものです。次に、貸金等根保証契約の規制としては、(1)極度額、(2)元本確定期日、(3)元本確定事由の項目があります。(1)まず、極度額を定めなければ貸金等根保証契約は効力を生じません(民法465条の2第2項)。この極度額は、主たる債務の元本だけでなく、その利息、損害金等を含むものとして定めなければならず、かつ、保証債務についてのみ定められた違約金等がある場合には、これも含むものとして定めなければならないとされています(民法465条の2第1項)。(2)また、保証人は、元本確定期日までの間に行われた融資に限って保証債務を負担することになります(保証期間の制限)。契約締結時に合意により元本確定期日を定める場合には、その期日は、貸金等根保証契約の締結の日から5年以内(民法465条の3第1項)、元本確定期日の定めがない場合には、その期日は、当然に、貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日となります(民法465条の3第2項)。元本確定期日を契約後に事後的に変更する場合には、変更をした日から5年以内の日を変更後の元本確定期日としなければならず、5年を超える日に変更をしようとすると、その変更契約は無効になります(民法465条の3第3項本文)。但し、元本確定期日の前2ヶ月以内という近接した時期にその変更を行う場合については、変更前の元本確定期日から5年以内の日を変更後の元本確定期日とすることができます(民法465条の3第3項但書)(いわゆる保証期間の制限更新)。(3)貸金等根保証契約の元本確定事由は、(ア)主たる債務者若しくは保証人の財産に対する強制執行若しくは担保権の実行の申立て、(イ)主たる債務者若しくは保証人に対する破産手続開始の決定、(ウ)主たる債務者若しくは保証人の死亡です(民法465条の4)。(ウ)については、これまでの判例法理では、いわゆる包括根保証の場合には保証人の地位の相続性が否定されていましたが、限度額あるいは保証期間の制限ある限定根保証については、逆に保証人の地位が相続されるという考え方が一般的でしたが、改正法では保証人の地位の相続性を否定し元本確定事由としています。なお、極度額の定め及び元本確定期日の定め・変更については、書面に記載されていなければ無効となります(民法465条の2第3項、同465条の3第4項、同446条2項、3項)。例えば、極度額の定めが書面に記載されていない場合、極度額の定めが無効となり、その結果、根保証契約そのものが極度額の定めのないものとして無効となります。
4.改正法では、保証人が法人である根保証契約であってその主たる債務の範囲に貸金等債務が含まれるものが、極度額及び元本確定期日の定めがあること等の一定の要件を備えたものでないときは、その法人が個人との間で締結する求償権の保証契約は、効力を生じない(民法465条の5)という法人の根保証契約に関する特則(求償権保証の制限)が定められています。また、保証関係の改正については、法律の施行前に締結された保証、根保証契約については元本確定期日等一部の規定を除き適用されませんし、その他にも経過措置が細かく定められていますので(民法 附則)、注意が必要です。

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