新銀座法律事務所 法律相談事例集データベース
No.382、2006/4/4 17:24

[商事]
質問:友人と2人で,インターネットを使ったベンチャー企業を立ち上げようと考えています。2006年5月から施行される新しい会社法によって,「合同会社」という会社形態が新設されると聞きましたが,株式会社とはどのような違いがあるのでしょうか。

回答:
1、ご指摘の通り,2006年5月から施行される新しい会社法が施行されます。新会社法では,株式会社についても設立時の資本金の規制を撤廃し(資本金1 円からでも株式会社を作れる),取締役は3名以上必要とされていたのを1名で良いとするなど,株式会社といっても有限会社と変わらない会社の方が多いという社会の実態に沿うような改正が行なわれます。この改正によって,ご質問のような,ベンチャー企業の起業促進の効果が期待できることになりますが,新会社法では,さらに,合同会社という新しい企業形態を規定しました。

2、同会社も法人格を持ち,社員が有限責任しか負わないという点については株式会社と共通ですが,以下のような点で株式会社にはないメリットがあります。大ざっぱに言えば,より少資本で起業が可能で,株式会社より人的関係に重きをおいた柔軟な経営をできるのが,合同会社のメリットということがいえます。(ちなみに,合同会社は,従来の合名・合資会社とならんで,「持分会社」として規定されています。)
@設立費用・・株式会社の場合は登録免許税のほかに定款の認証収入印紙代,認証手数料という主な手続き費用だけで少なくとも24万円が必要ですが,合同会社の場合定款の認証は不要なので,登録免許税の6万円(予定)からの設立費用で済みます。
A設立手続き・・上記のように定款の認証が不要なので,設立手続きも株式会社と比べて簡単です。
B内部組織・・新会社法によって,株式会社においても会社の規模によっては取締役会を設置しなくても良いなどの改正がなされましたが,それでも,株主総会と取締役は置かなければなりませんし,それぞれの権限事項が法律で定められているので,会社の運営もこれに拘束されます。合同会社の場合は機関の設置や業務執行のルールを定款で自由に定めることができます。
C損益分配・・株式会社の場合,損益の分配については,原則として,出資比率(株式の持分の比率)によりますが,合同会社の場合には,損益の分配も定款で自由に定めることができます。例えば,お金はあるがノウハウのない人と,ノウハウはあるがお金はある人が組んで仕事をするような場合に,柔軟な損益分配ができるということは大きな魅力となります。

3、このように,新設される合同会社は,少人数,少資本で企業するベンチャー企業にとっては,検討に値する企業形態と言えます。逆にデメリットとしては, @株式会社のように労務出資は認められていないこと,A持分を譲渡するためには他の社員全員の承諾がいることなどが考えられますが,これらは,柔軟な内部自治を認めながら,有限責任とする上での最低限のルールを定めたものといえるでしょう。また,「株式会社」という「名前」が世間に与えるイメージ,信用というものはやはり大きく,「合同会社」が社会一般に与えるイメージ,信用というのは未知数といわざるを得ません。ただし,後になって,合同会社から,株式会社への組織変更をすることは可能です。上記のような合同会社のメリットから,会社が軌道に乗り始めたときに,株式会社への組織変更を検討することとして,とりあえず合同会社として起業するという選択肢は十分に検討に値するものと考えられます。

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